地元では「電気=東北電力」なのにAI検索では表示されない? 東北電力がGEOに取り組む理由
地域で高い認知度を誇る東北電力だが、AI検索では自社名が表示されない課題に直面。誤解を招く情報の参照を防ぎ、正しい比較とAI検索上での認知度向上を目指したGEO施策に挑む。
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東北電力株式会社では、AI検索で自社の情報が正しく参照されないことに課題を感じていた。
生成AIに「東北でおすすめの電力会社は?」と尋ねても、回答に挙がるのは新電力の事業者が多く、地域では「電気といえば東北電力」という認知がある一方、AI検索の領域では立場が逆転していたという。また、料金プランの比較においても、特定のプランだけとの比較がされるなど、適切な比較がされていなかった。
こうした状況を受け、同社ではWeb上での情報発信を強化する方針を固めた。しかし、「東北電力 〇〇」といった指名検索では上位に表示される一方、それ以外のキーワードでは自社のコンテンツが十分ではなかった。「IH メリット」「電気代 コンビニ支払い」など検索ニーズのあるHow toテーマで、正しい情報を届ける接点が限られていたのである。
GEOとSEOの両方に取り組む必要性を感じた同社は、支援会社5社を比較検討した。その結果、コンサルティングだけでなく自分たちでも計測・分析できるツールがあること、内製化を進めるうえでSEOやAI検索の有識者へすぐに相談できる体制があることから、ミエルカGEOの導入を決定した。
現在は、AI検索における自社ブランドの出現状況を把握するところからスタートしている。対策の優先度が高いプロンプトを見極めながら、GEOとSEOの両面を見据えたオウンドメディアの立ち上げも視野に入れている。
東北電力の個人のお客さま向けのプロモーションやマーケティングを担当する、リビング営業部の鈴木氏と桑田氏に、ミエルカGEO導入の背景と今後の展望をうかがった。
電力の小売自由化で新電力の攻勢が激化。
平時からの情報発信が急務に
鈴木氏と桑田氏が所属する東北電力のリビング営業部は、個人のお客さまに向けたプロモーションを担当する部署である。同部署が扱うサービスは大きく3つに分けられる。
- 主力事業である「電気事業」
- 安心・快適でエコな暮らしを提供する「オール電化の普及推進・販売拡大」
- 電気事業の周辺事業として立ち上げた「くらしサービス」
くらしサービスでは、リフォームやハウスクリーニング、空き家管理など、暮らしの困りごとを解決するサービスを提供している。
東北電力のプロモーションチームでは、テレビCMやダイレクトメール、新聞広告のほか、Web広告、Web接客、メール配信、サイト分析、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を活用したデジタルマーケティングなど、さまざまな媒体を通じた施策を展開している。
個人向けマーケティング施策を強化するに至った背景には、近年の電力小売市場における構造変化が理由の一つに挙げられる。
2016年の電力小売全面自由化により、東北電力以外の小売電気事業者も個人客へ電力を販売できるようになった。従来は地域の顧客が基本的に同社と契約する仕組みであったが、自由化後は顧客自身が電力会社を選択できる環境へと変化。そのため、東北電力も数ある事業者の中から選ばれる立場へとシフトしたのだ。
電力の小売全面自由化とは?
