レート・比率のKPI 全17個 | KPI大全 第3章-3

サイトにとって最も重要な行動を「コンバージョンイベント」と定め、コンバージョン率を算出しよう。
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レート・比率

平均指標やパーセント指標も使いやすいKPIだが、レート指標や比率指標も非常によく使われるKPIの形式である。KPIで最も広く使われるのは言わずもがな、ビジネスモデルや情報ニーズによって多種多様な「コンバージョン率」である。レート指標からは、何かのプロセスに乗った訪問者のうち、最後まで到達した人の割合がわかる。比率指標はもっと典型的で、もっと複雑だ。本書では、レート指標とパーセント指標の扱いを分けている。というのも、人々が「何々というプロセスを完了した訪問者のパーセント比率」ではなく「コンバージョン率」というように、ビジネスの中でそれぞれに一般的な扱われ方があるからである。

敢えて明記していないが、パーセント指標と同様、レート指標に関しても計算の最後に「×100」を加えて、KPIレポートの読み手にわかりやすいようにしよう。コンバージョン率が「0.03」というのと「3%」というのでは、受け取る側の印象が違うはずである。

基本的に、コンバージョン率について議論する際は、ECサイトの立場で考えるのが何かと便利である。とはいえ、あなたのサイトで直接商品を販売していないからといって、コンバージョン率に関する議論をすべて無視してしまってはもったいない。あなたのサイトにとって最も重要な行動を「コンバージョンイベント」と定め、コンバージョン率を算出しよう。コンバージョン率は、訪問者の望ましい行動を観測する最良の指標の1つなのだから、いかなるサイトであってもこのKPIを計測し、レポートし、活用することを考えるべきである。

さらに心に留めておくことは、あなたのサイトに複数のコンバージョンが期待されるのならば、以下に示すいろいろなレート指標を「それぞれのコンバージョン行動ごとに」計測するのが良い。たとえば、あなたのサイトで靴を販売する一方、そこからメールマガジン購読もできる、という場合、商品購入とメールマガジン購読の両方に関して、注文コンバージョン率と、購入者コンバージョン率を算出すべきである。

注文コンバージョン率

よく話題に上るにもかかわらず、ほとんど理解されていないKPIの典型例が、まさにこのコンバージョン率である。

  • 定義

    ECサイトにおける「コンバージョン率」については、多くの人々が口にするけれども、実はそれには「注文コンバージョン率」と「購入者コンバージョン率」の2種類がある。注文コンバージョン率は、オンラインで商品やサービスを販売するサイトすべてにおいて、サイト訪問を通してどれだけの注文があったかを把握する比率である。

    {オーダー総数}÷{総訪問回数}={注文コンバージョン率}

    繰り返すと、この指標の示すところは、サイトへの個々の訪問が購入に結びつく傾向である。

  • 表現形式

    注文コンバージョン率に関する最大の注意点は、購入者コンバージョン率との明確な区別であり、訪問者ベースではなく訪問回数ベースで計測していることを理解できるようにすることである。コンバージョン率は常に、購入者コンバージョン率平均注文額新規・リピート訪問者率などの購入に関する指標と一緒に用いられるべきである。

  • 想定される結果

    まだ注文コンバージョン率を測定したことがない人は、がっかりするかもしれないが、ほとんどのサイトの注文コンバージョン率は、2%~5%程度である。つまり、訪問セッションの95%~98%は、コンバージョンや購入に結びつかずに終わってしまうのである。それがインターネットの現実なのだ。

    ECサイトにとって、注文コンバージョン率はトップラインのKPIであり、ほぼすべてのスタッフが追うべき指標である。この指標は、季節変動があるものの、その季節変動の幅を超えて値が変動することは、訪問者の構成やサイトデザインが変わったのでもない限り、好ましくない。

  • 行動

    注文コンバージョン率が急変していたら、値の上下にかかわらず、すみやかに原因を明らかにすべきである。よくある原因は、

    • 見込みの少ない訪問ばかりが増えたこと
    • 訪問が増えたのに、訪問者がサイトで迷ってしまい、欲しい情報にたどり着けないこと
    • 実際に、訪問の数に比例して注文数が劇的に増加した(または減少した)こと

    などである。

    購入意思のない訪問が大半を占めてしまうのが、オンラインショップの定めである。アクセス解析というあなたの仕事のゴールは、マーケティングを最適化して一人でも多くの購入希望者を集めることであり、彼らが欲しい情報・商品を見つけるのをすばやく支援することであり、スムーズに精算ができるようにすることである。このことを常に頭においておけば、注文コンバージョン率が低すぎて改善しなければならないときに、どこに時間を割けばいいのかがわかるはずである。

購入者コンバージョン率

注文コンバージョン率が、それぞれの訪問セッションが購入につながるかどうかの傾向を示すのに対して、購入者コンバージョン率は、訪問者が購入者になるかどうかの傾向を示す。

