直帰率47.5% 入口は20ページが8割。アクセス解析とサイト改善の「WEB改善ソリューションフェア」レポート

石井氏が惜しげもなく披露したアクセス解析とサイト改善の考え方やノウハウ。
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集客力を飛躍的に向上させるGoogle Analyticsアクセス解析の極意
秀和システム
978-4798023779
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株式会社HARMONYは10月16日、「WEB改善ソリューションフェア」と題したセミナーイベントを開催した。石井氏が執筆した書籍『集客力を飛躍的に向上させるGoogle Analyticsアクセス解析の極意』の発売を記念したイベントだ。朝9時30分から始まり17時30分までのまる1日、Web担でもおなじみの石井研二氏(HARMONY副社長兼COO)が講師となって、「アクセス解析」「広告効果測定」「サイト改善」「成果アップ」を解説するセミナー+ワークショップが開催された。

セッションごと有料のセミナーにもかかわらず、満席で申し込みは締め切られるほどの人気だったこのイベント、会場では次の5つのセッションが行われた。

  • アクセス解析市場の最新動向
  • サイト改善レポート実践活用術
  • Google Analytics 活用術 実践編
  • 広告効果測定市場の最新動向
  • ECサイトのための広告効果の改善ワークショップ

それぞれについて、レポートしていこう。

アクセス解析市場の最新動向
~「ツールを覚える」時代が終わろうとしている

1セッション目はアクセス解析市場の最新動向を解説し、石井氏のノウハウを伝える内容。

石井氏によると、アクセス解析で問題だったことの1つは、自社のデータを見られるけれども、他社との比較ができないこと。社内でアクセス解析レポートを提出しても、経営陣に「これは多いのか少ないのか」と聞かれて返答できない状況だったという。石井氏が長らく提供してきているアクセス解析サービス「サイトグラム」では、「他社参考データ」という形で、比較対象となるデータを提供していたという。セッションではまず、サイトグラムで分析している年間12億PV全体のデータが紹介された。

  • 直帰率は47.5%、つまり半数の人は1ページしか見ずに帰っている
  • 入口ページは上位20~30ページで全体の8割を占める(入口ページが全部で1000ページあっても)
  • トップページが入り口となる率は20数パーセントに過ぎない
  • トップページが入り口となった場合の直帰率は高くはないので、トップページを除いて計算すれば、直帰率は47.5%よりもさらに悪くなると思われる。

つまり、現状では多くのサイトで「トップページがサイトの入口」と考えていたら、訪問者の7~8割が、待ちかまえている場所以外のページからサイトに入ってきて(検索エンジン経由など)、かなりの率が直帰していると考えられる。

だから、まずは20~30ページくらいの主要入口ページを調べて、そこで訪問者をもてなせばいいのだという。

具体的には、Google Analyticsで[コンテンツ]>[閲覧開始ページ]を表示し、入口回数が多いページの上から見ていって、直帰率の高いページをどう改善すればいいかを考える。それを20ページ分繰り返していけば、良い結果を生む。

Google Analyticsでは、表の下の「行を表示」で多くの行数を表示して作業するのが基本となる

たとえば、ある私立高校のサイトでは、資料請求ページを見ている人は1日あたり3~4人だった。そのサイトでは「資料請求」のボタンはページ上部のグローバルナビ部分にしかなかった。訪問者はページを開いたら、求めている「コンテンツ」を探してページを下にスクロールしていくもの。コンテンツを見た人が「なるほど」と思った時点のスクロール状態では、他のアクションを誘導するリンクは「プライバシーポリシー」「ページ上部へ戻る」くらいしかない。そこで、ボタンをコンテンツ左下部にも置いたところ、資料請求ページを見る人の数は1日あたり20~30人に増えたという。

ユーザーは、クリックしたいときにクリックしたい場所にアクション喚起のボタンがあればクリックするものである。ページを改善するということは、訪問者が抱えている悩みや問題を解決する提案を出すということ。Web担当者がその「提案」をわかっていなくても、営業チームは日々そういった提案を顧客に対して示しているはず。社内でそういった素材をヒアリングしてみるのもいいだろう。

アクセス解析のトレンドとして、この先にやってくるのは成果

現状のアクセス解析は、サイト内でのユーザーの動きを見ることが中心になっているが、アクセス解析を活用してサイト内での目標地点(コンバージョン)への道筋を改善していったとしても、それだけは足りない。そもそも、ゴールにたどり着きやすい人をサイトに連れてくるという部分からコンバージョンまでの道のり全体を「カイゼン」しなければ、「成果」「ゴール」を改善できないのだという。

