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スプレッドシートの「AI関数」でできること6選【試してわかった使いどころと限界】

Googleスプレッドシートの「AI関数」でできること6選を実証解説! 問い合わせの自動振り分けや社名表記ゆれの統一、スコアリングなど、実務で役立つ具体的なプロンプト例を紹介します。

寺田昇平[執筆]

10月28日 7:05

GoogleスプレッドシートのAI関数は、2025年6月に英語で提供が始まり、日本語では同年9月から順次使えるようになりました。セルに =AI("〜", 参照セル) と書き、~の部分は日本語で指示文を記載すると、AIがその行の内容を読んで答えを返す関数です。

提供開始の時点で例として挙げられていたのは、文章の生成・要約・分類の3つでした。その後も、Google検索の結果を参照できるようになるといった更新が続き、いまは任せられる作業の幅が広がっています。一方で、まだ難しい部分も一部あります。

本記事では、テスト用のスプレッドシートで実際に動かした結果をそのまま載せます。うまくいった例だけでなく、間違えた例も含めて現時点での使いどころと限界を6つ紹介します。

使い方例1 問い合わせを5種類に振り分ける

Google スプレッドシートに問い合わせ内容が記載されている場合、AI関数を活用して自動分類が可能です。B5セルに以下の数式(AI関数)を入力することで、「クレーム」「見積依頼」「採用応募」「営業メール」「その他」の5つの項目に自動で振り分けられます。

入力したプロンプト

=AI("次の問い合わせ文を「クレーム」「見積依頼」「採用応募」「営業メール」「その他」のいずれか1語だけで答えて。説明や記号は不要。", A5)

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【図1】問い合わせ6件を5つの選択肢に振り分けた結果。右側に「人間の想定」列を置いて答え合わせをしている

B6以降は、B5セルをコピーして貼り付け、「生成して入力」ボタンを押します。6件すべて想定どおりでした。

ただし、結果はそのまま使わず、念のため人が確認しておくほうが安心です。図の右側には、人が判断した結果を「人間の想定」列として並べています。AIの答えと並べておけば、食い違った行がすぐに見つかります。この列を残しておく理由は、後半でも触れます。

選択肢を入れ替えれば、レビューの分類にも使える

選択肢を入れ替えれば、ユーザーからのレビュー内容のネガポジ判定にも使えます。

入力したプロンプト

=AI("次のレビューを「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」のいずれか1語だけで答えて。", A17)

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【図2】同じ関数で選択肢だけを差し替えた例。レビュー4件のネガポジ判定

4件すべて想定どおりでした。

安いので期待していませんでしたが、思っていたよりはしっかりしていました。ただ色は写真と違います。

上記のレビュー(【図2】A20セル)はAIでは「ニュートラル」と判定されました。「褒め」と「不満」が同じ文に入っていると、判断がぶれやすいので注意が必要です。

使い方例2 社名の表記ゆれを、1列で統一する

顧客データや取引先リストを管理する際、「同じ会社なのに表記がバラバラで名寄せができない」という悩みありませんか。こちらもGoogleスプレッドシートのAI関数を活用し、プロンプト指示ひとつで8通りもの表記ゆれを一瞬で正しい正式名称に統一する方法を紹介します。

入力したプロンプト

=AI("次の会社名の表記ゆれを統一し、正式名称だけを返して。法人格は「株式会社」と省略せずに書き、余計な説明は付けないこと。", A5)

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【図3】8通りに散った社名の表記を正式名称に統一した結果。すべて同じ社名に寄っている

(株)テクノラボ、テクノラボ株式会社、株式会社テクノラボ、TECHNO LABO Inc.、テクノラボ㈱、㈱テクノ・ラボ、tecnolabo、テクノラボ 東京本社。8通りすべてが「株式会社テクノラボ」に統一されました。

置換ルールで書こうとすると、全角と半角、中黒の有無、英語表記、小文字表記、支店名の除去と、条件が掛け算で増えていきます。

住所を、都道府県/市区町村/それ以降に分ける

全角、半角数字など書式がバラバラに入力された住所もAI関数で整理ができます。プロンプトを入れるときは、項目ごとにAI関数を分けるのがコツです。

入力したプロンプト

=AI("次の住所から都道府県名だけを返して。都道府県が省略されている場合は推定して補って。", A19)

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【図4】住所を3つの列に分割した結果。全角数字と漢数字が混在していても崩れていない

5件すべて正しく分かれました。全角数字と漢数字が混ざっていても崩れず、「京都市中京区……」のように都道府県が省略されている行も補完しています。

ただし補完されたのは、プロンプトに「省略されている場合は推定して補って」と書いた効果です。これを書かないと空欄が返りますのでご注意ください。

使い方例3 問い合わせメールから、5項目を列に分解する

問い合わせ内容から会社名や先方の担当者、導入希望時期、予算、問い合わせ内容を要約するといったこともAI関数を使えば簡単にできます。

入力したプロンプト

=AI("次の問い合わせメールから会社名だけを抜き出して。該当する情報が本文にない場合は記載なしと返して。余計な説明は付けないこと。", A5)

