ネットショップ担当者フォーラム

モノタロウ、当日出荷対象商品の届け日をECサイトで表示する「お届け日表示」機能を実装

7ヶ月 4 週間 ago

間接資材のECサイト「モノタロウ」を運営するMonotaROは4月17日、注文時に商品の配達予定日がわかる「お届け日表示」機能を導入する。

「お届け日表示」は注文内容確認画面に配達単位ごとにお届け予定日を表示。表示はPCサイトのみとなり、スマートフォンのブラウザ版やスマホアプリでは表示されない。

モノタロウ、当日出荷対象商品の届け日をECサイトで表示する「お届け日表示」機能を実装
「お届け日表示」はPCサイト版の注文内容確認画面で表示される

対象商品は大型商品など一部商品を除く当日出荷対象商品の約60万点超。対象サイトはECサイト「モノタロウ」と大企業向け間接資材(MRO)集中購買サービス「ONE SOURCE Lite」。大企業向け購買管理システムにてカタログ連携(パンチアウト)の利用顧客は対象外。サービス対象となる配送方法はヤマト運輸の「宅急便」「EAZY(イージー)」による配達。「ネコポス」は対象外となる。

MonotaROは配達分野のサービス強化を進めており、2025年に入ってからは当日出荷対象商品の注文締め切り時間を15時から17時に延長する配達対象地域を拡大している。今回の「お届け日表示」機能追加もサービス強化の一環。

鳥栖 剛

リアルな越境EC市場が学べる3日間。現地カンファレンス+視察のツアーパック[6/3-6/5開催]

7ヶ月 4 週間 ago

一般社団法人日本オムニチャネル協会と一般社団法人リテールAI研究会は、シンガポールのマリーナベイサンズで開催されるアジアパシフィック地域最大の小売カンファレンス「NRF 2024: Retail'sBig Show Asia Pacific(NRF-APAC)」、懇親パーティー、現地の小売りを視察するツアーを6月3日(火)から5日(木)までの3日間で実施する。

▼日本オムニチャネル協会とリテールAIによる共催ツアーの詳細・問い合わせはこちら

6月3日(火)から5日(木)までの日程で越境ECの学びが深まるツアーを開催
6月3日(火)から5日(木)までの日程で越境ECの学びが深まるツアーを開催

「NRF」は小売業界のリーダーが集結し、業界が直面する課題と最新のテクノロジーサービスについて議論するカンファレンス。毎年1月に米国・ニューヨークで実施されている。

「NRF-APAC」は「NRF」のAPAC版で、2025年は2024年に続いてシンガポールで開催。シンガポール小売業協会が中心となり、オーストラリア、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、タイ各国の小売業協会が協力して開催する。日本からはリテールAI研究会と日本オムニチャネル協会の2団体が「Supporting Organisations(後援団体)」として参加する。

リテールAI研究会は、カンファレンス内で実施される「NRF Retail Expo〈展示会〉」にも出展。研究会の活動や会員企業との研究成果を発表する。

これを機に両団体はEC事業者向けのツアーを共催する。ツアーの概要は次の通り。

ツアーの概要

  • 日時:2024年6月11日(火)~13日(木) 
    • 予定スケジュール
      • 6/11 現地シンガポール集合~NRF会場視察
      • 6/12 NRF会場視察+特別セミナー+日本人参加者向けミートアップ(懇親会)
      • 6/13 「NRF-APAC」会場視察+現地リテール視察ほか。現地解散
  • 料金
    • 「Retailer」チケット(「NRF-APAC」会場で小売事業者の出展を視察):56万円(税別)
    • 「Non-Retailer」チケット(業界パートナー、コンサルタントなど小売以外の企業や業種の出展を同会場で視察):79万円(同)
  • ツアーに含む内容
    • 「NRF-APAC」参加チケット
    • 往復航空券(羽田~チャンギ エコノミー)
    • 宿泊費(2回の朝食含む)。※会場へアクセスしやすいエリアの現地3つ星以上のホテル(シングル)を予定
    • 日本人参加者Meetup(懇親会) 参加費
    • ツアー参加者専用のコミュニケーション、休憩スペース「Japan ROOM」(仮称)ブースの利用料
    • 現地小売り視察ツアー参加費
    • 現地空港からカンファレンス会場の往復移動費

上記以外の現地での移動交通費、飲食代などはツアー料金に含まない。

ツアーでは、フランス・パリに拠点を置くマーケティング会社Criteoの協力により、日本のリテール業界関係者とネットワークが築けるMeetupイベントも開催する。

また、シンガポール市街にて営業する日本や海外の小売店舗を日本語解説付きで視察するツアーにも参加できる。

問い合わせ・申し込みは、ツアー詳細の「問合せ先」から。

高野 真維

ECでの化粧品購入時、レビューを参考にしている人は8割超。このうち4割超は「毎回見る」【化粧品の買い方調査】

7ヶ月 4 週間 ago

eBay Japanが実施した「コスメの買い方とレビューに関する調査」によると、回答者の41.4%がECのレビューを「毎回見る」と答え、「見ることが多い」と回答した40.6%を含めると8割以上がレビューを参考にしていることがわかった。

調査対象は全国の20代〜30代の女性500人で、調査期間は2025年3月6日〜7日。

コスメやスキンケア用品の購入場所を聞いたところ、「ドラッグストア」が最多で87.6%、続いて「ECモール」が48.8%、「バラエティショップ」が30.2%だった。

コスメ・スキンケア用品を購入したことがある場所(複数回答)
コスメ・スキンケア用品を購入したことがある場所(複数回答)

そのうち「最もよく購入する場所」について、「ドラッグストア」「バラエティショップ」「デパート・百貨店」の回答者を「店舗派」、「ECモール」「ブランド直販のECサイト」「フリマアプリ」を「EC派」として集計すると、店舗派が72.6%、EC派が27.4%だった。

コスメ・スキンケア用品を最も購入することが多い場所
コスメ・スキンケア用品を最も購入することが多い場所

「ECモール」「ブランド直販のECサイト」でコスメ・スキンケア用品を購入したことがある回答者にECで買う理由を聞いたところ、最も多かったのは「価格が安いから」で48.1%、続いて「自宅で買えるのが楽だから」が45.9%、「レビューが参考になるから」が43.2%、「配送してもらえるから」が41.7%だった。

ECでコスメ・スキンケア用品を購入する理由(複数回答)
ECでコスメ・スキンケア用品を購入する理由(複数回答)

ECで販売しているコスメのレビューを見る頻度を聞いたところ、最も多かったのは「毎回見る」で41.4%。「見ることが多い」が40.6%。「見ないことが多い」が10.1%、「ほとんど見ない」が7.9%で続いた。

ECでコスメ・スキンケア用品を購入する時にレビューをどれくらい見るか
ECでコスメ・スキンケア用品を購入する時にレビューをどれくらい見るか

普段コスメやスキンケア用品を購入する際にどのようなレビューを参考にしたことがあるかを聞いたところ、最も多かったのは「ECモールのレビュー」で52.8%、続いて「SNS上で1つの商品をレビューした動画の投稿」が22.2%、「ブランド直販のECサイト上のレビュー」が22.0%だった。「レビューを参考にしたことはない」は35.8%だった。

コスメ・スキンケア用品を購入する時に参考にしたことがあるレビュー(複数回答)
コスメ・スキンケア用品を購入する時に参考にしたことがあるレビュー(複数回答)

レビューを見る理由は、「実際の使い心地を知りたいから」が最多の64.8%、続いて「品質を知りたいから」が64.5%、「他者の率直な感想を知りたいから」が52.6%だった。eBay Japanは「スキンケア用品は肌に直接使用するものの、購入前に試しにくいため、他者の感想を知るためにレビューを活用している人が多いと考えられる」と考察している。

レビューを見る理由(複数回答)
レビューを見る理由(複数回答)

レビューを見るとき、良い評価をしているレビューと、悪い評価をしているレビューのどちらを参考にするかを聞いたところ、回答はほぼ半々だった。「良い評価をしているレビュー」「どちらかというと良い評価をしているレビュー」は合わせて48%、「悪い評価をしているレビュー」「どちらかというと悪い評価をしているレビュー」は合わせて52%だった。

良い評価のレビューと悪い評価のレビューではどちらを参考にするか
良い評価のレビューと悪い評価のレビューではどちらを参考にするか

良い評価のレビューを重視する人の理由は「前向きな気持ちで購入したいから」「どんな商品にも良い所とそうでない所があると思うので、良い所が多いものを選びたいから」など。

悪い評価のレビュー重視派の理由は「良いレビューしかないと、それはそれで心配になる」「後ろ向きな意見も聞いた上で決めたい」「マイナス面を知っておいた方が安心する」などがあがった。

多数のレビューを要約したり比較したりする機能があったら使用したいかを聞いたところ、7割以上が「使用したい」または「どちらかというと使用したい」と回答している。

多数投稿されたレビューの要約や比較の機能を使用したいか
多数投稿されたレビューの要約や比較の機能を使用したいか

どのようなタイミングで知らなかったコスメやスキンケアブランドに出会うかを聞いたところ、最多は「ECモールで商品を見ているとき」で46.0%、続いて「ドラッグストアや百貨店のコスメ売り場にいるとき」が36.0%、「Instagramの投稿を見て」が30.2%だった。

知らなかったコスメやスキンケアブランドに出会うタイミング(複数回答)
知らなかったコスメやスキンケアブランドに出会うタイミング(複数回答)

ECモールのコスメ売り場全体に対して期待していることは、「質の良い商品が増えること」が最も多く44.8%、続いて「簡単に比較できること」が37.0%、「商品の数・種類が増えること」が35.6%だった。

ECモールのコスメ売り場に期待していること(複数回答)
ECモールのコスメ売り場に期待していること(複数回答)

生成AIの利用経験を聞いたところ、「使用したことはない」と回答した66.6%を全体から除くと、約35%が生成AIを使用したことがあることがわかった。

生成AIの利用有無
生成AIの利用有無

ECにおける生成AIの導入について意見を聞いたところ、前向きな意見と慎重な意見の両方が寄せられた。

生成AIの導入が「あるとより良い」人の理由は、「情報が多いと混乱するのでおすすめが知りたい」「自分にぴったりのアイテムを紹介してほしいから」「人気がある商品ほどレビューの数も多くなり、読みたいレビューが埋もれてしまうこともあるため、わかりやすくまとめてくれるとより見やすくなると思うから」など。

生成AIの導入は「不要だと思う」人の意見は、「AIの正確性が不安だから」「微妙な言い回しなどが正確にくみ取られるか不安だから」などがあがった。

調査概要

  • 調査期間:2025年3月6日~7日
  • 調査対象:全国の20代~30代女性500人
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査会社:ネオマーケティング
大嶋 喜子

ファンがファンを呼ぶECサイト「タマチャンショップ」はなぜ愛され続けるのか。リピート率7割を実現する施策とは

7ヶ月 4 週間 ago
「楽天SOY」8度受賞、「JAPAN EC大賞2024」総合大賞を受賞した宮崎発のECサイト「タマチャンショップ」。リピーター7割&会員数140万人を達成する秘訣を九南サービス代表の田中耕太郎氏に取材した

美容・健康に特化した「食」にまつわるオリジナル商品を販売する、宮崎発のECサイト「タマチャンショップ」。しいたけ農家が自社の「しいたけ」を販売する目的で2003年に立ち上げたECサイトだったが、今では約140万人の会員を持つ人気ブランドに。「楽天市場」で8度の「ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)」を受賞したほか、一般社団法人日本通販CRM協会が主催する「JAPAN EC大賞2024」では総合大賞を受賞。口コミを中心に支持を集め、リピーター率は約7割にのぼる。なぜ「タマチャンショップ」は愛され続けるのか。九南サービスの代表・田中耕太郎氏に聞いた。

