キーワード分析で見えてくるあなたのサイトに足りないコンテンツ

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Webサイトの“見える化”&“カイゼン”講座

キーワード分析で見えてくるあなたのサイトに足りないコンテンツ

アクセス解析からサイトを伸ばす方法を具体例で考えていこうというこの連載。

第1回はキーワードの分析から。キーワードのリストから次にどんなコンテンツを増やせばいいかが見えてくる。

「検索フレーズ」と「キーワード」の違いから見えてくるもの

ウェブサイトへの訪問者の多くは、検索を通して訪れる。一般的なサイトで3割、多いサイトでは7割程度の訪問者が検索訪問者だといっていい。アクセス解析では、検索効果を測る項目として「検索フレーズ」と「キーワード」の2つがあり、この差を見極めることが対策につながる。

検索フレーズとは、「住宅」「マンション 横浜」「マンション」などのように単独語も複数語で検索した語も含め、実際に検索された形のままカウントしたものだ。「住宅」300回、「マンション 横浜」250回、「マンション」200回という具合になる。「住宅」単独で検索するとこのサイトは強いことがわかる。しかし、複数語検索のために「マンション」というニーズが埋もれてしまって、気付かないおそれがある。

そこで、複数語検索されたフレーズの組み合わせをバラして、単語ごとに集計したのがキーワードである。上の例なら「マンション」450回、「住宅」300回、「横浜」250回と再集計できる(図1)。実際の検索回数よりも膨らんでしまうが、このリストで初めて「マンション」という言葉のニーズが高いことに気付くことができる。

図1 検索フレーズをバラバラにして、キーワードとしてカウントしてみると、マンションの検索回数が多く、ニーズが高いことがわかる。

検索フレーズで見る回数とキーワードのリストで見る回数の差が大きい言葉は、ほかの言葉との組み合わせで多く訪れている重要な言葉だといえる。

たとえば、「山田産業」という家具を扱う会社があるとしよう。会社名がフレーズで100回、キーワードで500回となっていたら、その差の400回は何か別の言葉と組み合わせて検索されていることになる。改めてフレーズのリストを見ると、「山田産業 家具」50回、「山田産業 ソファ」10回といったフレーズが見つかる。社名と組み合わせて検索されている言葉はブランディングの現状を理解するいい指標となる。山田産業がベッドに強い会社としてアピールしたいなら、この結果は問題だ。ベッドの山田産業、というキャンペーンを展開する必要があるかもしれない。

キーワードリストは下位に注目
次のコンテンツの宝庫

アクセス解析結果のキーワードリストの上位項目しか見ない人が多いが、これは損をしているといえる。

上位には「山田産業」1000回、「家具」300回などの項目が並んでいるだろう。「うちのサイトにこういうキーワードが多数訪れるのは当り前」という結果で、ここから対策に気付くのは難しい。

もし「山田産業」が1000回あるのに2番目が「家具」25回と、回数がガクンと減っているなら対策が必要なサインだ。この落差が大きいサイトは、会社名で検索しないと出てこないと考えていい。もっとほかのキーワードを増やして、「ベッドを探していたら山田産業のサイトが見つかった」という流れを作らないと新規顧客の獲得はうまくいかない。

キーワードのリストは下位の項目を注意深く見ること。100位以下に「ソファ」20回、「ベッド」10回などがあったとすれば、今のコンテンツでは商品ニーズの高い訪問者を集められないことに気付くだろう。ここで初めて今のサイトの実態をとらえ、評価することができるのだ。

もっと下に「安眠」2回、「家具店 広島」1回などが見つかるかもしれない。今のコンテンツではこれらの検索からはさほど人を集めていないのだが、それにもかかわらず1回でも2回でも訪れているなら、世の検索ニーズは高い言葉なのだ。「ベッドの山田産業」をアピールするには、「安眠」コンテンツを追加するといいだろう。「広島」を始め、住居地に近い店を探す人が世の中には多いのかもしれない。下位のキーワードは、次に作るべきコンテンツアイデアの宝庫なのだ。

キーワードリストから次の一手を割り出す

実際にキーワードリストを見て、今後のサイトの方向性を検討しよう。

山田産業は家具の製造販売会社だが、中でも最近はベッドに力を入れている。しかし、解析結果では「ベッド」10回、「安眠」2回と、今のサイトが会社の課題を反映できていないことがわかる。

「ベッドのページはたくさん作っているのにおかしいな」と思うなら、「ベッド」という言葉が画像になっていないか確認しよう。最も急がれる対策は、今のサイトにもっと「ベッド」というキーワードをテキストで加えてみることだ。

実際にYahoo!で「ベッド」を検索し、上位になっているサイトを研究する。それらのサイトでは、どのように「ベッド」という言葉が登場しているだろうか。また、キーワード広告でおなじみのオーバーチュアの「キーワードアドバイスツール」(図2)を調べてみれば、表1のように、ベッドについてニーズの高い内容がわかる。これらの言葉を軸としたコンテンツを追加し、キーワード広告を出すことで、素早く「ベッドの山田産業」をPRできるだろう。

