自社ブランドはAIにどう見られている? SUBARUが実践するAIO施策とは
現状把握から具体的な対策まで、データに基づいた実践的なアプローチをどのように進めていったのか――SUBARUの事例に学ぶ、AI検索時代におけるブランド想起戦略とAI活用。
7:05
生成AI活用が広く生活者に浸透してきた今、マーケターが最も気になるのは「自社ブランドがAIにどう認識され、どのくらい言及・引用されているか」だろう。「ファミリー向けでおすすめの車は?」といった特定のブランド名を含まない抽象的な質問に対して、AIの回答候補に自社ブランドが入っているか――? これからのWebサイトでは、従来の検索エンジンだけでなく、「AIに正しく言及されるための対応」が求められている。
そうしたなか、コーポレートサイト改革の一環としてAIO(AI検索最適化)施策に取り組んでいるのが、創業100年を超える自動車メーカーのSUBARUである。
「生成AI×マーケティングフォーラム2026」に登壇したSUBARUの佐藤氏、吉田氏、ユーザーローカルの千村氏は、SUBARUが現状把握から具体的な対策まで、データに基づいた実践的なアプローチをどのように進めていったのか解説した。

(中央)株式会社SUBARU 広報部 オウンドメディアグループ 吉田 亘佑 氏
(右)株式会社ユーザーローカル コーポレートセールス部 デジタルマーケティングSaaS カスタマーサクセス エンタープライズチーム 千村 甲斐 氏
3ステップで進めるAIO施策
コーポレートサイトをAIO施策の対象にした場合に悩ましいのが、「どこから着手すべきか」という問題だ。コーポレートサイトが果たす役割は多岐にわたるからである。SUBARUで言えば、「自動車」と「航空宇宙」の2つの事業セグメントがあり、またブランディングや採用、IRやサステナビリティといった目的の異なる多様なページが存在している。
SUBARU広報部の佐藤氏は、まずは、生活者の購買検討との接点が多く、AIへの質問も想定しやすい自動車領域から調査を始めた。
車の購入を検討するなかでAIに相談したときに、「どんな質問に対する回答でどのようにSUBARUが言及されているのか」、「根拠として参照されているページはどれなのか」などを把握できれば、他の領域に展開する際の“型”にできるだろうという考えもあった。
実際にSUBARUのAIO施策に伴走したユーザーローカルの千村氏は、AIO施策の進め方としては、「現状把握→分析・診断→改善」を継続的に繰り返していくことが重要だと語る。それぞれ詳しく見ていこう。

STEP ① 現状把握
SUBARUが現状把握において活用したのが、ユーザーローカルの「User Insight」に搭載された「LLMOダッシュボード」だ。LLMOダッシュボードに調べたいプロンプト(質問文)、ブランド名、ドメインを登録すると、主要5つのLLM(ChatGPT/Gemini/Claude/Grok/Perplexity)におけるブランドの言及率(AIの回答に登場したか)やドメインの引用率(URLが情報源として明記されたか)を可視化できる。

また、それぞれのプロンプトに対しAIからどのような回答が来て、そのなかで自社や競合他社のブランドがどう引用されているかをプロンプトごとに定点観測できる。

3カテゴリーのプロンプトを調査
吉田氏によると、SUBARUでは下記の3カテゴリーに分けてプロンプトを登録したという。
- 勝ち筋セグメント:自社の強みである安全性、AWD(全輪駆動)・アウトドアなどの内容
- 全体カバー:一般的によく質問されそうな内容
- 家族・子育て:子育てや初めての車を購入する人が質問しそうな内容
このような「強みの訴求」「業界での立ち位置」「どの層を狙いたいのか」という3つの切り口によるカテゴライズは、どの業種でも応用できるはずです(千村氏)

プロンプトにおける言及率
これらのプロンプトにおけるSUBARUの言及率はそれぞれ下記の通りだった。
- 勝ち筋セグメント:98%(業界1位)
- 全体カバー:48%(業界4位)
- 家族・子育て:22%(業界4位)
この割合はプロンプトの組み合わせによっても大きく変動するため、一概に高ければ良いというものではないが、定点観測の指標として活用するのが効果的だ。

どのテーマで施策を行うのか
次に、先の結果も踏まえ、どのテーマで施策を行っていくのかを検討する必要がある。そこでSUBARUでは、「AIに言及される可能性があるテーマは?」「ユーザーのニーズがあるテーマは?」という2つの観点で対策するテーマを絞り込んでいった。
まず「AIに言及される可能性があるテーマ」をどのように調べたのか。
たとえば、「子育てファミリーに人気の国産車のおすすめは?」とAIに聞くと言及率が20%だったのに対し、「安全性能が高く子育てファミリーに人気の国産車のおすすめは?」と聞くと100%となりました。
同じ文脈でも「安全性能」や「運転支援」といった文言が入ると言及率が変わるのです。つまり、SUBARUの強みを入れることで、言及率が上がるテーマであれば、伸びる余地があるのではないかと考えました(佐藤氏)