また、現在のアクセス解析では、「来ている人」の解析が中心であり、そこには「来てほしいわけではないのに来てしまっている」人の解析が含まれている。そこだけでなく、「来てほしいのに来ていない人」を探して、その人たちを集めるアクションも必要なのではないかと石井氏は言い、その方法としてこんな方法を提案する。

  1. サイト訪問に使われている検索キーワードを一覧で出す
  2. 各事業部にそのリストを渡し、「本来サイト訪問に使われるはずのキーワードで、このリストにないものを出してくれ」と頼む

こうすると、来てほしいのに来ていない人を探せる。そうすれば、Web担当者は今後どういったコンテンツを増強するべきかなどのアクションを考えられるのだという。

◇◇◇

アクセス解析でみるべき指標や、何のためにアクセス解析をするのかといったことまで包括的に改めて理解できる内容であった。

もちろん石井氏は、同社が10月からスタートしたASP型のアクセス解析/広告効果測定サービスの「サイトグラムDays」では、こういった一連の流れ全体をサポートしていることを強調することは忘れていない。

サイト改善レポート実践活用術
Google Analytics 活用術 実践編
広告効果測定市場の最新動向
ECサイトのための広告効果の改善ワークショップ

サイト改善レポート実践活用術
~具体的なサイト改善をスムースに行うために

2セッション目は、「サイト改善レポート」に関する内容。アクセス解析レポートではなくサイト改善レポートとはどういったものを示すのだろうか。

サイト改善レポートとは

石井氏によると、まだ多くの会社でホームページは2年に1回リニューアルすると定められている。または、半期に一度くらいで新商品を追加したり廃盤商品を削除したりする程度。

しかし、リニューアルすることと改善することは別なのだという。載せているコンテンツを大幅に変更しなくても、最適化することは可能。ホームページにはどこかしら良くするべき点はあるし、現在良い点はさらに伸ばせる。それを、アクセス解析レポートという形でわかりやすくしていくのが「サイト改善レポート」なのだと石井氏はいう。

たとえば、入口ページ上位50~100ページ程度を、ページごとに、X軸を訪問回数(左が少、右が多)、Y軸を直帰率(上が低、下が高)にプロットしてみる。

  • 右上に入っているページは、人を多く集めていて、しかも来た人をちゃんとつかまえているページ(最良)。

  • 右下に入っているページは、人を多く集めているのに、来た人をどんどん突き返しているページ、これは困るので、改善するべき(PDFや古いプレスリリースなどが多い)。

  • 左上に入っているページは、人は多くは集めていないけれども、来た人はちゃんとつかまえているページ。そのページに対して張られたリンク方法が良いのか、ページの内容が良いのか、その方法論を活かしていくといい。または、効く内容なら、そのコンテンツを今後出す広告にうまく使うなどするといいだろう。

サイト全体を修正すると大変だが、こういった分析でサイト内を少しずつ最適化していけば、サイト全体のパフォーマンスを向上できる。

サイト改善レポートとは、このように、アクセス解析のデータから目標を達成するために、どこを直せば良くなるのか(成果を伸ばせるのか)を見極めて、会社に提案するレポートのことをいう。もちろん改善の実施後は、その成果を検証して、その報告をレポートにする。

リニューアルは大変だが、こういったことをレポートベースですぐに行動していくことが大切なのだと石井氏はいう。

狙いとノウハウのない全面リニューアルは悪

狙いもなしに行う全面リニューアルは、たんなるデザイン刷新でしかないと石井氏は強調する。その場合、以前のデザインで抱えていた問題がリニューアル後も発生するのだという。

リニューアルというのは、サイトの現状での問題点をリストアップし、それを解消するために行うべきものである。

また、リニューアル前には改善予定の項目をテストしておくことが大切。小規模な修正で、変更による影響を測っておくことで、リニューアルの方向性を正しく保てるのだ。

石井氏は、リニューアルのためにチェックするべきポイントとして、多くのサイトが抱える次のような点を挙げた。

  • サイト全体の直帰率(参考指標:47.5%)
  • トップページの直帰率(参考指標:32.5%)
  • 多くの訪問者を帰らせる入口ページの直帰率(参考指標:70.2%)
  • 重要なのに訪問が少ないキーワード(参考指標:15回)
  • 閲覧してほしいのに見られていないページ(参考指標:52セッション、コーナートップページは多く見られているけれども、本当に見てほしいのはその先の詳細ページであれば、そちらが「見られていないページ」となる)