  • 定義

    注文コンバージョン率の定義をふまえて、購入者コンバージョン率の定義は、

    {購入者になった人の総数}÷{総訪問者数}={購入者コンバージョン率}

    となる。このKPIは訪問者ベースの計測値なので、必ず同一の時間枠の中で比較するようにしよう。

  • 表現形式

    注文コンバージョン率の項を参照。

  • 想定される結果

    注文コンバージョン率と購入者コンバージョン率の関係は、複雑に絡み合いながら連携している。以下の3つの例を考えてみてほしい。

    • 例1) ほとんどの訪問者はサイトを1回きり訪問し、その訪問中に購入を完了する。
    • 例2) ほとんどの訪問者は、購入する前に何度もサイトを訪問する。
    • 例3) 訪問者には、即購入する人と、何度も訪問して熟慮の上で購入する人の両方がいる。

    第1のケースでは、2つのコンバージョン率はきわめて近い値を示す。2番目のケースでは、注文コンバージョン率は、購入者コンバージョン率よりも低くなる。3番目のケースの場合は、どちらの比率が大きいかによって値は変わってくる。

    繰り返すが、どれほど多くの人がサイトを訪れようと、そのほとんどは購入意思がない、というのがインターネットの現実である。

    2つのコンバージョン率を並置することで、購入者の思考サイクルをより深く理解できるだろう。購入者の癖を一度理解してしまえば、巧妙なマーケティングと、大胆な価格設定で、購入者の振る舞いに影響を与えることを試みることができる。

  • 行動

    購入者コンバージョン率の低下が意味するところは、訪問者を購入者にコンバージョンさせるのに失敗することが多くなってきているか、購入までのサイクルが長い(注文コンバージョン率と値が離れる)か、あるいは分母の訪問者の方が大幅に増加したか、などである。原因はともあれ、購入者コンバージョン率に大きな変動があれば、問題を発見する必要がある。展開中のキャンペーン、価格設定の変更、精算プロセス、リピート訪問率の変動などを確認しよう。

新規訪問者コンバージョン率・リピート訪問者コンバージョン率

新規訪問者とリピート訪問者に分けたコンバージョン率の算出は、コンバージョンまでにかかっている時間の長さを理解するのに役立つ。

  • 定義

    購入者コンバージョン率に似ているがどのようにして最初のコンバージョンを得るかに焦点をあてたもの。

    {コンバートした新規訪問者数}÷{総訪問者数}={新規訪問者コンバージョン率}

    {コンバートしたリピート訪問者数}÷{総訪問者数}={リピート訪問者コンバージョン率}

    このKPIの算出には、新規訪問者とリピート訪問者を区別してコンバージョンを計測できなければならない。さらに、「新規・リピート」の判定は、Cookieに強く依存しており、時間がたつにつれ、新規訪問者コンバージョン率を過大評価してしまいがちである。

  • 表現形式

    注文コンバージョン率新規訪問者率・リピート訪問者率の項を参照。

  • 想定される結果

    想定される結果は、あなたのサイトにおけるコンバージョンが「速い」か「遅い」かによって変わってくるが、本書に挙がっている他のKPIと同様、大きな変動があったら注意深く観察し、問題が発生したらその原因を探ろう。

  • 行動

    あなたのサイトの商品の単価が安いにもかかわらず、新規訪問者コンバージョン率が低迷している場合は、どのようなメッセージを用いて価値を提示しているかを見直そう。典型的な事例は、無料ダウンロードがあるのに、サイトを何回も訪れないと誰もその存在に気づかない、というようなことだ。このような例は、A/Bテストで解決できる格好のケースであり、新規訪問者のコンバージョンを促す、別の方法を発見しよう。

新規購入者コンバージョン率・リピート購入者コンバージョン率

新規購入者とリピート購入者に分けた購入者コンバージョン率は、購入者との継続的な関係構築がどのくらいうまくいっているかを表す指標である。

  • 定義

    適切な訪問者セグメントを使う以外は購入者コンバージョンと同じ。

    {コンバートした新規購入者数}÷{総訪問者数}={新規購入者コンバージョン率}

    {コンバートしたリピート購入者数}÷{総訪問者数}={リピート購入者コンバージョン率}

    この指標は「訪問者」の行為に関するものなので、「新規購入者」は必ず1回だけセグメントに含まれるべきである。連続した購入は、すべてリピート購入として扱う。明らかなように思えるが、アクセス解析ツールの中には、cookieの削除によって、新規・リピートの判定ができなくなるものもある。

  • 表現形式

    注文コンバージョン率の項を参照。購入者満足度のKPIと一緒に提示するのも有効である。

  • 想定される結果

    一般的には、新規購入者よりリピート購入者の方が、高い割合で購入してくれると考える。少なくとも、購入者との継続的な関係構築がうまくいっているなら、そうである。ただしサイトによっては、複数回の購入があまり想定されず、したがってこれらのKPIが状況によっては意味をなさない場合があることは、注意が必要である。

  • 行動

    購入者コンバージョン率とほぼ同様だが、リピート購入者コンバージョン率が急落していたら、カスタマーサービスの質の低下が最購入を阻んでいる可能性があるので、満足度や配送システムに何か問題がないかを探してみよう。

新規対リピート訪問者比

新規訪問者率とリピート訪問者率に似た指標だが、これは1つの指標だけで「獲得傾向」を説明できる。

  • 定義

    新規訪問者とリピート訪問者を分けて計れることが前提となる。

    {新規訪問者総数}÷{リピート訪問者総数}={新規対リピート訪問者比}

    この値は常に0より大きい。値が小さいほど、訪問者全体の中でリピート訪問者の割合が大きく、値が大きければ、新規訪問者が支配的になる。一般的に、この比が1より小さいときは、既存の訪問者を重視したビジネスだということになる。これはコンテンツサイトやメディアサイトでよくある状況だ。1を超えれば、新規購入者を多く獲得しているということである。値がちょうど1ということは、新規訪問者が訪問するたびにとリピーターがひとり増えるという意味である。

