パーセント指標のKPI 全13個 | KPI大全 第3章-2

平均指標と同様、パーセント指標も、見やすく、簡単に理解できる指標である。
よろしければこちらもご覧ください

パーセント指標

平均指標と同様、パーセント指標も、見やすく、簡単に理解できる指標である。本書で登場するパーセント指標を使うことにより、Webサイトに来訪する訪問者の分布を知ることができる。また、マーケティング、メッセージ、サイト構造における何らかの変化を反映しやすいのは、平均よりもパーセント指標の方である。新規訪問者の比率を劇的に増やしたいと思ったら、単純に、マーケティング予算を増やせばよい。購入頻度の高い購入者の比率を増やしたいと思ったら、最近購入した購入者に送るEメール広告を改善すればよい。

この章での計算を定義のとおりにやると、値は0から1の範囲になるが、それぞれの値に100をかけて、いわゆるパーセント表示(0%から100%)に直すと、よりわかりやすくなる。

新規訪問者率・リピート訪問者率

最も重要なKPIの1つであるリピート訪問者率は、ビジネスにおいて非常に重要な判断基準である。

  • 定義

    以下のように定義される。

    {新規訪問者総数}÷{総訪問者数}={新規訪問者率}

    {リピート訪問者総数}÷{総訪問者数}={リピート訪問者率}

    また、新規とリピート訪問者の合計は総訪問者数と等しいため、

    ({新規訪問者数}+{リピート訪問者数})/{総訪問者数}=1.00

    これら3つの測定値は、どんなアクセス解析ツールでも取得できる(図8)。

    図8 訪問者数に加え、リピーター比率、直帰率など主要な指標を一覧できる、VisionalistのKPIレポート画面

    通常、訪問者がアクセス解析ツールの発行した固有のCookieを持っていない場合、その訪問者を新規訪問者とみなす。リピート訪問者は固有のCookieを持っており、「月別リピート訪問者」のように、時間と関連付けて表される。訪問者がCookieの削除を行うと、固有のcookieを持たないため、アクセス解析ツールは「新規」と判断する。そのため、新規訪問者率が不自然に上昇する。

  • 表現形式

    新規訪問者率・リピート訪問者率は、Cookie削除の影響を受けやすいため、cookieの削除による影響を含む現在の比率で値を決め、「エラー率」も示すか、または最低限、「この指標はCookieの削除に起因する誤差を含む」と明記しておくべきである。その点を除けば、この指標は基本的にはわかりやすいものである。

  • 想定される結果

    このKPIの扱いは、あなたがどのようなマーケティング戦略を取るかによって変わる。新規購入者獲得に重点を置いているならば、新規訪問者率がリピート訪問者率より大きいほうが良い。反対に、訪問者の維持に重きを置いているならば、リピート訪問者率の方が高くなるのが望ましい。

    業種やマーケティング戦略に依存するとはいえ、リピート訪問者率の値は、常に比較的安定して推移すべきである。マーケティング予算を増やすか、既存購入者に対するアプローチをすると、この値が変化するはずである。その変化率は、あなたの施策がどのくらい効いているかを反映する。

    リピート訪問者率が変化しているときは、どの要素が変化を引き起こしているのかを確認しよう。リピート訪問者が増加していると短絡的に思わず、新規訪問者が減少しているかもしれないと考えよう。この指標とともに、新規訪問者のリピート訪問者に対する比率を比較するのも有効で、何が訪問のきっかけになっているかを分析するのに役立つ。

  • 行動

    マーケティングやリテンション活動を特に変更していなくても、これらの値が数パーセントを超えて上下していないかどうかは継続的に計測することには価値がある。計測によって、これまで定常的な参照元となっていたものがなくなっていないか、インターネット上で新規訪問者を呼び込むような取り上げられ方をしていないかに注意しよう。

    サイトを訪問する第一の入り口が、検索エンジン(Google、Yahoo!、Bing)であるという企業は多い。検索結果の表示ランキングが変わると、それが新規訪問者率にダイレクトに反映されてくることはある。リピート訪問者率が急に変化したら、まずサイトへのトラフィックレポートを変更点を意識して詳しく観察ことから始めよう。特に、検索語句や検索エンジンに焦点を当てた分析が有効だ。

