企業が「会話」に参加する5つのステップ

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今週は、海外の記事からの情報を。

ミネアポリス芸術大学(MCAD)とミネソタ・インタラクティブ・マーケティング協会(MIMA)が、「未来の広告に関する会話(CATFOA)」という連続イベントを開催しています。その第4回で、書籍『会話に参加しよう(Join the Conversation)』の筆者であるジョセフ・ジャフィ氏が語った内容が、オンラインマーケティングブログでレポートされています。

CATFOAサイト(英語)
書籍『Join the Conversation』
オンラインマーケティングブログのレポート記事(英語)

「会話」という言葉が意味するのは、もはや2人の人間の対話に限られない。オンラインでは、「企業と企業」「企業と消費者」「消費者間」で会話が繰り広げられている。会話とは、ポジティブなもの、ネガティブなもの、無関心なものの、どの形でもあり得る。

今日のオンラインマーケティングにおいて、企業がオンラインで会話に参加することの重要さは今さら繰り返すまでもないが、ジョセフ氏によると、企業は消費者との個人的な関係を構築し、それを維持するために「誠実な関係」を保ち続けなければいけないのだという。そのためには関係するコミュニティに対して正直に情報を開示することが大切なのだという。会話の目的は消費者に何かをさせることではなく、参加者としてコミュニティにかかわることなのだから。

企業による産地・原材料・賞味期限の偽装や改ざんが相次ぎ問題となり、2007年の「今年の漢字」に「偽」が選ばれたことを考えると、このジョセフ氏の言葉は海の向こうのまだ見ぬ世界の話だとは思えない。

とはいえ、企業にとって「会話に参加する」にはどうしたらいいか、わかりづらいところだろう。ジョセフ氏は、会話への参加へのステップとして次のようなものを挙げている。

  1. 聞く——会話に貢献する
  2. 反応する——良くない方向性から会話が始まったとしても
  3. 参加する——会話に招かれる立ち位置に自らを置く
  4. 触媒となる——消費者がブランドの伝道師となるよう力づける
  5. 開始する——パイプ役として会話を開始する

また、してはいけないこととして、次のものを挙げている。

  1. 偽る——コミュニケーションにおいて情報は明らかにするべし
  2. 恣意的になる——オープンであれ、参加者をだますことなかれ
  3. コントロールする——マスメディアのように自由に御すことはできない
  4. 支配する——他社がしゃべる機会を残すべし
  5. 避ける——能動的に参加するべし

日本では、アジャイルメディア・ネットワークが「カンバセーショナルマーケティング」を標榜しているが、巨大な広告代理店が支配するマス広告の世界に長く浸かりすぎていて、企業という組織全体としての行動が基本となっている状態を基準に考えると、なかなか「カンバセーショナル」のイメージは浸透しづらいだろう。

「カンバセーショナルマーケティング」というと、何かスゴいスキームがあって緻密な計算の下に行われるマーケティング施策のように思われるが、ジョセフ氏の5つのステップを見てもわかるように、その根底にあるのは、商売人の基本である「誠実に顧客と向き合うこと」に過ぎない。

どれだけ老舗の商店であっても、顧客との接点は番頭や丁稚の対応である。老舗は、その歴史における積み重ねから、誠実な行動規範を大旦那から若旦那や番頭へと引き継いできている。さて、日本の企業で引き継がれてきたのはどんなものだったのだろうか。

「ブランディング」や「のれん」といった言葉に含まれる意味のうち、消費者が広告に何回接触したかや、商品名や企業名の想起率といったものでは表されない部分について考えさせられた記事だった。

この記事は、メールマガジン「Web担ウィークリー」やINTERNET Watchの「週刊 Web担当者フォーラム通信」に掲載されたコラムをWeb担サイト上に再掲したものです。

この記事の筆者

安田 英久(やすだ・ひでひさ)

株式会社インプレス
Web担当者Forum 編集統括(初代編集長)

プログラミングやサーバー、データベースなどの技術系翻訳書や雑誌『インターネットマガジン』などの編集や出版営業を経て、Webサイト 「Web担当者Forum」初代編集長。ビジネスにおけるWebサイトの企画・構築・運用と、オンラインマーケティングの2軸をテーマにメディアを展開いる。現在は編集統括として媒体に携わる。

個人としては、技術とマーケティングの融合によるインターネットのビジネス活用の新しい姿と、ブログ/CGM時代におけるメディアのあるべき姿を模索し続けている。趣味は素人プログラミングと上方落語と南インドカレー。

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