「パーパス」を定義して、「ストーリー」を伝え続けた

「ニッポンのおかあちゃんになりたい」――そんなキャッチコピーを掲げ、美容・健康に特化した食品やドリンク、コスメなど「食」にまつわるオリジナル商品を販売する「タマチャンショップ」。今でこそ約140万人の会員を抱える繁盛店だが、「立ち上げ当初は順風満帆ではなかった」と田中氏は振り返る。

タマチャンショップを運営する九南サービスの代表 田中耕太郎氏
タマチャンショップを運営する九南サービスの代表 田中耕太郎氏(画像提供:九南サービス)

開業の目的は自社栽培の「しいたけ」を販売することで、それ以外に九州で採れた農作物を使った食品も扱っていました。「売り上げを伸ばすぞ」と息巻いて始めましたが、だんだんとつまらなくなってきて……。競合もまったく同じ商品を販売しているので安くなければ売れず、価格競争に疲弊してしまったんです。(田中氏)

他社から商品を仕入れ、競合よりも安く売るビジネスモデルに限界を感じた田中氏は、方向転換を決意。まずは、自社の「パーパス(存在意義)」を定義して、ECサイト内にコンセプトページを立ち上げた。

「タマチャン」というネーミングは、田中氏の母親の名前が由来になっている
「タマチャン」というネーミングは、田中氏の母親の名前が由来になっている(画像提供:九南サービス)

ECサイトは、とにかく「売りたい気持ち」が先行しがちです。そうではなく、おいしい食品を通じて美容と健康に貢献したいという「『タマチャンショップ』を通じて実現したいこと」を丁寧に伝えていきました。コンセプトページをはじめ、商品ページ、商品への同梱チラシ、メールマガジン、SNSなどで自社のメッセージを発信し続けました。(田中氏)

その際に徹底したのが「世界観の統一」だ。デザインやテキストの基準を明確化し、トンマナを統一。顧客の目に触れるものは基準に沿って制作することで、自社のビジョンがブレないように配慮した。そうしたブランディング施策を始めてから4~5年が経過し、ようやく「タマチャンショップ」の文化が形成されてきたという。

同時並行でオリジナル商品の開発にも着手。徐々にオリジナル商品の割合を増やしていき、2010年頃からは完全シフトした。現在は16の自社ブランドを抱えるまでに拡大している。

美容・健康に特化したオリジナル製品を扱う「タマチャンショップ」。約140万人の会員を抱える人気ECサイトだ
美容・健康に特化したオリジナル製品を扱う「タマチャンショップ」。約140万人の会員を抱える人気ECサイトだ(画像提供:九南サービス)

商品開発の基準は、「友達に薦めたくなるか」

「タマチャンショップ」では、ナッツやドライフルーツ、ドリンクパウダーや健康食品など多彩な商品を扱う。「オリジナル商品を、どう生み出しているのか」とたずねると、田中氏からは意外な回答が返ってきた。

これまでは市場調査などをまったく行わず、「自身の感覚」を最も重要視してきました。自分が心からほしいモノ、既存商品では解決できない課題などが商品開発のきっかけです。「熱量高く友達に薦めたくなるような感覚」を大事にしています。(田中氏)

たとえば、5000万食を突破した人気シリーズ「タンパクオトメ」は、まさにそうした視点から生まれた商品だ。動物性+植物性プロテインと25種以上の美容成分を配合した“美容専門”プロテインで、15種類以上の味のバリエーションを展開。リピートする愛用者も多い。

タマチャンショップ 九南サービス 豊富な美容成分を配合した女性向けのプロテイン「タンパクオトメ」
豊富な美容成分を配合した女性向けのプロテイン「タンパクオトメ」(画像提供:九南サービス)

女性専用のプロテインを大々的に訴求したのは、当社が初めてではないかなと。発売当初は「プロテインを飲むと太ってムキムキな体になる」というイメージがあり、それを払拭するために文化の啓蒙から始めました。ファッションイベント「ガールズアワード」と共同開発して、「健康的なダイエットや美容にはタンパク質が欠かせない」というメッセージを伝えていったところ、4~5年かけて支持が広がりました。(田中氏)

「三十雑穀」シリーズも、「タマチャンショップ」を代表する人気ブランド。以前は「21世紀雑穀米」として21種類の雑穀を使った商品だったが、「1食で30品目を食べられる」をコンセプトにリブランドし、さらなるヒットにつながった。

タマチャンショップ 九南サービス ライフスタイルに合わせて、さまざまな商品を選べる「三十雑穀」シリーズ
ライフスタイルに合わせて、さまざまな商品を選べる「三十雑穀」シリーズ(画像提供:九南サービス)

過去には「ご飯を食べると太る」とお米が敵対視されていた時代があったのですが、「ご飯1杯で30品目が食べられて健康的な食事になる」「ご飯を味方にしよう」と訴求して、人気獲得につながりました。現在は、レンジ調理で食べられる「三十雑穀パックごはん」や雑穀から作った味噌に出汁を加えた「三十雑穀スープ」など幅広く展開しています。(田中氏)

手軽にカルシウムを摂取できる「OH!オサカーナ」は、既存のお菓子をアップデートしてヒットにつなげた商品で、累計販売数は600万袋を超える。昔からある「アーモンド小魚」をヒントに「どうしたらもっと日常的に食べてもらえるか」と思考を凝らし、さまざまな食品やフレーバーと組み合わせた。現在は約20種類を展開する。

タマチャンショップ 九南サービス おなじみのお菓子をアップデートさせてヒットした「OH!オサカーナ」
おなじみのお菓子をアップデートさせてヒットした「OH!オサカーナ」(画像提供:九南サービス)

「OH!オサカーナ」は、お子さんと一緒に家族で食べられるおやつとして高い支持を得ています。昔からあるお菓子ですが、栄養素が高くておいしいのに注目されていないことに着目し、新しい洋服を着せる感覚でアップデートしました。良い先行事例になったと思います。(田中氏)

ファンの「熱狂」を生み出す「リアル店舗」と「コミュニティ」

ECサイトとして一定の成功を収めた後、「タマチャンショップ」はリアル店舗にも進出。宮崎県都城市の本店、福岡や大阪など7店舗を運営する(2025年4月時点。2店舗が直営、5店舗がフランチャイズ)。リアル店舗を開業したのは、「オンラインの弱みを埋めるため」だという。

タマチャンショップ 九南サービス リアル店舗では、「体験」や接客による「おもてなし」を重視している
リアル店舗では、「体験」や接客による「おもてなし」を重視している(画像提供:九南サービス)

オムニチャネル戦略を掲げていて、オンラインのデメリットとなる「体験」や「おもてなし」をリアル店舗で強化しています。自社製品を使ったメニューを提供する飲食店を併設する店舗もあり、当社のビジョンや商品への理解を深めています。お客さまの熱量はオフラインのほうが圧倒的に高く、SNSを通じた口コミも広がりやすい。「ファン作り」においてリアル店舗は欠かせない存在です。(田中氏)

宮崎から始まり関西にも進出しているが、関東には店舗を持たない。「東京は1つのゴールと設定していて、出店の際は全力を尽くしたい。現状は土地探しをしている段階」と田中氏は説明した。

タマチャンショップ 九南サービス コミュニティサイト「タマリバ」では、ファン同士の交流が盛んだ
コミュニティサイト「タマリバ」では、ファン同士の交流が盛んだ(画像提供:九南サービス)

2023年にはファンとのつながりを強化する場として、コミュニティサイト「タマリバ」を開設。「タマチャンショップ」のビジョンに深く共感するファンが集うコミュニティで、約5000名が在籍している(2025年4月現在)。

コミュニティでは、商品を使ったレシピを投稿したり、ファン同士が交流したり、スタッフへの意見や質問を受け付けたりしている。会員と一緒に新商品の開発を行うこともあるという。サイトでは日々多くの投稿がされるなど、活発に利用されている印象だ。

開設から約2年で、投稿数は1万件以上にのぼります。“村”のような雰囲気にしたいと考え、立ち上げの1年間はクローズドで運営してきました。コアなファンの方が集まっていて、お客さま同士が商品を紹介し合う理想的な状況です。(田中氏)

オンラインとオフラインを融合させ、顧客とより近い位置で、頻度高く交流することで、ファンの熱狂を生み出しているのだ。

課題は「時代の変化」にどう対応していくか

美容や健康に高い関心を持つ30~40代の女性を中心に、多くの会員を抱える人気ブランドとなった「タマチャンショップ」。多数の受賞歴を持つが、どのような点が評価されているのか。

受賞の明確な理由はわかりません。数字だけでいうと、2024年は絶好調ではありませんでしたし。おそらく、地道なストーリーの発信やきめ細やかな接客、妥協のない商品開発なども加味して評価をいただいているのだろうと思います。(田中氏)

タマチャンショップ 九南サービス 成功事例だけでなく、悩みも赤裸々に顧客に伝えているという
成功事例だけでなく、悩みも赤裸々に顧客に伝えているという(画像提供:九南サービス)

そんな「タマチャンショップ」のこれからの課題は、「時代の変化にどう対応していくか」だと田中氏。

物価高の影響に伴い、消費者の感情の変化が見られます。「これを買うことで、どんな自分になれるのか」を熟考する「意味消費」のような時代になっていて、納得してもらうためのハードルが非常に上がっています。ファンになっていただくには、1つの型にはめた伝え方ではなく、1対1の接客が求められます。(田中氏)

とはいえ、実際に1対1の接客を全員にするのは不可能だ。そこで、AIなどの技術を駆使して、それぞれの顧客に向けて“パーソナライズ化したメッセージ”を届けることを考えている。そのための人材育成やリソースの確保が課題になるという。

タマチャンショップ 九南サービス ライフスタイルの多様化に伴い、ニーズに沿う新商品も随時開発中
ライフスタイルの多様化に伴い、ニーズに沿う新商品も随時開発中だ(画像提供:九南サービス)

ライフスタイルの多様化に伴い、商品開発にもさらなる工夫が必要になる。現在、「タンパクオトメ」は「飲む」から「食べる」へのアップデートを検討、さらにウェルビーイングにつながるような「夜専用プロテイン」の開発にも取りかかっているそうだ。

日本食が海外でも高く評価されていることを踏まえ、海外展開にも注力する。すでに海外企業との取引が増えているが、海外売上比率は5%未満にとどまる。今後5年以内に国内と国外の売上比率を5:5にすることを目標にしているという。

等身大の思いを伝えながら、顧客の声にも耳を傾け、絶え間なく進化し続ける。それが「タマチャンショップ」が愛され続ける理由なのだろう。

小林 香織

「最強翌日配送」の手応えは?2025年の成長戦略は?「楽天市場」の展望を松村常務執行役員が語る | 通販新聞ダイジェスト

7ヶ月 4 週間 ago
「楽天市場」「楽天カード」を両軸に成長してきた楽天経済圏。現在は「楽天モバイル」との三位一体で顧客育成を図っている

楽天グループの2024年12月期における国内EC流通総額は前期比でマイナスとなったものの、仮想モール「楽天市場」の流通総額は、プラス成長だった。前期は「最強翌日配送」を導入するなど配送関連の機能を強化。2025年12月期はAI(人工知能)の活用を進めることでさらなる流通額増につなげる。松村亮常務執行役員コマース&マーケティングカンパニーシニアヴァイスプレジデントに取り組みを聞いた。