    新しいマーケティング・キャンペーンによる新規訪問者獲得や、メール広告・リマーケティングによるリピート訪問者増を狙う場合は、当然パーセンテージが活動に応じて変化することを期待する。明確な法則はないが、新規訪問者獲得キャンペーンが、新規訪問者率を上昇(結果的にリピート訪問者率を下降)させていない場合、そのキャンペーンのどこかに問題があるので、注意深くチェックするべきである。あなたがサイト訪問者との間に構築しようとしている関係を経営層が評価する場合、このKPIは非常に有効な指標である。

新規購入者率・リピート購入者率

ECサイトでは、リピート購入者がどのように行動し、どのように繰り返し買うか、ということが、アクセス解析の核心部分である。このKPIが、その行動の変化を反映する、最良の指標である。

  • 定義

    新規訪問者率・リピート訪問者率と同様、

    {新規購入者総数}÷{購入者総数}={新規購入者率}

    {リピート購入者総数}÷{購入者総数}={リピート購入者率}

    また、新規購入者数とリピート購入者数の合計は購入者総数に等しいので、

    ({新規購入者数}+{リピート購入者数})/{購入者総数}=1.00

    新規/リピート購入者の計測は、ブラウザのCookieに依存しないので、ユーザーがCookieを削除しても精度に影響を与えることはない。最も重要なことは、アクセス解析ツールが集計する購入者の総数と、ECシステムが集計する購入者の総数が一致することである。このことは購入者総数だけでなく、リピート購入者数の計測においても同様である(リピート購入者数は、ECシステムまたはCRMシステムを介した数値で確認できる)。

  • 表現形式

    「リピート訪問者率」指標と並べて表示する場合は、「訪問者」と「購入者」の区別を明確にしなければならない。また、新規購入者・リピート購入者それぞれに分けた平均注文額新規購入者・リピート購入者の収入比率との比較も有効である。

  • 想定される結果

    新規訪問者・リピート訪問者比率と同様、このKPIもマーケティングやリマーケティングの取り組みに強く依存している。リピート購入者を増やしたいと思えば、既存購入者に対する積極的なマーケティング活動をするべきである。

    ただし、すべてのECサイトが必ずしもリピート購入者を得られるとは限らない。私の書籍販売サイト“Web Analytics Demystified”に関しては、「リピート購入者」は珍しい存在で、少なくとも「2冊目」(あなたが前著を持っているなら、こうして購入して読んでいる本書がそれにあたる)が出版されるまでは、ほぼありえない存在であった。リピート購入者を想定しない、または頻度がきわめて低い場合は、この指標を観察する意味はほとんどない。

  • 行動

    新規訪問者・リピート訪問者率と同様、新規購入者またはリピート購入者に向けた取り組みをしていれば、その施策がこの指標(あるいは利益・売り上げ)に反映されているかどうかがポイントだ。残念ながら、リピート購入者率が急激に減少しても、新規購入者の増加には直接的に結びつかないこともある。この計測値の変化は、季節変動や購入者の嗜好の変化に影響を受けやすい。つまり、リピート購入者率の減少は、購入者が競合他社に乗り換えた可能性や、あなたのサイトに購入者の買いたいものがないことを示していることもある。

    繰り返すが、これらの値は、予期せぬ変化に備えて、継続的に観察することが必要である。

特定セグメントの訪問率

「新規訪問」「リピート訪問」という分け方はシンプルなセグメンテーションだが、あなたにとって最も価値のある別のセグメンテーションに基づいて、KPIを設定することも重要である。

  • 定義

    多くのサイトオーナーは「高価値顧客」や「検索マーケティングによる獲得訪問者」などのように複雑な訪問者セグメントをモニタリングする。どのセグメントをモニタリングしていようが、特定の訪問者セグメント割合は以下のように計算される。

    {特定セグメントの訪問者数}÷{総訪問者数}={特定セグメントの訪問率}

    「価値の高い購入者」や「キーワード広告の訪問者」など、複雑なセグメンテーションをしたいという要望は少なくない。こんな計算式を書くのは紙面の無駄のように思えるが、「KPI大全」ということで、記載しておいた。訪問者のセグメンテーションができるアクセス解析ツールなら、セグメントごとの訪問者数は、最も基本的な計測指標である。

  • 表現形式

    こういったKPIの場合の最重要事項は、レポートの読み手がセグメントの定義をしっかりと理解していることである。基本的には、社内で最も通じやすい言葉を用いて、セグメントの明確な定義を、KPIレポートのどこかに入れておく必要がある。