こういったことをうまく行っていないサイトでは、SEOでがんばって集客しているけれども、せっかく来た人をすぐに追い返してしまっている場合も多いのだと石井氏は言う。

サイトで達成すべき目的がわからないサイトも多い

石井氏はさらに、Webサイトを設置している目的がぼやけてしまっていることが多い点も指摘する。直販をしていないメーカーサイトなどでは、「うちのサイトにゴールなんてありません」と断言する場合もあるのだという。

しかし、ゴールとはいわゆるコンバージョンばかりではない。「会社の認知度を高める」「既存の取引先を優遇する」「営業をサポートする」「CSRを行う」「IRを行う」など、さまざまな目的が考えられ、それを反映する目標が定められるべきである。そして、その目標達成に資する要因を分析し、それを増やしたり、その達成を阻害する要因を見つけて削除する。それが日々のサイト運営なのだと石井氏は強調する。

その具体的な方法論として、たとえば、自分のサイトで目標をすべて書き出して表にしてみることを石井氏は薦める。サイト全体だけでなく、事業部ごとやコーナーごとに複数の目標があるのが普通なので、すべてをリストアップする。目標は会員登録数の増加、閲覧者数の増加、ダウンロード数だったりする。この際に、状況によって目標は、まずは「このページへのアクセス数」といったレベルで我慢するのも重要だ(本来は実事業での指標にするべきだが、そうするといつまでたってもサイト改善が進まない)。

それを各事業部に渡し、確認/追加してもらう。そして、アクセス解析で現状の数値状況を書き出して、目標設定をする。1つひとつはすぐに達成できるものになるだろう。

こういったまとめは、Web担当者が1人で全部やると大変なので、各事業の担当と協力しながら行うこと。そして、1項目ごとに、アクセス解析をしてボトルネックを解消していく。

そして1つずつ目標を達成していき、それを改善レポートとして経営層に提出する。ゴールが100項目出たとして、1日2項目ずつ改善していくと、50日、つまり2か月少しでひととおりのゴールに関する改善ができることになる。そして、ひととおり終わったらまた最初のゴールの状況をチェックして、改善するというサイクルを回していくのだ。

石井氏は、その際に意識するべきこととして「ゴールデンルート」を強調している。たとえば「事例のページを見た人は、資料請求をしてくれる確率が非常に高い」ことがわかっているならば、そこをうまく利用する。たとえば事例のゴールデンルートでいうと、トップページから製品ページに行くと事例ページへの経路がなくなるサイトが多い。そこで、製品ページなど他のページから、ゴールデンルートである事例ページへの誘導を強化するのが良いというのだ(必ずしもトップページから直接事例ページに行かせる必要はない)。

石井氏によると、資料請求が少ないと嘆く多くのサイトで問題なのは、フォームではないのだという、問題はフォーム自体ではなく、フォームのページに適切な訪問者がたどり着いていないことが多い。そこからさらに遡ると、「このページを見たら資料請求したくなる」というモチベーションの元となるページにたどり着く人自体が少ないのかもしれない。そうして遡っていくことで、ゴールデンルートへの合流型誘導の考え方が出てくるのだという。

◇◇◇

「アクセス解析レポート」といった結果に関するレポートの話ではなく、「サイトをどう改善するか」に関するレポートの話は、実は「クリックされる場所にボタンを置く」「ページをスクロールした先に誘導の経路を造る」「ゴールへのモチベーションの高い人が見るページからゴールへの経路を造る」といったシンプルな対応の話であった。その問題点をいかにして見つけるか、それがアクセス解析なのである。

Google Analytics 活用術 実践編
広告効果測定市場の最新動向
ECサイトのための広告効果の改善ワークショップ

Google Analytics 活用術
~初めて使う人が「初心者」ではないという使い方

3つ目のセッションでは、Google Analyticsの活用術が解説された。最も人気で、一番に満席になったセッションだ。会場ではプレゼンテーション資料ではなく、HARMONY社のサイトのGoogle Analytics画面を表示しながらの解説となった。

