Webサイト制作の本質はコンテンツ制作にある! デザインやページを考える前に、お客さまのニーズに応えるコンテンツを考えるべし

「Webサイト制作」を「ページやデザインを作ること」だと思っているWeb担当者や制作者に喝! そもそも「Webサイトを作ること」とは「コンテンツを作ること」だ
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「Webサイト制作」を「ページやデザインを作ること」だと思っているWeb担当者や制作者に喝!

そもそも「Webサイトを作ること」とは「コンテンツを作ること」なのだ。

「Webサイト制作」で「コンテンツ制作」を軽視するなんて

Webサイトのことを、単に「テキストや画像を載せられる媒体」くらいに思っているWeb担当者も少なからずいるようだ。

Webサイトで使う画像は、既存のカタログの写真を流用してください。
Web担当者A
テキスト情報は、資料から適当に抜き出して使ってください。
Web担当者B
えっ! 製品説明の文章を書いてもらうだけでお金かかるんですか?
Web担当者C

カタログとWebサイトは、まったくの別物だ。そのまま利用したところで、出来上がるのは単なる「Webサイト版の紙カタログ」でしかない。

本来ならば企業は、Webというメディアで顧客の求めるものに応えるための最高のコンテンツを作るべきではないか。

しかし、単なる「ありものをWebに載せて形にする」ことが仕事だと思っている人はまだいるようだ。

また、あるべき姿を十分理解しているはずのWeb制作会社も、指摘することなくそのまま受け入れてしまう。

え? コンテンツをご提供頂けないんですか? 困りましたね。何か既存のコンテンツないでしょうか?
制作会社A
カタログなどの素材データをいただければ、こちらで適当に選んではめてみますよ!
制作会社B
簡単なキャプションと説明文、編集は無償でやっておきますので!
制作会社C

彼らの考える「Web制作」は、デザインやページを作ることのようだ。これは、紙媒体の制作でいえば「レイアウト」や「印刷」に相当する。果たして、レイアウトや印刷だけをすれば、良いメディアを作れるのだろうか?

Webサイトというメディアには、他の媒体にはない(もしくは、やろうとするとコストがかかったり難しかったりする)、次のような特徴があるといえる。

  1. 即時性
  2. コンテンツの量に制限がない
  3. 検索性
  4. お客さまごとの最適化
  5. お客さまの閲覧環境への最適化

これらの特徴を活かすためには、そのWebサイトや各お客さまに最適化したコンテンツが必要になるはずだ。

つまり「Web制作」で良い結果を出すには、「コンテンツ制作」が必須になるはずなのだ。

「コンテンツ」というと、「情報そのもの」だ。つまり「コンテンツ制作」とは「情報そのもの」を作ること、つまり「著作物の制作」だ。これは、さまざまな分野で制作に携わっている人なら理解しているはずだ。

しかし、なぜかWeb制作だけは、それらとは異なる認識が蔓延しているようだ。

「コンテンツマーケティング」という言葉が聞かれるようになって久しいが、それが単に「LP(ランディングページ)のコンテンツ制作」を指すのではなく、「Webサイトすべてのコンテンツ」を指すようになるべきだ。

そうでなければ、お客さまの問題を解決できるWebサイトには到達できないし、本当に必要なコンテンツが何かを理解できない。

Web制作会社は、たぶん理解しているはずだ。こんなやり方では、ロクなWebサイトを作れるはずがないことを……。

しかし、コンテンツを作るにはコストがかかる。そのコストをなかなか認めてもらえない現状もある。

なぜいま、「コンテンツファースト」が叫ばれるのか

前回のコラム「“モバイルファースト”から“スマホファースト”への進化に戸惑うWeb担当者に喝!――新任の担当者へ贈る特別編」でも書いたように、時代はスマートフォンファーストへと突き進んでいる。

スマートフォンファーストになれば、お客さまはすぐに自分の求める答えを要求する。逆に言えば、お客さまのニーズを把握して、それに応えていけば、有効な成果が手に入る道筋が明確になったということだ。

さらに、スマートフォンにおけるレイアウトやインターフェイスの幅は、PCのWebサイトほど広くはない(※エモーショナルなサイトやブランドサイトは除く)。

ここで問題の焦点になるのは、コンテンツそのものだ。

だからこそ、断言できる。

これからコンテンツファーストの時代が訪れる!

しかもそのコンテンツは、お客さまに最適化して提供できる可能性もあるのだ。

熟練の営業マンが、お客さまのニーズを先読みするほどのレベルではないかもしれない。しかし、そこそこの営業マンくらいの対応は可能になるのだ。

コンテンツさえあれば!

近年、マーケティングオートメーション(MA)というキーワードもよく聞かれるようになった。MAでも、顧客をセグメント化してスコアリングしたりトリガーを設定したりしてシナリオを作ったら、各コミュニケーションに最適なコンテンツを作る必要がある。

Webサイトが、マーケティングとして本当に機能し始めるという大きな流れのなかで、コンテンツの重要性がどんどん高まっているのだ。

「コンテンツ○○」――呼び方は何でもいいから、お客さまのニーズに応えるものに

「コンテンツファースト」「コンテンツマーケティング」「コンテンツSEO」……正直、呼び方はどれでもいい。

どうでもいい情報を量産して、集客しようとしたり、キーワード上位表示のためだけのコンテンツ制作だったりしなければ……。

お客さまのニーズに最適化されたコンテンツが必要

それがこれからのキーワードになる。

探しやすいWebサイトから、探す必要がないWebサイトへ。

選択して階層を下っていくWebサイトから、理解して進んでいくWebサイトへ。

図1 これまでのWebサイトとこれからのWebサイト

Webサイトを取り巻くエンジニアリングは、急激に進化を遂げている。

この10年におけるCMSツールの普及しかり、MAツールの普及もそれほど時間はかからないはずだ。

それらのエンジニアリングやツールは、お客さまが求めるものを、すばやく、最適な形で提供するために用意されている。

だから、それらを検討する場合、最後のピースがコンテンツになる。

1000通りのお客さまのニーズに対応して、コンテンツを出し分けられるツールを導入したとして、そもそも1000通りのコンテンツを用意できているのか?

