KPIづくり実践術 徹底解説(2) - 見てほしいページを見てもらうゴールとKPIの関係

“閲覧を増やしたいページ”という考え方のゴールも不可欠なのだ
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【実践編】

第11回 KPIづくり実践術 徹底解説(2) - 見てほしいページを見てもらう

前回に続き、KPIについて考察しよう。「目標」と言うと、資料請求のような住所氏名を送信するタイプのゴール、いわゆる「コンバージョン」のことと思われる向きも多いが、企業サイトで大切にしたいゴールはフォーム送信なしのものも多い。“閲覧を増やしたいページ”という考え方のゴールも不可欠なのだ。

「企業サイトのゴール」後編 重要な6項目を解説

前回、「企業サイトのゴール」について、①~④を解説した。

「企業サイトのゴール」(前回解説分)
  1. 訪問者数
  2. 訪問者の平均ページビュー数
  3. サイト全体の直帰率
  4. 2ページ以上見た人の平均ページビュー数

今回は⑤~⑧を解説しよう。

「企業サイトのゴール」(今回解説分)
  1. 企業情報ページのセッション数
  2. IR情報ページのセッション数
  3. CSR情報ページのセッション数
  4. お問い合わせページのセッション数

もちろんこれ以外にも、

  1. 採用情報ページのセッション数
  2. 一番見せたい製品の詳細情報ページのセッション数と入り口回数

なども企業サイトのゴールとしては有用だ。

「グローバルナビゲーションを順にクリックする人」を除外せよ

今回考える⑤~⑧は、「会社のメッセージとして見てほしいもの」のアクセス数だ。

ここで、単純に「企業情報のコーナートップ」「IR情報のコーナートップ」といった、各コーナーのトップページではなく、「会社のメッセージとして見てほしいページ」と言っているのには意味がある。

というのも、各コーナーのトップページは、ナビゲーションに現れている。ナビゲーションに現れていると、興味がなくてもクリックしてしまう人がたくさんいるのだ。なぜそんなことをするのか? 「サイトをひととおり見たい」からだ。その会社のことを調べている人は、そういう行動をとることが多い。たとえば就職したい人、製品を売り込みに行きたい人、株を買いたい人などはその会社の全体像をつかみたいと思う。だからナビゲーションの項目を順番にクリックしてその会社の特徴や全体像をつかもうとする。その結果発生するのは、次のような閲覧行動だ。

  • 「トップページ」 → 「製品情報」トップ → 「企業情報」トップ → 「採用情報」トップ
  • 「企業情報」トップ → 「会社概要」 → 「IR情報」トップ → 「CSR」トップ → 「採用情報」トップ

見たい順番も深さも何もなく、ただナビゲーションを順にクリックしているだけ。アクセス解析してみると、こうしたアクセス行動をしている人は、どこの会社でもある程度存在する。

図1 ナビゲーションを“順番に”クリックして“ひととおり見よう”とする人は多い

そうした人を含んでいては、本当の目的は達成できない。企業情報にしてもIR情報にしても、「本当に見てもらいたい内容」があるはずで、それが見られなければ仕方がない。大切な内容の閲覧が増えれば、ホームページはそれだけ効果があったということになる。

⑤-1 企業情報のなかの「メッセージ」とは?
⑤-2 見せ続けたい「ニュースページ」が埋もれていないか?
⑥ 「IR情報ページ」にも“見せたいのに見られにくいページ”がある
⑦ 「CSRページ」は、重要な閲覧型目標となる
⑧ 「お問い合わせフォーム」を疑う前に
KGIを見ることで「パフォーマンス」の高低がわかる
「ゴールの決定」から「KPI」への算出を
実例1 実際に目標を達成するための方法とは
実例2 目標達成に一番影響力を持っている要因は?

⑤-1 企業情報のなかの「メッセージ」とは?

