Flashで機能性とデザイン性を高度に両立――株式会社クーピー

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株式会社クーピー

Flashで機能性とデザイン性を高度に両立
顧客もユーザーもハッピーにする姿勢

今や企業ウェブサイトの構築・運営に何らかの形で制作会社がかかわるのが当然である。このコーナーでは実際の現場である制作会社を訪問し、その特徴や依頼するときのポイントなどを伝える。今回紹介するクーピーは、面白法人カヤックの関連会社で、同社自身も独特のコンテンツを提供する。少数精鋭で“ウェブでしかできない表現”を目指す同社は、システム開発をすべて自社で行い、特にActionScriptを使ったFlashコンテンツの制作を得意とする。同社代表取締役の貝畑政徳氏と阿部祐之マネージャーにお話をうかがった。

吉村正春(ドラゴンフィールド株式会社

株式会社クーピー

  • 所在地 ● 東京都目黒区自由が丘
  • 設立 ● 2001年10月18日
  • 資本金 ● 1,000万円代表取締役:柳澤大輔、貝畑政徳、久場智喜
  • 社員数 ● 18名(2006年6月現在)
    [社内スタッフ] 役員3人、プログラマー5人、デザイナー5人、Flashデザイナー5人、SEO担当1人(兼任) [外部スタッフ] ディレクター4人(カヤック兼任)、コピーライター・編集2人など
  • 事業内容 ● 企画からデザイン・構築、プログラミング、解析ほかウェブサイト制作に関連するすべてを行う。設立当初からシステムに力を注ぎ、システム開発は外注をまったく使わずに自社ですべて行う。2003年末からFlashに注目し、特にActionScriptを使用した、エンターテインメント性に優れたコンテンツの制作を得意とする。一方、技術力の高さにくわえ、リサーチ部門のスタッフが豊富なのも特徴で、企画段階はもちろん、サイト構築後にも競合他社サービスの情報を提供している。企画を得意とする親会社のカヤックと連携した提案も数多くこなしており、これらの実績や自社の情報を広く公開して、ユーザーに対してオープンであることをポリシーとしている。
クーピーの実績
1.Lloyd's Antiques
http://www.lloyds.co.jp/
4.ニュウニュウ400mハードル(牛乳に相談だ。)
http://www1.gyunyu.com/
個性豊かな企画を高い技術力で提供する

個性豊かな企画を高い技術力で提供する

クーピーは、カヤックの関連会社として2001年10月に設立された会社だ。親会社カヤックが自社サービスと売上シェアによる提携サービスを収益の柱としているのに対して、クーピーは受託開発をメインビジネスとしている。特筆すべきは、ウェブ制作会社としては異例のプログラマー・Flash開発者の比率の高さ。同社代表取締役の貝畑氏も「Flash、特にActionScriptの技術力や開発力には自信があります」と胸を張る。

現在、ウェブサイトでは表現力向上を狙ってFlashが使われるケースは少なくないが、トップページでFlashムービーがただ流れているだけというサイトも依然として多く、Flashがウェブサイトの価値向上に寄与しているケースはまだまだ少数だ。そんな現状にあって、「クーピーは、デザインだけではなく、システムと絡めた実用的でインタラクティブなFlashコンテンツを指向しています」とマネージャーの阿部氏は語る。

面白いだけでは終わらない実用性を追求したFlashコンテンツ

カヤックがプロデュースし、クーピーが制作するECサイト「BEYES」では、貪欲にFlashの表現性が追求されている。

「特徴的なのが毎月紹介しているリコメンド商品で、その商品にあったインターネットならではの見せ方をしています」と阿部氏が語るBEYESは、東京インタラクティブ・アド・アワード(主催:インターネット広告推進協議会)で入賞を果たした。クリエイティブに富んだコンテンツがふんだんに投入されており、月に2〜3本更新されるリコメンドページではトップクリエイターの手によるFlashコンテンツが注目を集めている(図1)。

図1 Flashならではの表現を使って商品を見せるBEYESのリコメンド。また、BEYESではズーミファイという独自の画像技術により、商品を鮮明に拡大して見られる。

「BEYESでは“バイヤーが推すアイテムをクリエイティブの力によって売る”というコンセプトなので、紙芝居的なFlashムービーではなく、インタラクティブ性や表現性に富んだFlashコンテンツが並びます。表現手段としてのFlashを追及すると同時に、インターフェイスやナビゲーションにもインタラクティブ性を追求しています」(貝畑氏)

なお、前出のアド・アワードのコーポレート部門でECサイトとして入賞したのは、BEYESだけである。インタラクティブ性とデザイン性の高次元での両立が評価されたと言えるだろう。

BEYESはあくまでもECサイトであるという実用面へのこだわりは、トップページにも表れている。商品検索フォームにはFlashを使いつつ、検索結果はAjaxで表示している。そしてトップページの上部に位置するリコメンド部分はFlash、その下の商品紹介部分はHTMLで組まれているが、ECサイトとしてSEOによる集客効果を狙ったものだ。

設立から力を入れるシステムを絡めた制作に自信あり

クーピーの技術力・開発力は、アフィリエイトシステムやアクセス解析ツールの自社開発となって結実している。

クーピーが提供するアクセス解析は、JavaScriptを個々のウェブページに埋め込むビーコン型だが、自社ツールということでサイト制作の段階からタグの埋め込みができる強みがある。アクセス解析はサイトの成功を左右するので、サイトオープン時から解析体制が整うアドバンテージは大きい。また、クーピーではSEO専従スタッフによる相談も受け付けていて、検索結果順位が下がったときや、リスティング広告を出稿するときなどにアドバイスを受けることができる。

クーピーは自社開発のアクセス解析を利用した効果測定ツールも提供する。「管理画面から相互リンク用のURLを個別に発行します。このURLをメールマガジンに貼れば、クリック率やコンバージョンレートを割り出すことができますし、相互リンクのURLとして使えば、提携サイトからの成果をカウントして簡易なアフィリエイトとして機能します。このシステムはクーピーが手がけたサイトに安価で貸し出しています」(阿部氏)

簡易とは言うものの、某大手広告代理店が提供しているウェブ広告効果測定システムを構築した実績もあり、充分に使えるツールであることは間違いない。

また、ブログツールとしてデファクトスタンダードであるMovable TypeをCMSとして活用することにも長けている。インテリアを扱う「ロイズ・アンティークス」は、CMSとしてMovable Typeを用いつつ、買い物カゴ機能を加えたECサイトである。Movable Typeがまだなかった時代にも同様のECサイトを構築したが、イニシャルコストで300万円は違っていたという。「Movable TypeをCMSとして使うことで、コストと日数を圧縮できます」(阿部氏)。

これら実績は自社サイトで詳細に公開されている。「実績やサービスは自社サイトですべて公開していますので、クーピーでは専従の営業マンを置いていません。お客さんの内訳は、半数がウェブサイト経由で、残り半数がほかのお客さんからの紹介です」(貝畑氏)

ウェブサイトで何をしたいのか明確な目的を持つことが成功への道

ウェブサイトで何をしたいのか明確な目的を持つことが成功への道

デザインとシステムの両面から強力にウェブ構築をサポートするクーピーだが、やはり円滑に業務を進めるためには、クライアントの協力は不可欠である。集客に力を入れたいのか? 売上を伸ばしたいのか? このキャンペーンの面白い見せ方はないだろうか? といった目的の明確化がクライアント側には必要になる。

「依頼を受けるときに、漠然とサイトを作りたいというケースが50%ぐらいありますね。ただ、そこで何を目的としているのかを聞くことによって、はじめて明らかになってくることがあるので、こちらのヒアリングの技術っていうのはすごく必要だと感じています。たとえば、お客さんからこんなキャンペーンなんだけど面白い見せ方ないですか? という話があって、そこから入っていく場合がありますね」と語る阿部氏。「その中で、まずウェブサイトで何をしたいのか、目的を常に持っていただくと話が早いですね。お客さんを増やしたいとか、売り上げを増やしたいとか。リニューアルであれば使い勝手をよくしたいとか、このページを特に見せたいとかっていうところを出していただけると話が進みやすいですね」

目的が明確になったら、それを達成するために必要な情報をクライアント側からすべて出してもらう。その情報量からサイトのボリューム感を概算し、見積もりが出る。それを踏まえた上で予算を勘案し、クーピーが最初から最後までやるのか、設計フェーズだけなのかという作業領域を詰めていくという。

「お客さんに丸投げ意識があるとプロジェクトはうまく回りません。サイトは完成してそれで終わりというわけではなく、完成後も手をかけ続けなくてはいけません。サイトを一緒に作っていくんだ、というパートナーシップは業務を円滑にする以上に、よりよいサイトを作るためには必須ですし、私たちもパートナーシップを築くために最大限のお手伝いをします」(阿部氏)

また当然のことだが、スケジュールにもゆとりを持たせた方がクオリティの高いサイトができる。前出のBEYESも企画には相当時間をかけているということで、その丁寧さが成功要因のひとつとなっていることは想像に難くない。

システムを理解することもサイトの可能性を大きく伸ばす秘訣だ。クーピーが得意とするActionScriptはサーバーとの連携が要求される。加えて、アクセス解析や効果測定ツールもやはりサイトの裏側で動くものである。このようにサイト運営には不可欠なのが、サイトのバックグラウンドの仕組みなのだが、目に見えるものでもないため、理解と予算の了承を得られないケースもあるようだ。サイトはデザインを競うものではない。視認できるデザイン要素だけではなく、システムにも注意を払いたい。

Flashのエンターテインメント性ブログパーツと動画に注目

「たとえば、ECショップにしても単に情報のアレンジではなくて、Flashを使えばもっと面白い表現でエンターテインメント性のあるショップを作れるのではないかと思っています。そういった意味もあって、BYESEのリコメンドではFlashをどんどん使っています。デザインとインターフェイスの部分ではやっぱりFlashに一番注目していますね。あと動画とブログパーツに注目しています」(貝畑氏)