石井氏の解説から、「押さえておくべきGoogle Analyticsのレポート画面」「使わなければもったいない機能」を解説していこう。

  • マイレポート

    マイレポートとは、いわゆるダッシュボードのこと。日々チェックすべき指標が表示される、最初の画面。

    ここで出る指標について、石井氏はわかりやすい解釈を示す。

    • セッション=延べ人数(人数×回数)
    • ユニークユーザー=人数
    • 平均ページビュー=多くのサイトでは6ぐらい。
    • 直帰率=そのまま経営者に伝えてもわかってもらえないので、「全体でこれだけの人が来ました、でもそのうち、これだけの人は最初の1ページだけ見てサイトから出て行きました。これだけの人は他のページも見ました」のように伝える。

    その他マイレポートにはいろんなものが表示されているが、各ブロックをドラッグ&ドロップで動かしたり、消したりできる。そうして、自分がよく見る項目をマイレポートに見やすく並べておくと、データ分析がやりやすくなるという。

  • ユーザー>ベンチマーク

    これはオプトインしてないと利用できないが、見ておくべきデータ。ベンチマークのデータとは、多くのサイトの情報をまとめて標準的な状態にしたものなので、それと自社データを比べることができる。

    ただし、最初に表示されるのは、同じくらいのサイズのサイトをベンチマークとしたもの。「すべて」をクリックしてカテゴリを選ぶことで、自サイトに近いものと比較するのがいい。

  • ユーザー>ネットワーク環境>利用ネットワーク

    どこからのアクセスかを示すもので、重要。標準ではトップ10だけが表示されているが、上位はプロバイダになるので、表下の「行を表示」で100くらいにして中~下のほうに表示される会社名を見ていき、アクセスもとの会社名ごとに、たとえば直帰率などのデータ見たり、または、平均ページビュー数で並べ替えてみたりするといい(平均pv数が非常に多いと思って見てみると、ライバル会社が調査のためにアクセスしていたりするのだという)。

  • トラフィック>全ての参照元

    どういった経路で自社サイトにきたか。サイトが表示されている場合は、そのページからリンクをクリックしてきたを確認する。

  • トラフィック>キーワード

    必ず見ること。検索エンジンでどんなキーワードで検索してサイトに来て、どんな動きをしたかを確認できる。

    直帰率が高いキーワードは、うまく出会えていないページ。改善すべし。

    ここでも、表下の「行を表示」で100キーワード以上表示し、表の上の「コンバージョン」タブをクリックして、数は少ないけどもコンバージョン率が高いキーワードを探し、そのキーワードでの誘導を伸ばすようにすると、着実にサイトの成績を上げられる。

  • コンテンツ>上位のコンテンツ

    ずらずらっと表示されるので、見づらいが、表の下にある「フィルタ ページ」ボックスに、たとえば「/service」のように、URLの特定のディレクトリを入れて「実行」すると、そのディレクトリ以下のページだけ見られる。

    そうやって、各事業部のコンテンツを表すディレクトリ名ごとに一覧して、あるページ→あるページへの移動が極端に下がっている部分を探すなどして使う。

    「コンテンツ>タイトル別のコンテンツ」を使うと、どのページがどれくらいのアクセスかわかるが、これを使う場合は、すべてのページが違うタイトルになっている必要があることに注意。

  • コンテンツ>閲覧開始ページ

    入り口ページの確認。必ず見ること

    このレポートを見ると、ダメなページを探せる。直帰率の高いページのURLをクリックすると「ページ別の詳細」が表示される。そこで、アクセス元から調べて、直帰率の高いアクセス経路を調べる。

    たとえば、あるページへの検索エンジンからのアクセスの直帰率が高いなら、そのページのタイトル部分に大きな文字で、その検索キーワードを書くようにする。ユーザーは、検索してたどりついたページに、求めていたキーワードがすぐに見つからないと帰ってしまうことが多い。下のほうにキーワードがあったとしても、ページを表示してぱっと見えるタイトル部分に入れるのが大切なのだという。

  • コンテンツ>コンテンツの詳細

    「コンテンツの詳細」というとわかりづらいが、コーナーごとに情報をまとめて見る機能。ディレクトリごとに情報を集計して見せてくれる。表のディレクトリ名をクリックすると、さらにその中でのディレクトリごとの情報を集計して見せてくれるので、ドリルダウンして見ていける。

  • コンバージョン

    プロファイルに目標を設定しないと現れない。また、目標は4つ設定できるが、レギュラーで使うのは3つにとどめておいて、流動的に随時行う目標チェック用に1つ空けておくといいだろう。

