ロッテHDがホールディングスサイトをリニューアル。「シンプルさ」を実現した情報整理の舞台裏を聞いた
新規事業を加速させるロッテホールディングスが、コーポレートサイトをフルリニューアル。
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「ロッテ」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはガムやチョコレート、アイスだろう。しかし、グループを束ねるロッテホールディングスは今、ライフサイエンスやデジタル、ホテル、エンターテインメントといった領域で新規事業を次々と立ち上げている。
「その姿を伝える場所がない」――そんな課題から、同社は2026年4月、コーポレートサイトをフルリニューアルした。リニューアルの背景と進め方について、ロッテホールディングス 広報部 部長の三村麻里香氏と、同部 グループ広報チーム リーダーの柴田珠希氏に話を伺った。
発信すべき情報が、圧倒的に足りていなかった
三村氏がロッテホールディングスに入社したのは2024年6月。最初に目に留まったのが、自社のコーポレートサイトだった。
当時のサイトは、企業概要や理念、グループ企業の一覧、お知らせといった基本情報だけを載せた、ごくあっさりした作りだった。
入社してすぐにリニューアルの必要性を感じました(三村氏)
背景にあるのが、同社の事業の変化だ。
2022年に代表取締役社長CEOの玉塚元一氏が「ONE LOTTE」を掲げて以来、ロッテホールディングスは日本と韓国の事業シーズを掛け合わせた新規事業を推進してきた。2024年ごろからその芽が出始めていたが、それを社外に説明する場所がなかった。
ロッテホールディングスは、菓子・アイスにとどまらず、ライフサイエンスやデジタル、ライフスタイル・エンターテインメントといった新たな領域へ事業を広げようとしています。BtoBでさまざまな事業に取り組むなかで、自社のサイトで事業を説明する情報を発信することで、取引先の信頼を得ることができ、営業活動のサポートにつながると感じていました(三村氏)
株式会社ロッテホールディングス 広報部 部長
ぐるなびに約15年在籍し、サイトの構築・リニューアルなどを経験。ユニクロ、パーソルビジネスプロセスデザインを経て、2024年6月にロッテホールディングスへ入社。グループの社内外広報を管掌。
ターゲットに従業員を加えた理由
制作会社のコンペを経て、プロジェクトが本格的に動き出したのは2025年半ば。全体の企画は三村氏が担い、制作ディレクションは柴田氏がリードする体制をとった。
企画にあたって最初に議論したのは、新たなサイトのターゲットだった。
優先順位の1番目に置いたのはビジネスユーザーだ。食品・飲料業界、原料サプライヤーや小売、物流、ホテル・観光・エンタメ、医薬・医療など、新規事業の相手となる企業の担当者に事業内容を伝え、新たな事業機会につなげたいと考えた。
2番目がメディア関係者。以下、一般の生活者、求職者と続き、5番目に従業員を置いた。
従業員をターゲットに入れるかどうかは、最初は迷いました。でも私は社内広報も担当しているので、せっかくなら社外と社内の両方に情報を出したい。社内向けの情報もコーポレートサイトに出してしまえば、みんながそこを見てくれる。社内外の情報を統一でき、生産性も上がると考えました(三村氏)
この判断は、ロッテホールディングスの組織の変化とも重なる。
三村氏の入社以前、同社にはグループの社内広報の機能がなかった。各社が自律的に事業を進めてきたからだ。しかし「ONE LOTTE」を掲げる以上、グループをもっとつなぐ必要がある。三村氏は入社と同時に、社内外の広報組織を整えた。
その一環として社内向けに約1年続けてきたのが、玉塚氏が社内外の人物と対談する動画コンテンツだ。玉塚氏自身が立ち上げた次世代経営者の選抜育成プログラム「ロッテ大学」の外部講師などをゲストに迎え、グループの従業員に経営の考えを届けてきた。
今回のリニューアルでは、こうした社内向けコンテンツを社外にも開き、「グループストーリー」として公開した。社内広報チームと連携し、社内向けに制作した動画や記事を、ステークホルダー向けに編集して掲載している。
社内だけで見ていたらもったいない。成長戦略を進めるうえでは、その裏にある想いをステークホルダーの皆さまにお伝えすることが大切だと考えました。事業化に至るまでの過程もお伝えしたいので、最近は各事業の新しい取り組みにも重点を置いています(三村氏)
「日韓2本社制」を誤解なく伝えるには
サイトの情報設計で最も頭を悩ませたのが、グループの構造をどう見せるかだった。
一般的なホールディングス会社はグループ全体の経営を統括し、国内外の事業会社を束ねる。しかしロッテグループは、日本と韓国にそれぞれ本社を置く2本社制をとっている。韓国ロッテグループについては、LOTTE Corporation(韓国ロッテ)が韓国ロッテグループの情報を網羅したウェブサイトを運営しているため、今回のサイトは、日本のロッテグループに特化したものだ。
日本のホールディングスが日韓すべての事業を手がけているように見せてしまうと、実態との齟齬が生じます。日韓を並列に並べつつ、見る方が混乱しないようにするにはどうしたらいいか、サイトマップを作りながら試行錯誤しました(柴田氏)
一方で「ONE LOTTE」を表現するには、日韓を合わせたグループ全体の規模感も示したい。さらにロッテホールディングスは、グループの管理だけでなく、自ら新規事業も手がけている。
グループ全体の話なのか、日本のグループの話なのか、ホールディングス自身の事業なのか。情報を並列に置いてしまうと、ユーザーは混乱してしまう。