「企業情報」のコーナーは、企業サイトではもっとも多く見られるものの1つ。商品情報と並んでサイトの主役だ。多くの訪問者が会社名検索で訪れて、

  • 「トップページ」 → 「企業情報」トップ → 「会社概要」

とたどる。社屋への訪問の必要がある人は、さらに、

  • 「会社概要」 → 「事業所」 → 「地図」

と進むことも多い。

会社概要を見せることも重要だし、訪問したい人に地図を提供するのは、ホームページの不可欠な役割でもある。非常に役立っていることになる。しかし、会社側としてはそれだけでは満足できないのではないだろうか? 「会社情報」ページでは、会社としての考え方や新しい取り組みが理解されることが望ましいはずだ。

企業サイトの最初の問題は、「会社としての考え方」「新しい取り組み」を語るページがそもそも用意されていないサイトが多いことだ。かなり多くの企業サイトが「会社概要」「沿革」「組織図」といった、会社案内パンフレットのような項目しか持っていない。

海外のサイトでは「ミッション」というページが最初に来ていることが多い。これはその会社の考え方を紹介するものだ。日本の多くのホームページでこれに近い内容を持っているページが「社長あいさつ」というページだ。実際、このページに登場する社長は非常に良いメッセージを語っている。筆者は企業サイトを研究するとき、「社長あいさつ」のページを頼りにしているぐらいだ。

ところが、「社長あいさつ」に現れる内容がWebサイトの他のどのページでもフォローされていないのはなぜだろう? この社長は会社のなかで浮いてしまっているのか? 社長が語る「目指す方向」というのは、あまりにも遠い将来のことになってしまっているのかもしれない。

そうではない。社長あいさつのページは内容が重視されているのではなく「社長あいさつのページを作る」ということが自己目的化しているのだ。社員の多くは、社長あいさつのページを読んでおらず、ましてや社長が語る内容を自分のコーナーでフォローして「目指す方向」を揃えていこうとは考えていないようだ。

サイト訪問者もあまり「社長あいさつ」のページは好きではない。年輩の男性がネクタイを締めた写真が出てきて、昨今の日本の経済状況を語るページが現れるに違いないと思っているからだ。実際にそうしたページも少なくないが、本当は社長あいさつのページはそのサイトでほとんど唯一の「これからやろうとしていること」を書いたページなのに。

もし、企業情報内に他にメッセージ性のあるページがないなら、社長あいさつのページを当面の目標ページとして、そのアクセスを増やすようにするべきだと思われる。できればクリックが増えにくい「社長あいさつ」というページ名ではなく、「戦略」のような言葉を使って“興味深いことを語っているページだ”と伝えよう。

図2 「社長あいさつ」という見出しは、内容への期待感を薄めてしまう。「企業戦略」や「ミッション」に変えるのはどうだろうか。

⑤-2 見せ続けたい「ニュースページ」が埋もれていないか?

企業情報については、メッセージページが少ないことの他に、もう1つ大きな問題がある。それは企業情報の「ニュースページ」(リリースページ)だ。

「ニュースページ」は、企業情報にとって重要なページであるが、Web担当者はニュース更新に日々追われている。中堅以上の会社ともなればニュースは多数あるから、それを文言精査して公開するだけで作業は楽ではない。ところが、企業情報のトップに掲載できるニュースサマリーの数は5件から10件。ニュースが多いと、少し前の記事はすぐに「一覧」をクリックしないと見られない場所に埋もれていってしまう。ずっと見せておきたい内容を見せられなくなってしまっているのだ。

機械的に最新情報が変わっていくのが重要なのではない。ホームページというのは「どう見られたいか」「何を見せたいか」が重要なのだ。単にニュースを更新するだけではなく、しばらくの間見せておきたい情報をページの上のほうにわかりやすく掲載し続け、それがどれぐらい閲覧されるかを成果の1つとして測定すべきなのである。

⑥ 「IR情報ページ」にも“見せたいのに見られにくいページ”がある
⑦ 「CSRページ」は、重要な閲覧型目標となる
⑧ 「お問い合わせフォーム」を疑う前に
KGIを見ることで「パフォーマンス」の高低がわかる
「ゴールの決定」から「KPI」への算出を
実例1 実際に目標を達成するための方法とは
実例2 目標達成に一番影響力を持っている要因は?