楽天グループ 松村亮氏
楽天グループ 松村亮氏

物価高騰のなか、顧客体験を強化

――近年は、さまざまな原材料費や物流費などのコストアップが続いており、それによるインフレが起こっている。楽天市場出店店舗への影響は。

消費者目線でいうと、生活必需品の値上がりが続くなか、し好品については買い控えが起きているのは確かだ。ただ、価格自体が上がっているので、EC企業や楽天市場の売上高・流通額という点でみれば、ポジティブなところもある。つまり、インフレは楽天市場の出店者にとって必ずしもネガティブとはいえないわけで、インフレ自体が店舗の成長を妨げる要因になっているわけではない

とはいえ、原材料費や物流費が上がるなかで、販売する商品の価格にきちんと転嫁していかないと、継続的に事業が続けられなくなってしまうのは事実。楽天市場では、店舗の売上成長を後押ししていくために、マーケティング施策、売り場、物流、店舗コミュニケーションなど、さまざまな観点の取り組みを通じて、顧客体験のさらなる強化を図っている

また、適正な価格を維持するという観点でいえば、出店向け価格と在庫の最適化プラットフォーム「Price and Inventory Optimization Platform(PIOP)」の利用店舗も増加している。

注力点は「モバイルとの連携」「顧客体験の進化」「AI活用」

――どんなことに注力しているか。

楽天モバイルとの連携ジャンル別の顧客体験のさらなる進化AIの活用だ。たとえば、昨年から「楽天スーパーセール」をスケールアップし、楽天モバイル契約者に向けた先行セールを開始した。その結果、昨年10~12月の大型セールイベントの流通規模は、前年同期比14.5%増と伸長している。

AI活用については、昨年3月に「RMS AIアシスタントβ版」を提供開始し、店舗運営の業務効率化を推進している。現在4万以上の店舗が利用したことがあり、定着が広がるなかで、すでにAI活用による店舗運営の作業効率や広告効率の向上といった事例も出てきている

「RMS AIアシスタントβ版」の店舗利用状況と満足度(画像は楽天グループのIR資料から追加)
「RMS AIアシスタントβ版」の店舗利用状況と満足度(画像は楽天グループのIR資料から追加)

より多くの店舗にAIを日常的に活用してもらえるよう、オンライン講座「楽天AI大学」を中心に、ノウハウや成功事例を共有し、使ってもらうための支援を行っていきたい。

さらに、ECコンサルタントによるコンサルティングにおいてもAIを全面活用し、サポート体制をより一層強化・拡充することで、店舗の成長を後押ししていく。

楽天グループによるAI活用は実績につながっている(画像は楽天グループのIR資料から追加)
楽天グループによるAI活用は実績につながっている(画像は楽天グループのIR資料から追加)

「市場」「カード」「モバイル」の三位一体で顧客育成

――2025年の楽天市場に関して。

進むべき方向性そのものはここ数年と変わらない。「経済圏」と一言でいっても、大きいサービスもあれば限定的なサービスもあるわけだが、「楽天経済圏」は楽天グループ全体で展開しているのが大きな特徴だ。

そんななか、楽天市場楽天カードが両輪となって成長してきた。現在は楽天モバイルも加わり、三位一体となってコアユーザーを育てる形となっている。楽天市場としても、カードユーザーとモバイルユーザーをテコとして、成長につなげていくというのが大前提となる。

楽天市場、楽天カード(フィンテック)、楽天モバイルの3軸で成長を図っている(画像は楽天グループのIR資料から追加)
楽天市場、楽天カード(フィンテック)、楽天モバイルの3軸で成長を図っている(画像は楽天グループのIR資料から追加)

「モバイル」と「カード」併用顧客は購入金額アップ

実際、楽天モバイルと楽天カードを両方契約している顧客における、昨年12月に開催された楽天スーパーセール購入金額は、71.9%増加。楽天モバイル単体は30.1%、楽天カード単体は18.3%の増加だったのに対し、両サービス利用による顧客育成効果は非常に高くなっている。

もちろん、セール時以外でも同様の傾向が出ている。楽天モバイル契約数は2月末現在で850万回線を超えた。回線数が1000万、1500万と増えていけば、ある意味自動的に楽天市場の流通額も伸びていくわけで、そういった形をグループとしてめざしている。

――楽天モバイルは特に若年層の利用者が増えている。

楽天市場においても、流通額に占める楽天モバイルユーザーの世代別シェアをみると、特に10~30代の押し上げが相対的に大きい構成となっており、楽天市場の顧客基盤拡大にも貢献している。

――セールイベントも引き続き好調だ。

楽天市場においては、定期的に開催される「買い回り」の大型セールの場合、店舗のパワーが結集されるので、流通としても大きくなる。

当社としても大きなリソースを投じて消費者をモールに連れてきて、店舗もMDを充実させたり、在庫を増やしたり、プロモーションを行ったり、といった形で買い回りが盛り上がるわけだが、最近はそれ以外の「仕掛け」にも注力している。

シーズナルイベントとしては、最近では「クリスマス特集」「お歳暮特集」が大きく盛り上がった。また、ファッション通販サイト「Rakuten Fashion」におけるセールイベントや、化粧品や家電などのナショナルブランドが参加する「Rakuten Brand Day」についても、流通拡大と集客に大きく寄与している。

魅力を伝える動画の配信で新規・復活ユーザー獲得

――顧客育成に関しては。

新規ユーザーやこれまで楽天市場の利用頻度が低かったユーザーにも、より使ってもらうための施策を展開している。

楽天市場の魅力をパッケージ化し、そういったユーザーに届けていこうという取り組みの一環として、昨年は「◯◯買うなら楽天市場」というメッセージを込めて、「出会える・選べる楽しさ」「楽天市場最大の資産である各店舗の想い」「ブランド公式店でのお買い物体験の提供」という3つの切り口で動画を作成、テレビCMやSNSなどで流しており、新規・復活ユーザー獲得という面で効果が出てきている

利便性アップに向け「楽天市場」をアップデート

――楽天市場の機能刷新について。

定期購入の仕組みを全面的に刷新し、より見つけやすく・出品しやすいサービスとする。3月末には定期購入を見つけやすいユーザーインターフェイスとし、さらに定期購入固定費を廃止商品出品を簡易化する(編注:記事は「通販新聞」3月20日配信時点)。

これにより、ユーザーにも店舗にも使いやすい仕組みをめざす。定期購入にフィットする商材を扱っている店舗を中心に活用してもらい、次の成長の柱としたい考えだ。

もう一つの目玉がギフト機能の改善。現在あるギフト機能の利便性に関しては改善の余地がある。昨今、ソーシャルギフトは非常に盛り上がっていることも背景に、ギフト機能を定期購入の次の目玉プロジェクトとして全面刷新する。

既存のギフト機能については、検索性やユーザーエクスペリエンスを改善するとともに、住所を知らない相手に対して気軽にギフトを贈れるよう、ソーシャルギフト機能を新規導入する。

AI活用でも利便性・満足度アップに寄与

――AIの活用も進める。

ユーザーと商品との出会いにおける体験価値を、AIを活用して高めていきたい。たとえば、商品レビューのAI要約や、トピックに絞ったレビューの表示を1月より順次拡大している。また、検索機能にパーソナライズド技術やLLM(大規模言語モデル)などを活用することで、よりユーザーニーズにあった検索の実現をめざす。

今年下期には、個人のし好、時間、季節、地域などに応じて異なる検索結果が表示できるようになる予定だ。さらには、ユーザーごとに最適なコンテンツを表示するなど、個々のユーザーニーズに合わせた商品との出会いの創出を図る

――地域や男女で検索結果が変わると、楽天市場内SEOなどが従来と変わってくるのでは。

検索結果という観点でいうと「ユーザーが買ってくれるであろう商品」を、より上に掲載していきたいという趣旨なので、店舗からしても「買ってもらえそうな商品」を出品すれば、それがおのずと検索の上に行くという形ではないか。

今までとは異なる工夫が必要になるかもしれないが、欲しいものが見つかる検索を強化することでユーザー利便性や満足度の向上につながると考えている。

「最強翌日配送」の現在

ラベル獲得商品が売上成長率をけん引

――昨年7月には「最強翌日配送」を導入した。効果は。

ラベル獲得商品の売上成長率は、ラベル未獲得商品に比べて18.6ポイント高くなっており、楽天市場の売上成長をけん引している。こうしたデータを元に、より多くの店舗にラベル獲得を促していきたいと考えている。

「Rakuten 最強配送」の特長(画像は「楽天市場」から追加)
「Rakuten 最強配送」の特長(画像は「楽天市場」から追加)

また、これまで制度の対象外となっていた、ふるさと納税の返礼品についても、早く受け取りたいというユーザーニーズが一定あることから、制度の対象範囲をふるさと納税の自治体や事業者へも拡大した。

――ラベル獲得商品の検索優遇について、店舗からは「まだ実装されていないのでは」との声もある。

開始当初より段階的に行っている。ユーザーが商品を検索した際に、配送品質の高い最強翌日配送ラベル付き商品を見つけやすることが趣旨となるが、あくまで検索順位決定の要素のひとつ

ラベル付き商品だけが優遇されるのではなく、配送品質の高い商品はユーザーからの支持が高まり、売り上げが増え、さらに検索ページの上位に表示されるという流れが結果的に生まれると想定している。

継続的にA/Bテストを繰り返している段階であり、効果を感じている店舗もあれば、まだこれからという店舗もあるとは思うが、テストをしながら一番良い状態をめざしていく。

「市場」「トラベル」の流通総額は堅調な推移

――2024年12月期の国内EC流通総額は前期比1.5%減だった。

2023年12月のSPU改変や2023年7月に一部終了した「楽天トラベル」の全国旅行支援による高い前年比ハードル、同年9月より楽天ペイメント(オンライン決済)事業をフィンテックセグメントに移管したことなどが影響しマイナス成長とはなったものの、楽天市場と楽天トラベルの流通総額については前年比プラスとなった。

楽天市場においては、楽天モバイルとの連携強化やジャンル別の顧客体験のさらなる進化などの施策が奏功し、大型セールイベントの流通規模において第4四半期の流通総額は前年同期比14.5%増と伸長したほか、新規・復活ユーザーも同10%以上の増加するなど、堅調に推移している。2025年12月期も引き続き大きな伸長が期待できるだろう。

楽天グループにおける「インターネットサービスセグメント」の2024年12月期の実績(画像は楽天グループのIR資料から追加)
楽天グループにおける「インターネットサービスセグメント」の2024年12月期の実績(画像は楽天グループのIR資料から追加)

SPU改変も顧客数・購入頻度は維持頻度は維持

――SPU改変の影響は。

ロイヤルユーザーに手厚く付与していたポイントを減らし、ライトユーザーや新規ユーザーの育成に回すことで、楽天市場として健全に成長していこう、という狙いがあった。

結果としては、これまで購入していたユーザーの数が継続的に伸びている。もちろん、一部のロイヤルユーザーについては、貰えるポイントが減ったことで毎月の購入額は減っている。ただ、その一方で楽天市場では引き続き買い物をしてくれており、その頻度も変わっていない

もし、SPU改変で「楽天市場で購入するのをやめた」となればネガティブな影響が出たことになるが、顧客数や買い物頻度は維持しているので、今年以降は成長軌道に乗っていけると思っており、実際に1月以降はそのように進んでいる

ふるさと納税は楽天配送網との連携を推進

――アマゾンがふるさと納税ポータルサイト事業に参入した。影響は。

「楽天ふるさと納税」は年明けも好調なので、現段階で他社サービスがどうこうということは考えていない。ただ、配送がより重要になることは理解している。楽天スーパーロジスティクスも含めて、楽天の配送網にふるさと納税の返礼品をどれだけ乗せられるのか、各自治体と話しながら進めているところだ。