図2 オーバーチュア「キーワードアドバイスツール」は優れた「市場調査」サイトだ。
http://inventory.overture.com/d/searchinventory/suggestion/?mkt=jp

 

表1 2006年5月1か月間の検索回数。
キーワード検索回数
ベッド57022
ソファー ベッド28259
クワバタオハラ 写真 ベッド22556
ベビー ベッド13330
ロフト ベッド12752
二段 ベッド8615
パラマウント ベッド8338
折りたたみ ベッド7423

「安眠」もいいヒントだ。山田産業ベッド事業部の本当のライバルは、同業他社ではなく、「安眠」検索者を多数集める枕メーカーやお香会社、「寝る前のエクササイズが効果的」というサイトかもしれない。安眠をテーマにしたコンテンツで訪問者を増やし、ベッドが安眠に重要だと理解させる。どんなベッドがいいかに関心を持たせ、商品へ導く。この順序で動線を描けば効果が得られるだろう。

望ましいページが入口になっているかを把握する

望ましいページが入口になっているかを把握する

キーワード対策でもう1つ大切なのは、検索で入口になっているのはどのページかを把握することである。大半の企業は気付いていないが、重要なキーワードにおいて望ましくないページが入口となっていることは多い。古いニュースリリース、いち押しではない商品のPDF、会社案内の沿革のページなどがサーチエンジンで紹介されていることが多いのだ。それではコンテンツを増やしてSEO対策を行っても、成果は期待できない。別のページが紹介されるように調整してからSEOをしないと、せっかくやってきた訪問者なのにみんな帰らせてしまうことになるだろう。

サイトの効果に貢献している動線を強化する

資料請求が主な目的で、クーポンが貢献している場合には、

  • 多くのページ → クーポン
  • クーポンページ → 資料請求
という動線の強化を図れば、すばやくサイトの効果を上げることができる。いまやグローバルナビゲーションに「クーポン」というボタンがあるだけでは誘導が弱い。主要なページの記事の下に、「10%お得なオンラインクーポンはこちら!」とメリットを伝えれば、多くの人がクーポンに移動する。

データを見ながら有効な動線を強化するのだから、やみくもにリニューアルをするよりよほど効果が期待できるのだ。

効果につながるニーズを拡大する

Q&Aが資料請求に貢献している場合には、「どんなことを知りたい人が多いのか」というニーズがわかるので貴重だ。「商品Aの価格は?」といった項目の答を見た後で資料請求する人が多いなら、価格がリーズナブルだから資料請求したいのだろう。この場合、商品Aのページでもっと割安感を強調するといいだろう。

そんな都合のいい結果が見つかるはずがないと思うだろうか? 確かに、Q&Aからの動線が資料請求の参照元のトップになることはほとんどない。しかし、資料請求の参照元のリストを見れば、「Q&Aで一番多いのはこれだ」ということは確実に見つかるのだ。回数は少ないかもしれないが、それは「このニーズを無視していい」ということを意味しない。「もっと増やすことができるはず」と気付いたサイトが成功するのだ。

ではどうやって増やすか。今はQ&A 1項目のページがあるだけだとしたら、もったいない。この場合には動線を強化するよりも、そのニーズを持った訪問者自体を増やす方がいい。そのQ&A内容が、次に特集すべきコンテンツだ。そこに含まれる言葉こそ、SEOの対象とすべきキーワードだといえる。

サイトを充実させて同業他社サイトに差をつける

長所を見つける方法は、重要ページを対象とした解析だけではない。むしろ、長所を発見できるようにサイトを作ることが重要なのだ。

たとえば、「用語集」は長所探し、長所作りに最適なコンテンツだ。1ページ200文字程度の用語解説だけで作れるし、画像も必要ないので安上がりにどんどん作れる。アクセス解析をして、多数の検索訪問者を得られたページを発見しよう。その用語は、「検索ニーズが高いのに、ライバルサイトが少ない」分野を示している。その言葉を主役にしたコンテンツを充実させれば、同業他社サイトを寄せ付けない集客サイトを作ることができる。

用語集がいいのは、今自社商品が弱い分野まで含めて、業界の重要キーワードを幅広く、バランスよく含むコンテンツがすぐ作れるからだ。これを解析することで、何が求められているか調査することができる。

ウェブマーケティングでは、広告宣伝や販売促進には力が入るが、市場調査としてウェブを活用することがまだ少ない。マーケティングであるからには、調査して、効果的に宣伝するというサイクルを作り出すことが求められる。ウェブにおける調査はアンケートだけではない。むしろ、あるテーマでページを作ってそれを探す人がどれぐらいいるかを測定する方が有効だ。アンケートのように、プレゼントに当選したい心理が結果に影響を与える心配もない。大切なことは、ライバルに差をつけやすいコンテンツを発見できることだ。

なぜ売れないのか
商品ページとショッピングカートの関係

ショッピングサイトでは、売るための戦術を考えなければならない。これまでは「コンバージョンレート」という考え方があった。これは図3の計算式で求められる。

図3 コンバージョンレートを求める計算式。

しかし、0.3パーセントという数字が出ても、それが多いのか少ないのか判断できないし、何をすれば増えるのかまったくわからない。この公式には「どうしたら増えるか」という要素が含まれていないからだ。

