Googleアナリティクスの導入から、運用、活用まで、正式なサポートがない初めての人でもゼロから学んでいけるように、丁寧に解説していく。

サイト訪問者はどこから来ている? 地域の精度はどれぐらい? 「地域」レポートを正しく活用しよう [第40回]

ユーザーがどこからアクセスしているのか示す「地域」レポート、その精度がどれぐらいなのかは理解しておこう
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Webをスマートフォンで見るのが当たり前の時代になってきた。もはやユーザーがWebサイトにアクセスするのは、家や職場ばかりとは限らず、外出先や移動中にアクセスしていることも多いと思われる。

そういった状況にあって、リアルな店舗や、地域ごとに異なる商品やサービスを提供しているWebサイトでは、ユーザーが今いる場所に応じて最適な広告を出すといったマーケティング方法も可能となっている。その場合、地域性を把握するためのデータが重要な情報になるわけだが、もちろんGoogleアナリティクスでも地域データを取得している。これを分析し、活用しない手はないだろう。

「地域」レポートを開いてみよう

Webサイトでのマーケティングに、地域性が重要になる場合も多々あるだろう。

  • 全世界で販売展開しているブランド
  • 全国展開している事業
  • (逆に)特定のエリアでしか事業を行っていない場合
  • など
図1:[ユーザー]>[ユーザーの分布]>[地域]メニュー

そういった場合にGoogleアナリティクスはどのように活用できるだろうか。そんな問題意識でまず[ユーザー]>[ユーザーの分布]>[地域]レポート(図1)を見ていこう。

操作手順
  1. グローバルナビゲーションの[レポート]をクリックする
  2. 画面の左側にあるメニューで、[ユーザー]をクリックする
  3. メニューが開くので、[ユーザーの分布]をクリックし、[地域]をクリックする

「地域」レポート上部には地図

「地域」レポート上部には「地図表示」タブ(図2赤枠部分)がデフォルトで選択・表示されていて、世界地図による視覚的にわかりやすい表現になっている。

図2:[ユーザー]>[ユーザーの分布]>[地域]レポート上部

緑色が濃いほど訪問数が多い(図2青枠部分)ということを示しているが、濃淡だけだとおおよその感じしかわからない。

「地域」レポート下部は一覧表示

「地域」レポート下部は一覧表示のレポートで、「プライマリディメンション」は「国/地域」がデフォルトで選択されている(図3赤枠部分)。

「国/地域」は具体的には「Japan」「United States」「China」など(図3青枠部分)、いわゆる国レベルで見ることができる分類だ。

図3:[ユーザー]>[ユーザーの分布]>[地域]レポート下部

例として挙げているこのサイトでは、ほとんどが日本(Japan)からの利用のため、「国/地域」データを国別に分析して具体的に役立てることは難しいが、ここで見ることのできる指標には、

  • 訪問数
  • 訪問別ページビュー
  • 訪問時の平均滞在時間
  • 新規訪問の割合
  • 直帰率

の5つ(図3緑枠部分)があり、全世界で販売展開している企業やブランドのWebサイトであれば、訪問のボリュームと訪問者の質を国別に見比べることができるし、また「目標セット」や「eコマース」の指標グループを選択(図2緑枠部分)すれば、国別に目標達成や売上などの成果に結びついたかどうかの視点で評価できる指標を見ることができる。このあたりの見方に関しては、前回の第39回で触れたが、同様に考えて活用してほしい。

  • 「地域」レポートのディメンションは5種類
  • Googleアナリティクスの地域情報はどれぐらい正確なのか?

「地域」レポートのディメンションは5種類

「地域」レポートの分析軸(ディメンション)の細かさの単位は、

  • 国/地域
  • 地域(都道府県レベル)
  • 市区町村
  • 大陸
  • 亜大陸

の5つが用意されているが、このうち「地域(都道府県レベル)」を除く4つのディメンションが、「プライマリディメンション」として表示されている(図4赤枠部分)。

「大陸」ディメンション

「プライマリディメンション」のうち、最も大きなくくりが「大陸」というディメンションだ(図4青枠部分)。「Asia」「Americas」「Europe」「Africa」「Oceania」の5分類(図4緑枠部分)になっている。

図4:「大陸」ディメンションを選択した画面

「亜大陸」ディメンション

次に細かいくくりが「亜大陸」だ。この「亜」は「アジア」の略ではなく、「次、次位」という意味なので注意しよう。たとえば「Americas」大陸の「亜大陸」は、北米(Northern America)、中米(Central America)、南米(Southern America)の3つとなっている。

「市区町村」ディメンション

もっとも細かい「プライマリディメンション」が「市区町村」(図5赤枠部分)だ。訪問数の上位を見ると、「Shibuya」(渋谷区)、「Minato」(港区)など東京都は23区レベルで表示されている。あとは「Osaka」(大阪市)、「Nagoya」(名古屋市)、「Fukuoka」(福岡市)など市のレベルで見ることができる。なお、政令指定都市の中の「区」までは表示されないようだ。

図5:「市区町村」ディメンションを選択した画面

ちなみに、「市区町村」ディメンションの項目(図5青枠部分)はリンクになっているが、クリックしても、図6のように該当の項目に絞り込まれるだけで、別のディメンションにドリルダウンできるわけではない。

図6:市区町村(ドリルダウン後)

リンクが張ってあると、新しい情報へ飛べると思っていても、こういう肩透かしを食らうケースが多々ある。

「地域」レポートの階層構造

「国/地域」ディメンション(図3青枠部分)の項目の1つ「Japan」をクリックすると、図7のように「地域」ディメンションにドリルダウンされる(ここでの「地域」はディメンション名。「地域」レポートと紛らわしいので注意)。

