企業ホームページ運営の心得

意味不明なコンテンツと切られたら。プロが使わない文章術

コンテンツの文章や記事は内容を伝えるためにあり、伝わらなくては意味がありません
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の344

宮脇さん、意味不明です

エアコンなど設置されていなかった昭和時代、都立高校の真夏の教室は蒸し風呂と化し、下敷きがわりのクリアファイルを団扇にしても、流れる汗を止めることなどできはしません。美術の自習を抜け出し、悪友と共謀して屋上プールへ自主避難したものの、現場を校内巡回中の教師に押さえられます。

こうして反省文の提出を余儀なくされたのは高校二年の夏休み前。補習という刑罰を回避できたのは、鼻歌交じりに書き下ろし提出した反省文の完成度の高さから。これが私の「文章」の始まりです。

文学青年とはほど遠く、記者や編集者のような文章修行の経験もない「無手勝流」。しかし、反省文の成功例からはじまり、メルマガの発行やブログの更新によって、それなりにもっていた文章への自信をバッサリと袈裟切りにしたのは、お金を貰って原稿を書き始めた当時の担当編集者のこの言葉。

ミヤワキさん、意味不明です

それは「0.2な文章」だったからです。プロとアマチュアの違いを知ります。ウェブ担当者の作業領域に、作家の要素が入り込むことは少なくありません。作文においてのプロの心得。知っておいて損はありません。

不完全なコンテンツ

「0.2」とは「Web 2.0」のように次世代を想起させる狙いの「2.0」を並び替えた、私の造語です。正式リリース版を「1.0」としたとき、そこにも満たない未熟や不完全、あるいは失敗という揶揄をこめており、情報サイト「マイナビニュース」では「エンタープライズ0.2」と題し、ITがらみの失敗談や、ネットへの誤解に基づくマヌケな実例を紹介しています。

本稿においては、「0.2」のような「造語」を説明もなく使用する文章を「0.2な文章」と定義します。つまり、「意味不明」と指摘された作文は造語だらけだったのです。反省もせずに反省文をかけることなど、所詮アマチュアレベルと気がつくのはもう少しあと。

「0.2な文章」はビジネスコンテンツに散見し、最近ではネットニュースでも見かけるようになりました。「ゆとり教育」によるものでしょうか。いや、「表現」の押しつけと経験者は語ります。

オジサンの責任だけではない

先日mixiニュースの見出しに「プチプラ」という単語を発見しました。ファッション系の記事でしたが、この業界はWeb業界に比肩するほど造語(新語)が大好きです。「水玉模様」を「ドット柄」と言い換えるように、焼き直しを新商品として流通させます。そのため、定期的なチェックが欠かせません。

さて、肝心の「プチプラ」の意味を確認しようと記事に目をやると、本文に「プチプラ」の文字が見つかりません。ブラウザの検索機能でも「見出し」しかヒットしないのです。

mixiニュースのコメント欄には、同じ疑問を抱えた自称「オジサン」が「プチプラ」の意味を質問し、それに対して親切なユーザーが解説していました。こうして記事の説明不足を、ユーザー同士で補うことを「ソーシャルの手柄」とする礼賛は物書きの1人としてできません。

プチプラってなんだ

プチプラとは「プチ・プライス」の略称で、可愛い=安いと翻案し、低価格帯のファッションや雑貨、コスメを指す

と、たったこの一行をいれる手間を、プロなら惜しんではなりません。

プチプラをネットで検索すると、2年ほど前から使われている形跡があり、ファッション業界周辺では一般用語なのかもしれません。そこから見出しに使い、本文での説明を放棄したのかもしれません。しかし、コンテンツは「少し(時代に)遅れている人も読む」ものです。

また、ネットのコンテンツは蓄積されていきます。ブームが去った後に読まれることもあり、説明を添えておくことで、文章の賞味期限は延長され、同時に「意味不明」を避けることができるのです。

そもそもこの記事は「着こなし」にフォーカスしており、「ユニクロ」や「しまむら」の洋服を意味する「ファストファッション」のほうが正確なのですが、単語のチョイスは筆者の自己表現。つまり「プチプラ」という表現の押しつけです。

文章の賞味期限を延ばす

表現の押しつけの代表格は、先に紹介した「0.2」のような「造語」です。ひとりよがりな表現と紙一重で、初心者はできるだけ避けるべき……と、これも経験者談。しかし、造語には抗しがたい魅力があるのも事実です。

「草食男子」や「さとり世代」、最近見かけたものでは喜んで専業“主夫”になる「喜婚男子」など、造語の大半は駄洒落や語呂合わせ。多少でも作文経験があるものなら、簡単にひねり出すことができます。「ならば自分も」とついつい考えてしまうのは筆者のエゴです。

もう1つの例を紹介します。ミクシィニュースにて「恵体電話」なるタイトルを発見しました。こちらも言葉の説明がないまま文章が終わり、寄せられた「つぶやき」は、

だから恵体ってなんだよ(要約)

このツッコミがすべてを語ります。

プロに学んだ技術

記事から推測するに「恵体」とは、スマホのディスプレイの大画面化、高精細化を「恵まれたボディ(体)」とするものかと推測できます。「恵体」という造語を、記事のシンボルにする狙いだったのかもしれません。しかし、造語を説明できるのは、創造主である筆者だけです。この作業を放置するのは、伏線をしまわないまま終わるドラマと同じ。読者からツッコミがはいるのは当然です。

ただし、説明を加えたからとプロの文章になるとは限りません。意味不明と切り捨てられ、怒りに燃えた私は、説明を加筆し入稿します。すると差し戻された原稿から、造語の登場する段落そのものが切り捨てられていました。編集者はいいます。

説明が冗長で論旨がぼける

返り討ちです。そこから学んだプロの技術は、

造語や新語を濫用しない

新語には業界用語も含みます。難しいことを、そのまま難しく書くのは簡単です。コンテンツの文章や記事とは、内容を伝える目的にあるもので、造語という自己表現を示す場所ではないのです。

今回のポイント

造語は極力使用しない

意味不明の回避は文章1.0の基本

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