公開からわずか1年で、なぜTOPPANはパーパスサイトをリニューアルしたのか? グローバル発信にかけた執念とプロジェクトの全貌
TOPPANは2025年に公開したパーパス特設サイトを、2026年3月にリニューアルした。
7:05
TOPPANホールディングス株式会社(以下、TOPPAN)は2025年、グループ全体にパーパスを浸透させるための特設サイト「TOPPAN's Purpose Special Site」を公開し、2026年3月にリニューアルを実施した。サイトの企画・制作を担った広報本部の渡邊慎悟氏と穂苅美夏氏に、サイトに込めた狙いとリニューアルの中身を聞いた。
「印刷の会社」から、3つの事業を柱とする企業グループへ
2023年、凸版印刷は社名を「TOPPANホールディングス株式会社」に変更し、ホールディングス体制へ移行した。現在は「情報ソリューション(印刷を含む)」「生活・産業」「エレクトロニクス」の3事業が柱で、もはや印刷だけの会社ではない。
ホールディングス化にあたって浮かび上がったのが、グループの理念の問題だった。
グループ各社は、それぞれの理念を持っていました。全社で目指すべき方向性を合わせてシナジーを生み出していくには、グループ統一の理念が必要だと考えたのです(渡邊氏)
2万人規模の社員調査や経営トップへのインタビューなどを経て策定したのが、次のパーパスだ。
Breathing life into culture,
with technology and heart.
人を想う感性と心に響く技術で、
多様な文化が息づく世界に。
パーパスの策定後は、まず周知フェーズとして、冊子や携帯用カード、ポスターなどのツールを7言語で展開した。社内報やeラーニング、各種研修にもパーパスを組み込み、社員の目に触れる機会を増やしていった。
その次の段階として開設したのが、パーパス特設サイト「TOPPAN's Purpose Special Site」だった。
サイトでは2025年4月に「Purpose Movie」を先行公開し、6月4日の創立記念日にあわせて翌6月5日に「Interviews」と「Messages」を公開した。
初期のサイトは、すべてのコンテンツを1ページに収めた縦長の構成だった。特に「Messages」は、125名分のメッセージを顔写真とともにすべて並べていたため、およそ50画面以上を超える非常に長いページになっていた。
1人分を小さくしてスクロール量を減らす案もありましたが、そうすると顔が小さくて見づらくなってしまう。今回の主役は社員の皆さんなので、全員を見せたいという思いが強かったんです(穂苅氏)

穂苅美夏氏
TOPPANには多様な人が働いていることを一目で感じてもらえる。実際、社員からは「こんなにいろいろな人がいるんですね」という声をよく聞きました(渡邊氏)
渡邊慎悟氏
なぜ公開から1年でリニューアルをしたのか
一方で課題もあった。「Messages」には検索機能がなく、目当ての人を探せずに離脱するケースが目立った。
創立記念日に合わせて公開することに大きな意味があったため、公開日は動かせませんでした。そのため、まずは125名分の公開を優先しました。その後もインタビュー動画を順次追加していく計画だったので、その追加のタイミングに合わせてサイトをリニューアルしようと、公開時点で考えていました(穂苅氏)
そして当初の予定どおり、2026年3月、「Interviews」に6本の動画を追加するタイミングで、サイトを大きくリニューアルした。
主な改修内容は次の5つだ。
1つ目は、左側へのナビゲーションの設置だ。以前はページを下までスクロールしないとどんなコンテンツがあるのかわからず、戻るときもスクロールし直す必要があった。リニューアル後は、ページ内のコンテンツ構成が一目でわかるようになった。
2つ目は、「Messages」の見せ方の変更だ。125名全員をメインページに並べるのをやめ、メインページでは一部をランダムにピックアップして紹介し、全員分は別の一覧ページで見られるようにした。
3つ目は、「Messages」への検索機能の追加。見たい人をピンポイントで探せるようになった。
4つ目は、「Messages」の多言語対応。各国の社員が自分の言語で読めるようにした。
5つ目は、トップ動画の軽量化。読み込みの負担を減らすため、トップの動画をより軽いものに差し替えた。
トップ動画の軽量化は、ページの読み込み速度を向上させ、ユーザーの離脱を防ぐことが主な目的だった。動画の自動再生によってページの表示に時間がかかると、本来最も見せたい「Interviews」や「Messages」にたどり着く前に離脱されてしまうからだ。まずは快適に閲覧できる環境づくりが最優先された。