    また、目標到達プロセスでは、実は大切なのは、目標プロセス開始ページへのアクセス元。ただ、目標到達プロセス画面では詳細を確認できないので、たとえば、フォームページのURLを調べ、そのURLを改めてGoogle Analyticsで解析していく必要がある。

使わないともったいないGoogle Analyticsの機能

  • 右上のアドバンスセグメント

    まずは、「新規ユーザー」「リピーター」にチェックして、いろんなレポートを見てみるべし。各レポートが新規ユーザーとリピーターに分けて表示される(+総数)。

    1回チェックして「適用」を押せば、多くのレポートでそれを見られるので、使わないともったいない。自分で新しいカスタムセグメントを作ることもできる。

  • 期間比較

    レポート右上の日付表示をクリックすると、その場でカレンダーが表示される。そこで「過去と比較」をチェックして「適用」すると、自動的に適切な過去の期間を選んでくれる。たとえばサイトに変更を加えた日時から1週間などデータを見たい期間を指定すると、自動的にその1週間前と比較してくれるので、非常に便利な機能。

  • データ出力

    レポートページ上部の「エクスポート」をクリックして、出力したい形式を選ぶ。ただし、過去と比較の状態でExcel出力すると、少し扱いづらくなるので工夫が必要。

  • メール

    レポートページ上部の「メール」をクリックして設定すると、そのレポートのPDFやCSVを添付したメールをだれかに送れる。m毎週月曜日など定期的にメールを送信させることも可能なので、各事業部あてにその事業部関連のレポートを自動的に送るようにするといい。

  • マイレポートに登録

    レポートページ上部の「マイレポートに登録」をクリックすると、そのレポートをマイレポートにブロックとして表示できる。表下のフィルタを効かせた状態で「マイレポートに登録」をクリックすると、その状態で登録されるのも便利な機能

  • カスタムレポート

    一番質問の多い機能だという。左下の「カスタムレポート」をクリックして表示される画面の右上の「カスタムレポートを新規作成」をクリック。

    インターフェイスは悪いが、やることはカンタン。「△△のデータを○○別に見る」だ。

    左側のパーツを、右側の「指標」「ディメンション」にドラッグ&ドロップしていく。「指標」に置いた項目が、「△△のデータを見る」の意味になる。

    次に左側のパーツを右側の「ディメンション」にドラッグ&ドロップしていく「ディメンション」に置いた項目が、「○○別に見る」の意味になる。

    指標は複数ドラッグ&ドロップ可能。ディメンションはサブディメンションを追加していくと、ディメンションの項目ごとに細分化できる(レポート画面上で項目をクリックするとサブディメンションが表示される)。

    だいたいできたら、ページ下の「カスタムレポートのプレビュー」をクリックして確認できる。OKなら「レポートを作成」をクリックすると作成される(左サイドバーのカスタムレポートにリンクが表示される)こうやって良いレポートを作って、マイレポートに登録しておくといいだろう。

◇◇◇

駆け足で解説したGoogle Analyticsだが、改めて使い方を知った人も多いのではないだろうか。実践的な活用方法が丁寧に解説されたわけではないが、Google Analyticsの概要を理解して、どのように使えばいいのかの人は十分に得られたのではないだろうか。

広告効果測定市場の最新動向
ECサイトのための広告効果の改善ワークショップ

広告効果測定市場の最新動向
~「測定」という過去形から「改善」という未来形へ

4セッション目は、広告効果測定市場に関する内容。Webサイトのアクセス解析ではなく、広告効果はなぜ出ないのか、どうすれば改善できるのかにフォーカスしている。

石井氏は、広告効果が出ない理由は、次の3点にあるという。

  • 無駄クリックが多い
  • ランディングページの造りが悪い
  • コンバージョンへのモチベーションが低い

広告は「良いのがあるよ、みんな来てよ」と誘う内容なので、関心の低い人までもが誘いに惹かれてクリックして、「やっぱり良いや」と帰ってしまう。PPCはクリックされるたびにコストが発生するので、無駄。

広告は「クリックされてなんぼ」ではなく、「関心のある人を誘導してなんぼ」。広告表現が「だれでも来てください」ではNG。関心のある人を誘導するけれども、ターゲットではない人はクリックしないように、広告表現を鍛えることで、広告効果をアップさせられる。