  • 想定される結果

    このKPIの期待値は、セグメントの全体像や、計測される個々のセグメントに、全般的に依存する。

  • 行動

    繰り返すが、アクセス解析の父 Jim Sterneが言うところの「時と場合によりけり」である。とはいえ、この指標をレポートに盛り込む前に、値が一定以上増加・減少を示した場合に、いかなる行動をとるべきか、はっきりと理解しておこう。

滞在時間分布(長/中/短)

訪問者を平均滞在時間でグループ分けすることで、関心の高さが異なる集団ごとに、行動分析ができる。

  • 定義

    この指標を算出するのは、他の指標と比べると比較的難しい。アクセス解析ツールがどのくらい細かくデータを集計できるかによって変わるからである。個々の訪問・訪問者について滞在時間を取得できなければ、残念ながら不運だったとあきらめるしかない。しかし、「1訪問あたり」または「1人あたり」の平均サイト滞在時間が取得できれば、いい分析を開始できる。

    細かいデータを得られることを前提とすると、次にするべきことは、滞在時間の長/中/短の仕切りをどこに設定するかである。一般的には、30秒以下を「短時間滞在」、30秒から5分までを「中時間滞在」、それより長いと「長時間滞在」とすることが多い。この区分に従うと、

    {閲覧が30秒以下の訪問回数}÷{総訪問回数}={短時間滞在率}

    {閲覧が30秒以上5分以下の訪問回数}÷{総訪問回数}={中時間滞在率}

    {閲覧が5分以上の訪問回数}÷{総訪問回数}={長時間滞在率}

    となる。

    アクセス解析ツールで「1人あたり」のデータまでしか取れない場合は、それに沿って指標の名前を変えよう。多くのアクセス解析ツールでは、訪問者の滞在時間は次の訪問時もほぼ同じ程度の場合が多いので、1訪問ごとの滞在時間で扱っている。

  • 表現形式

    最も重要なポイントは、時間の区切りを明確に示すことである。必要ならば、指標の名前に時間の区切りを入れてしまい、「短時間滞在(30秒以下)率」「中時間滞在(30秒以上5分以下)率」「長時間滞在(5分以上)率」などとしてしまってよい。

    これらの指標の意味をもっと広くとらえて、「関心の低い訪問」などと書く人もいる。KPIの定義が明確であれば、読み手がわかりやすいように名前を変えても問題ない。

  • 想定される結果

    いくつかのパーセント指標は施策によって容易に変化するが、滞在時間の場合はそうもいかない。一般的には、短時間滞在の割合が多いことは好ましくない。滞在時間が短い訪問者は、欲しいものを見ずに帰ってしまっていることが多いからである。より適切な情報・商品を提供すると、Webサイトにおける滞在時間は延びるものだ。ただ、サポートサイトの場合は、訪問者がすばやく目的の情報にたどり着けていることを示す、中時間滞在率が大きいほど良い(ただし、電話番号を見ただけで終わるような短すぎる滞在時間はいいとは言えない)。

  • 行動

    滞在時間を延ばすための最も基本的な戦略は、Webサイト全体のユーザビリティ(使い勝手の良さ)を改善することと、訪問者のリーチ・獲得プロセスにおけるターゲティングの改善である。短時間滞在率が比較的大きい(たとえば過半数を超えている)場合、ターゲティングに失敗していて、新規訪問者がすぐに「思っていたものと違う」と判断し、そのまま帰ってしまうことが考えられる。こうした場合は、マーケティング戦略を再評価して、よりニーズのある訪問者を獲得する方法を考えるか、エントリーページ(トップページ)のメッセージが、マーケティングで使っているものと一致しているかどうかをチェックしてみよう。

    ターゲティングに自信がある場合、もしくはこれ以上適切な獲得方法を思いつかない場合は、Webサイトの情報アーキテクチャとユーザビリティを検証し、「このサイトは本当に使いやすいのか」をよく考えてみよう。訪問者は、ナビゲーションがわかりにくかったり、探している情報にたどり着けなかったりすれば、帰ってしまう。検索ログを調べて、頻繁に検索されるキーワードがあれば、ナビゲーションがその内容のありかを示せていない可能性がある。

    いずれにしろ、滞在時間の「長/中/短」を慎重に設定しておけば、訪問者の構成に劇的かつ不測の変化があったとき、それを察知できる。

クリック深度分布(興味度分類)(高/中/低)