⑥ 「IR情報ページ」にも“見せたいのに見られにくいページ”がある

「IR情報ページ」でもっとも多く見られるページは、「決算短信」「決算報告書」といったデータである。投資家の行動としては当たり前だし、多くの株主が決算報告をネット上で見てくれてそれで用事が済むとなれば、それだけでホームページは役立っていると言っても良いだろう。

ただ、「IR情報ページ」にも、もっと見せたいメッセージ性を持ったページがある。たとえば「年次報告書」(アニュアルレポート)や「IRメッセージ」といったページだ。環境報告書などもIRページからリンクされていてもっと見せたいページになっている場合も多い。

また、機関投資家ばかりではなく個人投資家を集めたいと考える企業も多いだろう。そうした場合には「個人投資家の皆様へ」というページがどれぐらい閲覧されるかが当然重要だ。その場合、個人投資家に人気の「株主優待のページ」も閲覧を増やしたいページと考えられる。豪華な自社商品詰め合わせを年2回プレゼントすることで知られている食品会社などもあるが、IRコーナーのなかで株主優待が目立つ場所に掲載されていることは少ない。そうしたページがどれぐらい見られているかは、目標ページと位置づけ管理するべきかもしれない。

⑦ 「CSRページ」は、重要な閲覧型目標となる

「CSR」のコーナートップは、「CSRってどんなものだろう?」と思っている人が多くアクセスするページになっている。しかし、ここには多様なページがあって、「企業市民活動」「文化・芸術活動」「スポーツ活動」「環境保護活動」などが並列で書かれている。

「スポーツ活動」のなかの有名な実業団チームのページなどはそれ自体リピーターをたくさん集めるコンテンツだったりするが、そうしたページにアクセスする人は、CSRのトップから入ってきたりしない。チームが出している広報物に掲載されたURLを見たり、チーム名で検索したりして直接そのチームのページにやってくる。企業としては、

  • 「チームのことを先に知った」 → 「サイトを見に来てその会社に好感を持った」

という流れは大歓迎である。しかしもう1つ、

  • 「サイトを見に来て、会社とチームの関係を理解した」 → 「会社の好感度が高まった」

という流れもホームページの重要な役割となるはずだ。こうした結果を生む流れのページ閲覧が増えることは大きな目標と位置づけられるだろう。

多くの会社が環境保護活動に力を入れている。しかし、CSRのなかに入ってしまうとなかなか閲覧が増えなくて困っているようだ。それは、多くの人がまだ「CSR」という言葉に慣れていないため、「CSR」というボタンを見ても関心を持つことができないためにクリックしてくれないのである。

図3 「CSR」というボタンは、中身に対する興味を減らしてしまう。もっと興味をひくボタンを考えてみてはどうだろうか。
⑧ 「お問い合わせフォーム」を疑う前に
KGIを見ることで「パフォーマンス」の高低がわかる
「ゴールの決定」から「KPI」への算出を
実例1 実際に目標を達成するための方法とは
実例2 目標達成に一番影響力を持っている要因は?

⑧ 「お問い合わせフォーム」を疑う前に

「お問い合わせページ」あるいは「資料請求」のフォームのセッション数も、目標の1つとなる。というと、お問い合わせや資料請求の完了画面のセッション数(コンバージョン数)ではなく、フォームページのセッション数なのか、不思議に思われるかもしれない。それは次の2つの理由による。

  1. お問い合わせや資料請求の完了数は、そもそもゴールとして管理されていることが多い
  2. お問い合わせや資料請求の完了数を増やすためには、そもそも、そのフォームのページへの到達を増やすことが不可欠

一度、あなたのサイトでも、図4のように、「フォームにアクセスした人がフォーム送信を完了した率」に加えて、「全体の訪問者のうち、お問い合わせフォームにアクセスした率」を計算してみてほしい。

図4 お問い合わせフォームを疑う前に、そこへの誘導を見直そう

調べてみると、お問い合わせや資料請求のフォームに到達した人が完了画面に到達する率(フォームからのコンバージョン率)は比較的高く、しかも意外に安定しているサイトが多い。しかし、そもそもフォームページにアクセスしている人が非常に少ない場合が多いのだ。