世界を飛び回り、自ら手を動かす3人の広報チーム
これだけの規模の企業の特設サイトであれば、広告代理店や制作会社に大部分を任せるケースが多い。しかしこのサイトでは、軸となる部分を広報本部が担っている。全体の企画は渡邊氏、Webサイトの設計は穂苅氏が担当し、コンテンツは2人で共同制作した。
「Interviews」の撮影では、アメリカ、インドネシア、シンガポール、UAE、インド、イギリス、中国、ドイツと、すべての国に広報本部のメンバーが足を運んでいる。
現地の制作会社に頼むのではなく、日本から全員一緒に行きました。一筆書きで各国を回るようなスケジュールで、リニューアルでの追加分も含めると4回ほど。日程を詰め込みすぎて乗り継ぎに失敗し、朝5時に現地に着いて、そのまま取材に向かったこともありました(笑)(渡邊氏)
撮影した動画は、日本語・英語・中国語の3言語で仕上げた。1本3分程度に収めるため、どこを削るかも2人で検討した。撮影・編集作業は外部のスタッフに協力を仰ぎつつも、ブラッシュアップは2人で細部までこだわって行ったという。
インタビューの人選は、各事業部の海外担当部門に窓口になってもらった。
皆さん非常にレスポンスが良くて、事前のヒアリングシートも必ず期限どおりに出してくださいました。しっかりしていてガバナンスが効いている。TOPPANの良さを改めて実感しましたね(渡邊氏)
一方で、苦労したのは「Messages」だ。
写真はガイドラインを送っていたが、背景入りや解像度不足のものが多く届き、撮り直しを依頼した。Googleフォームが使えない国とはメールでやり取りするなど、125名分の原稿と写真の整理はすべて人力だった。
グローバルの方は思いが熱く、指定の文字数を超える方が多かったんです。ご本人の言葉を大切にしたかったので、あえて修正は何度もご本人にお願いしました(穂苅氏)
なぜそこまで自分たちで手を動かすのか。
元々制作部門にいたこともあり、外部パートナーとは共に創り上げる関係を大切にしています。また、根幹にある「社員一人ひとりの想い」を届けるためにも、広報自らが手を動かし、責任を持ってやり切りたいんです(渡邊氏)
Web社内報も、企画からサムネイル作りまで自分たちでやっています。言われて気づきましたが、それもTOPPANのカルチャーなのかもしれません(穂苅氏)
「見やすくなった」「家族が喜んでくれた」。リニューアル後の反響
リニューアルから約半年。社員の反応は良好だという。
一番多いのは、やはり「すごく見やすくなったね」という声です。翻訳についても「ちゃんと読めたほうが面白いね」という声がありました。グローバル企業として、こうした部分は丁寧に共有していく必要があると感じています(渡邊氏)
検索機能を付けたことで、見たい人をピンポイントで探せるのがすごく便利だと、同期の社員から言われました(穂苅氏)
インターネット上に公開したことで、思わぬ反響もあった。
インタビューに登場した社員のご家族から、「娘の仕事を知ることができてうれしい」という声をいただきました。社内でも、「取引のある海外現地法人の社長がこんな話し方をする人だと初めて知った」という声がありました。知っているようで知らなかったことを知ることができる場にもなっています(渡邊氏)
課題は「更新し続ける仕組み」
これからの課題は、継続的に見てもらうことだという。告知直後はPVが大きく伸びるが、1週間ほどで落ち着いてしまう。そこで、リニューアル時に追加した6本の動画は3回に分けて公開し、告知の機会を増やした。
ただ、担当メンバーは3名で、コンテンツを定期的に作り続けるのは容易ではない。
理想は月1本の更新ですが、今の体制では難しい。今後「出演したい」という人を募る自薦型も検討している。人選にかかる工程が短くなり、登場する人の熱量も上がるのではと考えています(渡邊氏)
最後に今後の展望を聞いた。
動画の公開後、現地から『タウンホールミーティングで紹介したら反響があった』と連絡をもらったり、LinkedInでシェアされて温かいコメントが寄せられたりしました。
私は今回の施策を通じて、自分自身のパーパスを振り返るとともに、パーパスを共通言語に世界中の仲間たちが、身近な存在に変わっていったことを実感しました。
そのような経験を、多くの社員にも広げていきたいと思っています(渡邊氏)
世界中にTOPPANのグループ会社があり、多様なメンバーと一緒に働いているんだと改めて実感できました。今後は社内報やグローバルメルマガとも連動させながら、インナーブランディングをより一層推進し、グループ全体の連携や一体感をさらに強めていきたいですね(穂苅氏)