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【図5】1本のメール本文から、会社名・担当者名・希望導入時期・予算・要望要約の5項目を列に分解した結果

問い合わせ内容から「会社名」「担当者名」「希望導入時期」「予算」「要望要約」の5項目が、3件すべて列に入りました。予算に触れていない2件は、指示どおり「記載なし」を返しています。書かれていない項目の扱いを指定しないと、推測で数字が入ることがあります。

正確に自動判定してもらうためのコツは、1項目につき1つの数式にすることです。「会社名と担当者名と予算をまとめて抜き出して」と1回で頼むと、区切り文字や順序が行ごとにばらつき、あとから分解しにくくなります。

使い方例4 リードを0〜100でスコアリングする

獲得したリードの優先順位付けで生じる「1件ずつ手作業で確認・分類するのは大変」「担当者によって評価基準がズレる」という課題もAI関数で解決できます。自社のターゲットペルソナ(プロンプト)を与えるだけで、リード情報を0〜100点(スコア)で自動判定し、営業アプローチの優先度を機械的・効率的に可視化できます。

入力したプロンプト

=AI("あなたはBtoB SaaSの営業責任者です。理想の顧客像は「従業員30〜300名の製造業・建設業で、紙とExcelのバックオフィス業務が多く残っている企業」です。次のリード情報がこの顧客像にどれだけ合致するかを0〜100の整数だけで答えて。数字以外は書かないこと。", A5)

【図6】リード5件を0〜100で採点した結果。右の列は、スコアのセルも読ませて理由を書かせたもの

従業員450名の総合建設業(【図6】A7セル)は、プロンプトで入力した理想の顧客像「30〜300名」の枠を外れていますが、紙業務という条件を満たしているとして80点が付きました。並び順としては納得できる結果です。

理由も隣の列に出す

スコアの隣の列には、評価の理由も出しています。

理由の列に入力したプロンプト

=AI("あなたはBtoB SaaSの営業責任者です。理想の顧客像は「従業員30〜300名の製造業・建設業で、紙とExcelのバックオフィス業務が多く残っている企業」です。1列目はリード情報、2列目はこのリードが顧客像にどれだけ合致するかを0〜100で採点したスコアです。そのスコアになった理由を40文字以内で1文で書いて。", A5:B5)

理由の数式にも同じ顧客像を書き、参照を「A5:B5」にして、スコアのセルも読ませています。AI関数が読むのは、その数式に書いた指示と参照したセルだけなので、隣の列の条件は書かないと伝わりません。

この形にすると、5件ともスコアに見合った理由が返りました。

従業員8名のWeb制作会社 → スコア10 / 理由「従業員数・業種が理想像と不一致で、クラウド導入済みであるため」(【図6】6行目)

使い方例5 広告見出しを、文字数を守らせて3案出す

商材ごとの製品名や説明文を基に、文字数制限をつけて、広告の見出しとなるコピーを作ってもらうこともできます。文章を書かせる用途は、文字数などの条件を付けると実務で使いやすくなります。

入力したプロンプト

=AI("次の商材の広告見出しを全角15文字以内で3案、改行区切りで出して。番号や記号、説明は付けないこと。", A5)

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あわせて、文字数制限が守られているかを確認するために、隣の列で以下の関数を入れて検算します。

=TEXTJOIN(" / ", 1, ARRAYFORMULA(LEN(SPLIT(B5, CHAR(10)))))

文字数は 11/11/13、14/12/13、15/15/15 で、9案すべて15文字以内に収まりました。

ただしAIが文字数を数えているわけではないので、守られるかどうかは条件次第です。検算列を置いて、はみ出した行だけ人が直す運用にしておけば、見落としはかなり防げます。

使い方例6 2つの名簿を突き合わせる

AI関数には、2つの列を同時に渡して比較させることもできます。VLOOKUPは完全一致しか見ないので、あいまいな名寄せに使えます。

入力したプロンプト

=AI("次の2つの企業名が同一の法人を指しているかを「同一」「別法人」「判断不能」のいずれか1語で答えて。", A5:B5)

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5件すべて、想定どおりに判定されました。なかでも、次の3組は判定を間違えやすい組み合わせです。

  •  「NEC」と「日本電気株式会社」:略称と正式名なので「同一」
  •  「株式会社大和物流」と「ヤマト運輸株式会社」:名前が似ているが「別法人」
  •  「みずほ銀行」と「みずほ信託銀行」:同じグループでも「別法人」