  • 表現形式

    この指標の計算式は、本書の中ではやや特殊なので、この数値の意味を説明するために、追加的な時間をとったほうが良い。この比の意味が感覚的にわかったら、次は閾値(ボーダーライン)を設定し、その閾値にしたがって警告を発するようにしよう。たとえば、あなたがESPN(スポーツコンテンツサイト)で、新規訪問者‐リピート訪問者比が概ね0.3と0.4の間であったのが、急に1.0に跳ね上がったとしよう。この変化は、マーケティングキャンペーンがとてもうまくいっていると考えれば「いいこと」であるし、逆にロイヤリティの高い訪問者が来なくなってしまったと思えば「悪いこと」である。

  • 想定される結果

    この比はサイトによって千差万別だが、一般的なことを言うと、

    • メディア・コンテンツサイト ―― よくできたサイトほど、1.00に近いか、それより低い。
    • ECサイト ―― 複数の商品を販売するサイトの場合、2.00か3.00より上。
    • マーケティングサイト ―― リードジェネレーションサイトの場合はきわめて高く、10.0かそれよりも高くなる。
    • サポートサイト ―― 1.00付近。サポートされる商品による。

    これらの数字は固定ではなく、さまざまである。しかし、一定以上の振れ幅で変化が起きていたら、訪問者・購入者の満足度が急激に下がったからではなく、何かを能動的におこなったからだと思いたい。

  • 行動

    この比が急激かつ予想外の動きをしたときは、新規訪問者率・リピート訪問者率の項に準じた行動を取ろう。最近のマーケティングやリテンション努力を見直し、サイトデザインの変更状況、サイト運営状況、さらに可能であれば訪問者の意見の変化(公的な発言、直接的なメッセージ)をチェックしてみよう。さらに、著名なブロガーやジャーナリストがあなたのサイトについてポジティブ(またはネガティブ)な書き方をしていること、あるいは購入者からの不満が最近増えて、それが訪問者を逃してしまっていることもありうる。

キャンペーンごとの注文コンバージョン率

マーケティングキャンペーンからのコンバージョンを追うことは、いかなるアクセス解析ツールにとっても、最も重要かつ価値のある方法である。

  • 定義

    単に、いま展開しているキャンペーンのそれぞれに対するコンバージョン率である。コンバージョンイベントの設定さえしてあれば、アクセス解析ツールが計算してくれる。メール広告、バナー広告、キーワード広告、アフィリエイト広告、RSSフィード、その他の訪問獲得キャンペーンに対して、追跡を行う。

  • 表現形式

    ビジネス用のサイトは普通いくつもの違うタイプのキャンペーンを同時展開しているので、組織の中で違う人々が違うレベルの細かさで指標を確認する必要が出てくるだろう。このことは本書の別のところで議論されるが、以下の指針に沿ってレポートを行い、マーケティング・キャンペーンに対して注文コンバージョン率を最も有効に使おう。

    • 経営者向け ―― すべてのキャンペーンを含めた総注文コンバージョン率という指標に加え、キャンペーンごとに集計された注文コンバージョン率を盛り込む。
    • 管理職向け ―― 経営者向け指標に加え、個々のキャンペーンの中から数組を選ぶ(パフォーマンス最高のもの、最低のもの、現在最も重要なもの)。
    • 実務担当者向け ―― 上記に加え、担当するキャンペーンに関する詳細を参照する。

    例を挙げると、Eメールマーケティングの責任者は、そのキャンペーンの注文コンバージョン率を、他のすべてのタイプのキャンペーンのものと比較し、同時にEメールキャンペーンの中で最も有効・妥当なものを見てみよう。これ以下のレベルになると、アクセス解析ツール自体が扱う領域になり、KPIが本当に役に立つ範囲を逸脱してしまう。

  • 想定される結果

    注文コンバージョン率の項を参照。

  • 行動

    注文コンバージョン率の項を参照。

カート開始率

ECサイトでは、ショッピングカートと精算プロセスに関連する特別な指標を用いることができる。カート開始率を通して、訪問者がショッピングカートに商品を1つでも入れた訪問の数を知ることができる。

  • 定義

    単純に、

    {ショッピングカートを使用開始した訪問回数}÷{総訪問回数}={カート開始率}

    もし、訪問ごとにカートを使い始めたかどうかを判断できないのであれば、訪問者数をもとに計算することもできる。ただし、ページビュー数を基準にしてはいけない。

  • 表現形式

    この指標は、カート完了率精算開始率精算完了率と4点セットで提供されるべきである。

  • 想定される結果

    カート開始率は、あなたのサイトで販売する商品の性質や、販売方法によってさまざまである。いくつかのサイトは、値段の合計を表示するのに、カートに入れてみなければならない、というひどい構造になっている。カートのユーザーの中には、送料と税金の額を調べるため、一時的にカートに商品を入れる人もいるし、ウィッシュリストとして使う人もいるし、まったく理由はわからないけれども、とりあえず使っている人もいる。

