BOOK REVIEW ウェブ担当者なら読んでおきたいこの1冊
『ロングテール 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』
神野 恵美(編集者、ライター)
“ロングテール”が経済に与える影響とは?
提唱者自らがビジネスの盲点を逆説的に解説
- 『ロングテール』 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
- クリス・アンダーソン 著/篠森 ゆりこ 訳
- ISBN:4-15-208761-7
- 定価:本体1700円+税
- 早川書房
本書では、AmazonやGoogleといった、Web 2.0的企業の成功について“ロングテール”をキーワードにひも解いていく。“ロングテール”とは、端的に言うとニッチ市場を指し、それがネットによって開拓された果てにもたらされる経済効果を評価している。要するに“塵も積もれば山となる”結果、膨大な利益につながるということなのだが、筆者はこれを経済のみならず、社会や心理学的視点からも斬り込んでおり、興味を引く。
また、筆者は「すべての市場において、ニッチ商品はヒット商品よりもはるかに多い」「ヒットしない商品を集めればヒット作に匹敵する市場がつくれる」など、ビジネスを逆説的に捉える。こうした筆者の視点は、当たり前のようで実は見逃しがちなポイントであり、副題のとおり、“ちょっとした発想の転換”が売れない商品を宝の山に変える戦略があらゆる消費分野に隠されている可能性を示唆している。
また、最終章で筆者はロングテールビジネスを発展させるコツを「すべての商品が手に入るようにする」「欲しい商品を見つける手助けをする」の2点で締めくくる。これらは、AmazonやGoogleなど、どこか謎に包まれたビジネスモデルの企業が利益を収める理由を明晰にし、たった2言で言い得た筆者の分析と洞察力に圧巻させられる。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.4』 掲載の記事です。
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