グーグルが人力検索のAardvarkを買収、なぜ“はてな”ではないのか?

日本で盛んな人力検索やQ&Aサービスと、グーグルが進もうとしている方向の違いとは?
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今日は、グーグルが買収した人力検索サービスの特徴をキーに、日本で盛んな人力検索やQ&Aサービスと、グーグルが進もうとしている方向の違いを考えてみましょう。

グーグルは2月12日に、ソーシャル人力検索サービスを提供するアードバーク(Aardvark)社を買収したと発表しました。買収額は45億円(5,000万ドル)ともいわれ、アードバークのサービスは即日グーグルラボに登録されました

報道ではアードバーク社は「ソーシャル検索である」とされていますが、実際のところは「ソーシャルグラフを利用した人力検索」といった表現をしないとサービス内容がわかりづらいものです。実際にどんな動作をするかを見てみましょう。

  1. あなたがアードバークにアカウントを作る
  2. 自分のインスタントメッセンジャーやFacebookやTwitterといった情報を登録する
  3. 自分の趣味や場所の情報を登録する
  4. アードバークで質問をする(例:東京で食べられる南インド料理屋のお薦めは?)
  5. アードバークはあなたの知り合いのなかから、質問のテーマに合っていそうな人を探す
  6. アードバークが見つけたオンラインの人が、質問に答える

まさに「ソーシャルグラフを利用した人力検索」ですね。

最初にグーグルが「人力検索サービスを買収」と聞いて、いろいろあるQ&A系サービスのどれなのかと思ったのですが、グーグルに関係する人が携わっているとはいえ、やはりイマドキのサービスでした。

アードバークと既存のQ&Aサービス(たとえば、人力検索はてなやOKWave)と異なるのは、ソーシャルグラフの部分。

既存のQ&Aサービスでは質問は全体にオープンになり、だれでも回答できます。回答者は質問者の知らない人なのです。そして、回答することでポイントを得るといった経済的関係から、残念な内容の「回答」が集まることもしばしばあります。

アードバークでは、あなたのソーシャルグラフから回答者が選ばれ(回答候補者はあなたを知っている可能性が高い)、回答は社会的関係をもとに行われます(ポイントなどはつかない)。

さらにオンラインの人を探すことで回答が寄せられる時間も短くなっており、そのためモバイルからの質問も多いのだという(かなりの質問が5分以内に回答、大半が10分以内に回答とのこと)。

人力検索はてなやOKWaveが始まってから10年弱。大きく普及したソーシャルメディアをうまく組み込んだアードバークに対して、グーグルは掲示板とは異なる可能性を見いだしたのでしょうか。大きくなりすぎたインターネットをうまく整理して効率良く情報を扱いたいというグーグルの方向性が見える気がします。

◇◇◇

そういえば、人力検索つながりで、良い事例をご紹介しておきましょう。グーグルの公式ウェブマスターヘルプフォーラムには日々いろんな質問が投稿されていますが、先日、「これぞ質問の鑑」という質問を見つけました。

Google経由のアクセス数激減について、アドバイスをお願いします。
http://www.google.com/support/forum/p/webmasters/thread?tid=3111cf6302dc06c1&hl=ja

Q&A系のサイトでは、「その質問だけじゃ答えるのに必要な情報が足りなさすぎ」な書き込みが多いのですが、上記の質問は、

  • どうあるべきだと考えているのか
  • 以前はどうだったのが
  • 現在はどうなっているのか
  • その際に自分が何をしたか
  • 自分で調べた周辺情報

を詳しく書いていて、さらにどのサイトかのURLや検索キーワードも具体的に書いてあるので、みなさんすごく協力的に回答されています。非常に参考になる質問の書き方ですので、一度読んでおくと、自分が質問するときに役に立つかも知れません。

※ちなみに、Aardvark(アードバーク)とは、アフリカにいるツチブタのこと。

ツチブタは食料のアリを探すために地中深く掘ることが得意だが、それと同様にして質問の答えを知っている人を掘り探すのが得意なサービスという意味で付けられた名前とのこと。

この記事の筆者

安田 英久(やすだ・ひでひさ)

株式会社インプレス
Web担当者Forum 編集統括(初代編集長)

プログラミングやサーバー、データベースなどの技術系翻訳書や雑誌『インターネットマガジン』などの編集や出版営業を経て、Webサイト 「Web担当者Forum」初代編集長。ビジネスにおけるWebサイトの企画・構築・運用と、オンラインマーケティングの2軸をテーマにメディアを展開いる。現在は編集統括として媒体に携わる。

個人としては、技術とマーケティングの融合によるインターネットのビジネス活用の新しい姿と、ブログ/CGM時代におけるメディアのあるべき姿を模索し続けている。趣味は素人プログラミングと上方落語と南インドカレー。

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