  • 行動

    カート開始率の急落があった際、考えられるのは、競合他社が同一商品の突然の値下げや、その他の方法で、購入者を引きつけているということである。この場合、訪問者が値段の比較のためにあなたのサイトを訪れるため、訪問数・訪問者数がそのままで、カート開始率が下がることになる。このKPIが突然、または継続的に下降傾向を見せていたら、商品ページの閲覧数と購入数の比が落ちていないかと、ショッピングシステムを用いて価格設定の照合を行うことが重要だ。

カート完了率

カート完了率は、注文コンバージョン率にさらなる洞察を与えてくれ、ショッピングカート機能の問題を関して切り離して考えることができる。

  • 定義

    カート開始率と同様、

    {オーダー総数}÷{ショッピングカートを使用開始した訪問回数}={カート完了率}

    繰り返すが、必要に応じて訪問者数で計測はできるが、ページビュー数は基準にしないこと。

  • 表現形式

    カート開始率の項を参照。

  • 想定される結果

    カート完了率が低いのに、カート開始率が高い場合、よくあるのは、精算のプロセスに何か問題がある場合だ(精算開始率と精算完了率も確認しよう)。しかし、精算プロセス自体は高い率でオーダーに結びついている場合、単純に精算ボタンを見つけられていない、などという単純なケースかもしれない。

  • 行動

    ショッピングカートはきわめて重要な装置なので、カート完了率に関わるあらゆる問題は、即座に調査されるべきである。カート完了率が改善していれば、それがなぜ改善されたかを説明できるようにしよう。低下していれば、完了していないカートは、収益を一切生み出していないということである。精算ボタンの配置と視認性には特別の配慮を払おう。ボタンがスクリーンの下端以下になって見えなかったり、小さなブラウザ画面からははみ出してしまう位置にあったり、というような小さなことでも、購入者は購入プロセスから離脱してしまう。

精算開始率

ECサイトの訪問者が購入者になるまでを、より大まかに表す方法として、精算ボタンの押される頻度を示す、精算開始率がある。

  • 定義

    また、訪問回数で計算する。

    {精算ボタンがクリックされた訪問回数}÷{総訪問回数}={精算開始率}

    多くの解析ツールでは、通常のショッピング解析の中で、精算開始および精算完了を算出する。この自動計算機能がないことを確認した上で、訪問数の算出作業に入ろう。

  • 表現形式

    カート開始率の項を参照。

  • 想定される結果

    理想としては、使用の始まったショッピングカートは、そのまま精算プロセスに乗るのが望ましい。とはいえ、実際はカート開始率の方が、精算開始率より高い値を示すものだ。精算プロセスに入らないと送料の計算ができない仕組みのサイトでは、精算開始率は高めの傾向にあり、ショッピングカートの時点で送料がわかると、精算開始率は低くなりがちである。

  • 行動

    精算開始率に関連する問題は、精算ボタンの配置と、送料表示の仕組みに結びついていることが多い。精算開始率が低ければ、精算ボタンの配置を確認し、精算ボタンを押す前に、送料の見積もりができるようになっているかに注意しよう。

精算完了率

ECサイトにとって、精算完了率は最も重要なKPIの1つである。

  • 定義

    カート完了率と同様、

    {オーダー総数}÷{精算プロセスに入った訪問回数}={精算完了率}

    繰り返すが、多くの解析ツールでこの指標は自動計算される。アクセス解析ツールもしくはショッピングシステムの機能を確認しよう。

  • 表現形式

    カート開始率の項を参照。

  • 想定される結果

    精算完了率は、あなたのサイトの精算プロセスがどの程度わかりやすく、自然な設計になっているかを直に反映する。多くの議論がなされることではあるが、基本的には精算に必要なページ数は少ないほどよい。「店舗での受け取り」のような特殊なケースや、複雑な送料の選択肢がある場合を除いて、精算プロセスでは本当に必要な情報を聞くだけにして、できる限り簡素化するべきである。

    それから、精算プロセスに移る前に、サイトの会員登録をさせたいという欲求とは闘わなければならない。このことは“Web Analytics Demystified”の第6章、p.74~p.75でも少し述べたが、多くのユーザーは、購入前に会員登録をさせられるのを嫌う。著名なECサイトが、この敷居を取り払ったところ、注文と購入者のコンバージョン率が(精算完了率と連動して)上昇したことに驚いていた。私の書を読んでいれば、そんなことでは驚かないだろうに。

  • 行動

    精算完了率の値に満足できない場合、まず、まだ会員登録を要求しているならば、それを即刻やめること。これにはいろいろな理由があるが、ともかく会員登録の要求をやめるか、あるいは単純に精算プロセスの「最後に」持ってくるだけでも、精算完了率は上昇するだろう。どうしても会員登録フローを外せないとか、私の言うことが信用できないというなら、精算プロセスをじっくり見て、以下のことに従ってほしい。

    • 精算プロセスを研究する人の多くが、「プロセスは少ないほどいい」と言う。

      それぞれの項目(送付先住所、請求先住所、送料情報、特別なオプション、確認など)を細かく聞いていくことは、美しく正しいことのように見えてしまうが、それらをうまく編集し、圧縮することで、精算プロセスは2,3ページの節約ができ、その分、途中でやめてしまう機会も少なくなる。

