8割の企業が社員のソーシャルメディアアカウントを情報漏えいリスクとして認識、しかし対応はできていない | ソーシャルメディア白書2012 ハイライト #9
この記事では、一般消費者1万人と企業400社への調査データから、日本のソーシャルメディアの利用実態を明らかにした、書籍『ソーシャルメディア白書2012』のなかから、Web担の読者向けに注目データをピックアップし、全9回にわたってお届けします。
- ソーシャルメディアのリスクは認識されるも対応にばらつき
- 活用度、満足度が高い企業ほどソーシャルメディア運用体制が確立
- ソーシャルメディアの積極的活用には全社的なコミットメントが必要
ソーシャルメディアのリスクは認識されるも対応にばらつき
企業がソーシャルメディアを活用するにあたっては「情報漏洩」や「誹謗・中傷」「やらせ」など様々なリスクが想定されます。ソーシャルメディア活用企業のリスク意識に関する調査から、項目によって比率は異なりますが半数以上の企業が「リスクを認識している」ことがわかります(図1)。特に社員の個人アカウントからの情報漏洩については80.7%の企業がリスクとして認識しているようです。
しかし、それらのリスクに対する対策については、ソーシャルメディア活用度の高低でばらつきが見られました。
上級活用企業では、「公式アカウント運用者向けガイドラインを策定している」「一般社員向けガイドラインを策定している」「公式アカウントの開設・運用について申請・手続きルールが明確になっている」など、様々な取り組みが実施されているのに対し、活用初期企業では7割近く(上級活用企業は2.8%)が「今のところ対策は講じていない」のが現状のようです(図2)。
また、リスク対策を現在行っていない企業に今後の対策について質問したところ、今後ソーシャルメディアのリスク対策を講じる予定がすでに立っている企業は2割以下にとどまり、「わからない」と回答した企業も約50%に上ったことから、リスク対策についてはっきりとした方針を示せていない企業もまだまだ多い状況がうかがえます(図3)。
活用度、満足度が高い企業ほどソーシャルメディア運用体制が確立
ソーシャルメディアの主幹担当部門に関しては、ソーシャルメディアの活用度が高い企業ほど、設置している割合が高く、ソーシャルメディア活用度が高い企業ほどマーケティング部が担当する割合が高くなっています(図4、図5)。
ソーシャルメディア運用の兼任担当者数は、ソーシャルメディア活用度の高い企業ほど人数が多くなっており、上級活用企業の中にはソーシャルメディア運用担当者が10人以上の企業もあるようです(図6)。
ソーシャルメディアの積極的活用には全社的なコミットメントが必要
調査項目として含めた活用満足度を元に、満足度ごとに今後の認識課題をプロットしたのが図7です。この図からソーシャルメディアの活用満足度が低い企業は、高い企業に比べ「発信する情報が不足している」ほか、「上長・役員の理解不足」や「部署間連携が難しい」といった、社内組織やコミュニケーションに関する課題を抱えている割合が高いことがわかります。
ソーシャルメディア活用満足度が低い企業では、社内組織やコミュニケーションが課題とされている一方、ソーシャルメディアの活用度や活用満足度が高まるにつれて、組織を超えた全社的な活用意向が増加することがわかります(図8、図9)。
また組織については、ソーシャルメディア担当者は他業務との兼任が全体で55.8%と多数を占めているものの、ソーシャルメディアマーケティングのチーム体制が全社的に展開される傾向にあることがわかります(図10、図11)。
先述の調査に加え、さらにソーシャルメディア活用度が上がると活用満足度も上がるという点は本調査結果からも明らか(図12)であり、ソーシャルメディアの活用度や活用満足度をより高めるためには、ソーシャルメディア活用に対して全社的に一定のコミットメントをすることが求められるといえます。
ソーシャルメディア白書2012からのデータ紹介、第9回は「企業におけるソーシャルメディアリスクと運用体制の現状」について紹介しました。
今回取り上げたリスクへの対応や運用体制は、特に上級活用企業や活用満足度の高い企業とそうでない企業の間で差がみられ、活用初期企業にはリスク対策の実施予定や主幹部門の不明確さなど様々な課題があることがわかりました。活用度が高まれば活用満足度も高まるというデータもありましたが、より多くの企業がソーシャルメディアの時代に適応していくことが望まれます。
ソーシャルメディアは日常に溶け込みつつある
全9回にわたり、ソーシャルメディア白書からソーシャルメディア利用の現状を連載させていただきましたが、今回が最後の記事となります。最後に今回の連載の中ではカバーできなかった最近の動きを紹介したいと思います。
ソーシャルメディアをめぐる動きはダイナミックに変化しています。最近ではFacebookによるInstagram買収やPinterestの成長から消費者間のWebコミュニケーションにおける画像(ビジュアル)の重要性が増しているように感じられます。また、TwitterやFacebookとは異なるクローズドで親密なコミュニケーションのためのサービスとしてLINEやPathなどが同じくユーザー数を大きく伸ばしています。
ソーシャルメディアは多くのユーザーが日常的に利用するメディアへと成長を遂げました。企業におけるマーケティング活動においても、その重要性は増していくことでしょう。実際、ソーシャルメディア先進国である米国ではソーシャルメディアと他のマーケティング施策との連動が進んでいます。
たとえば、Twitterはハッシュタグというシステムがマスメディアと相性が良く、テレビ番組やテレビCFで多く利用されるようになっており、FacebookはNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)技術を活用した「リアルいいね!」など、OOH(屋外広告)と絡めた施策などが実施されるようになっています。
今回の連載は昨年10月の調査に基づいたものでしたが、また次回の白書では消費者のソーシャルメディア利用、企業のソーシャルメディア利用ともに大きな変化がみられるかもしれません。
そのような変化も今後、このソーシャルメディア白書で追っていければと思っています。
- 調査目的:企業におけるソーシャルメディアマーケティングの取り組み状況および今後の課題把握
- 調査期間:2011年9月26日(月)~2011年10月25日(火)
- 調査手法:郵送調査&インターネット調査
- 調査対象:上場会社と有力未上場企業、外資系企業および上場会社の子会社・関連会社
※株式会社東洋経済新報社が独自調査で収集した、国内4万社(上場会社と有力未上場企業、外資系企業および上場会社の子会社・関連会社)を収集した企業リスト『日本の会社データ4万社』(2011年4月版/株式会社東洋経済新報社)に掲載された企業より選定した。 - 発送数:6,972社
- 回収数:406社(回収率5.8%)
50人未満 | 71 |
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50~100人未満 | 47 |
100~200人未満 | 47 |
200~300人未満 | 36 |
300人~500人未満 | 47 |
500~1,000人未満 | 44 |
1,000~3,000人未満 | 59 |
3,000人以上 | 51 |
日本では本格的なソーシャルメディアに関連したデータ集が圧倒的に不足しており、提案の現場では海外調査データや簡易的なウェブ調査などが多数引用されている状況である。そこで本書は、消費者や企業のソーシャルメディアの日本での利用実態を多様なデータとともに明らかにする。今後、ソーシャルコマース、ソーシャルCRM、ソーシャルゲームなど、さらにソーシャルメディアは存在感を増していくなか、本当に使えるデータを網羅する!
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