月にお問い合わせが5件~10件というサイトがあれば、フォームのページに到達する人数が100~200人というサイトが多いのではないだろうか。フォームから完了画面への動きを「コンバージョンプロセス」と呼ぶが、このコンバージョンプロセスの到達率は「5人÷100人×100=5%」など、5~10%ぐらいになっていることが多いのだ。もし3%以下だとしたらもう少し高める作業が必要になると考えられる。仮に10%あれば、それは優秀なフォームだと言って良いだろう。多くのサイトで実際5%前後ある。

サイト全体の訪問数が月に10,000人でお問い合わせが5件だとすれば、全体のコンバージョン率は0.05%ということになる。「5人÷10000人×100=0.05%」という計算だが、これは非常に低いコンバージョン率だということになるだろう。

コンバージョン率が低い場合、ほとんどのサイトで「フォームが悪いのではないか」と考える。フォームを最適化するEFO(エントリーフォーム最適化:Entry Form Optimization)というサービスまであるぐらいだから、需要は高いのだと思われるが、アクセス解析の立場からすれば、その優先順位の付け方は必ずしも正しくはない。

実際にフォームのセッション数を加えて絵にしてみれば、図4のようになるのだ。つまり、フォームから完了へのコンバージョンプロセスの成績は比較的良い状態であるのに対し、訪問者がそもそもフォームのページに訪れる率が低い場合が多いのである。

全体のコンバージョン率というとらえ方では「どこが悪いのかわからない」が、間にフォームのセッション数という数字を加えることで、フォームの前が悪いのか後が悪いのかが分別できるのだ。そうして分別すれば、「フォームへの誘導を強化しなければならない」と対策が明らかになる。

対策が明らかかになれば、やることは簡単である。今のお問い合わせのボタンでは誘導力が低いわけだから、もっと目立つボタンにしたり、新たに魅力的なボタンを加えたりすれば良い。加える位置はどこにすれば良いか。施策の候補は4つか5つに絞られるだろう。順番に試して効果の高い方法を見つけだせば、誘導を強化できる。

KGIを見ることで「パフォーマンス」の高低がわかる
「ゴールの決定」から「KPI」への算出を
実例1 実際に目標を達成するための方法とは
実例2 目標達成に一番影響力を持っている要因は?

KGIを見ることで「パフォーマンス」の高低がわかる

「我が社のホームページには明確なゴールはない」と考える人も多い企業サイトだが、ここまでに説明したように、それでも多くの目標設定をできるものだ。ここまでの話はあくまでゴールの設定ということになる。まずはゴールの数だけでもきちっと測る習慣を付けるところからスタートしたい。

こうしたゴール指標を「KGI」(Key Goal Indicator、重要評価指標)と呼ぶことは前回紹介したとおりだ。ゴールの回数というのは単純な数字だが、経時的に観察していれば、「ゴール回数が少しずつ減ってきた」「訪問者数は伸びているのに、ゴールに到達する率が悪くなっている」という風に思考できるようになる。

訪問者数は伸びているのに、ゴールに到達する率が悪くなっている

この考え方こそ、まさに「パフォーマンス」である。インプットに対してアウトプットがどれぐらい効率良く出てくるか、ということになる。KGIを監視していれば、サイトのパフォーマンスが低下していることに気付き、パフォーマンスを高めるための策を打つことが必要と考えるようになる。

ゴールを元に算出した、パフォーマンスを高める施策に直結するための「指標」が、KPIになるわけだ。

「ゴールの決定」から「KPI」への算出を

このことから、KPIとKGIは互いに密接に関連していることがわかる。Web上のゴールは独立している場合が多いから、「ゴール1についてはパフォーマンスが高いが、ゴール2についてはパフォーマンスが低い」ということが起こりうる。ということは、サイトのパフォーマンスを反映するKPIも、「ゴール1についてのKPI」「ゴール2についてのKPI」と、それぞれが必要だということになる。

Webのゴールは多くなる可能性がある。無料解析ツールであるGoogle Analyticsでさえ、目標を20個も設定できる。それだけたくさんのゴールが考えられるわけだが、仮にKGIが20個あるとすれば、それぞれのゴールに対するパフォーマンスを反映するKPIも20個あるということになるだろう。数が多いのは「手がかかる」「大変だ」と思ってしまうかもしれない。場合によってはいくつかのゴールに共通するKPIを設定することも不可能ではないが、それぞれ別になっているほうが単純になり、長い目で見ると、そのほうが扱いやすいものだ。