※記事内容は紙面掲載時の情報です。
※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
※見出しはネットショップ担当者フォーラム編集部が編集している場合もあります。

「通販新聞」について

「通販新聞」は、通信販売・ネット通販業界に関連する宅配(オフィス配)をメインとしたニュース情報紙です。物品からサービス商品全般にわたる通販実施企業の最新動向をもとに、各社のマーチャンダイジング、媒体戦略、フルフィルメント動向など、成長を続ける通販・EC業界の情報をわかりやすく伝え、ビジネスのヒントを提供しています。

このコーナーでは、通販新聞編集部の協力により、毎週発行している「通販新聞」からピックアップした通販・ECのニュースや記事などをお届けしていきます。

→ 年間購読を申し込む(通販新聞のサイト)
通販新聞の過去記事を読む(通販新聞のサイト)
→ 通販新聞についてもっと詳しく知りたい

通販新聞

ブランドオフ、オランダ本社のオンラインマーケットプレイスに出品で欧州市場を開拓

7ヶ月 4 週間 ago

コメ兵ホールディングスグループの傘下で、中古ブランド品のバッグや時計などの小売・買取・卸売事業を展開するK-ブランドオフは4月14日、オランダ企業のCatawiki B.V.が運営するオンラインオークションサイト「Catawiki(カタウィキ)」に出店すると発表した。欧州の新規顧客層の獲得、ブランド認知度アップを狙う。

「Catawiki」は毎月1000万人以上が訪問するECプラットフォームで、K-ブランドオフは自社が成長するための戦略的なプラットフォームと捉えている。欧州市場でヴィンテージアイテムへの需要が高まっており、K-ブランドオフの取り扱い商品との親和性が高い。出店を皮切りに、他の販路や実店舗への集客効果も見込む。

K-ブランドオフはこれまで、欧米市場へは越境EC事業を展開してきたが、欧州におけるブランド認知度や顧客基盤はまだ十分に広がっていなかった。これまでの越境EC、海外各拠点で培ったノウハウを基盤を「Catawiki」出店店舗に活用する。

Catawiki B.V.の執行役員であり、ラグジュアリー部門を統括するJan van Diermen(ヤン・ヴァン・ディエルメン)氏は、ブランドオフの出店に関して次のようにコメントを発表している。

「Catawiki」を通じて、欧州全体にわたる購買意欲の高い「Catawiki」ユーザーへの展開だけに止まらず、K-ブランドオフの国際的な成長に必要な専門知識や市場に関する情報を積極的に提供していきたい。

「Catawiki」では毎週100万件以上の入札があり、10万点以上のアイテムをオークションにかけているという。

大嶋 喜子

ニューバランス、ECサイトで学生・教職員向けプログラムを導入。対象者は10%割引+送料無料

7ヶ月 4 週間 ago

ニューバランスジャパンは自社ECサイト「ニューバランス公式オンラインストア」で、学生と教職員をサポートする「学生・教職員割引プログラム」を導入した。学生や教職員が同プログラムを利用して買い物をする際、対象商品を10%割引かつ送料無料とする。

「学生・教職員割引プログラム」を自社ECサイトに導入した
「学生・教職員割引プログラム」を自社ECサイトに導入した

対象は16歳以上の日本国内の高校、短大、大学、大学院の学生と、短大、大学、大学院の教職員。高校教職員は除く。

対象商品を10%割引かつ送料無料で提供する
対象商品を10%割引かつ送料無料で提供する

同プログラムをユーザーが利用する際の流れは次の通り。

  1. 専用サイトから認証フォームへ情報を入力
  2. 認証完了後にクーポンコードを取得
  3. 購入時、ショッピングカート内のクーポン入力欄にクーポンコードを入力

ユーザーによる認証は申請時から毎年3月31日23:59まで有効とし、新年度(4月1日 0:00)に情報をリセットする。同プログラムの対象者は新年度に再度申請することもできる。

申請は米国SheerIDのサイト内となる。SheerIDは、認証プロセスを通じて割引の対象となる顧客を確認するためにニューバランスジャパンが提携している第三者サービスを提供する事業者。

クーポンコードの使用回数は5回まで、1回の注文につき上限は税込7万円。

大嶋 喜子

トランプ関税で越境ECに与える影響は? 「日本商品を輸入するよりも米国内で同様の商品を購入する選択肢が増えることが懸念」

7ヶ月 4 週間 ago

越境EC支援のワサビは、米国のドナルド・トランプ大統領が発表した新たな相互関税に関する事業者の意見やアンケート結果を公表した。

調査対象はワサビが提供しているEC一元管理システム「WASABI SWITCH」を利用している13社。調査期間は2025年4月3日から4月8日。

相互関税が導入された場合の感想について、海外販売(越境EC)を展開している事業者からは、次のような声があがった。

  • 価格調整やお客さまへの説明が必要となり手間が増える
  • 関税支払い拒否が増えることが懸念される
  • 将来のビジネス環境に不安を感じる
  • 現状を見守るしかない
  • ピンチをチャンスと捉え、次の戦略を考える

相互関税とは、貿易相手国が特定品目に課している関税率が、自国で同じ品目に課す関税率よりも高い場合、その不均衡を是正するために相手国と同等の関税率を課す仕組み。トランプ米大統領は4月2日、日本からアメリカへの輸出品に対して約24%の相互関税を適用すると発表した。

海外販売における関税とは、輸入品に課される税金であり、主に国内産業を保護する目的で導入されている。日本から海外へ商品を輸出する場合、一般的に関税は商品を購入したバイヤーが支払う。

そのため、商品を購入するバイヤーは、日本から商品を購入し配送業者へ関税を支払う際に、従来よりも高い関税が課されるケースが増える可能性がある。その結果、日本の商品を輸入するよりもアメリカ国内で同様の商品を購入する選択肢が増えることが懸念される。

トランプ関税で越境ECに与える影響は? 「日本商品を輸入するよりも米国内で同様の商品を購入する選択肢が増えることが懸念」
関税の仕組み

こうした状況下で日本のEC販売業者がアメリカのEC事業者と競争するには、商品の差別化やオリジナリティの強化がこれまで以上に重要になると予測される。

相互関税がスタートした場合、EC事業者は対応策を次のようにあげている。

  • アメリカ以外の市場にチャレンジしていく
  • 現在はそのまま運営を続けるが、売れる越境ECの比重を変更していく
  • 製品の原産国や輸出入時の分類によって異なるため、今後の動向を注視していく
  • 特に変える予定はない

現在、日本から輸出される800ドル以下の商品についてはデミニミスルールが適用されているため、関税支払いが免除されている。一方で、トランプ大統領の中国へのデミニミスルール停止措置に関する大統領令に署名。米東部時間5月2日午前0時01分からデミニミスルールは適用されなくなる。事業者は市場情報をいち早く収集し、柔軟な対策を講じる必要がある。

宮本和弥

「ファミマオンライン」にクラダシが出品、フードロス削減を軸に訴求

8ヶ月 ago

フードロス削減EC「Kuradashi」を手がけるクラダシは4月15日、ファミリーマートが運営するEC「ファミマオンライン」に出品する。

クラダシはフードロス削減をめざし、賞味期限が切迫した食品や季節商品、パッケージの汚れやキズ・自然災害による被害などが原因で、消費可能でありながら通常の流通ルートでの販売が困難な商品を買い取り、「Kuradashi」で販売している。

ファミリーマートもフードロス削減目標を掲げ、「エコ割」の実施や「てまえどり」の推奨など、長持ちする商品の開発、規格外の食材を使用した商品の開発などを展開している。

クラダシとファミリーマートはフードロス削減の取り組みに対して互いに賛同。最初の取り組みとしてファミリーマートが運営するEC「ファミマオンライン」にクラダシが商品の出品を開始する。

第1弾商品は4月、賞味期限が近づいてしまったり、パッケージの印字ミスや少しの傷などでまだ食べられるがフードロスとなってしまう商品を20点以上詰め合わせた「ロスおたすけセット」を税込3980円で販売する。自社ECサイト「Kuradashi」にて定期購入で提供しているセット商品をファミマオンライン限定で、1回から購入できるセットとして用意した。

売り上げの一部は「クラダシ基金」として、地方創生や食育の支援などに活用する。5月以降も「ロスおたすけセット」の継続販売や商品ラインナップの拡充を検討しているとしている。

鳥栖 剛

企業倒産件数が1万件超え。「人手不足」「物価高」が中小企業の経営を直撃【2024年度】

8ヶ月 ago

帝国データバンクが実施した企業倒産件数に関する調査によると、2024年度の倒産件数は前年度比13.4%増の1万70件となり、3年連続で前年度を上回った。主な倒産の理由は物価高で、人手不足、追加利上げといった状況も中小企業の経営を直撃していると見られる。調査対象の倒産は負債1000万円以上の法的整理が対象。

2024年4月-2025年3月の倒産動向
2024年4月-2025年3月の倒産動向

2024年度の倒産件数1万70件は、2013年度の1万102件以来、11年ぶりに1万件を超えた。負債5000万円未満の倒産が2000年度以降で最多になるなど、中小零細規模の倒産が増加した。

負債総額は前年度比7.5%減の2兆2525億7200万円。3年連続で2兆円を超えた。

倒産件数と負債総額の推移
倒産件数と負債総額の推移
年度別の倒産件数と負債総額
年度別の倒産件数と負債総額

倒産動向を見ると、「物価高倒産」は同10.5%増の925件。2000年からの集計開始後、初めて900件を超えて過去最多となった。業種別では「建設業」が254件(前年度比27.5%増)で最も多く、続いて「製造業」が180件(同19.5%増)、小売業が165件(同17.8%増)だった。

「物価高倒産」件数推移(左)、業種別内訳(右)
「物価高倒産」件数推移(左)、業種別内訳(右)

企業倒産を単月ベースで見ると、2025年3月は875件発生。517件だった2022年5月から35か月連続で前年同月を上回るなど、戦後最長の連続増加記録を更新している。この状況について帝国データバンクは、「小規模企業を中心に、物価高、賃上げ、人手不足、追加利上げ、価格転嫁難など、コスト増につながる懸念材料が山積するなか、企業倒産は緩やかに増加した」と解説している。

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、売り上げが大きく減少した中小企業に対し、実質無利子・無担保で融資した「ゼロゼロ融資」の返済が滞って引き起こされた倒産は680件(同2.7%減)。集計開始後、初めて前年度を下回った。この倒産は、業種別では「建設業」が最も多い143件(同21.0%増)で、続いて「サービス業」が131件(同19.3%増)、「小売業」(同17.8%増)が121件。「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資の喪失総額は推計で約1244億7400万円となった。

「ゼロゼロ融資後倒産」件数の推移(左)、業種別内訳(右)
「ゼロゼロ融資後倒産」件数の推移(左)、業種別内訳(右)

倒産件数は全業種で前年度を上回った。なかでも、「建設業」「製造業」「小売業」「運輸・通信業」「サービス業」「不動産業」の6業種は過去10年で最多。倒産件数が最も多かったのは「サービス業」で、前年度比20.6%増の2638件だった。続いて「小売業」が同12.5%増の2109件、「建設業」が同10.5%増の1932件だった。

「製造業」は7年ぶりに1000件を超えた。原材料価格の高騰が収益圧迫の要因となりやすいことから、製造業のなかでも「繊維工業、繊維製品製造業」の倒産が104件だったという。小売業では、物価高の影響を受けた「飲食店」の倒産が901件となっており、2000年度以降で最も多かった。

業種別の倒産件数と構成比
業種別の倒産件数と構成比

主因別に見ると、「販売不振」が8261件(同17.6%増)で最も多く、全体の82.0%(同2.9ポイント増)を占めた。49件(同11.4%増)の「売掛金回収難」と、16件(同6.7%増)の「不良債権の累積」などを含めた「不況型倒産」の合計は8389件(同17.2%増)。

「設備投資の失敗」は46件(同21.1%増)で、3年連続で前年度を上回った。

倒産主因別の件数と構成比
倒産主因別の件数と構成比

倒産態様別に見ると、破産と特別清算を合わせた「清算型」倒産の合計は9804件(同13.6%増)で全体の97.4%を占めた。民事再生法、会社更生法にのっとった倒産である「再生型」倒産は266件(同6.0%増)だった。

「清算型」の倒産で最も多かったのが「破産」で9435件(同13.2%増)。「特別清算」は369件(同24.2%増)で、2005年度の373件に次いで過去2番目に多かった。

「再生型」の倒産では、「会社更生法」が13件、「民事再生法」が253件だった。このうち個人が198件、法人が55件だった。

態様別の倒産件数と構成比
態様別の倒産件数と構成比

負債額を事業者の規模別に見ると、「5000万円未満」の倒産が6122件(同16.9%増)で、2000年度以降で最多となり、中小零細規模の倒産が目立った。「100億円以上」は9件(同52.6%減)と2000年度以降で初めて10件を下回った。

資本金を規模別に見ると、「個人+1000万円未満」の倒産が7153件(同16.0%増)で、全体の71.0%を占めた。

資本金規模別の倒産件数と構成比
資本金規模別の倒産件数と構成比

業歴別に見ると、「30年以上」が3210件(同13.2%増)で最も多く、全体の31.9%を占めており、2013年度(3101件)以来11年ぶりに3000件を上回った。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は152件(同42.1%増)。

業歴10年未満の「新興企業」は3106件(同15.0%増)と、2000年度以降で最多を記録した。内訳は、「3年未満」が385件(同7.2%増)、「5年未満」が714件(同13.2%増)、「10年未満」が2007件(同17.2%増)。

内訳を業種別に見ると、最多は「サービス業」で1035件(同22.9%増)、続いて「小売業」が779件(同18.9%増)、「建設業」が602件(同12.1%増)だった。

業歴別の倒産件数と構成比
業歴別の倒産件数と構成比
大嶋 喜子

フェリシモの連結売上は微減の294億円、主力の「定期便」は購入頻度・単価が向上

8ヶ月 ago

フェリシモの2025年2月期決算は、当期純損益が黒字転換した。神戸ポートタワーの運営など新たな事業領域の開発と育成に取り組むと同時に、収益性の強化を進め大幅な増益を達成した。

連結売上高は前期比0.5%減の294億4900万円。営業損益は7000万円の黒字(前期は9億3100万円の赤字)、経常損益は2億2700万円の黒字(前期は6億1200万円の赤字)、当期純損益は1億3600万円の黒字(前期は8億5800万円の赤字)となった。

主力の「定期便事業」売上高は同0.6%減の269億2300万円。「ファッション」ジャンルが前期を上回ったが、「生活雑貨」「手作りキット・レッスン」などのカテゴリーが減少となった。

フェリシモの連結売上は微減の294億円、主力の「定期便」は購入頻度・単価が向上
定期便のファッションジャンルは前期を上回った(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

フェリシモの「定期便事業」は、「顧客数」「購入単価」「購入頻度」を主要なKPIとして計測、評価している。2025年2月期について、延べ顧客数は減少したが、平均購入単価、顧客1人あたり購入頻度(回数)が増加した。

フェリシモの連結売上は微減の294億円、主力の「定期便」は購入頻度・単価が向上
のべ顧客数は減少したが、平均購入単価、顧客一人当り購入頻度(回数)が増加した(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

顧客数

社会貢献型プロジェクトや防災提案、新社会人向けメディアの立ち上げなど、新たな層へのアプローチを実施。下半期からは新たな顧客層の開拓、継続 顧客の定着率が改善するなどしたが、通期では延べ顧客数が前期比で4.4%減となった。

フェリシモの連結売上は微減の294億円、主力の「定期便」は購入頻度・単価が向上
顧客数は通期で前期比4.4%減に(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

購入単価

「ファッション」カテゴリーの主力ブランドの復調に加え、戦略商品の投入が奏功したことにより、平均購入単価は前期対比で3.7%増となった。

フェリシモの連結売上は微減の294億円、主力の「定期便」は購入頻度・単価が向上
購入単価は前期比3.7%増に(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

購入頻度

顧客1人あたりの購入頻度(回数)は前期対比で2.1%増。購入頻度の高い顧客の構成比が前期を上回り、顧客との継続的な関係育成の面で良い状態を保つことができたという。

フェリシモの連結売上は微減の294億円、主力の「定期便」は購入頻度・単価が向上
購入頻度も前期比で2.1%増となった(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

2026年2月期も大幅増益へ

2026年2月期については「顧客基盤の拡大」と「顧客との継続的な関係育成」を進め、神戸ポートタワー事業やリテールメディア事業など「第2の収益の柱の育成」をさらに加速させて増収・増益をめざす。

今期の売上高の見通しは前期比3.7%増の305億3100万円、営業利益は同94.1%増の1億3700万円、経常利益は同7.3%増の2億4300万円。当期純利益は同31.9%増の1億7900万円としている。

鳥栖 剛

花王が公式オンラインショプ「My Kao Mall」を含む計7サイトにハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」を導入

8ヶ月 ago

花王は、公式オンラインショプ「My Kao Mall」を含む花王グループの計7サイトにハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」を導入した。

人気のキーワードの掲出などを実装

花王は、「My Kao Mall」のほかに、花王グループが運営する公式オンラインショップ「est(エスト)」「KANEBO(カネボウ)」「LUNASOL(ルナソル)」「RMK(アールエムケー)」「SUQQU(スック)」「athletia(アスレティア)」に「ZETA HASHTAG」を導入した。

花王は既にEC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」、レコメンドエンジン「ZETA RECOMMEND」を導入している。「ZETA HASHTAG」の導入で、製品同士の連携によるシナジー効果を期待しているという。

花王 est
花王グループが運営する公式オンラインショップの1つ「est」(画像は「est」からキャプチャ)

「人気のキーワード」として、「My Kao Mall」でよく検索されているキーワードや最新のトレンドワードをTOPページに掲出する。ユーザーにサイト内の回遊を促し、新たな商品との出会いを創出につなげる。たとえば、「うるおい」「保湿」「医薬部外品」「透明感」「無香料」といったキーワードがよく検索されている場合やトレンドワードだったケースに、そのワードを「人気のキーワード」として掲出する。

花王 「人気のキーワード」を掲出し、セレンディピティな購買体験を創出につなげる
「人気のキーワード」を掲出し、セレンディピティな購買体験の創出につなげる

商品検索結果ページや商品詳細ページに関連キーワードを表示する。ユーザーがハッシュタグ経由で興味のあるページに直感的な操作で素早くアクセスできるようにすることで、サイト内の回遊率、UI向上につなげるという。

花王 ハッシュタグを軸とした直感的なアクションでUI向上につなげる
ハッシュタグを軸とした直感的なアクションでUI向上につなげる

「ZETA HASHTAG」とは

主にECサイトなどWebサイトのなかの説明文やカスタマーレビューのようなテキスト情報をAIで解析し、関連するキーワードを抽出してLP(ランディングページ)を自動生成するソリューション。ECサイトでは、商品の見た目の形状、使い方などに関連するテキストタグを活用して商品検索ができる。

ZETA HASHTAG 特許取得
「ZETA HASHATAG」について(画像は「ZETA CX」サイトからキャプチャ)
藤田遥

「EC業界は20年以上経ったから成長しにくい」なんてもう言わない! 売上・利益・幸福度を上げるために今やるべきこと | 新・ネットショップ担当者が知っておくべきニュースのまとめ

8ヶ月 ago
ネットショップ担当者が読んでおくべき2025年3月15日~4月11日のニュース

「#今日も骨になるまで働きましょう」と、ドラマ「社畜人ヤブー」のごとく今日もバリバリ働く皆さまこんにちは! 個人的には嫌いな人種ではないのですが、人とのギャップに心が折れてしまうことが多いですよね。さて、今の業務は適切でしょうか? 最近いつ、業務やモールの取捨選択、今力を入れるべき場所はどこなのかなどを熟考したでしょうか? 「昔からこのやり方だから」と言って、同じことをずっとやり続けてはいないでしょうか? 技術も進歩しているし、世代も時代も大きく変化しているので、それらを適切かどうか判断することが大切です。これ、私も苦手な業務でした。非常にめんどうくさいですよね! ただ、めんどうくさいことだから”重要”です!

「自分たちが幸せになれる形」をめざして、「力配分の見直し」を行う

EC成熟期で重要なことは「力配分の見直し」。伸びしろを探せば、まだまだ成長できる! | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/13648

ですから、必要以上に膨れたEC事業のカオス度合いを減らしてシンプルにし、伸びていく成長分野に投資をしていく。自分たちが幸せに商売できる規模を意識しつつ、事業を育てていく。いわゆる「力配分の見直し」が大切なのではないかと私は考えています。

数年前までECを運営していた者として、非常に共感が持てます。負荷をかけすぎて組織が崩壊する、過去の「なんとなく」の感覚で「できる・できない」を判断する、「昔はこうだった」という話をしてしまう組織や会社ってよく聞く話ですね。今の時代や今の売上規模に合う形にするために、しっかり断捨離することも重要です。

特に「いいなぁ」と思ったことは、「自分たちが幸せになれる形」。これがすごく重要だと思っています。「何の為に売り上げを伸ばしているのか」――これは会社や組織のミッションにもよります。けれど、売り上げを伸ばすためにお互いが不幸になる選択肢を選んでいないでしょうか? 成長過程において成長痛は大事ですが、不必要な負荷がかからないようにするためにも「力配分の見直し」は重要ですね。

自分たちにとっての当たり前だけで「やりつくした」「規模を広げるしかない」と判断するのは、もったいないことかもしれません。

私が規模の拡大よりも力配分にフォーカスしている理由は、伸びしろを埋もれさせているお店があまりに多いと感じているからなのです。

「成熟期」という言い方もありますが、「『成熟期』だと思うから『やりつくした』『規模を広げるしかない』と判断してしまう」と個人的には考えています。15年ほどECに携わっている人間として、「2000年前後から始めたEC事業者が、売り上げが伸びない時に使いたくなる言い訳」だと自分に言い聞かせています。

前回の記事でも書きましたが、業務の整理もこれに値すると思っています。力分配をしっかり行うために、きちんと業務や作業の分析をする。先月の繰り返しになりますが、自分たちを知ることは非常に重要だと思っています。

「マンダラ図」に沿って事業を俯瞰(ふかん)し、不調の根本原因や伸びしろを特定して改善していくと、無理なく自然な形で事業を次のステージに進める取っかかりが見えてくるのです。

これが前半でお伝えした、「大規模な拡大」をがむしゃらに求めるのではなく、注力すべき成長分野に絞り込み「自分たちが幸せに商売できる規模での成長」をめざすことの本筋です。

「マンダラ図」を見て最初に思ったことは、「楽天市場」の「売上アップのサイクル」でした。「売上アップのサイクル」とは、「楽天市場」内で売り上げをアップさせるための重要な考え方ですが、「色々な物事はすべてつながっている」ということ。こういった仕組みをしっかり理解するだけでも、物事が良い方向に進むと思っています。