図7:「国/地域」をドリルダウンして表示された「地域」ディメンションの画面

「地域」ディメンションの項目(図7青枠部分)を見ると、「Tokyo」「Osaka」「Kanagawa」などとなっている。つまり、「地域」ディメンションというのは、いわば都道府県レベルで見るディメンションということになる。

まとめると、この「地域」レポートは次のような階層構造になっている。

大陸 > 亜大陸 > 国 > 地域(日本の場合は都道府県レベル) > 市区町村

とはいっても、最初に選択した「プライマリディメンション」によっては、ドリルダウンの仕方が微妙に異なるので、単純に上記の順でドリルダウンができるというわけではない。いろんな分岐がある。ディメンション間のドリルダウンの関係は以下のとおりだ。

図8:ディメンション間のドリルダウンの関係

つまり、「地域」レポートには、「大陸」「亜大陸」「国/地域」「地域」「市区町村」という5つのディメンションがあるが、このように様々な場所から同じレポートにたどり着けるような構造になっている

「エクスプローラ」タブでは何が表示されるのか?

なお、左上の「地図表示」タブから「エクスプローラ」タブ(図9赤枠部分)に選択を切り替えると、上部の地図表示が日別の折れ線グラフ表示に変わる。ただし、表示される指標グループ(図8青枠部分)は同じなので、下部に表示される一覧表示部分のデータは、図3図7までと同じものになる。

図9:「エクスプローラ」タブを表示した画面
  • Googleアナリティクスの地域情報はどれぐらい正確なのか?

Googleアナリティクスの地域情報はどれぐらい正確なのか?

ご覧いただいたように、Googleアナリティクスでは、最も狭い範囲では市区町村レベルで利用地域を割り出している。では、なぜ「渋谷区」や「大阪市」から利用しているということがわかるのだろう? それはGoogle アナリティクスが何をもとに地域情報を割り出しているのかというロジックに依存する。

Google アナリティクスでは、計測対象サイトにアクセスしたユーザーのIPアドレスから「地域」レポートが作成されていると考えられる。つまり、サイト利用者のIPアドレス情報を取得し、その情報を「IPアドレスと地域の対応データベース」に照合して、最終的に「地域」のレポートを作成しているはずだ。

となれば、「IPアドレスと地域の対応データベース」なるものの正確性がどのくらいなのかということが重要な判断基準となる。こうしたデータベースは世の中にいくつもあり、Google アナリティクスがどのデータベースを使っているのかはわからないが、そもそもIPアドレスでどの程度地域を正確に絞り込めるのかという問題をまず押さえておく必要がある。

IPアドレスは各種管理団体がそれぞれのレベルで存在していて、IPアドレスの分配を担当している。まずは国際管理団体「ICANN」が、国/地域ごとにIPアドレスを分配している。そうして分配されたIPアドレスを、さらに国ごとの管理団体が下位のISP(インターネットサービスプロバイダー)に分配するという仕組みになっている。たとえば日本においては、「日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)」がIPアドレス管理指定事業者(ISP)へ切り分け、各ISPは各組織へと割り当てていくといった構造になっている。

このような構造にあるので、国ごとのIPアドレスがどの地域に割り当てられているかというデータベースがあれば、それに照合すればよいということになる。問題はどこまで細かく情報がわかるかという点だろう。

たとえば、日本全国でサービス展開しているISPに対して、ある範囲のIPアドレスが割り当てられたとしても、そのISPでのIPアドレスの利用がどの程度細かく地域別に割り振られているのかによって、都道府県レベルまで正確にわかるのか、市区町村レベルまで正確にわかるのか精度は異なってくる。

日本のIPアドレスのエリア情報データベースとしてはサイバーエリアリサーチが管理するSURFPOINTがあり、市区町村まで判定可能だということだ。

参考:IP Geolocationデータベース SURFPOINTについて

これらの情報を使うことでかなり高い精度でアクセス者の所在地域を判定できるが、とはいえ、利用地域を100%正確に特定することは、IPアドレスの仕組みから考えて不可能だと考えておくのがいいだろう。

たとえば小規模な企業が利用している小さなIPアドレスブロックがどこで使われているかをリアルタイムに100%データベースに反映することは不可能だし、どれだけデータベースが正確でも、企業内からのプロキシを通したアクセスやVPNを通じたアクセスなどでは実際にアクセスしている人の所在地とは異なる場所だと判定されることになる。

ましてGoogle アナリティクスが日本のこういった精緻なデータベースを日本のデータだけに適用しているとは考えにくいので、しょせんその程度の精度であるということを、データ利用の前提として押さえておくべきだろう。

改めて申し上げるが、Google アナリティクスの「地域」レポートに表示される地域の根拠となるデータはIPアドレスであり、GPSのようなピンポイントで居場所の近くを特定するような精度を求めてはいけないということだ。

とはいえ、このレポートが傾向を把握するのには役に立つことに代わりはない。地域特性が重要なWebサイトを運営しているのであれば、ぜひこの「地域」レポートを活用することを考えてほしい。訪問の規模、「訪問別ページビュー」「訪問時の平均滞在時間」「新規訪問の割合」「直帰率」などの訪問者の質を見ること、そして成果に結びついたかどうかは「目標セット」「eコマース」の指標グループのデータを見ればよい。

筆者の『ユニバーサルアナリティクス版Googleアナリティクス完全マニュアル(PDF)』が発行されました。

筆者が講義を行うGoogle アナリティクス徹底講座も、定期的に開催しています。 → Google アナリティクス ゼミナール

この記事の筆者

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社へ。調査部、インターネット視聴率センター長などを経て、2000年ネットレイティングスへ。視聴率サービスやアクセス解析サービスの立ち上げに尽力。2006年株式会社クロス・フュージョンを設立し代表取締役に。2023年活動停止。

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