「ユーザーのニーズがあるテーマ」については、Googleの検索ボリュームから質問ボリュームを推定していった。Googleでよく検索されているテーマは、AIにもよく質問されている可能性が高いからだ。結果、「家族・子育て」が最も多く、月間約2万件の検索ボリュームがあった。続いて、「車中泊」が約5,400件、「アウトドア」が約3,500件で、あとはすべて1,000件以下だった。
「家族・子育て」がここまで多いとは思っていませんでした。「車中泊」が意外と多いのも、感覚では気づけなかった部分です(吉田氏)
これらの結果から、テーマごとのポジショニングマップを作成。データで可視化したことで、納得感を持って、検索ボリュームが多く、伸びしろも大きい「家族・子育て」テーマを優先すると決められた。
なお、最近、User Insightがアップデートされ、プロンプトを入力するだけで、そのプロンプトの推定ボリュームが表示されるようになり、テーマの優先順位づけをより簡単に行えるようになったという。
STEP ② 分析・診断
続いて、分析・診断のフェーズに入っていく。SUBARUが行ったのは「引用されていたページの分析」と「AIの主な検索パターンの分析(クエリファンアウト)」の2つだ。
引用されていたページの分析
今回、調査したプロンプトは約80にのぼる。そのうち、AIがSUBARU関連のページを引用した件数は46件だった。その内訳は、車の情報を掲載している「商品サイト」が25件で54%。次に「コーポレートサイト」が13件で28%。コーポレートサイトの引用ページはすべてニュースリリースだった。
調査したプロンプトは、いずれも購入の検討段階でされる質問ばかりだったので、ニュースリリースがこれほど引用されているのは意外でした(佐藤氏)
AIに引用されたニュースリリースの内訳をさらに詳しく見てみると、「JNCAP」という国土交通省とNASVA(独立行政法人 自動車事故対策機構)が実施している自動車の安全性能評価に関するものが7割を占めていた。AIはユーザーの質問に回答するために、裏で「自動車の安全」を「JNCAP」という公的な基準に置き換えて調べていたことがわかった。
AIの主な検索パターンの分析(クエリファンアウト)
クエリファンアウトとは、ユーザーが入力した質問をAIが複数の細かい質問(サブクエリ)に分解し、複数経路で集めた情報を統合して、ひとつのわかりやすい回答を生成する仕組みのことだ。

このクエリファンアウトを細かく見ていくと、AIが裏で次のようなポイントを重視しながら調べていることがわかってきた。
- 年号で最新に絞る:「2025」「2026」といった年号を追加して検索している。情報の鮮度が選別の条件になっている。つまり、日付を明示してページを更新し続けることが大事
- 価格・寸法を確認:「価格」や「最低地上高」といったワードで検索している。つまり、価格や寸法はAIが読みやすい形式(HTMLテーブルと構造化データ)で置くことが大事
- 英語で検索:日本語の質問を英語に翻訳して検索していた。つまり、英語での発信も大事

STEP ③ 改善
最後のフェーズは「改善」だ。User Insightの「AI最適化レポート」を使えば、指定したページのAI最適化状況を確認できる。優先的に改善すべきポイントも提示されるため、次のアクションにつなげやすいのが特長だ。

サイトの分析・改善施策もAIにお任せ、「AI改善エージェント」活用法
User Insightに新たに搭載された「AI改善エージェント」は、チャット形式で質問するだけで、User Insight内のデータをAIが横断的に分析し、課題の抽出から改善提案までAIが自動で行ってくれる機能だ。特定ページのURLを入力して分析したり、期間を限定して2つのページの効果を比較したりすることもできる。

必要な情報や改善の方向性を簡単に引き出せるところが良かったです。アクセス解析はどうしても属人化が起こりやすいのですが、AI改善エージェントがあれば知識や経験の有無による差を小さくできる。他部署からの問い合わせにもスムーズに答えられるようになりました。ページを更新する前後で比較して、そこからさらにどう改善すべきかまで提案してくれるところも非常に便利です(吉田氏)
SUBARUのAIO施策:3つのまとめ
最後に、佐藤氏は今回の取り組みから得られた気づきを次の3つにまとめた。
- ニュースリリースが、AIを介して生活者にも届くものになっている
- ブランド名が言及されるかどうかは自社の発信だけでは決まらない
- Webサイトの対応だけでなく、広報分野の取り組み全体がAI検索時代において重要
「AIO施策として何から始めればいいか迷ったら、まずは現状把握から着手すると良い」と語り、佐藤氏はセッションを締めくくった。