    • 可能なら、クライアントサイドのフォームバリデーションを行う。

      フィールドの記入漏れのせいで、同じフォームを何度も何度も見なければならないことほど、ストレスのたまることはない。できる限り、フォームを送信する「前に」チェックするようにしよう。

    • 記入必須項目がはっきりと示されていることを確認する。

      あるいは、本当に必須な項目だけを聞くようにする。ユーザーとの関係構築に長けているなら、重要な初回購入のタイミングを避け、後からユーザーに関する情報を集めることができる。どのフィールドに入力すべきか、どのフィールドを入力しなくてもエラーが出ないかをはっきりさせて、精算を中断してしまうリスクを低く抑えよう。

    • できるだけ早い段階で、送料計算ができるようにする。

      精算ボタンを押さない限り送料が計算されず、その結果を見て結局去ってしまうのなら、始めから送料がわかっていたほうがましである(図11)。逆に、送料を簡単にわからないようにし、プロセスの最後の最後まで出さないことで、ユーザーが勢いで精算を最後まで終わらせてしまうことを期待できるかもしれない。

    図11 送料がわかりやすい、Backcountry.comのショッピングカート

    最適な精算プロセスの例として、BackCountry.comを挙げたい。プロセスは5つ、それぞれが現在のベストプラクティスである。アドレスは、www.backcountry.com

カート開始対精算開始比

「カートに追加」ボタンと「精算開始」ボタンのクリック傾向の違いは、ごく簡単でわかりやすい比によって表現される。

  • 定義

    カート開始率と精算開始率が計算できるという前提で、

    {精算プロセスに乗った訪問の数}÷{ショッピングカートを利用開始した訪問の数}={カート開始対精算開始比}

    この値が1.0に近いほど、カート開始から精算開始に移行するプロセスに関しては、最良の取り組みをしていることになる。これはプロセスをもう1ステップ追加して計測するカート完了率(カート開始と精算完了の比)とも似ている。

  • 表現形式

    このKPIは、ショッピングプロセス改善行動に対する評価のためには、カートと精算、開始と完了それぞれの情報とあわせて用いるべきである。別の指標との誤解を招かぬよう、KPIレポートを見る人には、指標の意味するところについて、十分な説明が必要だ。手法上「比」という形をとるが、簡単に「1.00に近いほどよく、1.00が最良。変化を見逃すな。」と説明してしまってもいいと思う。

  • 想定される結果

    単価の高い商品を売るサイトでは、比は0に近づき、単価が低く、商品を探しながら違うものにも手を出してしまうようなサイトでは、比は1に近づく。

  • 行動

    繰り返すが、カートと精算のパフォーマンスを監視するために用いられれば、この指標はシンプルながら示唆深いものとなる。ショッピングカートのユーザビリティ(使いやすさ)に注目するなら、この値を10%上昇させるのを目指し、どのようなボタン、言葉、配置が、ユーザーに精算ボタンを押しやすくさせるのかを発見しよう。

ランディングページの「粘着度」

最初の閲覧ページが、訪問者をどれだけ離さずにいるかを示す「粘着度」は、マーケティングKPIの中でも最も重要なものの1つである。

  • 定義

    あなたのサイトの任意のページに対して、

    1.00-({当該ページのみを閲覧したページビュー}÷{当該ページのエントリーページビュー})={ページの「粘着度」}

    このKPIを算出するためには、図12のように、あるページを起点に閲覧を開始した回数と、同じページで離脱した回数を両方計測できる必要がある。また、トップページ(ホーム)は特殊なケースで、最も多くの場合にランディングページ(サイトへの流入起点)となることに注意しよう。

    図12 Visionalistの樹形図画面から、当該ページのみを閲覧して離脱した訪問の数と割合を知ることができる。この場合の粘着度は、100%から直帰率の39.3%を引いた、60.7%となる。

    この値が1.0に近い、つまり強粘着のサイトほど良い。この比率はパーセント表示したほうがより見やすく、どのぐらいの割合で平均的な訪問者が2ページ以上閲覧しているかを知ることができる。

  • 表現形式

    あなたが組織の階層のどの辺りにいるかによって、「粘着度」の指標を計測する対象の数は変わってくる。経営層に近ければ、全体像を把握していれば良く、現場に近ければ近いほど、一つひとつのページの「粘着度」を細かく見ていく必要がある。このあたりのガイドラインは、キャンペーンごとの注文コンバージョン率の項を参照していただきたいが、トップページの「粘着度」指標は、共通して見るべきである。この指標は、1訪問あたり平均ページビュークリック深度分布とあわせて用いると良く、サイト全体の問題をすばやく把握するのに役立つ。

  • 想定される結果

    獲得コストをかけて訪問者を集めているのなら、訪問者が1ページ目を見てそのまま帰ってしまうのではなく、それ以上の反応を期待したいところだろう。中には、サイトの情報を少しだけ見て、また後でじっくり考えるという人もおり、そういう場合の計測は、キャンペーン解析ツールを用いない限り難しいが、大部分の人は、第1回目の訪問で複数のページを見ていくか、まったく見ずにそのまま帰るか、という2つに別れる。

  • 行動

    特にマーケティングキャンペーンに関しては、ランディングページの診断を行うことはきわめて有用な解析である。新しいキャンペーンを始めたら、主要なランディングページの「粘着度」を注視し、パフォーマンスのよくないものがないか観察しよう。ランディングページは、A/Bテストの典型的な対象であり、このKPIに対していくつもの異なるランディングページをテストすることで、それぞれのページへの訪問者のコンバージョンレートがわかる。

    他のページより「粘着度」の低いページがあれば、そのランディングページがキャンペーンのメッセージとどういう関係にあるか、どのような行動を意図してページが作られているかを注意深く観察しよう。アクセスを増やすのにかかっているコストが成功報酬でない限り、「粘着度」の低いランディングページは、マーケティングコストを押し上げ、ブランドに傷を付ける可能性もある。

情報発見コンバージョン率

カスタマーサポートサイトやECサイトでは、対応に費用がかかる電話での問い合わせをすることを回避できるような、訪問者にとって重要な情報を掲載していることが多い。その情報に訪問者がたどり着けるかどうかは、重要な問題である。

  • 定義

    このKPIは、注文コンバージョン率の変化形であり、「注文」の判定基準を緩めて、ある1つのゴールページに到達したかどうかをもとに計算する(図13)。

    {ゴールページに到達した訪問回数}÷{総訪問回数}={情報発見コンバージョン率}

    図13 「価格表」という、中間コンバージョンイベントの達成率(日別推移)。

    ゴールページとは、たとえば「よくある質問」のページであったり、ナレッジベースの記事であったり、何かしらあなたのサイトで提供するべき情報が存在するページである。アクセス解析ツールによっては、一定数以上のコンバージョン目標を識別することができないが、低コストのカスタマーサポートを目指すサイトであれば、努力してこれらの識別をし、指標を追跡するべきである。

    また、あなたのサイトが純粋なサポートサイトでない限り、すべての訪問者がサポートを望んで訪問しているわけではなく、ゆえに追跡対象の情報にたどり着かないということには、注意すべきである。可能であれば、訪問者のセグメンテーション機能を用いて、サポート目的の訪問者(または追跡対象の情報を欲している人)「のみ」を計算するようにしたい。

  • 表現形式

    この指標を用いるときは、設定している「ゴール」が何なのかを、レポートを見る人が明確にわかるようにしておくことが必要である。あなたのビジネスにおいて、重要なゴールページがカスタマーサポート文書であれば、このKPI名称を「カスタマーサポート文書の発見率」としてしまってよい。そして、付録として、具体的にどの文書がそれに含まれるのかをリストにしておくのである。それから、コンバージョン率が不自然に高い場合は、1人あたり平均ページビューとの比較も必要だ。特に、複数のページを見て、情報を得ているのに、まだ満足していない可能性もある。さらに、購入者満足度のKPIとの比較によって、低いコンバージョン率が不満足につながっていないかを検証することも必要である。

  • 想定される結果

    訪問者がどれだけ情報を発見できているかは、サイトの情報アーキテクチャや、検索性能、サイトで使う言葉と訪問者が使う言葉の違い、その時々の気分などによって、さまざまである。そのいくつかの要素は簡単に改善できるし、いくつかの要素はまったくコントロールできない。サポートサイトは、この指標の基準値を定め、訪問者が情報を発見できる率が上がるように、継続的に改善をしていこう。

  • 行動

    購入者がカスタマーサポートやテクニカルサポートに電話をしてくる回数を減らすためにデザインされた、純粋なサポートサイトの場合は、ECサイトにとっての注文コンバージョン率・購入者コンバージョン率と同じくらい、このKPIの追跡・研究が重要になってくる。ありがたいことに、訪問者は大概、サイトが扱う商品やサービスについて、最低限の知識をすでにもっているので、情報を見つけるのはたやすく、コンバージョン率は高めになる。この指標が急落していたら、サイトデザインや検索機能、検索用インデックスを変えていないかどうかや、サポートしている商品の質が変わっていないかをチェックしよう。

    あなたのサイトが純粋なサポートサイトでなくても、サポートを必要としている訪問者をセグメント分けし、必要な助けを得られているかどうかを確認することは重要である。リテンションと購入者満足は、問題が起こったとき、簡単に情報を得られるかどうかに直結しているので、このKPIは価値があるのである。

あなたのECサイトが検索機能を備えているのならば、検索を使用した訪問者のコンバージョン率を追跡することで、検索技術への投資の真価がはっきりする。

  • 定義

    コンバージョン率の特別系の1つである。

    {検索経由のオーダー総数}÷{検索結果ページのページビュー総数}={検索経由の購入コンバージョン率}

    検索利用者1人あたり平均収入の指標と同様、この計測は、アクセス解析ツールのセグメント機能に依存するところが大きい。検索を使った訪問だけを分離して抽出し、そのセグメントから得たオーダーを集計する必要がある。これができれば、検索経由の購入コンバージョン率と注文コンバージョン率を比較することで、検索技術の良し悪しがわかる。

  • 表現形式

    すべてのECサイトで、この指標は注文コンバージョン率および購入者コンバージョン率とあわせて用いられるべきである。

  • 想定される結果

    私の経験では、サイト内検索に時間と資金を割いているサイトでは、検索経由の購入コンバージョン率が、サイト全体の注文コンバージョン率よりも高いことが多い。というのは、訪問者は明確なタスクに意識を集中しており、探している情報をすばやく見つけられるように提供することができれば、訪問者はただ眺めるだけでなく、購入してくれる可能性が大きいからである。

