ドメイン名の「味見」ってナンダ?/知って得するドメイン名のちょっといい話 #12
「テイスティング」と聞いて何を想像するだろうか。ワインだろうか?それとも紅茶だろうか?実はドメイン名にも「テイスティング」というものがある。そしてこのテイスティングが、.comや.netなどのgTLDでは大きな問題になっている。
登録更新はくれぐれも忘れずに
本誌の読者の皆さんには言うまでもありませんが、ドメイン名はとても大切なものです。自分のウェブサイトやメールアドレスのドメイン名として何を用いるのか、考えて考えて考え抜いた末に選んだ大切なドメイン名でしょう。
そして、長く使えば使うほど、あなたをあらわす名前としてインターネットに浸透していくことで、その価値は増していきます。
実際には、「うっかりユーザー」を救済するための手続きが用意されている場合が多いですが、最初からそれをあてにしていてはいけません…。
この大切なドメイン名を末永く利用していくために気をつけなければいけないことは、登録の更新手続きを忘れずに行うこと。この更新手続きを忘れてしまうと、最悪の場合はドメイン名が廃止されてしまいます※1。
さて、今回はこの「ドメイン名が廃止されてしまった後」の話です。
一度手放したら取り戻せない?
ドメイン名が廃止されると、一定期間の「一時凍結期間」を経て、再び誰でも登録できる状態になります。ドメイン名の登録更新を忘れてしまった場合、「また登録できるようになったら取り直そう」と考える人も多いようですが、実際にはこの再登録はとても難しい状況です。なぜならば、誰かが登録していたドメイン名が廃止され、再度登録できるようになると、それらはすぐに「他の誰か」に登録されてしまうからです。
この傾向は.comや.netではとても顕著で、ほぼすべての廃止ドメイン名が登録可能となった瞬間に再登録されている模様です。このような行為は「ドロップキャッチ」と呼ばれています。これにより、「更新忘れ」で廃止されたドメイン名を再度登録することは難しくなっており、登録更新を忘れずに行うことが今まで以上に重要になっています。
ドロップキャッチ
ところで、なぜ「ドロップキャッチ」が行われるのでしょうか。どうしてもそのドメイン名が欲しい、という人が他にいて、再登録可能になるのをずっと待っていたのでしょうか。それもあるかもしれません。
しかし、最近のgTLDにおける大量のドロップキャッチは理由が異なります。それは、ドロップキャッチされたドメイン名がその後どのように使われているかを見るとわかります。これらのドメイン名のウェブはPPC(Pay Per Click)の広告リンクで埋め尽くされていて、アクセスしたユーザーがこれらをクリックすると、オーナーの収入となる、という仕組みです。
この収入を得るためにはユーザーのアクセスが必要です。そして、手っ取り早くアクセスを手に入れるために、お金をかけて広告を出したりSEOやSEMを行うのではなく、「今まで使われていたドメイン名」を使って、そこに集まっていたアクセスを広告に導くことが行われています。これが、ドロップキャッチが行われる理由なのです。
ドメイン・テイスティング
しかし、よくよく考えてみれば、ドメイン名の登録もウェブサイトの運営も、お金が必要です。アクセスしてもらって広告がクリックされなければ赤字になってしまいます。それでも「ほぼすべての廃止ドメイン名がドロップキャッチされる」という状態になっているのはなぜでしょうか。
そこには、.comや.netに用意されている「登録から5日以内に廃止されたドメイン名には登録料金が課金されない」という制度が関係しています。もともとはドメイン名登録のミスを救済するための制度ですが、これが「5日間なら無料でドメイン名を登録できる制度」として濫用されているのです。
- 廃止された後で再登録可能となったドメイン名を大量に登録する。=ドロップキャッチ
- PPC広告を貼り付けたページで運用する。
- 5日間で収入が得られるドメイン名かどうかを評価し、不要なものを廃止する。
そして、この3番目のプロセスこそが「ドメイン・テイスティング」と呼ばれるものです。「ドメイン名の味見」、つまり「お金になるかどうか少し運用してみる」のです。
味見を許すかどうか
ドロップキャッチ、ドメイン・テイスティングは、JPドメイン名においては大きな問題とはなっていません。JPドメイン名では、新規登録の際の無料期間を設けていないからです。実は、数年前にJPドメイン名でもこの制度の導入を検討していましたが、ちょうどドメイン・テイスティングが認識され始めた時期で、導入を見合わせた経緯があります。
.comや.netでは、ドメイン・テイスティングによりドメイン名の大量登録と大量廃止が繰り返され、レジストリー・レジストラーへの負荷増大や、制度の濫用への批判など、大きな問題となってきています。
2008年1月、ドメイン名のグローバルなポリシー検討を担うICANNは、新規登録の際の無料期間をなくすことでドメイン・テイスティングを抑制することを理事会提案として発表しました。この問題は、制度の濫用に対して、制度の廃止をもって対応する、という大きな方針変更となります。
この方針の是非は今後の検討プロセスのなかで判断されることになりますが、皆さんが本誌を読んでいるころには、提案発表後の最初のICANN会合であるニューデリー会合でいろいろな意見が出されていることでしょう。最終的な判断は、6月のICANN パリ会合での理事会決議に委ねられることになる予定です(図1)。
IE7への自動更新と日本語ドメイン名
話は変って、皆さんはブラウザーは、何を利用されていますか?
2月13日、Windows XPユーザーに対するInternet Explorer 7(IE7)の自動更新による配布が始まりました(図2)。IE7はWindows Vistaの標準搭載ブラウザーとして広まりつつありましたが、XPのユーザーへの配布はWindows Updateなどで行われていなかったため、自分でインストール作業を行ったユーザー以外はIE6を利用し続けていることが多かったようです。
今回の自動更新によるIE7の配布で、IE6ユーザーの多くがIE7へとバージョンアップするものと思われます。今後のウェブコンテンツ制作ではIE7を前提にしなければならないのはもちろんのこと、日本語ドメイン名にとってもIE7の普及は大きな前進です。
IE7は国際化ドメイン名の機能を標準搭載しているため、日本語ドメイン名のURLを利用することができます。FirefoxやSafariなどに先を越されていたIEですが、これでほぼすべてのユーザーが日本語ドメイン名の利用環境を手に入れたといえるでしょう。
JPRSからのお知らせ
2008年2月5日、DNSの最上位層であるルートゾーンに、ルートDNSサーバーのIPv6アドレスがAAAAレコードとして追加されました。これは、DNSをIPv6で利用するうえで大きな前進で、今後のIPv6利用を促進する材料となるでしょう。 なお、DNSキャッシュサーバーを運用されている方はルートヒントファイルの変更が必要になります。詳しくは以下をご覧ください。
※この記事は、レンタルサーバー完全ガイドの発行する雑誌『レンタルサーバー完全ガイドVol.13』(2008年5月29日発売)に掲載されたものを再編集して掲載しているものです。
コメント
2月13日、Windows
2月13日、Windows XPユーザーに対するInternet Explorer 7(IE7)の自動更新による配布
は、去年の2月ですよー。
1年前の記事かと思いました(笑)。
Re: 2月13日
編集部の安田です。
コメントでのご指摘ありがとうございます!
本文中に注意の追記をいたしました。
『レンタルサーバー完全ガイド』の掲載記事をWeb化して公開していっていましたので、こういったずれが残っていました。できるだけ年月の記述などは注意して修正していたのですが、残っていましたね。申し訳ありません。