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AIコストを抑え、チームでどう使うか? Figma幹部が語る「AI×デザイン」の最適解【Config 現地レポ#3】

「Config2026」を現地取材。プラグイン自作によるAIコスト削減ハックから、AI時代における「全員ビルダー」時代のチームマネジメント論まで、Figma幹部2人が語る実践ノウハウ。

井田奈穂

9月10日 7:05

Figma主催の年次カンファレンス「Config2026」を現地取材。各セッションや登壇者インタビューなどを、全4回にわたって紹介している。

第3回となるこの記事では、Figmaの“中の人”2人にデザインとAIを取り巻く状況についてインタビューした。

【1人目】ギー・セイズ氏に聞く、AIによるデザインの民主化とコスト削減ハック

まず1人目は、デザイン担当でAIディレクターのギー・セイズ(Gui Seiz)氏だ。彼はポルトガル出身で、英国でグラフィックデザインやアニメーションを学び、デザインスタジオの設立支援、デザインの教師、政府のAIアドバイザー、PinterestのAIチームリードなどを経て2025年4月にFigmaへ参画した異色の経歴を持つ。

Figma デザイン担当AIディレクター ギー・セイズ(Gui Seiz)氏

――Figmaは多くのAIエージェントのハブとして機能しています。一方でそれらのAI開発企業自体が近年、自前のデザインプラットフォームを提供し始めているのを目にします。競合しませんか?

他社がデザインツールを作り始めている現象は、この分野に関心を持つ人が増えている証拠であり、興味深いですね。ただ、私たちは他社の動きは気にしません。Figmaは自分たちの製品がどうあるべきかという確固たる意見を持っているからです。それは「デザインはコラボレーションでき、キャンバス上で描かれ、AIによって支援されるべきだ」という信念です。人々はFigmaをグラフィックデザイン、モバイルウェブサイト、そして今ではアニメーションなど、多彩なことに使っています。他社ツールはウェブデザインやプロトタイピングなどに特化しているかもしれませんが、私たちはそれらをすべて兼ね備えています。

――Figmaがリスクを感じることはないということですね?

リスクよりも機会について考えます。「どれだけの人がデザインできるか」を考えると、それなりに大きな市場ですよね。さらに「どれだけの人がアイデアを持っているか」を考えると、市場は無限に広がります。私は研究、教育、コミュニケーション、広告、製品開発など、さまざまな視点からデザインを考えて、教えてきました。セールスパーソンやライターも、アイデアさえあれば、デザイナーになれる時代です。

教育現場でもそうです。私たちは教育用Figmaを無償提供していますが、多くの学校でデジタルホワイトボードとして使われています。黒板の代わりに、キャンバスを開いて物語を表現することは、幼い頃から創造性を刺激する方法として興味深いですよね。私の子どもたちもそうですが、アイデアさえあれば形にできます。ツールの操作を学べば、さらに良いものを作れます。

島根県飯南町教育委員会 FigJam事例動画より (2025年12月撮影)

Figmaは最初プロダクトデザインからスタートしました。アイデアの多くはプロダクトに関連しているからです。しかし、広告やアニメーションなど、アイデアの用途は他にもたくさんあります。だからスライドやホワイトボード、アニメーションの機能も追加しました。サポートできるアイデアが増えれば増えるほど、Figmaの機能は広がります。私たちは単なるウェブビルダーではなく、アイデアを持つすべての人のためのプラットフォームでありたいのです。

――今回の新機能で、日本のWeb担当者におすすめなのは?

「コードレイヤー」はぜひ試してほしいですね。デザインとコードを同じキャンバスで一元管理できるのは非常に興味深い体験ですよ。以前はツール間を行き来するたびに少しずつ何かが失われていました。デザインとコードの翻訳が完璧ではなかったからです。でもこの2つが常に両サイドにあり、確認し合えるなら、可能な限り品質が維持できます。

また「Weave」も、実は新しいモデルが毎週のようにリリースされています。Googleや他の企業も次々と新しいAIモデルを出していますが、Weaveの強みは、1つのモデルに固執しないこと。創造性のためにどのモデルが最適かを考えて、エコシステムのあらゆるAIモデルに対応しています。

――「エンジニアがAIトークンの使用量で評価されることがある」という噂話を聞きましたが、それは本当ですか?