滞在時間と同様に、関心の高さが異なる訪問の分布を、訪問者が見たページ数で測ることにより、訪問者との関係構築がどのくらいうまくいっているかを把握できる。

  • 定義

    滞在時間分布の項で述べたように、この指標も、クリック深度を計測するアクセス解析ツールの1訪問あたりのページ数を把握することに関して、訪問や訪問者をどう計測するかの精度に依存する。

    図9 1訪問あたりのクリック深度レポートの例。Webアナリストは高深度の比率がどこで落ちているかを分析する。

    クリック深度のレポートにアクセスしたら、次は「高/中/低」の基準値を決定しよう。注意すべきは、閲覧・クリックというのはアナログな行為だということ(ページを見るためには、リンクをクリックするか、URLを入力してEnterキーを叩かなければならない)である。

    多くのサイトにおいて妥当な区分としては、

    • ―― 2クリック以下
    • ―― 2~5クリック
    • ―― 5クリック以上

    である。この基準に従うと、計算式は、

    {2クリック以下の訪問数}÷{総訪問回数}={低クリック深度訪問率}

    {2~5クリックの訪問数}÷{総訪問回数}={中クリック深度訪問率}

    {5クリック以上の訪問数}÷{総訪問回数}={高クリック深度訪問率}

    ここに挙げたクリック数の値が、すべての状況で適切とは限らないことに注意しよう。特にECサイトやメディアサイトでは、中クリック訪問の基準を3~10クリックとし、それ以上を高クリック訪問としたほうがいい。どこで線を引くべきかを決めるには、サイトの平均クリック深度を計算し、そこを基準に「中クリック深度訪問」と「高クリック深度訪問」を分けるのが有効である。たとえば、平均クリック深度が7クリックとすると、「2~7クリック」が中クリック訪問、「7クリック以上」が高クリック訪問という分け方になる。

  • 表現形式

    滞在時間分布の項と同様、「何クリックで線を引いているのか」が一目瞭然になるようにしよう。それから、ここで言うクリックがどういう意味であるか、つまりページビューであることを説明しておいたほうがいいと思うだろう。人によっては、このKPIの名称を「1訪問あたりページビュー数分布」にすべきだという人もいるが、私はリンクやボタンをクリックするという行為こそが必要なことであるという認識のもとで、「クリック」を指標名に用いた。

  • 想定される結果

    滞在時間分布と同様、クリック深度は、訪問者がどの程度あなたのコンテンツや商品に関心を持っているかをそのまま反映する。つまらないサイト、わかりにくいサイトでは、低クリック深度訪問率が大きくなるし、おもしろくて魅力的なサイトなら、その逆になる。

  • 行動

    期待するだけのクリック深度が得られていないと感じたら、滞在時間分布との比較をしてみよう。クリック深度は低い一方で、それぞれのページをゆっくり熟読しているということもありうる。たとえば、低クリック訪問率が大きい一方で、長時間滞在率も高ければ、おそらく問題はない。しかし、低クリック深度訪問率が大きくて滞在時間も短いとなると、明らかに失敗である。

    繰り返しになるが、クリック深度に何か問題があるときは、サイト内検索ログを調べて、頻繁に検索される語句の中から、ナビゲーション構造でうまく提示できていないキーワードや内容を発見しよう。さらに、想定している離脱ページ以外から、高頻度の離脱が見られるときは、次のページへのクリックを阻んでいるのが何かを見つけよう。

訪問頻度分布(高/中/低)

あなたのWebサイトにとって、訪問者のリテンション(維持)が重要であるなら、訪問者がどれくらいの頻度でサイトに来ているかを幅広く追跡することで、早期に警告を発することができる。

  • 定義

    カテゴリ型の他のKPIと同じく、この計測もアクセス解析ツールがどの程度細かく、訪問頻度を拾えるかに依存するところがある。訪問頻度が拾えるならば、次に「高/中/低」の区切りを決めよう。基準値はWebサイトによってさまざまだが、一般的には、平均的に訪問頻度が高いWebサイトの場合は、基準値は高めに設定したほうが良く、Webサイトが再訪問者があまりないようであれば、基準値を低く抑えるほうが良い。