アクセス解析ではこれをさらに細分化して、表2のように見ていく。

表2 商品ごとの訪問者数、カートに入れた回数、売れた回数。
 訪問者数カートに入れた回数売れた回数
商品A500人100回5回
商品B200人50回5回
商品C150人20回5回

商品Aはもっとも多く閲覧されているが、カートに入れる割合は訪問者の20パーセント。売れたのはカートに入れたうちの5パーセントとなっている。対訪問の購買率は1パーセントだ。商品Bは2.5パーセント、商品Cは3.3パーセントとなる。どれも同じ販売個数だが、率は商品Cが圧倒的にいい。もっと商品Cに合致するニーズを持った人をサイトへ導けば早く効果が出る。主力商品がAだとすれば、Aのページを改善する優先順位は高い。

現実には、ショッピングカートのシステムが悪く、カートに入れた回数を測定できないサイトが多く、悩みどころとなっている。システム開発を行うときには、後の戦術決定に役立つデータを取れるようにすることが肝要だ。

コンバージョンレートは総訪問者数と販売数という「始めと終わり」だけで算出するのが常識となっているが、アクセス解析ではその中間のデータを見ることで問題の所在がわかることが多い。

メッセージには、聞いてもらえるタイミングがある

ところで、今の例では、商品それぞれのコンバージョンレートは一番低い商品Aでも1パーセントとなっていた。サイト全体の0.3パーセントよりもはるかに高い割合だ。ではどこが悪いのか? そう、1万人の総訪問者数の割には、商品のページを見る人自体が少ないのである。ではこの9000人以上の人は何を見ているのだろうか。

改めて「よく閲覧されているページ」を見ると、次のような結果であった。

トップページ 5,000人
プレゼント 4,000人
プレゼント応募完了 3,500人
基礎知識 3,000人
商品一覧 2,000人

プレゼントで集客しているのだが、あくまでプレゼントに応募するだけで帰ってしまう人が多いようだ。また、商品一覧よりも「基礎知識」コンテンツに行ってしまった人が多いのも本末転倒となっている。

この場合には、応募が完了した「サンキューページ」で、「ご応募いただいた方にはこちらの商品を5%優待」といったメッセージを出した方がいいと思われる。

基礎知識も、見たいと思って来てくれているのに、無理に商品を見よといってクリックさせるのは難しい。むしろそれぞれの基礎知識内容のページから、「こうした考え方を実現するため、こんな機能を持った商品があります」と訪問者のニーズに沿った情報として商品を見てもらうことが大切だといえる

キーワードニーズを受け止められる
説明ページを追加する

まず、説明したい商品の特徴ごとにキーワード候補を拾い上げてリストにする。1つの特徴に3キーワードずつくらい出しておいて、前述の「キーワードアドバイスツール」を使って、その特徴に合致するニーズを持った人がどんな言葉で検索しているかを調べる。そして、求められている情報が含まれるようにページを設計し、商品説明ページを追加しよう。これまで箇条書きにしてきた内容を独立したページに載せるだけで、「その機能があれば助かる人」が訪問するようになる可能性が生まれる。欲しい人が集まるようになれば売れるのはごく自然なことといえる。

ここで盲点になりがちなのが、地名キーワードだ。たとえば全国に店舗やショールームを展開する会社の場合、「結婚式場 広島」「専門学校 金沢」といった地域限定で求める人を集めなければならない。ところが本部発信のウェブサイトでは、「店舗一覧」「教室一覧」といったリストの中に住所と名前だけがずらずら並べられているだけ、という形になる。そこでは地名キーワードをつけて検索されたときにまったく勝負できないサイトになっているのだ。ローカル企業のサイトにそれぞれの地名で負けては、このサイトの目標は達成できない。「サイトに来てほしい人は誰か?」を考えるとき、「広島で結婚式場を探している人」「仙台で」「札幌で」と各地の人を意識できているかどうかが重要なのだ。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.1』掲載の記事です。

この記事の筆者

石井 研二(MILS)

株式会社ミルズ 主任研究員

雑誌編集、通販カタログ企画を経て、95年からウェブプロデューサ。Web黎明期からアクセス解析を使い、多くの企業サイトを成功に導く。「直帰率」という言葉の生みの親として知られる。

Webそのもののコンサルティングから、Webを絡めた売上向上やコスト削減など経営全般に関わるコンサルティングが増えてきたため、企業分析と企業Web分析を組み合わせて「すべてを見る」ことをコンセプトとした分析会社「ミルズ」を設立。株式会社ミルズ主任研究員。

著書に『ウェブ立地論 ~“来てほしい人にアプローチする"集客につながる顧客目線のウェブの作り方』『ガッチリ成果を出すWeb担当者の教科書 ~便利テンプレートデータで実務を効率化!』(技術評論社)、『改訂新版アクセス解析の教科書』(翔泳社)等がある。

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