文字の並びが似ているかどうかで照合する方法だと、1組目は文字がほとんど重ならないので別の会社、2組目は似ているので同じ会社と判定されやすく、逆の結果になります。AI関数は、この3組をどれも正しく判定しました。

まだ精度が安定しないところ

実務として活用する前に、結果が安定しない点も知っておいてください。

計算と集計

まず売上金額の10件(整数)の合計を計算させました。

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結果は14947で、SUMの答えと一致しました。ここだけ見ると、集計もできそうに見えます。

そこで条件を厳しくして、小数を含む30件で同じく集計しました。

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AIの答えは57,020.1に対し、SUMの答えは58,655.6となり、ずれていました。しかも差分の1,635.5は、リストの先頭1件分とちょうど一致します。30件のうち1件を数え落としていました。

57,020.1という数字は、桁も合っていてエラーも出ないので、見た目には正しそうに見えます。SUMの結果と並べて比べなければ、間違いに気づくのは難しいと思います。

判断はAIに、計算はSUMやCOUNTIFに任せる、という使い分けをしましょう。

存在しない情報でも、それらしく作ってしまう

AIは、答えがわからないときでも、それらしい内容を作って返してしまうことがあります。いわゆる「ハルシネーション」で、AI関数でも起きます。

社名から事業概要を書かせる使い方で、存在しない社名を1行混ぜて試しました。

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実在する企業3社は172字・194字・172字で、内容も正確でした。ところが架空の社名にも、もっともらしい会社概要が118字で返ってきました。セルに「(架空の企業名)」と書いてあったにもかかわらずです。

名簿に存在しない社名や、表記が崩れて別会社になってしまった行が混ざっていると、それらしい説明文がエラーなく生成され、そのまま資料に流れます。「使い方例2の表記ゆれの統一を先に通してから概要を引く」「出典URLも一緒に返させて、返せない行にフラグを立てる」といった二段構えが必要です。

運用するときの注意点

1. 出力の形を決めないと、答えが毎回変わる

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同じ入力・同じ数式を3つ並べました。3値分類は3回とも「ネガティブ」で同じでしたが、自由記述の要約は3回で3通りでした。意味は同じですが、文言が変わります。

この列を突合キーにしたり、前回の実行分と差分を比較したりすると、内容が変わっていないのに変更として検出されます。生成が済んだら、値のみ貼り付けで固定してください。

2. コピーした数式は、ボタンを押すまで計算されない

AI関数を数式ごとコピーして貼り付けると、その場では計算されません。貼り付けた範囲に斜線がかかり、すぐ下に「生成して入力」というボタンが出ます。このボタンを押すまで、貼り付けた数式は実行されません。

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斜線のかかったセルには、コピー元と同じ答えが表示されたままです。計算が済んでいるように見えるので、ボタンを押し忘れても気づきにくいところです。テンプレートとして社内に配るなら、この一手間を手順書に書いておくと親切です。

3. 参照がずれても、エラーにならない

AI関数は、何を渡してもそれらしく答えを返します。数式の参照を1行ずらして貼ってしまうと、見出し行の文字列が入力になりますが、エラーにはなりません。ネガポジ判定の列は、見出しの「レビュー本文」という文字列を分類して「ニュートラル」を返しました。表は埋まって見えるのに、答えは1行ずつずれている状態です。

使い方例1で「人間の想定」列を残しておくようお勧めしたのは、このためです。10件でも並べて見比べれば、ずれはすぐに見つかります。

まとめ

実務に入れるときの手順をまとめます。

  • 出力の形を決める(「いずれか1語」「数字だけ」「200文字以内」など、選択肢か書式を必ず指定する)
  • 隣に検算列を置く(文字数ならLEN、合計ならSUM、分類なら「人間の想定」列)
  • 生成が済んだら値に固定する(再計算のたびに答えが変わる列を元に集計しない)
  • 判断はAI、計算は関数に任せる

今回うまくいった6つは、どれも人が読んで判断していた作業でした。うまくいかなかったのは、計算や数え上げのように関数で済む作業です。

ルールでは書けないからと手作業で埋めていた列があれば、問い合わせの振り分けや社名の名寄せ、アンケートの分類、台帳の突合のように、1列で済むものがあるかもしれません。

◇◇◇

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筆者は、デジタル領域の企業がAI実装の知見を持ち寄るコミュニティAI Digital Community(ADC)の代表理事を務めています。紹介制・審査制ですが、ご関心のある方は公式サイトのお問い合わせフォームからご連絡ください。あわせて、組織のAIポータルAI Portalizeを運営しています。やりたいことを検索すると、使えるAIツールと手順が500本以上から見つかり、社内で誰がどれを使っているかまで見えるサービスです。

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