では、ここまで説明した内容をベースに、「目標を達成するための方法を探り」「目標達成に影響力を持っている要因を探る」手順を、具体的な例をもとに見ていこう。

実例1 実際に目標を達成するための方法とは

では実際にゴールとそのパフォーマンスについて考えていこう。まずは、閲覧を増やしたいページについて考えていく。

達成したいゴール「CSR」のなかに「環境情報」というコーナーがあり、なかでも力を入れている「植林活動」のページをもっと多くの人に見せたいと考える。つまり、植林活動のページがゴールとなる。

サイト全体のセッション数が月100,000あり、植林活動のセッション数が現状100であるとする。現状ではサイト訪問者の0.1%にしか植林活動を見てもらえていないわけだ。せめて訪問者の1%に見てもらいたいとすれば、10倍もの1,000人をこのページに導かなければならない。これは大変だ。

ではアクセス解析を使って、ゴールである「植林活動」へのアクセスを増やす方法を探していこう。まず、植林活動のページに訪問者を誘導しているページを見ると、次のようになっていたとする。

植林活動のページに訪問者を誘導しているページ
植林活動ページへの誘導元比率
環境情報トップ70%
環境情報 > コンセプト10%
ニュースリリース > 植林活動の報告8%
そのほか12%

植林活動の100セッションのうち70セッションは環境情報トップから来たことになる。では、有力な誘導元である環境情報トップを調べてみよう。環境情報トップのページには1,000セッションが見ており、そこからの移動先を見ると、次のようになっていたとする。

環境情報トップのページからの異動先
異動先ページ比率
コンセプト10%
活動内容紹介25%
製品と環境30%
工場と環境10%
植林活動7%
環境用語集3%
環境報告書15%

植林活動へ移動したのは70回、7%である。手っ取り早い対策の1つは、この環境情報トップからもっと多くの人が「植林活動」を選ぶようにすることだ。ただし、環境活動トップがそもそも1,000セッションしかないから、ここからの誘導だけで植林活動を目標の1,000セッションにすることはほぼできないという状況だ。これが本当に見せたい項目なら、他の全項目から3%ずつ削って、次のようにしようという考え方になるだろう(環境用語集はもともとが少ないのでそのまま)。

環境情報トップのページからの異動先
異動先ページ比率(旧)比率(新)
コンセプト10%7%
活動内容紹介25%22%
製品と環境30%27%
工場と環境10%7%
植林活動7%22%
環境用語集3%3%
環境報告書15%12%

たとえば、環境情報トップのページで、「製品と環境」よりも前に植林活動のボタンを置いたり、植林活動を大きな写真入りで魅力的に扱うことで他のボタンよりもクリックされやすくしたりといった方法が考えられる。これが達成されたとすると、環境情報トップから植林活動ページへの移動を150セッション増やしたわけだから、現状で100セッションだった植林活動ページへのアクセスが250セッションに伸びるわけである。目標の1000人まであと750人だ。

次に、環境情報トップへのアクセス自体を見てみよう。そもそも、このサイトは全体で100,000人が訪れているのだから、環境情報へのアクセスが1,000人とすれば全体の1%しか見ていないことになる。

では、全体のトップページや企業情報トップ、CSRトップなどからの誘導を強化して、2倍の人が環境情報トップに訪れるようにしてみよう。すると、環境情報のトップは2,000人が見ることになる。その22%が植林活動に移動するようになっているのだから、環境情報トップから植林活動ページへの移動が440セッションとなり、植林活動のページは470人に見られることになる。あと530人を別のところから誘導すれば目標達成になる。

図5 閲覧数の目標を達成するために、「どこから訪問者を連れてくるか?」が重要

では、残りの530人はどうやって誘導すればいいのだろうか? 単純化すると、あと53のページから10人ずつが植林活動ページに移動すればいい。環境情報コーナーに、次のようなページがあるとする。