たとえば、東京の不動産屋なら、「東京の土地・建物」のように明記することで、エリア外の人のクリックを防げる。絶対数としてのクリック数は少なくなるが、コンバージョン率が上がるので、広告効果はアップする。

ここでも石井氏は、4象限を利用して解説する。今回は、X軸にクリック数(左=クリック少、右=クリック多)、Y軸にコンバージョン率(上=CVR高、下=CVR低)で、出稿しているPPC広告のキーワードごとに解析し、プロットしてみる。

  • 右下は、コンバージョン率が低いのにクリック数が多い広告。つまりムダクリックが多い広告。予算がかかっているということなので、ここは重大。広告表現を工夫するか、ダメならここの出稿は予算を削っていくべき。

  • 左下は効果が低く、改善なしでは伸ばしていけない。

  • 左上は、密かに効果を出している広告。ここを伸ばすと効果が上がる。場合によっては、右下エリアから削った広告費をこちらに回すのもいいだろう。

広告はなんでもかんでも露出すればいいわけではない。本当に欲しいと思う人の前にだけ現れる広告、それがコンバージョン率が上がる広告なのだと石井氏は強調する。

ランディングぺージを改善するだけでコンバージョン数が倍

石井氏によると、多くの広告ランディングページの平均直帰率は97.5%。たとえば、クリック単価100円で10万円の予算を使う場合を考えてみよう。

1000人誘導
↓(直帰率98%)
フォームへ移動20人
↓(フォーム完遂率50%)
コンバージョン10人

この場合、コンバージョン率は1%、CPAは10,000円となる。

しかし、直帰率を2ポイント減らせたらどうだろうか。

1000人誘導
↓(直帰率96%
フォームへ移動40人
↓(フォーム完遂率50%)
コンバージョン20人

この場合、コンバージョン率が2%、CPAは5,000円と、顧客獲得単価が1/2になる。

このように、PPCシステムのクリック率だけを見てもだめ。サイトに至ってからのランディングページ以降の動きまで含めて評価しないと、広告の効果を測定していることにはならない。

では、ランディングページをどう改善するのか?

  • どこがクリックされているのか
  • どこまでスクロールされているのか
  • 直帰者を含めてページ滞在時間を計算すると?

といったところまで解析して改善する必要があるのだという。

そして石井氏は、わかりやすい改善手法として、アクション喚起ボタンのラベリング(どんな表現を書くか)を挙げる。ゴールへ行く人が少ないということは、ゴールへの誘い方が悪いのではないだろうかという部分だ。たとえば、「資料請求」「今すぐ購入」「お問い合わせ」と書かれているボタンは、訪問者にとって魅力的だろうか。

石井氏は、ボタンのラベル1つで改善した例として、人材系のサイトを挙げる。人材系サイトでよくあるボタン「エントリー」。これは、訪問者にとっては少し敷居が高いのだろうということから、これを「会社見学を希望する」としただけで、コンバージョン率が2倍になった事例もあったのだという。

LPOやA/Bテストは小手先にならないよう?

続いて石井氏は、LPOやA/Bテストについても、根本を説く。

LPOとは、ランディングページ最適化のこと。たとえば「マンション 渋谷」で検索してきた人には、ランディングページで「渋谷のマンションをお探しなら」と表示し、「マンション 新宿」で検索してきた人には、ランディングページで「新宿のマンションをお探しなら」と表示する仕組み。

これは、検索に応じて表示を変えることが重要なのではなく、訪問してきた人に、「あ、ここに自分の求める情報があるんだ」と安心させ、前に進んでもらうための仕組みなのだと強調する。LPOでページ一部の文言を変えるのが重要なのではなく、ユーザーにそれぞれ適切な価値を提供できるようにすることが本質的に重要であることを理解するべきなのだという。

A/Bテストに関しても同様。複数のランディングページのデザインを表示して良い方を自動的に多く表示するA/Bテストはあるが、どちらの表現も悪い場合というのも考えられる。その場合、「良いデザインを残す」ではなく「マシなデザインを残す」しかできず、訪問者が本当に望むものを得られているかは定かではない。ランディングページの良し悪しは、最終的な成果やそれにつながるページへの誘導数から考えた絶対評価を行うべきなのだという。