貝畑氏の言葉を裏付けるように、どちらもクーピーの開発力を存分に活かしたサービスを提供している。

2004年に設立されたFlash Action Script部隊(図2)によるブログパーツのラクガキボードは、約3万人のユーザーが利用している。ということは、そこにCMを流せば、最低でも3万PVを記録するということだ。「ポストイットのプロモーションでは、ポストイット風にしたスキンを配布しました(図3)。ブログパーツは単純にアニメーションを流すだけではなく、そのブログにどのような記事がアップされたか、どれくらい見られたのかをサーバーと連携して測定することができます。まさにマーケティングツールとしてのブログパーツが使えるのです」(阿部氏)

図2 設立当初からFlashに注目していたわけではないという同社だが、2004年に活動を始めたFLASH ACTION SCRIPT制作部では、多数のFlashを開発している。
http://www.flashware.jp/
図3 訪問したユーザーが落書きを残せるラクガキボード。ポストイットのプロモーションでは、サイトにあわせたスキンを実装している。
http://post-it-style.cocolog-nifty.com/

サイト構築後、そのようなマーケティングツールを使っての支援ができることもクーピーの強みと言える。今までは、ブログに取り上げられるためにキャンペーンページを立ち上げていたが、ブログパーツをブログに貼ってもらうことで、それぞれのブログをキャンペーンの窓口にすることができる。まさにバイラルマーケティングの醍醐味である。「パッケージ化しにくい媒体ではあるのですが、だからこそ可能性を感じています」と貝畑氏は期待を込める。

動画系サービスでは、携帯電話の動画がパーソナルな情報発信ツールとしての可能性を秘めているとして、動画関連のAPIを公開したり、広告モデルを模索したりしている(図5)。海外の事例では、YouTubeが圧倒的な支持を集めているが、日本ではまだ動画サービスの成功事例は少ない。「個人制作のショートムービーなどは、メディアになり得るのか興味があります」(貝畑氏)

図4 実際にクライアントに提案するとき使っているという企画書と分析資料の一部。企画を作るときには、技術部門も含め全社員に意見を募集するという。
図5 クーピーとカヤックが共同開発したモビゾーでは、携帯動画をFlashで再生可能な形式に変換できる。マーケティングツールとしても注目されている。
http://www.movizo.com/
全社員で企画をサポートしアフターケアも万全&クーピーの制作予算イメージ

全社員で企画をサポートしアフターケアも万全

クーピーの関連会社であるカヤックは、自ら“面白法人”を名乗り、独創的な企画力をもって業界で一目置かれている存在である。

「カヤックとクーピーの全スタッフは、職域の垣根を越えて、リサーチ業務を義務付けられています。子会社クーピーにも、人材・ナレッジがボーダレスに行き交っていますので、カヤックの企画力が注入されています。クーピーに仕事を発注するということは、カヤックとクーピー全スタッフの英知がもれなく付いてくることを意味します」(貝畑氏) 「リサーチ業務はサイト構築の前段階から競合分析を含め入念に行っています。サイト納品後でも、新たな競合サイトや新技術などが出てくると、クライアントに報告します」(安倍氏)

企業のウェブ担当者は近しい同業他社のウェブ戦略動向には目を配っていても、業種が異なる企業や新規参入企業などのウェブ周りのニュースについては案外知らなかったりする。担当者が少数だと、広範囲に渡って注意を払うことが難しいという現実的な問題もある。そういったときに、クーピーのリサーチ能力は心強い情報源として機能する。クライアントとのパートナーシップを築き、よりよいサイトを作るために最大限の協力をする、その姿勢こそが、まさしくクーピーの社名の由来である「CUPPY = Client User Production hapPY(クライアント・ユーザー・自社の3者をHappyにする)」であり、それを具現化するために全社を挙げてバックアップする体制はクライアントに頼もしく映るに違いない。

表1 クーピーの制作予算イメージ
項目料金備考
企画/
ディレクション
10万円〜500万円全体コストの10%程度。企画の大半は無料でサービスしている。約半年のプロジェクトで500万円の実績あり。
トップページ
デザイン
10万円〜50万円SEO料金込み。
第二階層ページ
デザイン
5万円〜20万円
素材制作
(写真、アイコンなど)
3,000円〜1万円/1点ページ制作に含まれる場合もあり。
HTMLコーディング15,000円〜/1ページ
更新作業3,000円〜/1ページ
Ajax5万円〜300万円別途サーバー料金が必要。
CGI5万円〜10万円、300万円大規模のものだと300万円程度。
CMS導入製品による製品価格+導入・設定費用約10万円。
Flash5万円〜、50万円〜紙芝居的なものは約5万円から。アプリケーション的なものは約50万円から。携帯向けのFlash Liteの制作も行う。
Flashゲーム、
ブログパーツ
100万円〜200万円
SNS4,000万円

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.1』掲載の記事です。

この記事の筆者

吉村正春(ドラゴンフィールド株式会社)
本記事は『WEB FLASH』を発行する、ドラゴンフィールド株式会社の協力により制作しています。

http://dragon.jp/