いいえ、むしろ逆ですよ! たとえばかつて、コードの行数でエンジニアが評価されていた時代もありましたが、非効率でメンテナンスしにくいコードベースになりがちでした。今は「いかに少ない行数で書けるか」が重要です。トークンも同じで、AIの採用度を示す指標にはなり得ますが、重要なのは消費量ではなく、それを使って何をするか。トークンは高価ですから、結果がすべてです。

――とはいえ、AIの利用料の高騰はどの企業も心配しています。

いいことを教えましょう。β版開放中は新機能をすべて無料で使えますよね? この期間を利用して、「くり返しのアクション」はすべてプラグインを作っておいてください。一度作れば無料で使い続けられます。マネージャーとして私が好きなことの1つがプラグインの作成なんですよ。昔はコードエディタを開いて、チームのために小さな作業をスピードアップしたり、ファイルを整理したり、使っていないレイヤーを削除したりするプラグインを作っていました。今のFigmaなら、プラグイン作成もAIに依頼するだけで済みます。自分専用のFigmaを作っておくのです。

――なるほど。新たにプロンプトを書かなければ、AI利用料が減らせるのですね。

そうです。Figma自身がまだ構築していないツールをユーザーが自作できるようになったのはコスト面でも大きな変化です。さらに、Code Connectを使えば、デザインシステムとフレームを接続できます。効率的にコード変換でき、トークン消費も抑えられます。「このコンポーネントはこう使う」と認識させておくだけで、一からコード全体を生成するより安く、速く、高品質になります。

――最後に、「近日公開」の新機能について教えてください。

「コードレイヤー」は、GitHubリポジトリをデザインキャンバスにクローンし、本番コードを直接扱えるようにします。デザインとコードの同期も可能です。「Figmaスライド」へのAIエージェント導入もきっと楽しいですよ。ドキュメントからデータを取得してプレゼンテーションを作成できるのです。Googleドキュメントからスライドを生成することも可能です。

また、ホワイトボード機能の「FigJam」も近くアップデートします。たとえば新しく入った社員向けの「ウェルカムFigJam」を作った場合、その後のチーム情報やプロジェクト紹介、組織図などの更新・管理が大変ですよね? 情報を自動的に取得して最新の状態に更新できるFigJamを作成できれば、管理コストを省き、もっと重要な作業に集中できます。

【2人目】マルセル・ウィークス氏に聞く、AI時代のデザインシステムとチームマネジメント

次に、Figmaでプロダクトエンジニアリング担当副社長を務めるマルセル・ウィークス(Marcel Weekes)氏に、メルカリの事例発表や新機能、そしてAI時代のチームマネジメント論について聞いた。

Slackに在籍していたウィークス氏は、シニアエンジニアリングマネージャーとして、モバイル・Web双方で優れたユーザー体験の実現に貢献した。その一方で、自身の体験から、優秀なエンジニアが突然マネージャー職に昇進した際、「死のスパイラル」に陥らないよう警鐘を鳴らす発信もしている。

Figma プロダクトエンジニアリングVP(VP of Product Engineering) マルセル・ウィークス(Marcel Weekes)氏

――マルセルさんが司会を務めたメルカリの事例発表、会場も満員でしたね。注目すべきポイントは?

まず、彼らはデザインシステムに関してすばらしい取り組みをしています。デザインシステムにおいて最も先進的なクライアントの一つです。特に注目すべきは、Code Connectが彼らにとって大きな加速装置となり、Figmaのデザインシステムとコードのデザインシステムをきちんと紐付けられたこと。さらに、デザイナーにコードを教え、開発者にデザインを教えるという「投資」を実行した点です。これは多くの企業が明示的に行うことではありませんが、選択の有無にかかわらず結局多くの時間を費やすことになる点です。彼らはそれを明示的に選択し、成果を上げました。

チームの全員が「ビルダー」となる役割をもたせた点もすばらしいですし、以前のウォーターフォール型の開発プロセスと、現在のループ型のプロダクト開発ライフサイクルを比較したスライドも、彼らにとっての重要なポイントだったと思います。

――多くの企業がデザインシステムをチーム間で共有することに苦労しています。なぜメルカリのようにうまくいかないのでしょうか?