    どのくらいの時間枠で計測するか、ということも重要な要素である。1日の中で何度も来てくれる訪問者の方が、月に何度も来る訪問者よりも、強く魅力を感じているということである。私が勧めるのは、月別に訪問頻度を計測し、およそ月3回以下を低頻度訪問と定義することである。とはいえ、意味のあるカテゴリ分けは、業種に合わせてなされるべきものであるし、より明確な扱い方については、本書の別の項目で詳述したい。

    基本的な計算式は、以下となる。

    {訪問頻度の低い訪問者の総数}÷{総訪問者数}={低頻度訪問率}

    {訪問頻度が中程度の訪問者の総数}÷{総訪問者数}={中頻度訪問率}

    {訪問頻度の高い訪問者の総数}÷{総訪問者数}={高頻度訪問率}

    「高/中/低」というのは明らかに曖昧な形容なので、基準値を明記する必要がある。KPIレポートに「定義」または「注釈」の欄を、エクセルの注釈機能などを用いて加え、カテゴリの意味するところをはっきりと説明しよう。

  • 表現形式

    カテゴリ分けの基準値を慎重に決めさえすれば、あとはこの指標単体でも十分な意味を持つことができる。ECサイトで購入頻度のセグメンテーションが(アクセス解析ツールやcookieを用いて)できれば、その計測も重要である。

  • 想定される結果

    訪問頻度は、業種やビジネスモデルによってさまざまである。たとえば、私のサイトと、CNN.comの場合を比べてみよう。CNNのサイトを高頻度に訪れる訪問者の割合はきわめて高い。一方、私のサイトには、運よく月何度か来てくれる人がいるかどうかである。CNNはメディアサイトであり、私のサイトはマーケティングサイトだからである。

    このKPIに関しては、本書の後半、業種ごとの解説の中で再度詳しい説明をする。

  • 行動

    訪問頻度が高いことを想定するサイトであれば、この指標が低下傾向を示したら、すぐに行動すべきである。この値に影響を与えるのは難しいことだが、メール広告を注意深く活用するなど、リテンションの戦略によって、訪問頻度を改善することは可能である。訪問頻度が徐々に下がってきていれば、あなたのサイトが提供するWebサイトに、問題が潜んでいる可能性がある。いずれにしろ、この指標は業種ごとに考えてこそ、十分な意味をもつ。

リセンシー(前回訪問間隔)分布(長/中/短)

Jim Novoによれば、将来の成功がわかる最良の指標の1つが、訪問間隔と購入間隔だという。

  • 定義

    前回訪問間隔は、前回の訪問からの経過時間である。しかし、この計測はすべてのアクセス解析ツールで行えるわけではない。分布を解析するその他のKPIと同様、訪問間隔の長/中/短の区分には、明確な定義が必要である。

    図10 訪問者が最近「何日前に」訪問したかを示すグラフ。このグラフからわかるのは、大多数の訪問者が今日のみ来た、つまり新規訪問者だということである。
  • 表現形式

    前回訪問間隔と言われても、それが何かすぐわかる人はほとんどいないので、この指標のレポートには言葉の説明をつけることが必要だ。この指標に関しては、訪問間隔が短い方が良いということは強調する必要がある。短い間隔で訪れる人の方が、価値を生む行動をしてくれる可能性が高い。

    また、この値に変化が現れたら、訪問頻度分布や金額に影響を与えるKPIなど、別の数値にも変化が現れていると思ったほうが良い。

    最後に、前回訪問間隔は、購入者のリピート購入にも密接に関わってくる重要指標なので、ECサイトで計測可能であれば、前回訪問間隔と同時にと最新購入間隔も計測することが必要である。

  • 想定される結果

    マーケティングやリマーケティング行動によって、前回訪問間隔は比較的容易に改善できる。リセンシーの短い訪問者の割合を劇的に増やしたいなら、過去の購入者や訪問者を対象に、魅力的な「無料のおまけ」つきのメールキャンペーンを打てばよい。リセンシーが長い方を増やす方法は・・・単に、リマーケティングを一切しないことである。

    すべてのサイトに、短い間隔の再訪問があるわけではないことには注意が必要だ。このKPIが適している業種については、後述する。

  • 行動

    すべてのKPIがいい状態で、偶然にも顧客のロイヤリティ最適な状態になった場合、急な値の変化にはすばやく反応すべきである。頻繁に訪れていた人が訪問をやめてしまうきっかけの1つは、何か良い代替物(競合相手!)の登場である。

