SEOが無意味になる。infoseekが示唆する未来
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の百四
SEOは永遠なのか
新年あけましておめでとうございます。今年もお付き合いいただければ幸いです。
「ブログがSEOになる」と、昨夏より社長命令でブログを書かされている旧友に会いました。同じ話をとある不動産会社でも耳にしました。「書き方」を工夫することでSEOになることもありますが、やみくもに書いてもSEO効果は乏しく、そしてほぼ100%「書き方」をレクチャーせずに「ホームページ制作業者」はブログシステムを高値で販売しています。街角での「SEO」の御利益はいまだに健在なのです。
※関連記事:Web担心得 七十六「ニュースの価値、ビジネスブログの構造的欠陥」
しかし、SEOはいつまで有効なのでしょうか。というか検索エンジンは永遠に利用され続けるのでしょうか。そして「商売用ホームページ」がとるべき道とは。
infoseekに怒鳴る
SEOの未来永劫に渡る有効性に疑問が芽生えたのは、楽天が運営するポータルサイト「infoseek」で、あるキーワードをしたときのことです。思わず「ふざけるな!」と怒鳴ってしまいました。私のマックブックに表示された検索結果がすべて「スポンサーサイト」だったのです。
ヤフーも広告が増えましたが、その比ではありません。6つのスポンサーサイトの後「JWord」の広告が表示され、その下からがようやく「検索結果(オーガニック検索)」で、ページスクロールしなければ「検索結果」が見られないのです。
調べてみるとinfoseekだけではなく「goo」や「BIGLOBE」も同様です。そして「検索エンジンが使われなくなる日」が脳裏に浮かびました。
食品偽装と広告偽装
ヤフーの検索結果では、昨年8月からグーグル同様に「検索順位」が非表示になり、12月にスポンサーサイトの背景色がオーガニック検索と同色になったので広告との区別がなくなりました。検索連動型広告はクリックされない限り手数料が徴収できず、クリックされるように工夫するのは営利企業として当然です。変更が営利目的によるものなのか真相は不明ですが、利用者はどう思うでしょうか。
食品偽装と同列に語るのは暴論ですが、「国産うなぎ」の検索結果と思いクリックするとスポンサーサイトで「中国産うなぎの通販サイト」に辿り着いた利用者が「騙された」と思う可能性を否定できません。
増える広告に、広告と気がつかない広告が、検索結果への信頼を下げたとします。その時、検索エンジンの利用率は今のままだと考えることはできません。
ポストGoogleの思考実験
グーグル以降「検索エンジン」の収益源は広告が相場となっています。その広告が検索結果の価値を貶めるジレンマにあるのではないかという危惧です。それでは「広告」に頼らない検索エンジンは可能でしょうか。「非広告掲載検索エンジン」として3つの方法が考えられます。
- 寄付型
Wikipediaのように運営費を寄付でまかなう - スポンサー型
マイクロソフトなどの企業が自社製品利用者の囲い込みを目的として提供 - オープンソース型
腕自慢のギークによるプロジェクト。グリッドコンピュータの要領でデータセンターや専用サーバーを不要とするシステムを構築し「運営費」という概念をなくす
「オープンソース型」は「フリーでフリー(無料で自由)」の「Web 2.0的検索エンジン」です。利用者数と広告収入は完全リンクします。この検索エンジンが普及してグーグルのシェアを脅かしたとき、広告費頼りの「無料」の刃がグーグルに突き刺さります。「ポストGoogle」はグーグルの蒔いた種から芽吹くのかもしれません。
検索エンジンに忍び寄る日本的な危機
「検索エンジン離れ」の兆候は他にもあります。それを「楽したい症候群」と名付けます。努力や苦労を極力回避して「結果」だけを望む人々を指し、現代日本では世代を問わずに増殖しています。
昭和の頃、「調べる」ために辞書や辞典を引き、専門家の元へ足を運びました。今は「検索」で間に合わせます。鉛筆を片手に原稿用紙に向かい、間違えれば消しゴムをかけ書き直しましたが、今はパソコンやケータイでコピペです。技術の進歩を否定するものではありません。しかし、人の欲望に底はなく「楽」を肯定し助長した先に「楽したい症候群」はこういいだすのではないでしょうか。
「検索ってたりくね?」
共通語に訳せば「検索は面倒ではありませんか」。適切な検索結果を得るためには、周辺情報が不可欠で、「鈴木愛理」に辿り着くために「℃-ute」や「Buono!」、または「ピザーラ CM」と検索窓に入力します。これすら「面倒」と考える「楽したい症候群」の人間が多数派となったときに、従来の検索エンジン、そしてSEOは役割を終えます。
ホームゲームで戦える備えを忘れずに
最近の各社が取り組んでいる「レコメンド(オススメ)検索」も彼らには無意味です。行動しないので「好みの集積」ができず、オススメする根拠を失うからです。するとこんなサービスが登場するのではないでしょうか。
「今日の検索結果」
ネット上の情報だけなら、既存サービスのマッシュアップですぐに実現可能かもしれません。テレビやラジオ、雑誌、新聞の情報、そしてブログの出現キーワードから最も多く検索されるであろうキーワードの検索結果を複数の検索エンジンから抽出して提供するものです。これさえチェックすればネットは十分で、そんなに知りたいことも興味もなく、なにより「たりい」と。
SEOとは検索エンジン各社のホームで戦う「アウェイゲーム」です。ルールの変更権もゲームの主導権もヤフーやグーグルが持ちます。検索アルゴリズムが変われば対応が求められ、検索結果で1位になっても、その上にスポンサーサイトが10個並べば事実上11位です。一方、発行間隔、内容、企画などを自分たちで決められる自社サイトやメルマガは「ホームゲーム」です。サッカーでも野球でも商売でもそしてホームページでも「ホームゲーム」は大切です。
♪今回のポイント
SEOはアウェイ対策。
主体性を発揮できるチャンネルを確保しておく。
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