企業ブログの担当者に向く性格、向かない性格とは?/小林啓倫さんのブログ論(第6回)
実名ブログで炎上を避けるには?
いしたに このインタビューは、おもに企業のWeb担当者が読むことを想定しています。今回はまさに、企業に所属しながらブログをいっぱい書いているアキヒトさんこと、小林啓倫(こばやし・あきひと)さんです。
小林 あれ? いっぱい書いてますか?いしたに 書いてるじゃないですか(笑)
小林 所属企業を明らかにしているブロガーの中では、多いかもしれませんね。実際はみなさん、いろんな企業に所属してるのに(笑)いしたに 私もそうですし。ということで、自己紹介からお願いします。
小林 小林啓倫と申します。日立コンサルティングという会社で、コンサルタントをしています。扱う案件は、ITと経営が半々ぐらいです。「シロクマ」をトレードマークにして、「Polar Bear Blog」と「シロクマ日報」というブログをメインに書いてます。取り上げるトピックはIT系がメインですが、最近はほとんどノンジャンル気味です。ブログ名 | シロクマ日報、Polar Bear Blog |
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一言で言うとどんなブログ? | 仕事を通じて触れた話題に、個人的な立場からコメントするブログ(Polar Bear Blog)。 日常生活で人の役に立っているIT技術を中心に、日立コンサルティングの経営コンサルタントという立場からコメントするブログ(シロクマ日報)。 |
運営者略歴 | |
開始年 | Polar Bear Blogは2005年7月、シロクマ日報は2006年3月 |
1日のアクセス数 | 平日およそ2,000PV |
RSS登録数 | シロクマ日報が91フィード、Polar Bear Blogが2,196フィード(livedoor reader調べ) |
いしたに ブログはいつから始めましたか?
小林 「Polar Bear Blog」の方は2005年7月から。「シロクマ日報」は2006年3月からです。小林 「シロクマ日報」は「ITmedia オルタナティブブログ」の一部なので、そのルールに従って所属企業名・実名・顔写真を晒しています。会社の了承は取ってますが(笑)いしたに 小林さんのブログを読んでいると、小林さんがピックアップしそうなネタってのがあるんですよ。
小林 本当ですか?(笑)いしたに そのピックアップしそうなネタに対して、小林さんは漏れがないんですよ。いつもすごいなーと思ってます。
小林 おー。嬉しいです。ありがとうございます。ネタの拾い方って本の買い方に似ているかもしれません。リアル書店に行くと、自分では「コレ」と明確に意識していないのですが、何となく買ってしまう本があります。ブログもそんな感じで、ジャンルあまり縛りをかけず、自分で面白いと思ったネタを拾ってます(笑)いしたに 今のスタイルというのは最初からですか?
小林 そうですね。最近は「面白いWebサービス」「面白い広告」などはアップする人も多いので、他の人が拾いそうなネタは避けたりしています(笑)。でも、基本的に変わっていません。いしたに 記事の長さも、あんまり変わってないですね。最初から完成されてる(笑)
小林 いや、昔は恐れを知らずに暴言吐いてました(笑)。最近は炎上しませんように、しませんようにと(笑)いしたに 会社の名前を出していると炎上が怖いっていうのは、Web担当者としては気になるところだと思うんですが、何か気をつけている点はありますか?
小林 「Polar Bear Blog」の方は「個人ブログですから、僕が勝手に喋ってるだけですよ」という感覚で書いていて、「シロクマ日報」の方は、「日立コンサルティングの社員はこんなことを考えています」という感覚を持つようにしています。時々糾弾されますが(笑)「はてブ」を意識するきっかけになったエントリー
シロクマさんのオススメブログ
まとめ:企業ブロガーのお手本、アキヒトさん
ブロガーに向いた性格、向かない性格
いしたに 本業にもいい影響はありますか?
