リッチコンテンツ
RIAシステム 構築ガイド Essential 2
RIAコンソーシアムが発行したRIAの普及促進や開発に関するガイドライン『RIAシステム 構築ガイド』の2008年版である『RIAシステム 構築ガイド Essential 2』をWeb担向けに特別にオンラインで公開するコーナー。
単なる「見栄え」だけではない"おもてなし"の実現
RIAシステムの中で、少し他と区別されて語られる種類のものがあります。「リッチコンテンツ」と呼ばれるものです。動画や音声、Flashなどを用いた高い表現力を持つコンテンツのことで、アプリケーション的な部分よりも、高品質な動画や音声という比較的データ量の大きな素材を大量に利用する部分に着目した呼び名です。YouTubeやニコニコ動画等の人気も手伝い、今やPCや携帯でネット動画を見る行為は一般的なものになりました。また最近では、商品紹介やブランディングサイトでのリッチコンテンツ活用も増えています。
中でも、注目されているのが、Person in Presentation(PIP)で、文字通りプレゼンテーションの中で人間の動画映像を用いたコンテンツのことです。人の動作や音声を効果的に活用するもので、シナリオや俳優、撮影機器といった、他のRIAシステムにはないものが必要となります。古くは、eラーニング系の「授業」系動画を核としたものが中心でしたが、最近はユーザの誘導やインタラクティブな応答の作りこみ部分が話題の中心になりつつあります。
効果的なPIPを作るには、映像やアニメーションや背景等が同じデザイン要素として扱えることが不可欠です。様々な素材をアルファチャンネル(透過情報)の活用によって、合成して効果的な「場面」を作りこんでいきます。よく使われるアニメーションの種類としては、テキストによるテロップから、複雑なものとしては3DCGなどが挙げられます。
こうした映像をデータベース(DB)と連携させることにより、単なる「見栄えのよさ」だけにとどまらない快適さがWebコンテンツにもたらされました。例えば、人物映像によるナビゲーターが手順に沿って説明を行い入力をサポートするという各種申し込みフォームは、HTMLベースでの改善ではなしえなかったレベルでの誤記率の低下や入力完了率の高さを達成可能にしました。人物の表情と声による誘導や促しは、ITリテラシの壁を越えるものとして、数字上でもその効果が現れています。
更に必要な箇所のみを表示する条件分岐や、IMEコントロールによる入力箇所に応じた自動変換入力、記述内容の間違いをリアルタイムに教えてくれるなどの諸機能が、人物映像のナビゲートとあいまって、複雑な入力作業に際し、ユーザに安心感を与えることができます( 例:三菱UFJニコス ローンカード申込み)。
上記は、予めシナリオがあり、その中をユーザを如何に進ませるという観点で、映像とDBの連携が図られています。しかし、シナリオをユーザに作らせる、という場合もあります。映像を細かな単位で用意し、ユーザに自由に組合させたり、音楽やメッセージを関連つけたりするものです。そして、その出来上がった「作品」を誰かに送る(あるいは贈る)ことを許したりします。個人同士の温かいつながりをサポートする環境を提供することで、ブランディングや知名度向上といった目的で使われることが多いようです。例えば、パントマイムの映像とメッセージを自由に組み合わせて、知人に贈れる仕掛けがあります(例:Jストリームスペシャルサイト「マイムレター」)。
Flashのインタラクティブ機能を生かし、ユーザを引き込むコンテンツ企画も出てきています。上記が、個人と個人というつながりが中心なのに対して、多人数用のゲームを用意するなどの「場」を提供することで、ユーザ同士がつながり合える環境を用意するような場合です。最近はアクセス数だけではなく、滞在時間を延ばそうとする傾向もありますので、そのような場合に有効に働きます。エスエス製薬のキャンペーンサイト「ドリエル おやすみなサイト」は、ウェブ上に用意された巨大なエアパッキンシートをみんなでプチプチして楽しむ企画が話題になりました。滞在時間はこのようなコンテンツの秀逸性に依存する場合が多いように思います。
拡張子 | ビデオコーデック | 動画の透過性 | 対応Flashバージョン |
---|---|---|---|
.flv | Sorenson Spark Pro | × | Flash 6.0.79.0以上 |
.flv | On2VP6 | ○ | Flash 8.0.22.0以上 |
.mp4/.f4v | H.264 | × | Flash 9.0.115.0以上 |
リッチコンテンツの波は、いまやPCだけにとどまらず携帯にも及んでいます。複数ブラウザで閲覧可能なPCサイトとは異なり、しかも限られた画面スペースとなる携帯サイトの場合、情報の盛り込み方、見せ方もより端的でスムーズなものが求められる傾向があります。そんな中、ビジュアルに訴え、ページ遷移なく詳細へと進んでいける携帯でのFlash活用への注目も高まっています(例:ニッセンの展開するiチャネルサイト「ニッセンチャネル」)。
また、個人メディアである携帯では「自分仕様を楽しむ」というスタイルが確立しており、携帯動画のほか、オリジナルの待受画面やきせかえツール、着うた等を販促ツールに活用する動きも活発化してきています(例:日本ミシュランタイヤ「X-ICE TV モバイル」待受画面)。
Jストリームが、2007年10月に実施した調査では、ネットユーザが企業サイトに持つ不満の要因は、「情報の量」や「伝えたい中身」ではなく、「情報の見せ方」に多くあることがわかりました。
情報があふれる現代においては、情報発信に加え、情報の発信者(企業、メディアなどのサイト主体者)の想いがユーザにきちんと伝わるように気を配り、訪問したユーザを迎え入れて丁寧にもてなすといった「Webホスピタリティ」の発想が一層求められてきています。リッチコンテンツは単なる見栄えのレベルを超え、「Webホスピタリティ」の実現に貢献できる有効な手法のひとつなのです。
- 小林 義裕/KOBAYASHI yoshihiro
- 株式会社Jストリーム
この記事は、RIAコンソーシアムが発行した『RIAシステム 構築ガイド Essential 2』の内容を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。※掲載されている内容は2008年12月発行時点のデータに基づいています。
RIAコンソーシアムの活動記録とも言える本ガイドは、RIAの普及促進、開発に関するガイドライン、課題解決などについて、マネージメント、ユーザーインタフェース、テクノロジーの3つの視点からみた、それぞれのテーマについてまとめています。
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