◇◇◇

石井氏によると、広告効果分析とは、広告を出すたびに成果を向上させられて、ノウハウを与えてくれるもの。また、媒体そのものを評価できるもの。

広告は、出してから「結果はこうでした」ではなく、広告を出す前に、どれだけ広告を鍛えられるかが大切。たとえば、並んで出る他の広告がどのようなものがあるのか、どんなキーワード(ニーズ)に答える広告にするのかなどは事前に調整できる。広告効果測定でいえば、出稿を開始して3日間のデータで検証して広告クリエイティブを変えるなどして、PDCAサイクルをどんどん回せるような広告効果測定ツールが良いのだと強調する。

リスティング広告を使っている方は、オーバーチュアやグーグルからのレポートを(加工した形であれ)見たことがあるだろう。しかし、本来あるべき「広告のレポート」とは、こういった成果につながる部分まで含めて検証し、改善するべき点が見えるものではないだろうか。

ECサイトのための広告効果の改善ワークショップ

ECサイトのための広告効果の改善ワークショップ

5セッション目では、ECサイトで売上高を伸ばす方法を考えるワークショップが行われた。商品の特徴をリストアップし、その特徴を求めるターゲット像を考え、そのターゲット像がニーズを満たすために使うであろう検索キーワードを考えるという内容。

参加者には作業用のシートが配られ、解説を聞きながら自分のサイトで販売している商品を思い浮かべてシートに記入していく、実践型のワークショップとなった。

一連の流れは、「マンダラ」という3×3の9マスの中心にコアとなる要素を書き(たとえば売りたい商品)、その周辺の8つに派生する要素を書き(たとえば特徴)、そして8つの要素それぞれを次の派生する要素を書く(たとえばその特徴を求めるユーザー像)といった形でふくらませていくもの。

ワークショップで特徴的だったのは、最後に、検索キーワードで出すリスティング広告それぞれに関して、「広告文言とランディングページの見出しを並べて書いてみる」という作業が入ったことだろう。

検索ユーザーの脳みその状態を想定して、広告の文言をランディングページが受け止める感じで書くのがポイントだという(できればランディングページのファーストビューで受け止める)。

悪い例としては、たとえば、検索結果ページに表示されるリスティング広告では「4,980円から」と書かれているのに、それをクリックして表示されるランディングページのファーストビューに表示されている価格が11,000円だと、(スクロールした先に4,980円の商品が書かれていたとしても)「あれ?」と思うだろう。その「あれ?」感をなくすために、広告文言とランディングページを併せて考えるのが重要なのだという。

そして、最後には、できた広告文言とランディングページの見出しを隣の人に見てもらい、特徴が伝わるかを論評してもらうというワークショップだった。

◇◇◇

時間は短かったが、脳味噌を働かせて「ユーザーにどうアピールするか」「ユーザーはどう動くかを想定して広告とランディングページを作る」といった部分が学べた場だった。

まる1日のセミナー全体を通じて

石井研二氏というと、Web担が始まる前からWeb担の前身の雑誌にご協力いただいている方だ。その石井氏が満を持して投入したアクセス解析サービスsitegram Days(サイトグラム・デイズ)では、このセミナーで解説されたようなノウハウが詰まっているのだという。

そもそもHARMONYは、ブログシステムの開発からスタートしたが、「システムを納入するのではなく、『成果』を納入する」方針で、検索を中心とした集客や効果分析のソリューションを充実させてきた。現在は、サイト分析やサイト構築だけでなく、コンサルティングやディレクション、保守、さらには集客やサイト改善、コンバージョン向上などのサービスを提供しているが、こういった一貫したサポート体制も、石井氏の経験とノウハウが成せるものだろう。

朝から夕方まで集中してアクセス解析とサイト改善の話を聞き続けて脳味噌は疲れたが、改めて学ぶ点が多かったセミナーであり、今後の石井氏の活動と、sitegram Daysのサービス展開にも期待が膨らんだ1日だった。

この記事の筆者

安田 英久(やすだ・ひでひさ)

株式会社インプレス
Web担当者Forum 編集統括(初代編集長)

プログラミングやサーバー、データベースなどの技術系翻訳書や雑誌『インターネットマガジン』などの編集や出版営業を経て、Webサイト 「Web担当者Forum」初代編集長。ビジネスにおけるWebサイトの企画・構築・運用と、オンラインマーケティングの2軸をテーマにメディアを展開いる。現在は編集統括として媒体に携わる。

個人としては、技術とマーケティングの融合によるインターネットのビジネス活用の新しい姿と、ブログ/CGM時代におけるメディアのあるべき姿を模索し続けている。趣味は素人プログラミングと上方落語と南インドカレー。

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