小林 客先で読んでいただいている、というケースはあります。恥ずかしいですが、名前を売るという点では効果があるのかと(笑)。いしたに 私は、ブログを書くということは、直接的であれ間接的であれ、本業にプラスにならないわけがないと思っているんです。この連載ではそこを掘り下げてみたいんですよ。
小林 なるほど。その点では、コンサルタントにはブログが合ってるかもしれません。コンサルタントなら、様々なネタをいじることで、自分がどんな人間か知ってもらえますからね。いしたに コンサルって人ですものね。どういう人なのか? 信用できる人なのかどうか?
小林 そういう意味でも、実名ブログ(シロクマ日報)は難しいですね。って、言うほど悩んでもないですが(笑)いしたに 悩んで当然だと思うんですが(笑)、性格なんでしょうか?
小林 ブロガー向きの性格、向かない性格ってあると思います。いしたに ありますよね。
小林 良い/悪いじゃなくて、向き/不向き。「このネタ、誰かに教えたいー!」っていう、おしゃべり?みたいな感覚とか。いしたに ITリテラシーがあるかないかよりも、性格って大きな要素の気がします。言いたがり、聞きたがり、それと……
小林 出たがり(笑)。ブログを書くってコミュニケーションの1つで、書けたからエライ、というわけでは当然ない。いしたに エントリーのクオリティを上げるスキルというのはあるとは思うんですが、だからブログとして良くなるわけではないですよね。
小林 そうですね。「文章の書き方」というスキルよりも、そもそも「書くモチベーション」の方が重要です。これはスキルじゃなくて、そもそもの性格なんじゃないかと思います。これがないと、いくら文章がうまい人でもブログ続けるのは難しいのではないでしょうか。いしたに ですねえ、ブログは続かないと意味ないですからねえ。
小林 そうそう、ブログほど続けることに意味があるものはないですよね。いしたに 小林さんの「悩まない」という感覚も続けてきたからこそなわけで、会社の名前を出す出さないにかかわらず、どうやって「続く」状況にもっていくかが大事なかもしれないですね。
小林 そうですね。続かないのであれば、会社名を出す/出さない以前の問題だと思います。その意味で、企業が会社としてブログを開設する場合は、「ブログが続く性格」の人を選ぶ必要があるのかな。いしたに どこの会社か忘れましたが、入社テストに「飛行機で初対面の人と長く話せるか?」という質問をしたそうです。この「初めての人とでも話ができる」という性格はブログ向きかもしれないと思いました。
小林 そうですね、とりあえず話しかけるタイプ。そういう人は、悩みつつも続けられるのでは。「ネットでどこまで言えるか」みたいな肌感覚は、長くやってれば自然に身につきますよね。2、3回ネガコメされれば(笑)いしたに 実はこの連載の最初に、「まずはだまって毎日!半年!ブログを書く」と書いています(笑)
小林 ああ、この言葉、同感でした。実は僕も、「Polar Bear Blog」を始めたとき、「1年間は毎日書く」と決めて書いてました。三日坊主なところがあると自覚してるので、無理矢理ルール化しようと。いしたに 実は私もそうです、三日坊主。
小林 三日坊主って「新しいモノ好き」の裏面かもしれないですよ。その意味ではブログを書くのに必要なスキルかと(笑)いしたに なるほど。「新しいモノ好き」をキープしながら、「三日坊主」にならないように、ですね。そのバランス感覚も重要なスキルかもしれません(笑)
シロクマさんのオススメブログ
まとめ:企業ブロガーのお手本、アキヒトさん
「はてブ」を意識するきっかけになったエントリー
——シロクマさんの自薦ベストエントリー
いしたに 小林さんはブログが2つあるので、それぞれからベスト1を選んでもらいました。
小林 「Polar Bear Blog」からは、「Web2.0大賞」の記事です。中身は海外記事の翻訳なんですが、あれが妙に「はてな」でブクマされて、急にアクセスが増えてビックリした思い出があります。「はてブ」を意識したのは、それが初めてだったかもしれません。このエントリーは海外の記事の丸写しに近いのですが(笑)いしたに でも、意外とそういうのが受けたりしますよね。
小林 「みんなこういう情報が欲しいのかー」と実感した面があります。突き詰めていけば、ブログ記事は「ニュース」か「論説」のどっちかになるわけで、「ニュース」はみんなが知りたいと思っているところを引っ張ってくるのが価値なんでしょうね。「論説」が得意な方は「はてな」界隈に多いので(笑)いしたに そうですねえ、タイミングありますよねえ、読者層もある。そういうことが分かったエントリーって、やっぱりあるんですよね。
小林 そうそう、まさしく。みんなが期待しているものが分かったというか。おこがましいけど。その意味でこのエントリーは思い出に残っていますね。いしたに では次に、「シロクマ日報」の方はどのエントリーですか?