おそらく、AIが登場する以前のデザインシステムの成熟度が企業によって異なっていたからでしょう。AIは、人々が元々いた場所を加速させた、あるいは拡大させただけです。コンポーネントの使用方法や説明を示すサイトなど、デザインシステムに追加のドキュメントを作ることに投資してきた企業は、AIがそれをコンテキストとして消費できるため、今その恩恵を受けています。

一方、あまり投資をせず、ドキュメント化も構造化も不十分だった企業は、今その「税金」を払っているような状態です。AIが高品質な出力を出すには、システムへの入力が非常にクリーンでコンテキストが豊富である必要があるので、彼らは今それをやらざるを得ないのです。

――今回発表された機能で、一番注目しているものは?

すべてのチームをサポートしているので1つを選ぶのは難しいのですが、Web担当者向けという文脈なら、「コードレイヤー」をおすすめします。モーションやシェーダーもエキサイティングですが、長年Figmaを使ってきた人にとって「コードレイヤー」は、機能面でステップ関数的な進化を感じさせるはずです。実際にできることがまったく新しいレベルになります。AIエージェントが生成したコードを同じキャンバス上で確認できるだけでなく、デザインから直接コードに飛び込むこともできる。多くの人がそこに価値を見出すと思います。

――一方で、文字どおり誰でもコードに触れられるようになることに不安はありませんか?

メルカリはこの点についてすばらしい回答をしていました。これはダメ、あれはダメと人々の行動を制限するのではなく、適切なコンポーネントとベストプラクティスを事前に提供することで、正しい方法で物事を行えるようにチームを導いています。下流工程での品質管理は依然として行いつつ、事前に適切なツールと教育を提供しておく。だからこそ、作られるものがブランドに沿いやすくなり、品質管理レベルでの修正作業が減るのです。

彼らが指摘していたように、100人の開発者が貢献し、7人の開発者がその変更を受け取る側という比率は、デザインシステムチームでは一般的です。誰でもコードという作業に貢献できることに不安を感じるのは当然ですが、適切なデザインシステムやツールといったガイドラインがあれば、最終的にユーザーに提供するものに近いアウトプットが生まれます。

――日本のユーザーに向けて、今後のリリースについて何かメッセージはありますか?

コラボレーションはFigmaのDNAです。初日のキーノートでニコが指摘したように、AIは最初、個人が別々に作業し、AIと会話をするだけのように見えるかもしれませんが、それは分断された状態です。私たちがやりたいのは、人々がチャットを通じてコラボレーションできるようにすること。他の人がキャンバスに何かを呼び出すのを見るのは今はまだ簡単ではないかもしれませんが、今後それが進展することを期待しています。デザインの途中でチームの誰かがコメントを残してコラボレーションし、AIエージェントがさらにその懸念に対処できるようにする——それらのコメントを「注釈」として扱うことは、私たちが今後取り組んでいくエキサイティングなテーマです。

――エンジニアからチームリーダーになり、あなたのような経営層を目指す人たちが、心に留めておくべきことは?

まず、「エンジニアとマネージャーは全く別の仕事だ」と認識してください。次に、マネジメント初期は失敗がつきものであると心得てください。エンジニアからマネージャーに抜擢される人の多くは非常に優秀なエンジニアなので「直面する課題への対処法は自分で見いだせる」と過信しがちです。しかし、マネージャーになると課題の性質が異なり、時折失敗することもあります。自分自身にあまり厳しくしすぎず、失敗から回復できる、そこから学べると知っておくことが大切です。途中、一人でやっていると感じるかもしれませんが、あなたは孤独ではありません。周りには学びを授けてくれる他のマネージャーやメンターが必ずいるはずです。

――あなたのようにエンジニアから経営層になったロールモデルがいるのは心強いですね。

そうなれるといいのですが。私自身にもロールモデルがいて、私の成長の助けになってくれているので。

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