「ヒト・モノ・カネ」もそうですよね。成長したとしても、現場に負荷がかかり過ぎていたらそのうち崩壊してしまいます。今の組織ではどこまで行うのが適切か、会社や組織の成長、売上拡大――これらのバランスをとりながら、しっかり運用していただければと思います。

また、現場は今の売り上げを伸ばすための施策、未来の売り上げを伸ばすための投資をしっかりと見極めた上で断捨離やシステム化を行い、「今のチームでどこまで行けるか」を把握することが重要ですね。

そうすることで「自分たちが幸せに商売できる規模での成長」をめざすことができるのではないかと思っています。勿論、負荷がゼロになると組織自体の戦力が下がってしまうと思うので、その辺りはバランスよく。

要チェック記事

これからの楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングで売れるには より上流のマーケティングが鍵 | ECzine
https://eczine.jp/article/detail/16479

「楽天市場」「amazon.co.jp」「Yahoo!ショッピング」と、3社のざっくりした2025年の動き。各モール共に運営している人も多いはず。各社の挙動や変化にしっかり対応していきたいですね。

【ECの未来】ECと実店舗の相乗効果を生む成功の切り口とは?鶏肉専門店のネットとリアルの活用法! | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/63936

「オリジナルだから何でもできる」と思いがちですが、動画や記事内にある「楽しんでもらう」という部分が非常に重要な気がします。「お客さまに楽しんでもらう」という考え方を大切に。

「モノが届かなくなる」はずだったのに…?物流2024年問題 | NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250407/k10014770561000.html

変化があったけれども、まだまだ大変な物流問題。EC事業者として・ビジネスとして色々あるとは思いますが、感謝を忘れないようにしないといけませんね。

Amazon 、プライムデーを史上最長の4日間に。夏セールの主役に返り咲けるか | DIGIDAY
https://digiday.jp/modern-retail/amazon-is-making-prime-day-a-four-day-event-in-2025/

Amazonの「プライムデー」が延長! 商材や商戦などにもよりますが、大きく戦略は変らなくても、たまたま知った勢が増えて今までより大きな山場になりそうですね。

消費者の9割「AIによって購入体験が向上した」。AIエージェントがEC事業者+消費者に与える影響とは? | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/13715

Shop brand sites directly | amazon
https://www.amazon.com/b?node=204815148011

2025年頭にも書きましたが、徐々にAIが増えてきていますね。どんどんサービスが増えてきて、AIを駆使した業務改善なども今後「力配分の見直し」に影響がありそうです。

今週の唸った・刺さった・二度見した

“If you get tired, learn to rest, not to quit.”「疲れたらやめるのではない、疲れたら休むのだ」 | バンクシー(イギリスの路上芸術家)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/719da276814d973828f51a22140daa56d84da587(参考情報としてYahoo!ニュース「人生に疲れた人へ。バンクシーの名言「疲れたら、やめるのではなく…」英語&和訳(偉人の言葉)」のURLを記載しています)

好きなアーティストの1人にイギリスのバンクシーがいます。元々「Rage Against the Machine」が好きで、自由民権運動家のマルコムXやキング牧師、革命家のチェ・ゲバラが好きになり、彼らの文献を漁るように読んでいました。そういう意味でもバンクシーの思想や思考が好きなのですが、今回はそんな彼が言った(書いた?)と言われているこのフレーズ。

「If you get tired, learn to rest, not to quit.」を「ChatGPT」に意訳してもらうと、「疲れたら、立ち止まっていい。あきらめるんじゃなくて、ひと休みしよう。」という意味だそうです。今日も頑張っているあなたに。疲れたら、深呼吸をしてひと休みひと休み。多少無理をして負荷をかけることも成長には大事ですが、休息も大事なことですね。

今回はゆるっとした、今週の言葉でした。また来月もよろしくお願いします。

ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

UdemyでECマーケティング動画を配信中です。こちらもあわせてご覧下さい。

ユウキノインは寄り添い伴走しながら中小企業・ECサイトのSEOからコンテンツマーケティング、プレスリリースやクラウドファンディングなど集客・販促・広報をお手伝いする会社です。詳しくはユウキノインのホームページをご覧ください。

Designequationは何かに特化したサポートではなく、モール・ベンダー選定や広告・CSなど各企業に合わせたカスタマイズ型の運用サポートを行っています。

中林慎太郎

スニーカーフリマアプリ「スニダン」、出品機能を刷新。出品時の商品情報を大きく改善

8ヶ月 ago

スニーカー、アパレル、トレーディングカードを取り扱うフリマアプリ「SNKRDUNK(スニーカーダンク)」を運営するSODAは、「スニーカーダンク」の出品機能をリニューアルした。利用者が出品する際の商品情報の入力を簡単にし、ファッションカテゴリでは「スニーカーダンク」に登録がない商品でも出品できる仕様にした(シューズ、エンタメ・ホビーカテゴリーは除く)。

「スニーカーダンク」は、取引の過程で運営側がすべての商品を確認し、正規品を保証する「真贋鑑定」を手がけている。

出品者は従前、「スニーカーダンク」上に登録されている商品情報から該当商品を選択した上で出品する必要があった。リニューアルによって、利用者が簡単かつ便利に商品を出品できるように再設計した。リニューアルのポイントは次の通り。

  • 出品時の画面をリニューアルし、出品ボタンを新たに設置
  • ファッションカテゴリは商品情報を選択せずに出品できる仕様に変更
  • 出品情報の入力画面を1つに統一。従前は商品ジャンルや新品・中古で分かれていた
リニューアルの特長
リニューアルの特長

新しい出品方法は、①ホーム画面下部の「出品」ボタンをタップ ②「出品する」をタップ ③カテゴリ、ブランド、その他必要な商品情報を入力し、出品完了となる。

新しい出品方法の流れ
新しい出品方法の流れ

商品ページ「出品」ボタンからの出品は従前どおり可能となっている。「出品」ボタンをタップした後、商品情報を入力し、出品完了となる。

商品ページからの出品方法
商品ページからの出品方法

SODAによると、「スニーカーダンク」利用者から「より簡単に商品情報を入力したい」「商品を探す手間を省いて出品したい」という声があがっていたという。

SODAは今後、ファッションカテゴリの商品ジャンルを拡大し、より幅広いアイテムを提供する。こうした理由から、出品機能をリニューアルした。

大嶋 喜子

「店舗のファンを街のファンへ」。メーカーズシャツ鎌倉が実店舗とECサイトでふるさと納税を実現、その方法は?

8ヶ月 ago

メーカーズシャツ鎌倉は4月16日から、実店舗と自社ECサイトでふるさと納税の受付を始める。オンラインで寄付受付のほか、鎌倉市内の店舗で直接寄付しその場で返礼品を受け取る取り組みをスタートする。

メーカーズシャツ鎌倉の本社は神奈川県鎌倉市。返礼品を提供している神奈川・鎌倉市が、サンカクキカクの店舗型ふるさと納税サービス「ふるさとズ」を導入したことで、今回のふるさと納税寄付受付が実現する。

4月16日から、メーカーズシャツ鎌倉の店舗と公式オンラインショップで寄付の受付を開始する。寄付者には、返礼品として全国24店舗とオンラインショップで即時活用できるデジタルクーポンを発行。デジタルクーポンは、店舗で使用する場合は会計時にバーコードを表示しクーポンとして利用できる。

「店舗のファンを街のファンへ」。メーカーズシャツ鎌倉が実店舗とECサイトでふるさと納税を実現、その方法は?

ECサイトで利用する場合は、注文方法の指定ページ下部、ギフトカード欄にて「カード番号」「PIN番号」「ギフトカードご利用額」を入力して利用できる。デジタルクーポンの有効期限は発行から2年間。

「ふるさとズ」は全国40自治体で利用

サンカクキカクが提供する店舗型ふるさと納税「ふるさとズ」は現地で寄付でき、その場ですぐに返礼品を受け取れるサービス。

「ふるさとズ」は現地で寄附・返礼品受け取りを実現する

オンラインでもオフラインでも好きな店舗で寄付でき、お店のファンが街を応援できるサービスとして「寄付者=店舗のファン=マチのファン」を全国各地に広げていくという。現在は全国40自治体、約260の店や施設で利用されている。

「寄附者=店舗のファン=マチのファン」を全国各地に広げていくという
鳥栖 剛

東武マーケティング、ecbeingのCMS「UNITE(ユナイト)」で新東武カードの公式ホームページ立ち上げ

8ヶ月 ago

東武グループの東武マーケティングは5月29日に新たなクレジットカード「東武カード」を発行し、あわせて「東武カード」の公式ホームページを新規開設する。新HPの立ち上げにはecbeingのメディアコマースCMS「UNITE(ユナイト)」を採用した。

現行の東武カードのHPでは、既存会員がキャンペーン応募や明細確認のためにサイトへアクセスすることが多く、運営側ではそれに伴った問い合わせ対応が増えていたという。問い合わせはコールセンターで対応していた。

今回の新HPではコールセンター業務の負荷を軽減するためにもサイト内のFAQページといったコンテンツの情報を充実、点在していた情報を整理することによる一覧性向上・掲載情報の更新頻度向上を実現した。東武グループが企画・運営するECモール「TOBU MALL」もecbeingのECサイト構築プラットフォーム「ecbeing」を採用しており、「東武カード公式HP」も含め東武グループのシナジー創出を期待する。

新しい「東武カード」は、「東武カード(スタンダード)」、保証と高いポイント還元率の「東武カードゴールド」、完全招待制の「東武カードVIP」の3種類を用意。5月29日から申し込み受付を開始する予定。

東武マーケティング、ecbeingのCMS「UNITE(ユナイト)」で新東武カードの公式ホームページ立ち上げ
新しいカードは5月29日から申込受付を開始

新HPの特長として、獲得ポイントのシミュレーション機能をあげた。3種類の新しい「東武カード」別に利用金額を入力することで、獲得ポイントの目安を簡単に確認できるシミュレーションページを用意した。

東武マーケティング、ecbeingのCMS「UNITE(ユナイト)」で新東武カードの公式ホームページ立ち上げ
新サイトのポイントシュミレーションページ

新サイトを構築しているCMS「UNITE(ユナイト)」は、質の高いセキュリティを標準実装した国産CMS。ページ編集機能や分析・マーケティング機能といった標準機能を掛け合わせた多様な施策の実装も可能となっている。テキストエディター付きの専用コンテンツフォーマットを用意し、HTMLの知識がなくてもスピーディーにコンテンツを作成ができる。更新性が高くなるためメンテナンス業務の効率化を図ることにも期待できるとしている。

新「東武カード」は5年後に発行枚数100万枚へ

「東武カード」では、スタート後から徐々に増加してきた会員数が、顧客層の高齢化と新規顧客層の獲得が進んでいない点を要因に、近年は横ばいまたは減少傾向にあったという。

新しい「東武カード」では、若年層やビジネスパーソンを中心とした新規顧客層の獲得を進めていく。東武グループのシナジーを生かした観光施設や鉄道利用者へのアプローチ強化、高水準のポイント還元率の実現、スマートフォン保険導入といった若年層を取り入れるサービスを充実させる。目標として初年度発行枚数47万5000枚、5年後には100万枚突破を掲げている。

