このInstagram広告は、なぜ私に刺さったのか? 自分で自分をN1分析してみた

マーケターコラム、今回はSTORES 株式会社の加藤千穂さん。自分に刺さった広告クリエイティブを考察しています。
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STORES 株式会社 テクノロジー部門 エンジニアリング室 加藤千穂氏

私たちは1日の中で、どれくらいの量の広告を見ているのでしょうか。

SNS、YouTube、Web検索、Googleマップ、何かを見たり探したりしているとき、広告は必ずと言っていいほど出てきます。

でも、そんな大量の広告の中で、私に「刺さった広告」、すなわち私の興味関心を引く広告は、ほんのわずかしかありません。

毎日さまざまな広告に接している中で、私の目にとまり、そのモノ/サービスをより知りたいと思わせたクリエイティブについて考察します。今回はInstagram広告編です。

参考までに、私の基本的な属性は以下のとおりです。

  • 30代女性
  • 家族は夫、子ども2人(7歳、2歳)
  • 東京都在住
  • 勤務先は都内IT会社

Instagramに求めているのは息抜きコンテンツ

スマホでInstagramのアイコンをタップするとき、私が求めているのは息抜きコンテンツです。

リアル友だちやインスタ友だちのストーリーズを見たり、趣味である手帳アカウントや手帳のハッシュタグを見たり、おすすめで表示されるレシピ動画を見たりすることで、ぼーっとしながらなんとなく楽しみたいという気持ちで過ごしています。

タイミングとしては、仕事の合間ではなく、就業前や就業後のスキマ時間に見ています。見ている時間は数分のときもあれば、気づいたら20分経っていた!みたいなときもあります。

そういった気持ちやタイミングで見ているとき、頭の中は仕事よりもプライベートモードなので、レシピ動画を見ると「あ、これを作ってみようかな」とか、好きなブランドの新商品を見て「欲しいなぁ」とか、プライベートで役立ちそうなものにアンテナが張られています。

Facebookと連動して出稿されているであろうセミナーやカンファレンスの広告が表示されると、「今は仕事に関する情報は求めてないモード」なので、ちょっと不快に感じてしまうほどです。

そのような気持ちとタイミングでInstagramを見ているときに、私に刺さった広告を3件紹介します。

ROSY LILYのシューズシャンプー

1つ目は、ROSY LILY(ロジーリリー)。「泡をかけて、水で流さず、ふき取るだけできれいになる」というコンセプトの、女性のためのシューズシャンプーです。

洗ったスニーカーのビフォー・アフターとともに、かんたんさを訴求するコピーに惹かれて、動画広告を最後まで見ました。スタジオ感のない、普通のおうちの玄関で洗っている様子も、リアルさがありました。

何度か同社の広告に接触したのですが、大人のスニーカーのクリエイティブもあれば、子どものスニーカーのクリエイティブもあり、私のペインを刺しにきているなと思いました。「子どもが外で遊ぶとすぐに汚れてしまうスニーカーを、たびたび水洗いするのは面倒だな……」という課題意識があったからです。

そして、広告でうたわれていた香りのよさも、スニーカーを洗うという面倒な作業を少しでも楽しめるのではないかと感じました。

さて、私はROSY LILYのシューズシャンプーを購入したのでしょうか?

残念ながら、冷静に考えると別のシューズシャンプーを持っていることに気づいたので購入には至りませんでした。ですが、それを使って、汚れた子どものスニーカーと自分のスニーカーを洗ったので、スニーカーを洗うという行動にはつながりました。

Fishlleの未利用魚のサブスク

Instagramでレシピ動画をたくさん見るようになってから、よく見かけるのが未利用魚のサブスクFishlle(フィシュル)の広告です。「旬のお魚料理がお家に届く」というコピーにグッときました。

日常的に魚を食べたい気持ちはあるのですが、調理の面倒さや魚の鮮度が気になるので買い貯めができないという理由から、魚料理を遠ざけがちです。

それを手間なく、普段食べないような魚を食べられるのかもしれない。また、「未利用魚」というキーワードも、「それって何?」という疑問がわいたので、タップして、Webサイトを閲覧しました。

サイトを見てもよさそうな商品だと感じたのですが、注文する前に、クチコミを見てみようとInstagramの公式アカウントに紐づけられている投稿をチェックしました。すると、ほとんどが企業から商品の提供を受けたPR投稿だったため、注文するのをいったん保留することに。