    時には、このKPIを活用したおかげで、せっかくの検索技術がたいした成果を挙げていないことに気がついてしまうこともある。投資効果がない、ということに気がついたら、検索技術を入れ替えることも多い。

  • 行動

    検索経由の購入コンバージョン率が望ましいレベルより低い場合、チェックするべきなのは、検索利用者の購入している商品の組み合わせと、検索利用者1人あたり平均収益の多寡である。検索からのコンバージョン率は低いのに、そのコンバージョン一つひとつの収益額は大きく、平均注文額(AOV)が高かったり、利益率の高い商品が特に売れていたりする場合は、特に問題はない。販売に関するKPIの値が一定と仮定すれば、このKPIを検索性能のベンチマークとして用いるべきである。ECサイトにおける「良い検索機能」の条件は、見た目がわかりやすいこと、商品属性を具体的に落とし込んでいく機能、商品比較ができること、価格・在庫量の情報がわかること、などである(“Retail Site Search: Site Ranking and Best Practices” JupiterResearch、2004年を参照のこと)。これらの勧めに従い、結果0件検索率成果なし検索率指標とあわせて、継続的に観察しよう。

検索結果ページ離脱率

成果なし検索率と同じように、検索結果の表示数と、そこからの離脱数の比は、訪問者がどのくらい検索機能を便利だと感じているかを評価する指標である。

  • 定義

    あなたのサイトがサイト内検索機能を持ち、検索結果の表示数と、検索結果のページからの離脱数の両方を計測できることが前提となる。これは訪問数をベースに計測したほうがやりやすい。

    {検索結果ページからの離脱数}÷{検索結果ページの総表示回数}={検索結果ページ離脱率}

    この指標は、検索経由の購入コンバージョン率のほぼ逆の意味をもつものであり、検索によってどのくらい失敗や不満足が生じているかを理解する助けになる。検索結果は、他のコンテンツへの玄関ページとなるため、適切な検索結果を返すことができていれば、訪問者がそこから離脱してしまうことはない。

    注:検索結果がサイト外のページを含むものであったり、サイト外のページを含めた分析をしたりする場合は、このKPIはいくらか不適切なものとなる。この指標が有用なのは、サイト内のコンテンツのみをカバーした検索に対して用いられた場合である。

  • 表現形式

    このKPIの意味するところは明らかなように見えるが、実際のところ、この比の意味するところはあまりはっきりと理解されない。この計測値には、詳細な説明を添え、レポートを読む人が適切に解釈できるようにする必要がある。

    それから、このKPIと、1訪問あたり平均検索回数結果0件検索率成果なし検索率とを一緒に用いることで、適切な文脈を作り出すことができる。ECサイトでは、検索経由の購入コンバージョン率との併用も望ましい。

  • 想定される結果

    この値が極めて低く、すべての検索者が適切な内容を発見し、そのままサイトにとどまっている状態が理想的だ。しかし現実ではそうはいかないので、この指標は注意深く観察する必要がある。

  • 行動

    訪問者が検索をしてそのまま離脱してしまう、という状況で取るべき行動の1つは、彼らが何を検索しているのかを調べ、なぜその検索結果が満足いかないものだったかを明らかにすることだ。これらの内容と、結果0件検索率・成果なし検索検索率の分析結果とを関連付けて調べることも有効だろう(期待はずれに終わった検索とは1:1の対応をしているものだと思うかもしれないが、実際は、離脱数は訪問数を元に計測しているので、必ずしもそうはならない)。言うまでもなく、検索結果ページ離脱率は、訪問者が望む結果を見つけられていないという、ほとんどのオンラインビジネスにとっての問題を明らかにするのに役立つ。

ダウンロード完了率

ダウンロード完了率は、何かしらダウンロード可能な文書やアプリケーションを置いているサイトのみに関係する特殊な指標であり、正確な測定のためには、ログファイルの分析が必要になる。

  • 定義

    ダウンロード完了率は、ダウンロードを始めた訪問者と、ダウンロードが実際完了した訪問者の割合である。残念ながら、タグ埋め込み型のアクセス解析ツールでは、この指標を計測することができない。ダウンロードボタンの押された回数まではわかるけれども、その後のプロセスを追えないからである。この計測のためには、ダウンロード・ログファイル及び、文書全体(キロバイト(KB)単位で計測される)がいくつ最後までダウンロードされたかを知ることができる情報にアクセスしなければならない。これができれば、計算式は以下のようになる。

    {ダウンロードが完了した数}÷{すべてのダウンロード要求数}={ダウンロード完了率}

    繰り返しになるが、100MBの文書がダウンロードできるとして、知るべきなのは、ダウンロードのリクエストがあった回数と、100MBすべてを転送した回数の両方である。ダウンロード・マネージャの中には、この計算をさらに複雑に行うものもある。ダウンロードをいかに正確に計測するかについては、Jim MacIntyreが私の本『Web解析Hacks』のHack 79に書いた文章を読むことを勧める。

  • 表現形式

    あなたのサイトで複数のファイルがダウンロードできる場合、一つひとつのダウンロード完了率を明確に分けて表示する必要がある。個々のファイルごとのダウンロード完了率と同時に、サイト全体の平均ダウンロード完了率を計測するのも有用である。これらのダウンロード可能なファイルの責任者にレポートするときは、ダウンロード途中でキャンセルされやすいファイルの特定は重要な問題だ。