鳥栖 剛

レスポンス率UP、休眠客の掘り起こしに成功したベルーナのチラシ大改革。紙媒体の“セッション時間”を高めた改善策とは | 通販新聞ダイジェスト

8ヶ月 ago
ベルーナは折り込みチラシのデザインのリニューアルを進めている。改良版チラシの特長や成果をまとめる

ベルーナが、新聞などの折込チラシ、いわゆる「通常マス」の改革に乗り出した。同社が配布してきた折込チラシの様式は、創業者でもある安野清社長が開発したもので、高いレスポンス率を誇る大きな「武器」となってきた。ところが、時を経るにつれて顧客の反応が悪化。そこで同社では、若手社員の意見を取り入れる形で昨秋より、折込チラシのビジュアルを一新した。果たして「シン・通常マス」の威力は――。

アパレル・雑貨は赤字の立て直しに注力

2024年3月期に赤字転落

同社アパレル・雑貨事業は2024年3月期に赤字転落しており、現在は顧客リストの収集・活用を図っているほか、時代にあった商品力・ビジュアル力を強化することで立て直しを図っている

ベルーナの近年実績と2025年3月期の予測。2024年3月期におけるアパレル・雑貨事業は営業損失29.9億円となった(画像はベルーナのIR資料から追加)
ベルーナの近年実績と2025年3月期の予測。2024年3月期におけるアパレル・雑貨事業は営業損失29.9億円となった(画像はベルーナのIR資料から追加)
収益効率最大化に向けてベルーナが掲げる施策(画像はベルーナのIR資料から追加)
収益効率最大化に向けてベルーナが掲げる施策(画像はベルーナのIR資料から追加)

2025年3月期は回復傾向

ただ、2024年4~12月期のアパレル・雑貨事業は、長引く残暑の影響により秋冬シーズンの序盤においては計画を大きく下回ったものの、中盤以降においてレスポンスが改善。

また、新規顧客の獲得数が前年同期と比べ増加したことなどにより増収増益となった。同事業の売上高は前年同期比0.7%増の592億8000万円、セグメント赤字は9億4200万円となり、前年同期の15億3900万円から赤字幅を大きく縮小させている。

折込チラシの刷新で成果

ビジュアル一新で顧客の反応回復へ

成果が出ている取り組みの一つが、折込チラシの刷新だ。同社のチラシは、安野清社長が開発したもの。たくさんの商品を1枚のチラシに詰め込んだものだが、このスタイルを磨き上げることで、大きな売り上げを作ってきた

安野清社長が開発した従来型の折込チラシ
安野清社長が開発した従来型の折込チラシ

同社の後藤孝之営業推進室長は「まさに『ベルーナならでは』のチラシであり、さまざまな経験やノウハウが詰め込まれている。実のところ、他社にもさんざん真似をされてきたが、この形で実績を作り続けてきたのは当社だけだ」と自負する。

ところが、同社の最大の武器であったチラシも時を経るにつれて、レスポンスが悪化しはじめた。もちろん、チラシ経由の売り上げ減少は新聞の部数減が大きな要因だが、加えて顧客の反応も以前より悪くなっているのが実情。そこで「『チラシのビジュアルを変えたほうがいいのではないか』という声が社内から出てきた」(後藤室長、以下同)という。

改良版のレスポンス率が従来型を上回る

下のチラシが改良版だ。全体的に白基調で見やすさを重視するとともに、掲載商品数も以前より絞っている。また「ネットの声」として、同社通販サイトのレビューから抜粋して掲載した。改良版チラシを発案したのは、制作室に在籍する若手の女性社員。従来型のチラシと改良版のチラシを同時に配布してテストしたが、改良版のレスポンス率の方が高くなっているという。

「実は、チラシに掲載の靴の見せ方を通常チラシの半分のサイズとし、テスト的に配布した際、若手の感性を取り入れたビジュアルに変更した、という経緯がある。その際に非常に良いレスポンス率が出たので、『ビジュアルを変えてみたらどうか』となった」。

ビジュアルに若手の感性を取り入れた改良版のチラシ
ビジュアルに若手の感性を取り入れた改良版のチラシ

折込チラシは、基本的には新規顧客獲得を目的として配布しているため、そこからカタログに誘導して利益の出る顧客に育てる、というのが常道。ところが、改良版チラシは、チラシ単体で利益が出るほど、高いレスポンス率を記録しているという。

もちろん、改良版チラシのレスポンス率に良い数字が出たのは、ビジュアルを刷新した直後という点も大きいため、継続して配布することで効率が落ちてくる可能性は高い。そのため、従来版から完全に置き換えるために、商品の組み合わせや見せ方などをトライアンドエラーしている段階という。「(安野)社長からも『早く全面的に切り替えたらどうか』と言われているが、商品を入れ替えても似たような結果が出るのかを試している」。

これまでのチラシは、現在の視点で見るとビジュアル面で「古めかしさ」が感じられる。そのため、新しいチラシは洗練された印象を消費者に与えたことがレスポンス率に寄与したとみられる

とはいえ、商品の組み合わせや見せ方、さらには商品の手配など「長年培ってきた従来チラシのノウハウがあったからこそ、新しいチラシが生まれた。そういう意味では、とても良い進化形といえる」。

休眠顧客の掘り起こしにも貢献

チラシの改良については昨夏から取り組みを開始し、秋冬には本格的な配布を開始した。同社内では、改良版チラシのことを「シン・エヴァンゲリオン」ならぬ「シン・通常マス」と呼んでいるという。

新規顧客獲得のレスポンス率が良くなっているため、減少し続けていた新規獲得数も底を打ち、反転しはじめた。新規だけではなく、休眠顧客の掘り起こしにも大きな成果が出ている。まさに「シン・通常マス」が起爆剤となっているわけだ。

折込チラシの配布部数そのものは、新聞購読者数の低迷もあり、やはり減少しているという。ただ、2025年3月期は新規獲得や掘り起こしがうまく回転し始めたこともあり、前期に比べてチラシ経由の売り上げは伸びる見込みだ。

新しいチラシはデザインや色使いを刷新しているわけだが、掲載する商品数は減っている。ただ「ネットの世界でいう『セッション時間』が増えたのではないかとみている。いろいろなチラシが配られるなかで、少し見ただけで捨てられてしまうのか、それとも目に留めてくれるのか。改良版チラシの方が見てもらいやすい、ということなのだろう」。

掲載商品1点ごとの売り上げを伸ばす

そのため、掲載商品こそ減っているものの、商品1点ごとの売り上げを伸ばすことでカバー。さらに、発注面でもやりやすくなったという。折込チラシに掲載する商品は、一定量の在庫を確保しないとならないため、在庫のコントロールが非常に重要だ。掲載する商品を絞り込むことで、不良在庫になる恐れが減ったという面もある。

また、本番のチラシを配布する前には、テスト的にチラシを配布しているわけが、掲載予定の商品数が多いとテストのために配布する枚数も増えてしまう。商品数をあらかじめ絞っておけば、配布枚数も減らせるため、それに付随するコストも減らせる。

「昨今の用紙代高騰などを考えると、やはりテストは絞る必要がある。現場からすると、ヒット商品を生み出したいので『数打てば当たる』的な思考になってしまいがちだが、そこは時流に合わせてコストを削減する必要がある」。

チラシ刷新を機に売れるようになる商品も

商品選定の基準に関しては、従来版チラシで売れていたような商品は、改良版でも売れているため、引き続き掲載している。

ただ、年齢よりやや若く見える洋服などは、従来チラシではあまり反応が良くなかったものが、新しいチラシでは売れるようになった。これは、特に改良版チラシの購買層が若くなっているわけではないのだという。後藤室長は「高年齢層の感性も変化しているので、従来版チラシでは目に留めてくれなかったものが、デザインを刷新したことで目を向けてくれるようになった、ということではないか」と推測する。

実は、メインカタログ「BELLUNA」においても、2年ほど前からこれまでよりも若いモデルを起用するようになっており、若いモデルを起用した商品の方がレスポンス率は高くなっているという。「もともと、媒体がターゲットとする年齢よりも、実際に購入する年齢層は一回りほど高くなるものだが、最近はそういった傾向が加速している感がある」。

新チラシは若手の感性が寄与

とはいえ、同社が長年武器としてきたチラシのデザインを大きく刷新することができたのは、やはり若手の感性があってこそ。後藤室長も「ベテランではできなかったこと」と評価。

2026年3月期は、チラシのビジュアルを完全に刷新することになるが、そうなったときにどの程度効率を維持することができるのか。後藤室長は「数字によっては今考えているよりも、多数の部数を配布できるようになるかもしれない」と期待感をにじませる。

値上げを踏まえたMD改革を推進

同社では2024年3月期において、用紙代と印刷費の上昇、さらには急激な円安による仕入れ価格上昇の影響を受け、一部商品の値上げを実施。ただレスポンス率が悪化したことで業績に大きく影響した。

そのため2025年3月期は、一律値上げするのではなく、値上げする商品・据え置く商品を分けて、メリハリを付ける形に変更、レスポンス改善に寄与している。

価格に見合う商品力をめざす

ただ、そうなると当然のことながら利益面でバランスをとるのが難しくなってくる。値上げをしても、価格に見合った商品力をつけるため、MD改革も進めている。後藤室長は「まだ明確な結果が伴っているわけではないが、社長からアドバイスをもらっているのは『今一度顧客指向に立ち返れ』ということ。直接顧客の声を聞く、あるいは顧客と接しているメンバーの気づき生かすべく、取り組んでいる」と明かす。

レビューなど顧客の声を積極活用

さらに後藤室長は「当社は『顧客の声を取り入れてサービスを改善する』という点では非常にうまくいっているが、『顧客の声を商品に取り入れる』という点では、他社と比較すると競争優位性を発揮できていない」と指摘。そのため、今後は通販サイトにおけるレビューとアパレル店舗における接客員の声を積極的に活用。自社運営のコールセンターとの連携も今まで以上に強化する。

すでに、ネットのレビューを踏まえたMDはスタートしており、コールセンターに寄せられる声については、現在収集している段階という。早ければ、2026年3月期下半期から、MD改革の成果が出てくる見込みだ。後藤室長は「当社の根幹は商品力。アパレル・雑貨事業が赤字に陥るという、今まで経験したことのない状況だからこそ、小売りとしてのあるべき姿』を目指し、当たり前のことは当たり前にやっていくべきだろう」と話す。

アパレル・雑貨は黒字化が急務

とはいえ、大局的にみると今後紙媒体を使った通販の市場は、今後一層シュリンクしてしまうのは避けられない。一方で、現時点では紙媒体が好きな人は一定以上いるのも事実。後藤室長も「カタログファンを大切にしていきたいという思いは強い。今回、折込チラシのビジュアルを変えたことでレスポンス率が反転したように、まだまだ戦える余地はある」と断言。

その上で「日本の社会全体で高齢化が進み、地方では買い物難民が増える中、当社の紙媒体を中心とした通販のインフラは、社会的にも非常に重要早期に事業の黒字化を達成し、営業利益率も3%の水準まで戻すことが大事になってくる」と今後の展望を語る。

※記事内容は紙面掲載時の情報です。
※画像、サイトURLなどをネットショップ担当者フォーラム編集部が追加している場合もあります。
※見出しはネットショップ担当者フォーラム編集部が編集している場合もあります。

「通販新聞」について

「通販新聞」は、通信販売・ネット通販業界に関連する宅配(オフィス配)をメインとしたニュース情報紙です。物品からサービス商品全般にわたる通販実施企業の最新動向をもとに、各社のマーチャンダイジング、媒体戦略、フルフィルメント動向など、成長を続ける通販・EC業界の情報をわかりやすく伝え、ビジネスのヒントを提供しています。