なぜそこで保留にしてしまったのか。そのときの気持ちを深掘りすると、私が求めていたのはリアルなクチコミだったからです。

PR投稿ではポジティブな面ばかりが紹介され、ネガティブな面がわかりません。PRで依頼されてネガティブな面を紹介する人はなかなかいないと思いますし、依頼する企業もそれを求めてないと思います。が、「いただきました!こんなによかったです!」といったPR投稿でよくある紹介に食傷気味なので、リアルな声を知れるといいなと思いました。

N organicのエイジングケア

「この女性、34歳2児のママ!?」というかわいいママさんが登場する広告をうっかり見てしまったところから、N organic(エヌ オーガニック)の広告を毎日見ます(追いかけられているとも言いますよね)。宣伝している商品は同じなのですが、出稿元をいくつかに分けていて、Instagramを開くたびに広告に当たります。

商品はエイジングケアのため、年齢とのギャップをうたうクリエイティブが多め。よくよく見てみると、登場しているのはモデルの方なのですが、「※こちらはモデルの方です」とも書いてないので、最初は一般の人なのかと思ってしまいました。

この広告を見て以降、鏡を見るたびに目元が気になってきました。そこまで課題意識を感じていなかったのに、「ケアした方がいいのかな」と思うようになったのです。Fishlleと同様に、公式アカウントのタグ付け投稿を見てみたのですが、公式アカウントを見た直後から、表示される広告が変化しました。

公式アカウントを見る前は「ケアした方がいいんじゃないですか?」とニーズを喚起する広告だったのが、「これ全部届いて66%OFF」「これ全部、試せる」といったお得なセットの広告に変わったのです。

「公式アカウントを見る」=「どういう商品かの理解は得られた」として、あとは最後の一押しで初回お試しや限定セットを訴求しているんだと思います。カスタマージャーニーマップがあり、それに基づきクリエイティブも変えているのでしょう。

よく見ると本文も変化していて、「ロフトでも販売中」から「初回のみ」「Web限定」「トライアルキット」になっています。前者は、「少しでも興味あったらロフトにあるから見てね」というメッセージだったのが、後者は「今ここ(Web)で買いましょう」になっているわけです。

これは売り上げを最大化するためにはいい設計だなと思いました。店舗名を出すことで小売店にプッシュしてもらえるようになり、売り場で目立つところに配置してもらえ、在庫を多めに持ってもらうことができます。

もし購入検討フェーズに進んでいるならば、Webだけのお得なセットで最後のひと押しをする。オフラインでもオンラインでもしっかり受け皿を用意しているなと感じました。

さて、私はN Organicを購入したのでしょうか?

N Organicの広告を見てから、他社のスキンケアブランドの広告も頻繁に表示されるようになりました。あれもこれも気になる状態になってしまい、購入に至っていません。お試しセットは数千円で買えるものも多いのですが、それさえも出し渋り、毎日流れてくる広告を見ては、よさそうだなあとなんとなく思うところで終わっています。

最終的にどうすれば購入に至るのかを想像してみましたが、どこかのお店で見かけて試し、そこで購入するかを本気で検討することになるんじゃないかと思いました。Webサイトのフォームに情報を入力してお試しセットを送ってもらうのは面倒だけど、お店で見かけて試す分には面倒さは感じないんだと思います。そう考えると、広告本文の「ロフトでも販売中」は理にかなっていそうですね。

ちなみに、スキンケアやコスメに関するInstagramの投稿もたくさん眺めたのですが、私がタップしたくなるキーワードは下記でした。

  • リピ確定
  • 本当に使える
  • 元美容部員が選ぶ
  • 薬剤師がぶった斬る

並べてみると、本音っぽい感じがしたり、プロがおすすめしたりしていると惹かれるということがわかりました。他にも「垢抜け」というキーワードも多く見られて面白かったです。

ご感想、ご意見があればぜひ、お気軽に私のTwitterアカウント(@sweet_chiho)へリプライをいただければ幸いです。

この記事の筆者

加藤千穂(かとう ちほ)

STORES 株式会社 テクノロジー部門 開発企画室

2009年関西学院大学総合政策学部卒業。

2009年4月よりチームラボ株式会社にてディレクター職を務める。

2012年3月より株式会社東急ハンズにて、EC、コーポレートサイト・SNSなどのデジタルマーケティングを担当。

2018年12月よりヘイ株式会社(現:STORES 株式会社)にて広報を担当。2022年7月より技術広報を担当。

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