会員すべてに最適化されたメールが送信できるツールを導入したとして、メールの本文を書く人がいるのか?

どんなツールを導入しても、コンテンツは誰かが作らなければならないのだ。

だからこそWebサイト制作では「誰に」が重要

本当の意味での「コンテンツを制作すること」が、Web制作なのだと理解されなければならない時代がやってくる。

もっとも、Web制作業界以外の制作では、至極当たり前のことだが……。

私は20年来、「Webサイトはお客さまの問題解決ツールであり、お客さまは目的をもってWebサイトに訪れるのだ」とクライアントに話してきた。だから、お客さまの問題を解決する情報がないのであれば、Webサイトとしては機能していないということになる。

つまり、Webサイト制作=ソリューションコンテンツ制作ということだ。

だから、Webサイトのコンテンツには「誰に」という視点が重要になる。

また、「コンテンツをどうやって、どんなものを作ればいいかわからない」という声をよく聞く。

そういうときは「どんな状況で何を求めている人のためにコンテンツを作るのか」を考えればいい。

Web以外のメディアは、不特定多数が自由に閲覧できる場合が多い。そう言うと、「Webも同じではないか」という人もいるかもしれない。

しかしWebサイトでは、「ぼんやり見ていたら、あなたのサイトにたどり着きました」なんてことは、ほぼない。ほとんどの訪問者が、目的をもって(しかも検索ならば明確なキーワードとともに)Webサイトに訪れるのだ。

だからここでいう「誰に」は、性別や年齢はあまり重要ではない。大切なのは「どんな問題を抱えているか」だ。たとえば、「軽いパソコンが欲しい」とか「出張で博多に行きたい」といったことだ。

コンテンツは、そうした問題を抱えている人に、その人が見たい順番で、御社の提供できる解決を伝えていくものなのだ。そう考えると、どんなコンテンツが必要なのか明確になっていくはずだ。

そして、そうしたことを積み上げていくのがWebサイト構築なのだと気づいてほしい。

広告でさえ最適化の時代へ

最近のウェブ広告では、「一度見ると、なんかバナーに追われる」とか「自分がいる場所がわかっているような広告が怖い」といったネガティブな印象をユーザーに与えてしまうことが問題になっている。

これもコンテンツの問題だ。

この問題が起きる原因は、今までの広告と同じ考え方や作り方で制作したクリエイティブを、いわゆるアドテクを使って当てにいっていることにある。

広告も「お客さまの問題を解決する」ものであるべきなのに、サービスやツールありきで始まるので、こんなことが起こるのだ。

本来ならば、ウェブ広告においても、前述のWebサイトの場合と同様に、お客さまの状況に最適化された情報を提供していくべきだ。

そうすれば、お客さまは、わざわざ企業のWebサイトに行かなくても必要なコンテンツを得ることができ、さらに言えば、お客さまの顕在化した問題だけでなく、潜在的な問題まで解決できるかもしれない。

DMPのようなツールは、こうしたことを実現するために使うものであって、「お客さまを追いかけて、固定のバナー広告を出し続ける」ためのものではないのだ。

MAも、「お客さまそれぞれに適したメールを出し分ける」ことができるツールであるはずであって、メルマガと同じような一斉メール配信でしか使っていなければ意味がない。

図2 DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)の仕組み
図3 広告をお客さまに合わせて出し分ける例

そもそもWebサイトにコンテンツがあり、お客さまごとに出し分けられる状況であれば、そのコンテンツはそのまま広告にも適用できるはずだ。

Webサイトが、分散型メディアにもなりえる可能性を見出せるはずだ。

さらにその広告が単にWebサイトへの誘導だけでなく、双方向のコミュニケーションを実現できたらどうだろう。メディアとしてのインターネットの一番特徴的な「双方向性」を活かすことができるのではないだろうか。

広告においても、ユーザーニーズに最適化された配信が当たり前になるのはもちろんだが、だからこそコンテンツの問題が、ここでも生じるはずだ。いや、すでに問題だらけかもしれない。

本日のまとめ

スマートフォンファーストとコンテンツファースト。

これこそが、次世代Webサイト構築において、Web担当者、Web制作会社すべての人が心に刻むべきキーワードだ。

すべては、お客さまの問題解決のために!

この記事の筆者

生田 昌弘(いくた まさひろ)

株式会社キノトロープ
代表取締役社長

1959年生まれ。岡山県出身。1985年に生田写真事務所を設立し、カメラマンとして活動を開始する。1993年12月にキノトロープを設立し、代表取締役に就任。以後、一貫した方針で数々のWebソリューションを築き上げる。現在もネットエバンジェリストとして布教活動を実践中。

主な著書に『Webブランディング成功の法則55』(翔泳社)、『CMS構築成功の法則』(技術評論社)、『Webサイト構築ワークフロー』(ソフトバンククリエイティブ)、『アクセス解析からはじめる Webサイト運用 成功の法則』(ソフトバンククリエイティブ)、『次世代Webサイト構築ワークフロー』(インプレスジャパン)など。

【イラスト】
北上 諭志(きたがみ さとし)

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