2016年4月、電力の小売全面自由化により、家庭を含むすべての消費者が電力会社や料金プランを自由に選べるようになった。
これは国が進める電力システム改革の一環であり、事業者間の競争を促すとともに、料金メニューやサービスなどの選択肢を広げることが主なねらいである。従来、家庭向けの電気は東北電力などの旧一般電気事業者が地域ごとに供給していたが、自由化に伴い、新たに参入した小売電気事業者などからも電力の購入が可能となった。
消費者は、居住地域でサービスを提供する電力会社やプランの中から、各自の生活スタイルや考え方に合ったものを選択できる。具体的には、夜間の料金単価が安いプランや、再生可能エネルギー由来の電気を取り入れたプランなどが挙げられる。
なお、現在では小売電気事業者として800を超える事業者が登録されている。
電力会社の乗り換えにより、東北電力のシェアは2016年の自由化以前に比べて減少しているという。そのため、プロモーションにおいては「解約の防止」と、他社へ乗り換えた顧客に「再び東北電力を選んでもらうこと」の2点が主な軸となっている。
他社への乗り換えが進む背景には、通信系事業者などの新規企業の参入が挙げられる。スマートフォンの新規契約時などに店頭来店時に、「電気も一緒に契約しませんか」と勧め、電気とのセット契約やポイント還元とともに案内されるケースが最も多いという。同社にとって大きな脅威となっている。
こうした解約を防止するための対策として、まずダイレクトメールなどの紙媒体を通じ、顧客に合わせた最適な料金プランの案内を行っている。たとえば、従来の「従量電灯」プランの契約者に対し、電気の使用状況に合わせた最適プランを提案することで年間数千円程度の節約につながるケースもある。このように、他社への乗り換えを検討する前の段階で、東北電力のまま料金を抑えられることを伝えている。また、オール電化の訴求についても、テレビCMやWebを組み合わせて包括的にプロモーションを展開している。
一方で、電力という商材自体が差別化しにくい点に加え、従来の電気事業の歴史的な背景から、これまで積極的なプロモーションの必要性が低かったことも影響して、同社におけるマーケティング活動の知見や歴史はまだ浅いという。
広告やキャンペーンを軸にした施策は、やはりコストがかかりますから、キャンペーンを用いなくても、平時からお客さまとの接点を作れる状態にしたい。情報発信のあり方そのものに課題を感じていました(鈴木氏)
電力会社をすすめるAI検索の回答に、東北電力が出てこない
社内でも生成AIの普及に対する関心が高まるなか、AI検索の回答結果に要約が表示される仕組みが自社事業へ与える影響が議論されるようになった。
実際にAI検索を行ったところ、「東北でおすすめの電力会社は?」「仙台でおすすめの電力会社は?」といった質問に対して東北電力の名はほとんど挙がらず、新電力事業者の名前が中心に表示される状況で、東北電力の名前は最後に出てくるかどうか……、という状況だった。
東北6県および新潟県においては、長く契約いただいている顧客も多いことから「電気といえば東北電力」という認知が定着しているものの、AI検索の領域ではその認識が通用しない。
これには、立場が逆転していると危機感を覚えました(鈴木氏)
AI回答の参照元の多くは、電力の比較サイトやランキングサイトであり、そこで高く評価されている新電力が優先的に推奨されていた。より具体的なプロンプトで「仙台に引っ越すので、電力会社のおすすめを教えて」と尋ねた際にも、「東北電力の◯◯プランに入っているなら新電力がおすすめですよ」といった回答が返ってくる状況であった。
こうした状況を受け、GEOやLLMOと呼ばれる取り組みについての調査が進められた。その過程で「いずれAI検索の回答から申し込みまでできる未来になる」という情報に触れる機会が増加したという。
このまま放置すれば問題が深刻化し手遅れになりかねないとの懸念から、早期にGEO施策へ着手する方針が固められた。
AIに正しい情報が参照されず、他サービスとの比較が不利に
AI検索では、他社と比較し回答を生成することもある。この回答内容にも問題意識が向けられているという。
家庭向けの電気料金は、大きく「規制料金」と「自由料金」の2種類に分かれる。規制料金は電力自由化以前から続くもので、国の審査や認可を必要とする料金プランである。一方、自由料金は電力自由化に伴い新設された料金体系であり、東北電力でも顧客のライフスタイルに合わせた多様なプランが提供されている。
新電力各社が提供しているのは自由料金であるのに、比較の多くは東北電力の規制料金プランのほうと比べる形で行われていた。
東北電力側にも自由料金のプランが存在するにもかかわらず、それが比較対象として取り上げられるケースは非常に少なかったという。その結果、ユーザーに対して一見すると「契約会社を変えた方が安くなる」という誤った印象を与えてしまう点が大きな問題となっていた。

契約会社を東北電力のまま変更せずに自由料金プランを選択できるにもかかわらず、AIの回答には正しい情報が反映されていない状況が存在していた。
こうした事態に対し鈴木氏は、「当社としては新しいプランに加入される方を増やしていきたい。比較するのであれば、同じ土俵として自由料金同士を比較してほしい」としたうえで、AIに正確な情報を参照させ、回答結果における露出向上と比較回答の精度の両立を目指したい考えを示している。