新規訪問者収入率・リピート訪問者収入率

新規訪問者とリピート訪問者それぞれの収入率は、コンバージョンが「いつ」起こるのかを知るという意味で重要な指標である。

  • 定義

    新規訪問者とリピート訪問者に分けて、収入を計測できるアクセス解析ツールを使っていれば、計算は至ってシンプルである。

    {新規訪問者からの}÷{総収入}={新規訪問者収入率}

    {リピート訪問者からの収入}÷{総収入}={リピート訪問者収入率}

    商品の購入が収入源であれば、これと同様の方法で、新規購入者収入率とリピート購入者収入率を計測するのもよい。

    {新規購入者からの収入}÷{総収入}={新規購入者収入率}

    {リピート購入者からの収入}÷{総収入}={リピート購入者収入率}

    ただこの場合、「新規購入者」というのは、おそらく過去にサイトを訪問したことがあるが、購入したことはなかった訪問者である。ここで言う「新規購入者」と「リピート購入者」は、それぞれ「初めての購入者」と「2回め以降の購入者」と考えることができる。

  • 表現形式

    このKPIの示すところは自明である。

  • 想定される結果

    一般的に、多くのオンラインビジネスの収入のほとんどは、リピート訪問者からもたらされる。同じことがリピート購入者からも言えるかどうかは、最初に買った人に次にまた買わせることができるかどうかであり、これは商品ラインナップの組み合わせと初回購入時にとった対応品質の関数だ。というわけで、購入者満足度を測定しているならば、購入者満足度分布というKPIと併せて報告すると良い。

  • 行動

    多くのサイトで、これらの値はほぼ安定しており、年間を通じて数パーセント程度しか変動しない。購入者や訪問者を満足させるだけの仕事をしているという前提に立てば、有意な変動が現れたら、即座に原因を探るべきである。収入のうち新規訪問者や新規購入者の割合が急増していたら、リピート訪問者・リピート購入者からのオーダーが落ちていることを疑うべきだろう。リピート訪問者率リピート購入率と同様に、変化があったときは、原因の決定的要因である隠れたデータを発見しよう。

新規訪問者(購入者)注文率・リピート訪問者(購入者)注文率

新規購入者やリピート購入者からの注文数の比率を計測することで、収入に関する指標の妥当性を再確認できる。

  • 定義

    新規訪問者(購入者)およびリピート訪問者(購入者)収入率と同様の前提で、

    {新規訪問者からの注文数}÷{総注文数}={新規訪問者注文率}

    {リピート訪問者からの注文数}÷{総注文数}={リピート訪問者注文率}

    新規およびリピートの訪問者や購入者がどのように売上をあげてくれるかを知ることは重要なため、多くのアクセス解析ツールは、このレベルの分けかたであれば計測する機能がある。

  • 表現形式

    収入に関するKPIは示しているという前提で、このKPIは注文数の指標でありであり、収入や販売アイテム数とは違うということをはっきり示す必要がある。

  • 想定される結果

    新規訪問者収入率・リピート訪問者収入率の項目を参照。

  • 行動

    ECサイトでは、トータルの収入がほぼ一定なのに、それぞれの訪問者や購入者の(新規とリピートの)セグメントで注文比率が変化している場合がある。その場合は、平均注文額の指標に特に注意を払い、傾向を把握しよう。

訪問者満足度分布・購入者満足度分布

訪問者満足・購入者満足は、本書に登場するさまざまなKPIの背景にある、重要な要素である。これを知ることにより、相対的な満足度を観察できる。

  • 定義

    訪問者や購入者の満足度は明示的に収集しなければならないため、アクセス解析ツールで計測することはまれである。Foresee Results社、OpinionLab社、Usability Sciences Corporation社など、いくつかの技術ベンダーは、閲覧ページ単位や訪問単位で、満足度を把握する方法を提供している。こうした企業の協力を得られれば、「満足度・高」と「満足度・低」の閾値(ボーダーライン)を設定するだけでよい。

