なぜAI画像は、それっぽいのに不自然? 非デザイナーが最適なクリエイティブを見極める判断軸とは
AIで誰もがデザインできる今、必須なのは「見極める力」。電通のアートディレクターが人間の心理や視覚に基づき、最適なクリエイティブを選ぶための自分の中での判断軸を解説。
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生成AIの進化によって、誰もが簡単にクリエイティブを制作できるようになった。しかしそれは同時に、デザイナーではないマーケターや営業、企画、広報といったあらゆるビジネスパーソンにも、AIが大量に出力する案を正しく「選別・修正・承認」するスキルが求められるようになったことを意味する。
「生成AI × マーケティング フォーラム 2026」に電通のアートディレクター・須藤絵理香氏が登壇。AI時代に求められるデザインの本質について解説した。
「数値的な正解」と「人間の感覚」は違う。AIデザインに潜むズレ
講演は、図形を見ることから始まった。
(右図)3本の線の中で一番長いのはどれ?
出典:杉原 厚吉 著(2018)『わかっていても騙される 錯覚クイズ』だいわ文庫
三角形の中にある点は、じつは図形上の正しい中心にある。また、複数の直線で作られた図形は、すべての線の長さは同じだ。しかし、人間の目で見るとズレているような感覚や、長さが異なるような感覚を抱かせる。数学的な中心と、人間が中心だと感じる位置は一致しない。つまり、数値的に正しいことと、視覚的に正しいことは違うのである。
たとえば、人間には次のような普遍的な性質がある:
- 大きいものから見る
- コントラストの強いものに目を奪われる
- 近いものを同じグループと感じる
- 情報が多すぎると理解できない
- 見た目の印象で意味や信頼性を判断する
AIがたくさん案を生成したときに、人にどう見え、どう伝わり、どう行動させるかの判断基準が必要です。誰もが作れるようになったからこそ、見極める人を増やす必要があります。これが生成AI時代のデザインリテラシーが必要な理由です(須藤氏)
人は「全部見ない・正しく理解しない」。知っておくべき視覚心理
須藤氏は、人間がデザインをどう見ているのか、本質について複数の観点から整理していった。
「人は、全部を見ない」
- 人の顔や目を優先して見る
- 動いているものや変化したものに反応する
- 違うものを先に見つける
- 端よりも、まとまりや境界を見る
「人は、正確に理解しない」
- 人は欠けた形を頭の中で補完する
- 似ているものを同じ役割だと思う
- 過去に見たものを手がかりに理解する
- 曖昧なものは、知っている形として解釈する
「人はたくさん比較できない」
- 目立っているものを、重要なものだと思う
- 最初に見た情報が、その後の判断基準になる
- 初期設定やおすすめに流されやすい
- 難しい選択より、簡単に理解できる選択を選ぶ
「人は、ほとんど覚えていない」
- 情報そのものより、特徴を覚える
- 最初と最後が記憶に残りやすい
- くり返されたものを重要だと思う
- 意外性があるものは記憶に残る
「人は理屈より先に感情で判断する」
- 美しく整っているものを、使いやすく信頼できると感じる
- 左右対称は安定、非対称は動きを感じる
- 角のある形は緊張、丸い形は安心を感じやすい
- 理解できないものを、人は不快・不安に感じる
「人はわかっただけでは動かない」
- 次に何をすればいいかが明確だと動きやすい
- 自分に関係があると感じた情報だけを見る
- 損を避けたい気持ちは得をしたい気持ちより強い
- 他人が選んでいるものを安全だと判断する
デザインでは、人間の性質を知ったうえで、人にどう見えて、どう伝わって、どう行動させるかを考えて見え方を設計しなければなりません(須藤氏)
デザインリテラシーを高める「優先順位・構造・目的」3つの基準
では、デザインリテラシーを高めるためにはどうすればよいのか。須藤氏は3つのポイントを紹介した。
1つ目のポイントは、何を一番に伝えるか、優先順位を決めること。伝えたいことを全部目立つようにすると、どれも印象に残らないが、主役を一つに絞って伝えたほうが伝わる。
生成AIは情報を盛り込みすぎるので、一番伝えたいことは何か、二番目は何か、なくても伝わる情報は何か、どの順番で見てほしいかを意識してください。デザインは飾ることではなく、優先順位を目に見える形にすることです(須藤氏)
2つ目のポイントは、情報を理解させる構造だ。人は資料を上から順に読まず、パーツを把握して全体の構成を判断する。
次のような構造を意識するとよい:
- 近接
- 整列
- 反復
- 対比
- 余白
これはデザイナー向けのテクニックではなく、通常のビジネスの場で使うプレゼン資料、Webサイト、バナー、社内文書などすべてで使えます。特に余白は、空いている場所と考えるのではなく、情報の関係を伝える場所として覚えてほしいです。AIは余白を嫌うので、意識して余白の確保を指示する必要があります(須藤氏)
3つ目が、「きれい」ではなく、目的に合っているかで判断することだ。
デザインには正解がないので、判断軸を自分の中に持つ必要があります。判断軸になるのは、①誰に届けるのか、②何を理解してほしいのか、③どう動いてほしいか、というデザインの目的に合うかどうかです(須藤氏)
高級感のあるサイトを用意しても、商品名が読めない、申込みボタンが見つからない、誰向けかがわからない、という状態では、目的を果たしていないことになる。
「それっぽいけど、なんか違う」を言語化する5つの視点
とはいえ、「どうすればいいのか」と思う人も多いはずだ。須藤氏は、デザインを見る際に次の5つを確認することを勧める。
- 最初にどこを見たか
- 何の広告・資料かわかったか
- 一番伝えたいことが一つに見えるか
- 情報をどの順番で読めばいいかわかるか
- 見た人に何をしてほしいかわかるか
訓練すると自分の判断軸が育ち、一目見ただけでも感覚的にうまくいくかどうかがわかるようになってくる。これをくり返すことでデザインリテラシーを育てていけると須藤氏は話す。
生成AIのおかげで誰でもデザインができるようになりましたが、そのデザインで人に伝えられるかまでを考えるようになってください。
デザインにおいて大事なのは①優先順位(何を一番伝えるか)、②構造(情報の地図)、③目的(誰に何をどう動いてほしいのか)の3つです。道具は変わっても、人の本質は変わりません。だからデザインの基礎を知り、自分の中での判断軸を育てていってほしいと思います(須藤氏)
【Q&A】AI時代のデザインに関するよくある質問
講演の最後には、よくある質問としてQ&Aが紹介された。
Q:やめた方がいいことをあげると?
A:情報を足すこと。不安になると要素を足したくなるが、迷ったら削る方向で考える。
Q:判断軸を育てる具体的なトレーニング方法は?
A:日常の広告やPOPを見て「最初にどこを見たか」「作り手は何を見せたかったか」「自分に何をさせたかったか」を言語化し続ける。違和感の理由を言語化できるようになると、AIの出力への指摘も的確になる。
Q:どのAIツールを使えばよいか?
A:ツールから入るとツールに振り回される。どのツールも出すのは案であって、答えではない。ツール選びより判断軸を育てることを優先すべき。生成AIはどれも更新され続けるため、ツールの優劣より人間側の軸が重要になる。
Q:デザイナーという職業はなくなるのか?
A:手を動かすだけの作業は減るが、「見え方の設計に責任を持つ人」の役割は増す。非デザイナーのリテラシーが上がるほどプロとの会話の解像度が上がり、プロのデザイナーはより高度な仕事へシフトしていく。
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