  • 想定される結果

    開始されたダウンロードは100%完了するのが理想である。しかし実際は、一定の割合でダウンロードのキャンセルが起こっている。一般的には、サイズの大きいファイルほど、途中で中断してしまう可能性が高いが、それも訪問者の接続速度によって変わってくる。

  • 行動

    ダウンロードが頻繁にキャンセルされてしまうファイルがあったら、そのファイルをもっと圧縮してサイズを小さくできないか、試してみよう。Zip形式や、その他の圧縮形式を検討しよう。さらに、訪問者の接続速度を確認し、ダウンロードをキャンセルしてしまう訪問者が、全員ナローバンドなのか、それともブロードバンドもいればモデム接続もいるのかを把握しよう。さらに、訪問者の地理的分布を調べることで、問題が距離に起因するものであるかどうかがわかり、その場合は地域別にミラーサイトを設けたり、Akamaiのようなサービスを利用したりすることで、ファイルを訪問者のより近くの拠点からダウンロードさせることができる。

フォーム完了率

フォームは、コンバージョンの特殊なケースで、ミクロコンバージョンと呼んでもいいが、多くの場合、フォームの記入を完了しない限り、コンバージョンも完了しないことになる。

  • 定義

    フォームの開始と完了を測定するためには、アクセス解析ツールがフォームの挙動を追跡できなければならない。この機能が使えれば、大概この指標は自動計算される。手動計算の場合は、以下のようになる。

    {フォームが送信された訪問回数}÷{フォームを記入し始めた訪問回数}={フォーム完了率}

    フォームを記入するためだけに特定のページを訪れる(たとえば「申し込みフォームを記入するにはこちらをクリックして下さい」というリンクテキストをクリックする)場合、計算式の分母には「ページに対する総訪問回数」を用いることもできる。この計算方法は、より意図的である。そうでなければ、フォームの記入を終えた数と、フォームを記入し始めた数を比較するようにしたほうが良い。フォームのページには、多くの場合フォーム以外の情報もあるからである。

  • 表現形式

    Webサイトに記入されるべきフォームが複数ある場合は、指標がどのフォームについて分析したものかを明らかにわかるようにしなければならない。内部向け名称やURL、ハイパーリンクなどKPIレポートに盛り込むことで、レポートを見る人が迷ったとき、すぐに確認できるようにしよう。すべてのフォームについての指標をレポートに盛り込むのは、それらすべてがビジネス上重要だというのでない限り、避けなければならない。このKPIは現場での活用を目的としたものであるが、フォームに関する問題を示すその他の指標と同様、「最も重要」なフォームだけを追跡すればよい。

  • 想定される結果

    フォーム完了率はあまり高くないと思ったほうがよい。フォームが長い場合はなおさらそうである。このトピックに関する完全な研究にはまだ出会ったことがないが、フォームの長さとフォーム完了率は、ほぼ反比例する。フォームが訪問者にとって極めて重要で、電話や対面で補うことができない場合を除いて、フォームが長いと、記入の中断を招いてしまう。面倒そうに見えてしまうことや、記入が困難になることが理由だ。

  • 行動

    フォーム完了率を改善する原則は、質問事項を少なくすることである。不要な記入フィールドを削除するか、フォームを小さな複数のフォームに分解していくかは自由だ。私は前者の方法、すなわち本当に必要なことだけしか尋ねないこと、最低でも最初のコンバージョンイベントが起こるまでは無駄な質問をしないことをお勧めする。マーケッターは、このアドバイスに逆らって、しばしば「どこで私たちのことを知りましたか」という質問が正直で意味のある回答が返ってくると信じているようだが、私のアドバイスは正しいのだ。

    普通、重要なフォームに関するフォーム完了率は予測可能である。値が急落していたら、獲得マーケティング努力を見直そう。獲得した訪問者は、見て触って確かめるだけで買いはしないような、ターゲット外の訪問者ばかりかもしれない。別の理由としては、フォーム自体の問題がある。よくある問題としては、訪問者のスクリーン解像度に対して、フォームが長すぎることである。驚くかもしれないが、とてもたくさんの訪問者が、最初の画面で見える部分の記入を始め、下にスクロールして、あとどれくらい記入すべきことが残っているかを見た瞬間、記入をやめてしまうのだ。あるいは、「次へ」のボタンが、画面の下に来てしまって見えないとか、その他の理由で発見しにくくなっていることも考えられる。

この記事の筆者

この記事は、Web Analytics Demystifiedの創設者でありシニアパートナーであるエリック・T・ピーターソン氏による書籍『The Big Book of Key Performance Indicators』の日本語版です。原著作者の許諾を受けて株式会社デジタルフォレストが翻訳し、同社の開催する「Web解析マネジメント実践講座」において参考書としているコンテンツを、Web担当者Forum向けに特別に公開しているものです。

※この日本語訳版に関するお問い合わせは、デジタルフォレストまでお寄せください

エリック・T・ピーターソン 著
株式会社デジタルフォレスト 手嶋進、入谷聡、清水昌浩 訳

Original Author: Eric T. Peterson, Senior Partner and Founder, Web Analytics Demystified

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