    {満足度の高い訪問者の数}÷{計測された訪問者総数(*注)}={高満足訪問者率}

    {満足度の低い訪問者の数}÷{計測された訪問者総数}={低満足訪問者率}

    ECサイトでは、同じことを「購入者」に関しても計測したほうがいい。

    {満足度の高い購入者の数}÷{計測された購入者総数}={高満足購入者率}

    {満足度の低い購入者の数}÷{計測された購入者総数}={低満足購入者率}

    注)ここで、すべての訪問者について満足度を計測することは難しいため、「計測された訪問者総数」は、「訪問者総数」とならないことに注意。

    理想的には、このデータを自動的に収集して、普段使っているアクセス解析ツールに統合し、本書に述べるさまざまな他のKPIに使うことができるのが最良である。

  • 表現形式

    満足度の「高」と「低」を分ける基準値については、説明をつけておいたほうが良い。

  • 想定される結果

    ほとんどのWebサイトで、訪問者や購入者には高い満足度を得てほしいものだろう。しかし、そのような理想的状況はまれである。満足度を左右する要素は、サイトのユーザビリティ、訪問者の意思、(ECサイトの場合は)価格設定、競合の状況など多岐にわたり、ある訪問の際の満足度と、次の訪問の際の満足度が真逆になることもありうる。とはいえ、満足度を計測することはきわめて重要であり、収入、訪問頻度、訪問間隔、閲覧時間、クリック深度など、さまざまな計測値に影響を与えるので、値が急変しているときは、慎重な観察が必要である。

  • 行動

    満足度の高い訪問者・購入者の割合が低下したら、いかなる場合も、原因追求と同時に「歯止めをかける」ための行動に移るべきである。幸いにも、満足度が測れるアクセス解析ツールの多くは、同時に問題発見機能も持ち合わせている。満足度の効果を座して待つことなく、その割合が持ち直すことを祈ろう。

    注)このKPIは「緊急停止ボタン」になりえる。危急の事態が起こっているとき、問題がはっきりするまで、全員が急ブレーキをかけられるように。

検索利用率

サイト内検索・商品検索は、ユーザーがサイト内の特定の情報を探しているポピュラーなツールである。検索利用率を継続的に観測することで、ユーザーの理解度や期待の変化を観察できる。

  • 定義

    WebSideStory Search、Mercado、Google Search Appliance、Endecaなどの検索ツールをサイトに導入している場合は、訪問者のうち何人が検索を利用しているかを測定すべきである。最も一般的な測定方法は、「検索結果」ページにタグを貼って、あるいは、ログ分析から認識する方法である。それによると、計算式は、

    {「検索結果」ページを1回以上見た訪問者の数}÷{総訪問者数}={検索利用率}

    となる

    「訪問者」ベースでなく「訪問回数」ベースで計測することも、1人が別々の訪問のときに検索を使ったか使わなかったかを知る役に立つ。これらを比較すると、2種類の計算結果は異なることがわかるだろう。

    あなたのビジネスで、検索の位置づけがきわめて重要で、かつアクセス解析ツールがやや複雑なセグメンテーションに対応していれば、この章に登場した「高」「中」「低」のカテゴリKPIのそれぞれに、値を計測するとよい。

  • 表現形式

    KPIレポートで明示しておくべきことは、まずこれが「1回以上」検索結果ページを見た人の割合であること、そしてこれが外部の検索エンジンではなく「サイト内検索」の利用率であること、の2点である。

  • 想定される結果

    検索利用率は、想定される訪問者のタイプや、サイトが提供する情報・商品のタイプ、サイト全体のユーザビリティで変わってくる。あるサイトは多数の「検索者」を獲得するし、別のあるサイトでは検索をする人がほとんどいない。サイトのデザインによほど大きな変更がない限り、この値はほぼ一定である。

  • 行動

    基本的にこの値は一定であるため、もし何か急激な変化が現れていたら、最近サイトに変更を加えた際に、何かミスをしている可能性がある。値が急落していたら「そもそも検索ツールは正しく機能しているか?」と自問することも必要だ。また、検索ツールに多大な投資をしているにもかかわらず利用率が低い場合は、検索フィールドの配置やデザインの変更など、KPIの改善のために試行錯誤すべきである。

検索をかけて「該当する結果が見つかりませんでした」という表示が出たときほど、がっかりすることはない。特に、確実に「ある」とわかっている情報なのに検索で引っかからないとき、訪問者の落胆は大きい。

  • 定義

    この値を計測するためには、検索ツールが、検索結果が見つかった回数を拾い出す機能を持っていなければならない。経験上、検索結果を返した数(または単純に、検索結果の有無)を記録するカスタム変数を使用して、JavaScriptのタグを使う方式が容易である。