コンセプト1ページ
活動内容紹介1ページ
製品と環境20ページ
工場と環境15ページ
環境用語集30ページ
環境報告書(PDF)

環境情報コンテンツ内のすべてのページから植林活動にリンクをはって、10人ずつがクリックしてくれれば目標達成が実現することになる。環境情報内を巡回している人はもともと環境には関心が高いと考えられるから、うまく誘えば「植林活動を見たい」と考えてくれる場合も多いだろう。環境用語集などは検索から入り口になることが多いと考えられるページだが、用語集で集客した人が植林活動も見ていくようになれば、非常に効果的になる。

これだけでは足りないとすれば、製品情報や採用情報を見ている人たちにも、植林活動へのリンクを見せていこう。就職を考えている学生には、会社として環境を大切にしているということを理解して面接を受けてほしい。また、製品を見ている人たちにも、この会社は環境に優しいと気付いてほしいものだ。

さらに、「植林」「森林保護」「エコ活動」といった言葉で検索している人をサイトに集めるようにすれば、このページのアクセスはもっと増やすことができるだろう。

このような形で、ゴールである植林活動のページは目標値1,000セッションを達成することになる。

実例2 目標達成に一番影響力を持っている要因は?

このゴールが達成されたとき、もっとも影響度の高いのは言うまでもなく「環境情報トップ」だ。

これが今の2倍の2,000人に見られ、そこから植林活動に移動する人が22%あり、さらに環境情報内の他のページからも植林活動に移動する人がある、ということによって植林活動のページのアクセスは支えられている。

逆に言えば、環境活動トップのアクセスが減り、そこから植林活動への移動が減れば、植林活動のアクセスが減ってしまう。

これがゴールとKPIの関係であり、次のように定義できる。

KGI植林活動のアクセス1,000回
KPI環境情報トップのアクセス2,000回(A)
環境情報トップで「植林活動」のクリック22%(B)

前回指摘したように、インジケーターとは「指標」と訳されるものだが、インジケーターの伝える情報は人の行動と結びついているのが望ましい。ガソリン警告灯が光ったら、「ガソリンスタンドを探そう」という行動をとるし、スピードメーターがレッドゾーンを指したら、運転者はアクセルをゆるめる。

たとえば環境情報のアクセスがいったん2,000回まで増えたのに、1,800回に減ってきたとする。これは、上の表で示したKPI(A)のインジケーターが光ったわけだ。これを放置すると、ゴールである植林活動のページのアクセスは減ってしまう。そこでWeb担当者は環境情報のアクセスを増やすべく、他のページから環境情報への移動を増やすように、トップやその他の重要ページの良い位置に環境情報のバナーを掲載したり、環境関連キーワードでの検索回数を増やすように対策したりするのだ。

わかりやすい例としてページのアクセスを増やすという形で話を進めてきた。しかし、直接隣り合ったページのアクセスがKPIというのではあまりにも単純すぎる。大騒ぎしてKPIとは何だと議論してこの結論では、気が抜けてしまうかもしれない。

もちろん何もおかしなことではないのだが、もう少し複雑な例で話さなければ、KPIの良さ、便利さがうまく伝わらないだろう。次回はさらに詳しくKPIのあり方について考えていこう。

この記事の筆者

石井 研二(MILS)

株式会社ミルズ 主任研究員

雑誌編集、通販カタログ企画を経て、95年からウェブプロデューサ。Web黎明期からアクセス解析を使い、多くの企業サイトを成功に導く。「直帰率」という言葉の生みの親として知られる。

Webそのもののコンサルティングから、Webを絡めた売上向上やコスト削減など経営全般に関わるコンサルティングが増えてきたため、企業分析と企業Web分析を組み合わせて「すべてを見る」ことをコンセプトとした分析会社「ミルズ」を設立。株式会社ミルズ主任研究員。

著書に『ウェブ立地論 ~“来てほしい人にアプローチする"集客につながる顧客目線のウェブの作り方』『ガッチリ成果を出すWeb担当者の教科書 ~便利テンプレートデータで実務を効率化!』(技術評論社)、『改訂新版アクセス解析の教科書』(翔泳社)等がある。

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