また、こういった回答が生成されてしまう背景には、同社がこれまでWebコンテンツやSEOに本格的に取り組めていなかった点も要因としてあるかもしれない。「東北電力 〇〇」といった指名検索では上位表示されるものの、それ以外の一般的なキーワード(≒検索ニーズ)に対しては戦略的な対応ができておらず、検索結果に自社の情報が届いていない状況であったと振り返る。
多様なキーワードで当社の記事やコンテンツがあれば、お客さまに東北電力を正しく認識していただけますし、誤認の予防にもなります。GEOだけでなく、SEOの土台を整えることも必要だと感じていました(桑田氏)
GEO支援会社5社を比較。導入の決め手はUIと伴走支援、専門家への相談
GEOについて検討を開始した際、SEO、AIO、GEO関連の支援会社をリストアップしたという。
検索からFaber Company(ファベルカンパニー)を見つけまして、他社様の導入事例も非常に豊富でしたし、ミエルカGEOというツールも認識していましたので、Webセミナーを申し込みました(鈴木氏)
※Faber Companyのミエルカ導入事例一覧はこちら→
※Faber Companyの無料セミナー 一覧はこちら→
比較検討の対象となったのは、ツール提供会社やGEO・SEOコンサルティング専門会社を含む合計5社である。当初から明確な比較軸が存在していたわけではなく、情報が乏しい状態からGEOに関するインプットを兼ねて各社の説明を聞くなかで、「将来的に内製化が可能か」「開始しやすいコスト感であるか」という点が検討の軸として定まっていった。
内製化を見据えた理由について鈴木氏は、「やはりツールを自分たちで触り、GEOの分析・施策の実行・振り返りといった一連のサイクルを実施することが重要です。その点、コンサルティングだけでは、GEOに関する提案をいただけても、自社にノウハウを蓄積しにくいのではないか、と。また、生成AIを取り巻く状況は日々変化するため、月1などのミーティングだけで情報の鮮度を保てるのかという懸念もありました」と説明している。
最終的な比較対象となったのは、ミエルカGEOと海外製ツールであった。海外製ツールも無料トライアルで操作性が評価されたものの、AIライティング機能が日本語に十分対応していなかった点が懸念点となった。SEOのコンテンツ制作も目指す同社にとって、日本語の精度が重視された結果である。
選定にあたってまず、ツールが使いやすかったです。ミエルカGEOの無料トライアルで実際に使ってみましたが、デモ画面で見るよりも、一段とUIが使いやすく操作も直感的にできると感じました(鈴木氏)
さらに、伴走支援体制の充実度も大きな要因となった。Webセミナー受講直後から営業担当によるフォローアップが行われ、課題の深掘りを経て複数回にわたる提案がなされた。導入後もカスタマーサクセス担当によるサポートや、最新情報・事例の定期的な共有が続いており、検討段階から一貫した伴走感が得られているという。
加えて、ツールから直接Faber CompanyのデジタルマーケティングのプロへSEOやGEOの相談ができる※距離感の近さも、非常に頼もしい要素として挙げられている。
※回答には1〜2営業日ほど時間がかかる場合がある。

まずはAI検索の現状把握から。オウンドメディアの立ち上げも視野に
ミエルカGEOの今後の活用方針として、まずはAI検索における自社ブランドの出現状況を正確に把握することに重点が置かれている。
まずは、「東北のおすすめ電力会社」など、他事業者のブランド露出が多いプロンプトを、定点計測していきたいです(鈴木氏)
個人客向けの各種サービスごとに露出を高めたいプロンプトが存在するため、同社にとってインパクトの大きいプロンプトを見極め、対策の優先順位を明確にしていく狙いがある。

あわせて、AIクエリファンアウト※の機能を活用し、プロンプトがどのようなクエリで構成されているのか、顧客がどのような情報を求めているのかまで深く理解したうえで、GEO施策やコンテンツ作成へとつなげていきたいと意気込む。
※AIクエリファンアウトとは:生成AIが内部で展開するファンアウトクエリを一括取得できるミエルカGEOの機能(詳しくはこちら)
また桑田氏は今後の展開について、GEOの定点計測を通じて対策すべきキーワードを洗い出し、必要に応じた既存ページの改善や新規記事の作成を進めていきたいと語る。
さらに、これまで着手できていなかったオウンドメディアの立ち上げも視野に入れているという。SEO、GEO(LLMO/AIO)を含めた包括的な戦略に基づき、キーワードやプロンプトから設計したコンテンツを制作していく方針であり、現在はキーワード選定や市場調査を実施している段階だ。
ミエルカGEOとSEOツールを併用することで、自社キーワードの順位や出現率、検索ボリューム、契約申込へのインパクトなどを社内で正確に把握できる体制の構築を目指す。あわせて、競合他社の動向を分析できる機能を活用し、他社が重視しているキーワードの分析にも取り組んでいくという。
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