    この情報を持っている前提であれば、計算は簡単である。

    {検索結果が得られなかった検索回数}÷{総検索回数}={結果0件検索率}

    1回の訪問の中で複数回検索される可能性が高いので、これらの分母、分子に使う検索の数は、訪問回数や訪問数ではなく、ページビュー数で計算されるべきである。

  • 表現形式

    KPIレポートでは、結果0件検索の意味と、このKPIと検索結果が得られなかった検索語句の情報を合わせて提供したほうがよい。

  • 想定される結果

    理想的には、この値は限りなくゼロに近づくが、実際はそうはならない。多くの場合、検索結果ゼロの原因は、単純なスペルミスや、コンセプト上もしくは言語上の表現の違いによって起こるが、これらは検索ツール上で、類義語判定やマッピングを用いて簡単に修正できる。

  • 行動

    あなたが検索ツールに多大な投資をしており、なおかつ検索利用率が高い場合は、この指標を参考にしながら、検索されている語句や、検索を利用する訪問者の行動を注意深く観察しよう。このKPIに上昇傾向があれば、検索結果が得られなかった検索語句を洗い出し、それらのマッピングと、検索インデックス上で類義語の関連付けを行うことを試みよう。

検索結果を表示するのはいいが、それが実際にクリックされ、訪問者が欲しい情報にたどり着いてくれなければ意味がない。検索結果の利用度合いを観察することで、訪問者が表示された検索結果がクリックするに値するとみなしたかどうかを知ることができる。

  • 定義

    「結果0件」検索率と同様、この指標もやや複雑で、訪問者が検索結果をクリックしたかどうかを、システム的に測定できなければならない。通常、リダイレクトかJavaScriptを使ってonClickイベントを捕捉してページビュー単位でカウントし、以下の計算をする。

    {検索結果をクリックしなかった検索ページ数}÷{総検索回数}={「成果なし」検索率}

    クリック「した」検索の数の方が測定しやすい場合は、分子をそれに合わせて変える。

    1-({検索結果をクリックした検索ページ数}÷{総検索回数})={「成果なし」検索率}

    1回の訪問の中で複数回検索される可能性が高いので、これらの分母、分子に使う検索の数は、訪問回数や訪問数ではなく、ページビュー数で計算されるべきである。

  • 表現形式

    KPIレポートでは、「成果なし」検索の意味と、検索結果を表示されたもののクリックされなかった検索語句のリストをあわせて提供したほうがいい。

  • 想定される結果

    検索結果は普通クリックされて当然なので、この指標が高いということは、何か問題があるということである。

  • 行動

    この値が高い場合、第一に見るべきは、具体的な検索結果である。検索結果は明確か?検索結果は読みやすいか?見つかったリンク先ページの内容が何であるかわかる情報を示しているか?

    検索結果の表示に関して自信があるならば、次は成果なしに終わった検索語句そのものを精査しよう。検索語句と検索結果の間に、齟齬を示す何らかのパターンがあるだろうか?解析ツールか検索ツールを使って、「同一訪問中の検索」を見ることができれば、期待はずれに終わった検索の後、他にどんな語句を検索したかをたどることで、その人が本当は何を探していたのかを知る手がかりになる。

    このKPIに関しては、落とし穴みたいなもので、「なぜ検索したのに結果をクリックしないのか」という問いの答えをすべて知ろうと思うと一生かかってしまうが、それでもなおわからないであろう。しかし、成果なし検索率が上昇していたら、技術的問題を疑ったり、検索インデックスの中で適切に扱われていない検索語句がないかどうかチェックしたりすべきだ。

この記事の筆者

この記事は、Web Analytics Demystifiedの創設者でありシニアパートナーであるエリック・T・ピーターソン氏による書籍『The Big Book of Key Performance Indicators』の日本語版です。原著作者の許諾を受けて株式会社デジタルフォレストが翻訳し、同社の開催する「Web解析マネジメント実践講座」において参考書としているコンテンツを、Web担当者Forum向けに特別に公開しているものです。

※この日本語訳版に関するお問い合わせは、デジタルフォレストまでお寄せください

エリック・T・ピーターソン 著
株式会社デジタルフォレスト 手嶋進、入谷聡、清水昌浩 訳

Original Author: Eric T. Peterson, Senior Partner and Founder, Web Analytics Demystified

テーマ別カテゴリ: 
記事種別: