「人」を武器に、個人が活躍できる広告代理店を名古屋から。ASUE(アスエ)の事業戦略に迫る|インハウスマーケティングラボ

インハウスでのマーケティング業務に役立つ情報をお届けする「インハウスマーケティングラボ」の新着記事から転載。今回は地方の広告代理店の方におすすめの記事になっています。
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ASUE|安江 真一氏

本社を名古屋に置く、広告運用やWebサイト制作を手掛けるASUE(アスエ)株式会社

東京、大阪に比べると名古屋の広告主の数は少なく、広告予算も大きくない。そうした環境下で同社は直請けのみに案件を絞り、会社の信頼、ポジショニングを定め、他社には模倣しにくいサービスにしているという。また、社員の個性を発信することによって、広告代理店としてのブランディングも実現している。

地方都市の広告代理店ならではの営業戦略や、東京の広告代理店に負けないための競争戦略、さらには優秀な人材を集め続ける社内の環境作りについて、代表取締役の安江 真一氏にお話を伺った。

地方都市の広告代理店ならではの営業戦略

安江 真一氏
ASUE株式会社 安江 真一氏

――地方都市ならではのWeb広告の特徴や傾向を教えてください。

安江 真一氏(以下、敬称略):最近では名古屋でもWeb広告は浸透してきており、「うちでもぜひやってみたい!」とお声をいただきます。ただ、都心の企業に比べても広告予算は少額なケースが多く、さらに地方企業はある程度の利益が出ると、それ以上の成長意欲がなくなってしまい、広告に挑戦しようとする会社は多くありません。

また広告のターゲットについては、FacebookやTwitterなどスマホ向けのWeb広告の効果が都心と比較して出にくいことも特徴の1つです。地方は車の移動が多く、東京の人と比べるとスマホを触る回数が少ないんですよね。愛知でも都市部は東京と変わらないような生活スタイルですが、少し郊外に出ると本当に生活が変わります。

もちろん若い世代の人は車を持っていないことも多く、スマホの使用頻度が高いと思います。しかし、就職して車通勤を始めてしまうと、日に一度もFacebookにログインしないこともあります。

 

――広告案件はどのように獲得しているのでしょうか。

安江:営業は東京、名古屋に拠点を置いて活動していますが、会社の数字に最もインパクトを与えているのは、自社のマーケティングチームの方です。特に新規受注に関して、マーケチームの貢献度はとても大きいです。

ちなみに弊社の場合、基本的には広告運用経験がある人のみが営業をしています。運用経験があるからこそ、実務レベルの一歩踏み込んだ提案が可能です。管理画面で実行しながらのリアルな提案ができるため、クライアントにも喜んでいただけることが多いです。

下請けの案件を無くし、直請けのみに絞る

――名古屋の広告主は東京に比べて少ないと思います。どのような企業がASUEへ依頼するのですか?

安江:業種は幅広いですね。弊社の戦略上決めていることは、下請けの案件は受けず、直請けに絞っていることです。代理店が入るような案件ももちろんありますが、下請けとしてではなく紹介パートナーとして、直接やりとりをさせていただける体制にするなど、運用のグリップを握ることができる案件に絞っています。

取引先企業は中小~大きい企業まで、業種も広告費も様々です。運用者の案件数も担当1人あたり5〜10社に絞っています。

 

――どういった経緯で、直請けのみの体制になったのですか?

安江:創業当初はWeb制作事業を2年ほどやっていて、そこからリスティング広告の事業をスタートしました。最初は低価格帯料金を売りに事業を行っていて、はじめて2年位は順調だったのですが、徐々に従業員が疲弊していく姿が見え、機運の悪さを感じました。

人が肝心の仕事なのに、案件のグリップができないことなどから、活躍していたメンバーがやめてしまうこともありました。

運用型広告の仕事は、質の高い仕事をして運用者が良質な経験値を積むことで、サービスの質があがり、よりよい運用代行ができるようになる。そのサイクルによって良い仕事や良い案件が集まっていくんだ!ということに気付いて、料金改定を行いました。下請けもやめると決め、徐々に直請け案件のみ引き受けるよう戦略を変えました

売上が下がると懸念しましたが、直請けへの戦略変更をはじめて3年間は、案件数は変わらないまま、売上と利益率は伸び続けました。

代理店として直請けに絞るという戦略をとるには、運用している案件が入れ替わり、さらに実際に直請けで顧客の窓口にたち提案をおこなえるような運用者を採用、教育する必要があり、時間がかかります。なので、競合が簡単に模倣できるものでもありません。その意味でも成功だったと感じています。

ブログでの情報発信を中心としたマーケティング

――直請けのお問い合わせを獲得するために、どんなことを実行したのでしょうか?

安江:といっても、あまり特別なことはしていません。まず、自社のマーケティングチームを組織しました。各部署からエース級の社員を引き抜き、SEMスペシャリストをインハウスマーケターに、制作課のエースデザイナーをインハウスデザイナーに、制作課のエースWebコーダーを広報に抜擢しています。

1ヶ月に1回、ASUE通信というブログを更新するようにしました。1年目は9本くらいしか更新できませんでしたが、Twitterでのシェアが多く、開設1周年を迎えたあたりから徐々に検索順位の状況もよくなってきました。ブログを見てお問い合わせいただいた指名のお客様も増えてきたので、効果は大きかったですね。

 

――N村さん(@Nmura_asue)に広報を担当してもらってから何か変化がありましたか?

安江:表に出しすぎると広告主や他代理店から引き抜かれたりすることも多いからか、広告代理店が社員の個人色を打ち出すことを嫌がるのは珍しくありません。

しかしワクワクするビジョンと、裁量があって本当に面白い仕事、そして一緒に楽しく働けて誇りに思ってもらえる仲間、そして会社への信頼があれば、優秀な社員の最低限の定着率は確保できると考えています。

また、名古屋では東京と比較すると人材の流動性が低いので、ASUEではこの地の利を生かして社員がメディアやセミナーに登壇することなど、表に出ることを後押ししています。

N村に広報として情報発信をしてもらうようになってから、徐々に社外の方から、「ASUEはカラーがハッキリしている」と言われるようになりました。さらに、2年以上前のブログから採用につながったケースもちょこちょこあります。積極的に“個人の色”を出し、情報発信をしていくことは、会社のポジショニングの構築にも役立ったと考えています。

※参考:広報担当N村さんの記事:「えぇっ!?わたしが広報に!?」フロントエンドエンジニアが広報担当になってしまった話

広告代理店としての組織作り。優秀な人を集め、活躍してもらうために

安江 真一氏

――広告代理店としての組織作りで意識していることはありますか?

安江:もちろん社員や部署ごとのKGI・KPIなど、数字の面もみてはいますが、広告運用やWeb制作の実務面は常務に任せているので、私はあまり口を出していません。ですが、採用に関しては私が直接コンセプトから決めて仕切っています。

個人的な習慣ですが、「組織がどう動いているか」「社員全員が心地よく働けているか」を注意してみています。その時に違和感が少しでもあればマネージャーなどと話をするようにしています。ちょっとした語尾や言葉の選び方から、社員のメンタルやコンディションに変化があったり、会社のバリューから外れた方向に意識が向かっていないかというのを感じ取るようにしています。

広告業界は一般的には差別化が難しいと言われています。ですが、広告運用のサービスの質までをプロダクトと考えて、社員がバリューを体現することによって、ASUEに依頼したい!と思ってもらえるような組織作りをしたいですね。

また、優秀な人材が働きやすいような環境作りにも努めていて、社員から制度化の希望があった四半休制度(2時間単位で休みをとれる制度)や昼休み延長制度(昼休みを60分から90分に延長できる制度)、部署間のコミュニケーションを活発化する部門間ランチ制度など、様々な制度を運用しています。現状はないですが、今後より働きやすい環境作りのためにフレックス制度の導入も検討中です。

 

――最後に、人を重視される安江さんが特に大事にしていることを教えてください。

安江:N村をはじめ、自分の価値を高めたい優秀な人材や、積極的に表に出たい人に関しては、どんどんチャレンジしてもらって、個人の知名度を上げていってもらいたいですね。優秀な人が自然と集まり、より付加価値の高い仕事を取っていただけるようになり、楽しく働き続けれる組織を作っていきたいです。

代理店にとって「人」は本当に大事です。優秀な人に活躍してもらうために、より良いフィールドを用意し、ワクワクする仕事をいただけるよう全力を尽くしていきます。

【文:モジカク株式会社 大木一真 /  撮影:株式会社スタジオ.シン 安井利恵】

 

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