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何をもって「瑕疵」とするか具体的に定める! (瑕疵の定義)

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何をもって「瑕疵」とするか具体的に定める! (瑕疵の定義)

さっき言った「瑕疵」の意味(通常、そのモノが一般的に備えているべき品質・性能を備えていない)だけでは、判断基準としては曖昧だわ。発注者と受注者との間で瑕疵にあたるかどうか争いになることもあるの。

そうでしょうね…。

だから、あらかじめ、「瑕疵の定義」において「何を瑕疵と扱うか」や「何を瑕疵と扱わないか」について、具体的に定めておくとトラブル予防になるわ。

なるほど! 今回は、前の制作会社が制作したWebサイトに、すでに瑕疵があるかもしれません。だから、契約書で「制作を引き継ぐ前からサイトに存在した不具合や権利侵害は瑕疵にあたらない」と定めたいですね。

そのとおりね。あと、契約書で、「クライアントの提供した資料や指示によって瑕疵が生じた場合、受注側は責任を負わない」と定めておくのもいいわね。じつは民法に同様の規定があるから、理論上、契約書で定めなくても適用されるの。けどまあ、契約書で定めておくとわかりやすいでしょ。…クライアントが法的にグレーな指示をしてくる場合もあるし…。

なるほど…(ジト目)。

山ノ内さん、なんでこっちを見るんですか~!?

「瑕疵がないことを保証する」条項(保証条項)の落とし穴

有栖川さん、さっき、この契約書を結ぶのは「火中の栗を拾う」ようなものだって言ってましたよね。どういう意味ですか?

八瀬さんが持ってきた契約書には「成果物に瑕疵がないことを保証する」っていう条項があったの。保証条項とも呼ばれるのだけど。

普段使ってる制作委託契約書を持ってきたんですが、問題ありますか?

ふつうに制作を受託する場合ならともかく。今回は、別の会社の制作にかかる部分もあるのに、我が社(受注者)がサイト全体について保証するようにも読める条項を入れるのは嫌だわ。うちのせいじゃない部分まで責任を負わされるおそれがあるから。

なるほどね。今回わざわざ入れたくない条項ですね。

でも、発注者側からすると、保証条項をまったくなくしちゃうのは、不安です。

じゃあ、「我が社が制作した部分に、我が社の責めに起因する瑕疵がないこと」という保証条項なら入れてもいいわ。

わかりました。その内容で、こちらも検討してみます。

瑕疵があった場合に負う責任の具体的内容をどう定める?

民法によると、瑕疵があった場合、クライアント(発注者)は、目的物の引き渡しから1年間、修補の請求損害の賠償請求契約の解除(契約の目的を達成できない場合のみ)が、できるんですね。

そうよ。まあ、契約解除については、民法の定めどおりでいいかしらね。

わかりました。修補請求や、損害の賠償請求について、契約で別に定めておいた方がよいですか?

そうね。うちとしては、具体的には、

1. 瑕疵の修補請求について
受注者の責めに帰すべき瑕疵があった場合のみ、納品から1年間、無償で修補する
2. 瑕疵によって生じた損害の賠償請求
損害賠償額は、保守費用の1年分の金額を上限とする

としたいわ。民法より少しだけ軽いけど。八瀬さん、これでどうかしら?

民法より責任を軽くすることについて、合理的な理由はあるんですか? 特に、損害賠償の額を限定することについて。

そうね。Web制作の場合、案件が小さくても、大きな損害が発生する場合もあるじゃない? こういう特殊性があるのに、請負契約一般について定めた民法の規定どおりの責任をWeb制作の受注者が負うとすると、費用以上に労力を割いて対策をしなくてはいけない場合があるかも。受注者と発注者とで負担を公平に分担するにはそういう限定も有用かなと思うわけ。私の意見だけど。

わかりました。私の一存では決められないので、社に戻って相談してみます。

八瀬さん、どうかよろしくお願いします!

うふ、山ノ内さんがそうおっしゃるなら、前向きに検討します!

むむ~……。

第8話に続く

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