このような議論を繰り返し、ホールディングスとして自分たちの立ち位置はどこなのか、ということを明確にする必要がありました(三村氏)
最終的にたどり着いたのは、シンプルな切り分けだった。
最新情報を発信する「ニュースルーム」、ロッテホールディングスおよび日本グループの「事業内容」、同社の基本情報を伝える「企業情報」、そして日韓・グローバルの全体像を伝える「ロッテグループについて」のエリアに分けた。
グループ全体を語るのは最後のエリアだけで、それ以外はロッテホールディングスと日本のグループについて説明する。グローバルの情報は、韓国ロッテの広報とやりとりしながら固めていった。
どのグループ会社まで載せるか、事業内容をどう書くかといった情報面は、韓国側と足並みをそろえました。日韓の主要グループ会社を創業年とともに一覧にしたページも、新たにつくりました。これまでは韓国のサイトを見ないと分からなかった情報なので、日本のステークホルダーの方にも全体像を知っていただけるようになったと思います(柴田氏)
株式会社ロッテホールディングス 広報部 グループ広報グループ グループ広報チーム リーダー
金融業界で広報や人事などを担当したのち、2025年6月にロッテホールディングスへ入社。
社内にもなかった「事業の分類」をつくる
もう一つの難所が、事業内容のページだった。
ロッテホールディングスの成長戦略は、「食品」「ライフサイエンス&デジタル」「ライフスタイル&エンターテインメント」の3つの柱で構成される。大分類(3つの柱)と中分類(事業領域)はあったが、その下の小分類(各事業)は、対外的に説明するために、改めて整理し言語化する必要があった。
そこで柴田氏は、経営戦略本部とともにすべての事業を書き出し、分類するところから始めた。
私は外部の方に分かりやすいという視点で名称を考えたのですが、実際の事業部では違う呼び方をしていたりするので、従業員からすると違和感がある。1つの部署や会社が1つの小分類にきれいに収まればいいのですが、2つに分かれるケースもあり、苦慮しました(柴田氏)
最後は関係者と話し合いを重ね、収まりのよい形にまとめた。グループ各社とは、半年に1回開いているグループ広報連絡会の場で、リニューアルの目的や依頼したい作業、スケジュールを事前に共有しておいたことも、調整がスムーズに進んだ要因だったという。
事業部の皆さんは、まず自分たちの事業を説明できる“器”ができるだけでもありがたい、という受け止めだったと思います。営業の方が取引先にホールディングスのことを説明しやすくなっていればうれしいと考えました(柴田氏)
「信頼」と「革新」、対照的なイメージをどう両立するか
新しいサイトを開くと、まず目を引くのがそのシンプルさだ。白地に文字を中心とした構成で、コーポレートカラーの赤はアクセントとして使う程度にとどめている。
デザインに入る前に、部内で大切にしたいキーワードを出し合った。誠実に高品質な製品を届け、愛されてきたロッテの「信頼」という土台のうえに、ロッテホールディングスの「革新」「多様性」「ユニークさ」が加わる。そんなイメージだ。
日本では、ロッテと言えばお菓子・アイスのイメージが強いと思います。とはいえ、ホールディングスは新しいことにも取り組んでいる。そのバランスをどう取るか。キービジュアルでお菓子を押し出すのか、先進性を押し出すのか、かなり悩みました(柴田氏)
制作会社から複数のデザイン案を受け取り、試行錯誤の末に行き着いたのが、「ロッテらしさ」と「新しさ」を融合した表現だ。
ロッテの礎を表す「L」の曲線をビジュアルに取り入れ、成長戦略の3つの柱を赤・青・黄の3本のラインで表した。
赤は食品、青はライフサイエンス&デジタル、黄はライフスタイル&エンターテインメントを示す。3本のラインには、あえて動きをつけて躍動感を演出した。
一方で、装飾は最小限にとどめた。新規事業がまだ成長段階であることも、シンプルさを選んだ理由の一つだ。
どれかの事業が突出して大きいわけではなく、みんなこれから育っていく段階です。だから変に色をつけたり作り込んだりするよりも、余白を残しておきたいと考えました(柴田氏)
公開から約半年。グループ会社を含め、従業員からもさまざまな意見が寄せられるようになった。
サイトの内容をPDFにまとめた「会社案内」をニュースルームのライブラリに掲載したところ、役員からも「使っている」という声が届きました。結果としてグループの従業員がサイトのコンテンツに触れる機会が増え、グループの取り組みへの理解も進んできました(三村氏)
80周年に向けて、ストーリーを伝えるサイトへ
今後に向けて見据えるのが、2028年に迎えるロッテの創業80周年だ。
「ロッテグループの歩み」を拡充し、歴史に刻まれたDNAを伝えることで、ロッテホールディングスがなぜ新規事業に挑むのか、その背景と信頼を伝えていく考えだ。
グループストーリーも、現在はロッテホールディングスと株式会社ロッテの話題が中心だが、来期以降はグループ会社にも広げていく予定だという。
まずはこの1年、私たちでやってみて、グループ会社の広報の方にイメージを持ってもらいたい。そのうえで「自分たちも載せたい」と思ってもらえたらうれしいですね(柴田氏)
かつてグループ会社側の立場も経験したことのある三村氏は、双方の目線を大切にしている。だからこそ、グループ会社と丁寧にコミュニケーションをとりながら、ロッテグループ全体の理解と認知拡大につなげていきたいという。
企業が成長し続けるように、コーポレートサイトも完成形はないと思っています。その最初の一歩を、今回のリニューアルで踏み出せたと思っています(三村氏)