このコーナーでは、通販新聞編集部の協力により、毎週発行している「通販新聞」からピックアップした通販・ECのニュースや記事などをお届けしていきます。

→ 年間購読を申し込む(通販新聞のサイト)
通販新聞の過去記事を読む(通販新聞のサイト)
→ 通販新聞についてもっと詳しく知りたい

通販新聞

イオン社長が語る現状の消費環境+価格戦略+トランプ関税の影響

8ヶ月 ago

イオンの吉田昭夫社長は、現在の消費環境、それを踏まえての戦略、トランプ関税などについて、4月11日に実施した2025年2月期決算説明会の質疑応答のなかで言及した。

消費環境は二極化

吉田社長は小売市場の消費環境において「二極化」が進んでいると指摘。「日常のベーシックな部分は節約、特別な『ハレ』の場にはしっかりお金を使う購買行動を感じる」と評した。その上で生活者の低価格志向への対応として「イオンビッグ」などディスカウント業態の店舗拡大、専用のPB商材の開発に注力していくとした。

また、「価格だけで判断される商品と、クリスマスや正月といったハレ型商材では売れ方が大きく異なる。お客さまの目線に立った品ぞろえが必要」(吉田社長)とも話した。

スケーラビリティで原価低減に努め利益も確保へ

PB開発強化などによる利益確保の考え方について、「スケーラビリティを活用することで原価を下げることができる」(吉田社長)と言及。たとえば箱入りの商品にラベルを付けない、トラックの積載効率を高めるなど、サプライチェーン全体でのコスト削減に取り組むとした。ある程度ロットが固まることで取引先の協力を得るなどし、原価を下げて利益確保を図る考えを示し、「単に値下げするだけではいけない」(同)とコメントしている。

PBは商品開発力や提案力も重視

PB戦略には低価格商品だけではなく、商品開発力や提案力も重要であると指摘。「PBは顧客の声を反映することが最も大切。現場で聞いた要望をすぐに商品に反映し、売場に並べて反響を確認するという短いサイクルでの対応が可能」(吉田社長)であり、利益を生み出すことができるとPBのメリットについて解説した。

その例として2024年11月に立ち上げた、Z世代向けプロジェクトであるオリジナルブランド「NIRMATA(ニルマータ)」について説明。オリジナル靴下を販売し、成果を得たという。「違う世代の感覚からは『売れないかもしれない』と感じた商品が予想に反して売れた。Z世代の嗜好をうまく捉えた結果で、PB構成比を高めるポイントになる。NBとのトレードオフだけでは不十分で、PBの価値をどう高めるかが重要だと感じている」(同)と述べた。

24年11月に立ち上げたオリジナルブランド「NIRMATA(ニルマータ)」がヒット

生産性の改善などについても説明した。2024年10月、事業会社に対して生産性向上のKPIを設定。「経費構造や荒利率の改善だけでは厳しいという世の中のトレンドを踏まえた取り組みを行い、実際にそのKPIを達成することができた」(吉田社長)。トップバリュを活用したリピーター獲得施策も打ち出し、成果が出つつあるという。

トランプ関税「景気後退の懸念感じる」

米国のトランプ政権による関税の影響について、吉田社長は「現時点で明確な答えは出せない」としながらも「景気後退への懸念を感じた」(同)と話した。「愛知・豊田など米国向け輸出が多い地域は景気が良く、店舗の売上も好調。今後は売上が下がるのではないかという不安もある。小売業としてはしっかりと考えておくべき課題だと捉えている」(同)とした。

鳥栖 剛

電通デジタル、AI活用のマーケティングソリューションブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」を大型アップデート。マーケ支援活動の効率化・利便性向上などをめざす

8ヶ月 ago

電通デジタルは、AIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」の大型アップデートを実施したと発表した。「∞AI」の各ソリューションの本格運用を社内で開始し、企業のデジタルマーケティング活動支援の高度化、効率化、利便性向上の実現をめざすという。

4つのソリューションを開発

大型アップデートでは、デジタルマーケティングにおけるデータ分析のエージェント型ソリューション「∞AI Marketing Hub(ムゲンエーアイ マーケティング ハブ)」で4つのソリューションを開発。また、広告表現にAIを活用するソリューション「∞AI Ads(ムゲンエーアイ アズ)」で、画像・動画生成、効果予測の精度向上、フローの対話化といったアップデートを実施した。

電通デジタル ∞AIブランドの全体図
「∞AI」ブランドの全体図

これまで「∞AI」では、「∞AI Ads」、顧客接点の対話化・リッチ化を図る「∞AI Chat」「∞AI Contents」、各AIソリューションを支える基盤である「∞AI Marketing Hub」を展開してきた。「∞AI Marketing Hub」における4つのソリューション開発で、データ分析・利活用、その後のデジタルマーケティング施策立案に貢献していくという。開発したソリューションの特長などは次の通り。

① ∞AI Customer Data Hub(ムゲンエーアイ カスタマー データ ハブ)

企業が保有するファーストパーティデータ、AIチャットで取得した対話、各種調査から得られるデータに加えて、電通デジタルの各種マーケティングデータなどを、マーケター、AIにとって使いやすい形に自動的に統合・構造化し、顧客1人ひとりのカルテをリアルタイムで生成する。

電通デジタル ∞AI 「∞AI Customer Data Hub」について
「∞AI Customer Data Hub」について

② ∞AI Customer Twin(ムゲンエーアイ カスタマー ツイン)

「∞AI Customer Data Hub」に蓄積・統合したデータを基に、顧客1人ひとりの心理・行動特性を忠実に再現した仮想顧客AI(カスタマーツイン)を生成する。担当者がAIエージェントを通じて、仮想顧客との対話型インタビューや調査を実施できる。

電通デジタル ∞AI 「∞AI Customer Twin」について
「∞AI Customer Twin」について

③ ∞AI MC Planning(ムゲンエーアイ マーケティングコミュニケーション プランニング)

広告配信におけるメディアプランニング、広告コピーの企画・効果予測などのマーケティングコミュニケーション(MC)施策における一連のプロセスを、AIエージェントとの対話形式により一気通貫で行える。「∞AI Customer Data Hub」「∞AI Customer Twin」と連携することで、顧客1人ひとりの特性を踏まえパーソナライズしたメディアコミュニケーションプランをリアルタイムに提示する。

④ ∞AI CX Planning(ムゲンエーアイ カスタマーエクスペリエンス プランニング)

顧客体験(CX)の改善を目的とした、カスタマージャーニー設計や対話型AIチャットを活用した新規事業・サービスのアイデア創出、既存事業の高度化などのアイデア創出のプロセスをAIエージェントとの対話形式で実現するソリューション。

電通デジタル ∞AI 「∞AI MC Planning」「∞AI CX Planning」で行えること
「∞AI MC Planning」「∞AI CX Planning」で行えること

画像、動画生成、効果予測機能をアップデートした「∞AI Ads」

AI活用でデジタル広告の制作プロセスを効率化する「∞AI Ads」について、電通デジタルの山本覚氏(CAIO(Cheif AI Officer)、最高AI責任者 兼 執行役員)は「2022年のサービス開始以来、2024年までに127社に導入され、導入企業における平均広告効果改善率は154%になる」と説明。「∞AI Ads」では、画像、動画生成、効果予測においてAIエージェント技術を融合したアップデートを実施した。

① マルチモーダル生成AIの搭載

従来まで活用してきた機械学習に加えて、マルチモーダル生成AI(テキスト、音声、画像、動画など2つ以上の異なる種類のデータから情報を収集し、統合して処理する生成AI)を搭載。効果の予測・改善サジェストの精度の大幅な向上につながるという。

一般常識やマーケティング手法などを学習しているマルチモーダル生成AIを活用することで、企業が保有しているデータを加えるだけで対話形式の高精度な予測を出力できるという。

② 対話形式でのプランニング・施策実施

「∞AI MC Planning」で出力した広告配信におけるメディアプランニング、広告コピーの企画・効果予測の施策案を基に、実際に配信するクリエイティブの生成、その効果予測・改善などのPDCAサイクルを対話形式で実現する。

電通デジタル ∞AI 「∞AI Ads」で作成した広告例
「∞AI Ads」で作成した広告例(画像は電通デジタルのサイトからキャプチャ)

テキストで指示した内容で広告を生成する。作成したバナーの広告効果を測定し、改善サジェストもテキスト形式で出力するなど対話形式で広告生成を行える。AI自身が生成したモノを学習していくので、説明文も詳細になっていく。学習する内容は企業間を跨がないようになっている。(山本氏)

電通デジタル CAIO(Cheif AI Officer):最高AI責任者 兼 執行役員の山本覚氏
電通デジタル CAIO(Cheif AI Officer)、最高AI責任者 兼 執行役員の山本覚氏

今回の大型アップデートを通じて、山本氏は「今後は電通グループ企業のAIと連携しながら稼働していくだろう。他のエージェントとコラボする未来もくると思っている」と話す。

その先のマーケティングは、データと人の間にAIが入ってくれることで、人が直接データに触れる機会が減るようになり、調査、戦略、コミュニケーション施策、営業・顧客サポートなどさまざまな領域で、人はAIとだけ会話をするようになるのではないか。人がすべきことは、論点を設定する、意思決定などがメインになると考えている。マーケターは今まで以上に人間の心に向き合っていく、「人はどうしたら喜んでくれるのか」「どんな場面で感動するか」などを考えることが重要になるのではないか。(山本氏)

藤田遥

福岡の物流会社「西京物流サービス」、「ロジザードZERO」で出荷ミスほぼゼロ、クラウドカメラ連携で業務効率化を実現

8ヶ月 ago

福岡県に拠点を置く物流会社の西京物流サービスは、ロジザードが提供するクラウド型倉庫管理システム(WMS)「ロジザードZERO」を導入し、出荷ミスの大幅な削減と業務効率の向上を実現した。

西京物流サービスは、食品・サプリメント・雑貨・アパレルなどさまざまな商材を取り扱い、EC対応、ケース単位の発送、チャーター便の手配など多様な物流ニーズに対応している物流代行企業。

「ロジザードZERO」導入以前は「現場作業の標準化」と「ヒューマンエラーの防止」が課題にあがっていた。「ロジザードZERO」の導入により、バーコードをハンディターミナルで読み取る作業で、正確性と確実性を担保しながら業務の標準化と効率化を実現。​その結果、在庫数の不一致はほとんど発生しなくなったという。

さらに、エッジAIカメラ「Safie One(セーフィー ワン)」と「ロジザードZERO」を連携した「出荷検品 クラウド録画連携オプション」を活用。出荷作業の映像記録と確認ができるようになり、ミスやトラブルの早期発見と迅速対応できるようになった。​特に包装資材や同梱物に細かい指定がある荷主に対して、作業手順を証明できるようになり、信頼構築につながっているという。 ​

福岡の物流会社「西京物流サービス」、「ロジザードZERO」で出荷ミスほぼゼロ、クラウドカメラ連携で業務効率化を実現
物流改善の現場

クラウドカメラによる作業状況の可視化は、現場巡回の効率化や作業進捗の遠隔確認にも効果を発揮、人的負荷の軽減にも寄与している。​今後は「EC万引き」対策など、セキュリティ強化の観点でも「Safie One」との連携活用を拡大していく方針。 ​

西京物流サービスの田中秀典氏(統括部長)は、次のようにコメントしている。

WMSの導入は、荷主との信頼関係構築にとても有効。「ロジザードZERO」は直感的に誰もがすぐに使えて導入のハードルが低い。一定の規模感がある事業者にはぜひ利用して欲しい。

宮本和弥
確認済み
27 分 36 秒 ago
ネットショップ担当者フォーラム フィード を購読

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る