小林 2008年6月に書いた秋葉原通り魔事件に対するコメント記事です。他愛もない中身ですが、みなさん関心が高かったらしく、朝日新聞から取材を受けました。事件の記事がベストエントリーというと怒られそうですが、一番印象に残ったエントリーということで理解していただけると嬉しいです。いしたに これは外部に波及したということですかね?
小林 はい。そうですね、反響がありました。テーマ的にもいろいろと感じることがあったので、「ベストエントリー」には変かもしれませんが、これも「思い出に残る」という意味で。いしたに 記者さんはなぜ取材に来たのでしょうね?
小林 僕のエントリーを読んで下さって、メールで連絡をいただきました。いしたに 今はそういう時代なんですね(笑)
小林 面白いですよね(笑)いしたに ええ、面白いです。ブログ冥利に尽きますね。自分の書いたことが自分から離れて、勝手に自走するんですよねえ。
小林 おっしゃるとおり。たまに暴走も。いしたに 暴走も自走のうち、あきらめよう(笑)
小林 確かに(笑)- 2005年12月12日「2005年Web 2.0大賞」
- 2008年6月9日「秋葉原通り魔事件とデジタル野次馬」
シロクマさんのオススメブログ
小林 1つめは「Rauru Blog」です。Rauruさんは、去年でしたか、アルファブロガーにもノミネートされましたし。ご存知の方も当然多いかと。実は「Rauru Blog」さんの「はてブ」もお気に入り登録しているのですが、「これ面白れー!」という記事が多いです(笑)いしたに あー、わかります、「はてブ」も登録(笑)
小林 科学系のネタに振れると、知識が追いつかないのですが(笑)いしたに 面白い人はブックマークも面白いですよね。
小林 2つめは「Swiss Miss」。これはアート系ですが、面白いWebサービスも紹介してくれます。よくネタをパクります(笑)。写真+コメント数行ということが多いのですが、面白いガジェットが出てくる場合も多いです。ただ、ガジェット系は「百式」か「GIZMODE」が必ず先にピックアップしてますが……。アート系という意味で言えば、「DESIGN-FEED.NET」もチェックしてますが、ブログではないので除外ということで。デザイン系のブログのRSSを一緒くたにしたもので、ずらずら見ていると必ず面白いネタが見つかります。いしたに なるほどお、了解です(笑)
小林 最後は「Spring Wise」です。これは「ユニークなビジネスを集める」というブログで、Webサービスに限らず、リアル系も含めた面白いネタを提供してくれます。いしたに どれも知らない。やばい……。小林さん、さすがだ。
小林 いや、よくネタをパクるので、偉くないです(笑)まとめ:企業ブロガーのお手本、アキヒトさん
企業でブログを運営する、企業名を出してブログを運営する。似ているようで違う部分もありますし、同じ部分もあります。
企業とブログをセットで考える際に、どうしても問題となりやすいのが「炎上」的なことです。そして、小林さんの「悩まなくなった」という言葉は、経験による実感のこもった言葉です。
ブログがここまで普及する中で、どうもブログに向いている人、向いてない人というのが、実際にあることも分かってきました。
企業にブログを導入する際に、社内でブログに向いている人にブログをお願いするか、ブログに向いていないけど、ITリテラシーの高い人にお願いするか、それともチーム体制するか、いくつかのパターンを検討する際のヒントになると思います。
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