【レポート】生成AI × マーケティング フォーラム 2026

なぜ「検索してクリック」しなくなった? Google検索の変化とAIに選ばれる2つの情報源

ゼロクリック検索時代において、SEOにどのように取り組めばよいのか。SEOコンサルタントの住氏がユーザー行動の変化を踏まえ、今後取り組むべき施策を解説した。

トップスタジオ[執筆], ササキミホ[編集]

7:00

生成AIの進化により、検索エンジンは「リンクを選ぶ場所」から「回答を見る場所」へと変化している。ユーザーが検索結果をクリックすることなく製品やサービスと出会い、比較検討し、購入を決めることは珍しくなくなってきた。そんなゼロクリック検索時代において、SEOにどのように取り組めばよいのか。「生成AI × マーケティング フォーラム 2026」にSEOコンサルタントの住太陽氏が登壇し、ユーザー行動の変化を踏まえ、今後取り組むべき施策を解説した。

ボーディー有限会社 代表取締役 住 太陽 氏

検索エンジンは、リンクを選ぶ場所から質問に対する回答を見る場所へ

現在、検索エンジンの役割が大きく変わりつつある。その変化を促した機能の一つが、2024年8月にGoogleが導入した「AIによる概要」である。これは、検索結果の最上部に、質問への回答をAIが生成して表示する機能だ。この機能が登場した頃のユーザーの反応は、「嘘だらけ」「役に立たない」「邪魔」というものだった。しかしAIによる概要の導入から2年が経ち、回答の精度が向上。ユーザーもAIの回答が出ることに慣れてきた。

回答をあてにして、検索することも増えているのでは。今起きているのは、検索エンジンの役割の移行です(住氏)

AIによる概要の導入前の検索エンジンはURLのリストを提示し、それを見てユーザーはクリックするリンクを選んでいた。それが今では「検索エンジンは回答の提示場所」つまり回答エンジンになりつつある。“ゼロクリック検索”とは、検索結果に余計なものが表示されて邪魔だからユーザーがクリックしないのではなく、検索エンジンの役割の変更なのだ。

Googleが目指す検索体験

今後、検索はどのようになっていくかはGoogleが目指すものを紐解くとみえてくる。2011年にGoogle幹部が検索の進化について説明した映像がある。そこでは、「自然な言葉で質問し、答えだけが得られる検索」を目指していると語られている。また、その映像で当時のGoogleフェローのベン・ゴメス氏は「Googleの目標は、検索を進化させてユーザーが必要としている情報だけをできるだけ速く提供すること」と発言していた。

その発言から数年の間に、Googleは検索結果に答えを表示し始めた。最初に登場したのは、ナレッジパネルだ。これは検索キーワードを入力すると、その概要が表示される機能だ。

ナレッジパネルの表示例

次に登場したのがクイック回答だ。たとえば「42.195キロメートルは何マイル」と質問すると、検索結果に回答が表示される。

クイック回答の表示例

その後、強調スニペットが表示されるようになった。これはAIによる概要の少し前の機能で、たとえば「大谷翔平とは」と検索すると、最上部に大谷翔平氏の概要が表示されるようになった。「これらが現状のAIによる概要につながっている」と住氏は言う。

強調スニペットの表示例

自然な言葉で質問し、答えだけが得られる

Googleは2011年の映像でもう一つ語っていたことがあった。「人々が検索エンジンに、自然な言葉で質問する世界がGoogleの理想である」というものだ。具体的にどのような世界を目指していたのか。当時の検索部門のトップアミット・シンハル氏は、「今年の季節風が早かったとしたら、インドでの種まきはいつ頃がベスト?」という質問に、自然な言葉で教えてくれるのが理想だと語っていた。

15年が経った今、この質問をGoogleでするとどうなるか。住氏が試したところ、「主要な夏作物の種まきは、5月下旬から6月上旬の最初のまとまった雨が降った直後がベストです」という回答が得られた。つまり、15年前にシンハル氏が語っていた夢は技術的には実装済みなのである。

「今年の季節風が早かったとしたら、インドでの種まきはいつ頃がベスト?」の回答結果

「あとは、ユーザーが自然な言葉で質問することに慣れると、Googleの理想が達成される」と住氏。特に、子どもや若いユーザーを中心に、だんだんと自然な言葉での質問に慣れつつある。「AIによる概要の導入以降、ユーザーはより長い文章での複雑な内容や、新しい種類の質問をこれまで以上に多くするようになった」と、Googleの検索部門のトップ、リズ・リード氏が語っていることからも明らかだ。

そして2026年5月、Googleの開発者向けカンファレンス「Google I/O」では、検索ボックスの刷新が発表された。それがインテリジェント検索ボックスで、自然な言葉での質問をAIがサポートするようになるというものだ。

リンクのリストが欲しかったり、AIによる概要で表示された引用元に遷移したりすることもあると思いますが、これからは、ユーザーは質問をして、回答を見て終わるという、クリックのほとんどない世界に向かっていくと考えています(住氏)

インテリジェント検索ボックスの導入:ゼロクリック検索は加速する

続いて、住氏はアメリカの大手国際メディア企業、コンデナストのCEOロジャー・リンチ氏の「検索流入はゼロであると仮定して事業を計画しろ」という言葉を紹介した。つまり、検索流入を当てにしていたらメディアは成り立たないというのである。

検索ユーザーがAIの画面から出ず、完全にゼロクリックになるとしたら、検索行動はどう変わるのか。住氏は、「企業や製品との出会い」「情報収集と比較検討」「購入時」の3段階に分けて以下のように予想する。

  1. 会社や製品やサービスとはAIの回答で出会う
  2. 情報収集や比較検討もAIとの対話で進める
  3. サイト訪問は購入を決めたあとの接触のため

現在の検索結果を使って具体的に説明した。提示したのは、Google検索で「中小企業向けの定額制SEOコンサルティングサービスのおすすめは?」と質問した結果だ。以下の図のように、AIの概要に候補が4つほど提示されたという。ちなみに最上位に紹介されているのが、住氏が代表を務めるボーディーが提供する「コンサルホーダイ」である。

Google検索の「定額制SEOコンサルティングサービスのおすすめは?」の結果画面

結果を見て、コンサルホーダイが気になったとする。ただ、すぐに依頼はせず、類似サービスとの比較、自社に合うサービスかどうか、住氏のコンサルタントとしての評判の確認などを行うだろう。次に「コンサルホーダイと類似のSEOサービスを比較してください」と指示する。すると、AIによる概要は他サービスとの比較表を回答した。このように、AIを使えば情報収集や比較検討は容易にできる。

Google検索で他サービスとの比較を指示したところ、比較表で回答が表示された

検索結果に期待するのは“URLのリスト”から“自然文の回答”へ

AIは、比較検討や調査を中心に使われるようになるだろう。というのも、「インテリジェント検索ボックスの登場によって、検索エンジンの使い方が変わり、よりAI検索が使われていく」と住氏は言う。

どのように変わるかと言うと、これまではスペース区切りの単語で検索をし、検索結果には入力した単語に一致するURLのリストが出ることを期待していた。インテリジェント検索ボックスが導入されると、自然な文章で質問や指示をするようになり、検索結果はリンクの一覧ではなく、自然文の回答を期待するようになるだろう。「今すぐにガラッと検索方法が変わるのではなく、時間はそれなりにかかると思う」と住氏。ユーザーが自然文での質問に慣れるに従って、ゼロクリック検索は加速すると予想される。

AIには“推薦”されないと意味がない。AIの2つの情報源とは

では、ゼロクリック時代におけるSEOは何をするべきなのか。

まずはユーザーがAIとの対話で自社の製品やサービスを見つけられるようにすること。それと、ユーザーがAIとの対話で情報収集や比較検討をできるようにすること。そして、購入を決めた後で、サイトを訪問したら、問い合わせや、購入が簡単にできるようにすること(住氏)

これらを可能にするには、AIがどんな情報を回答に使うのかを知る必要がある。それについて住氏は、「私の本にすべて書いてある」と言いながらも、その内容をダイジェストで紹介した。

AI検索で重要なのは、“引用”と“推薦”を区別することだ。以下の図を見ればわかるように、AIによる概要は、AIが選ぶおすすめ候補である“推薦”と、回答の根拠として文章の後にリンクが表示される“引用”で構成されている。

Google検索結果のAIの“引用”と“推薦”部分

「引用はAIが回答を生成するための養分となるだけで、意味は無い。推薦されないと、ビジネスの足しにはならない」と住氏は指摘する。

では、AIが回答に使う情報はどう生成されるのか。AIが使う情報源は、大きく2種類ある。

  • 独立した第三者によるクチコミやレビューの評価
  • 企業が発信する自社や製品、サービスの情報

AIは主観的な判断はしない。Web上の情報から手がかりを集め、確率的に正しそうな回答を生成しているのだ。

具体例として、住氏はラーメン店を使って説明した。AIはラーメンを食べることはできないが、おすすめのラーメン店は教えてくれる。これは、ラーメンを食べた人の評価や、ラーメン店の人気を見ているのだ。私たちもラーメン店を選ぶ際、クチコミを見るなど他の人の判断を借りる。AIも同じで、人々がどうしたかを見て、確率的に正しそうな回答を生成しているのだ。その際の情報源となるのが、独立した第三者による評価である。

AIのおすすめの情報源は第三者の評価

AIがどのように“推薦”をするかの具体例として、住氏はWebカメラを購入した際のGoogle検索の画面を示した。「動画配信に使う2Kから4KのWebカメラのおすすめは?」と検索すると、いくつかの製品名が提示された。情報源の引用元を見ると、メーカーや販売店のサイトではなく、レビューサイトの記事が引用元であった。つまり、AIは第三者の評価をもとに推薦する製品を決めているのだ。

Webカメラのおすすめの情報源はレビューサイトの記事だった

同様に「大阪で外国人旅行者に人気のたこ焼き店は?」と検索すると、複数のたこ焼き店がおすすめされた。この情報源も、旅行系やグルメ系のまとめ記事だったという。

この2つの事例からわかる重要なポイントは、「おすすめを尋ねる質問では、公式サイトの自画自賛は信頼されない」ということ。製品仕様や価格などのデータは公式サイトに記載されている内容も信頼されるが、おすすめにおいては第三者の評価が信頼される。AI検索に対応した情報発信が必須であるとよく言われるが、「売り手や作り手の自己主張は、AIの推薦とは何も関係が無い」と住氏は言い切る。

その証拠として住氏が紹介したのは、「大阪湾の夏の船釣りで中級者におすすめの魚種は?」の検索結果だ。AIはタチウオやキジハタ、青物、マダコなどをおすすめとして提案した。

「大阪湾の夏の船釣りで中級者におすすめの魚種は?」の検索結果

これは、タチウオやキジハタが、AI検索に適した情報発信をしたからではないですよね。そんなことは、タチウオやキジハタにはできません。釣り船会社や、釣り好きな人が発信した情報をもとにAIが推薦をしたということです。AIに推薦されるには、自己主張ではなく、あくまでも第三者の推薦が必要です(住氏)

人が使うWebからAIがまとめるWebへ。変化に備えよう

これらのことを踏まえ、やるべきことは何か。住氏は、「サイト外では外部の第三者からの評判を構築し、サイト内では客観的なデータを確実に発信していくことだ」と言う。

具体的にはサイト外の施策では、クチコミとメディア露出を増やすこと。たとえば、以下のような方法が挙げられる。

  • お客様にブログやSNS、レビューサイトの投稿を依頼する
  • 地域ビジネスならGoogleマップのクチコミ投稿を依頼する
  • ECサイトならサイト内の商品レビュー投稿を依頼する
  • 報道価値のある企画でリリースを打ち、パブリシティを狙う

サイト内では、客観的なデータを出すことだ。製品やサービスの仕様、会社情報を不足なく掲載する。さらに重要なのが、「サポート情報・事例などを充実させていくこと」と住氏。返品や返金、配送のポリシー、保証内容などを一通り揃える。事例は情報を追加するなど、更新していくことも考えよう。最後に住氏は以下のように講演をまとめた。

自然な言葉での質問が増えれば、クリックは減ります。これからはリンクのリストではなく、AIの回答が、企業の主戦場になります。AIは第三者の証言と公式な一次情報を信頼するので、クチコミを増やしたり、パブリシティを獲得したりする施策に取り組んでいくこと。第三者の証言はAIや検索がなくても取り組むことで、これまでも取り組んでいると思います。取り組めば、“AI時代のSEO”にも備えることにつながり、一石二鳥になります。Webは人が使うWebから、AIがまとめるWebへと変わろうとしています。備えていきましょう(住氏)

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