顧客サポートサイトの解析レポート作り方マニュアル [アクセス解析tips]
前回に続いて、アクセス解析から出てくる数字を、定期的にどのようなレポートにして見ていったらよいかをサイトタイプ別に解説していく。
これまで、
を取り上げたが、今回は顧客サポートサイトのケースだ。まずはどのような指標を見ていくべきかという指標の選択方法についてお話しした上で、これまで同様、
- マネジメント層向けレポート
- 現場向けレポート
の2つのパターンで考えてみたい。
顧客サポートサイトの目的から分解
「顧客サポートサイト」とは、自社の商品やサービスを利用してくれる顧客に対するサポートを行うサイトのことである。商品・サービスに関する情報や、関連するコンテンツ、問い合わせ先、FAQなどを掲載し、顧客の問題解決をサポートするのが目的だ。
しかし、「顧客サポートができているかどうか?」を検証するという目的で、アクセス解析のレポートに必要な指標をピックアップして毎月のレポートフォーマットを作るのは、いささか距離があり過ぎる。そこで、「顧客サポートができているかどうか?」を、情報ニーズと問題解決の2点に分解して考えてみよう。
平たく言うなら、
情報ニーズとは、「顧客の問題に対する答えとなる情報が、Webサイトに用意してあるか?」
問題解決度合いとは、「その情報によって、顧客は問題を解決できているか?」
ということである。
情報ニーズを分解してみる
では、そのうちの1つである情報ニーズについて考えよう。顧客サポートといっても提供している商品やサービスのカテゴリやその種類の多さなどによって異なるので、さまざまなケースがあり得る。
- 電話番号やサポートセンターの場所などといった簡単な事項の確認
- マニュアルに書いてないような詳細事項の確認
- ソフトウェアの無償バージョンアップ、有償サポート
など、レベルも問題の大きさもまちまちだ。
顧客の抱えている問題、知りたい情報は、そもそもどのあたりに集中しているのかを把握するには、見られているページのカテゴリなどを見るのがいいだろう。提供している商品やサービスによって特徴があるはずなので、商品・サービスのジャンル別に把握しておきたいポイントだ。
また、グーグルやヤフーのような検索エンジン経由で訪問してくる際の検索キーワードや、サイト内検索の機能を提供しているなら、サイト内検索キーワードを知ることで、ユーザーが何を求めているのかを具体的に明らかにできる。
これらは特定のキーワードの件数といった数字で何かを評価するということよりも、情報ニーズに対して、提供しているコンテンツの相対的なボリュームに乖離がないか確認することで、コンテンツの充実の役に立てるということが活用方法となる。
問題解決を分解してみる
次にもう1つの問題解決について考えたい。問題解決も複数の段階に分解できる。
- 探したい情報が見つけやすい情報構造になっているのか
- サイト内検索の検索結果ページの充実度・満足度はどのくらいなのか
- そこで諦めて帰ったりしていないのか
といった部分が重要なチェックポイントになるだろう。こちらは情報提供の構造がしっかりしている、あるいはサイト内検索の機能が充実しているといったWebサイト内部の構造に起因した問題に集約できそうだ。まとめとして下図にブレークダウンの一例を示した。
なお顧客サポートは、売上や利益を生み出さない部門、いわゆるコストセンターとなるため、多くの訪問者に来てもらうのが目的ではないし、サイトを回遊してもらったり、多くのWebページも見てもらったりすることで評価が上がることはない。また1訪問あたりのページビュー数が多い、あるいは滞在時間が長いというのは、顧客の問題解決に手間取っているということだと解釈できるので、一般的には良くないことだとされる。
また問題解決したかどうかは、アクセス解析だけでわかるものでもないので、顧客満足度を測るアンケートなどを併用することも必要だろう。さらに顧客が自己解決することで、コールセンターなどのコストが高いサポート費用が減ることも期待されているはずなので、トータルコストの削減という視点も大事だ。
さてここまでできたら、あとは誰に対するレポートなのかによって、細かさが変わってくるだけだ。ここはWebサイトのレポートに限ったことでなく、通常のビジネスにおける経営(業績)管理の方法と同じだ。
- マネジメント層向け月例レポート指標
- 現場向けのレポート項目
マネジメント層向け月例レポート指標
マネジメント層向けのレポートでは、顧客サポート全体での効率改善の視点と、中長期で全体がよくなっているのか悪くなりそうかということが把握できる指標が必要だ。前項で顧客の問題解決についてのブレークダウンをしたが、マネジメント層は、この上のレイヤ、すなわち、オフラインのサポートも含めた統合的な指標を見る必要があるだろう。つまりアクセス解析で取得できない各種データも揃えて顧客サポート全体を俯瞰することがむしろ重要になる。そのため、Webサイトのアクセス解析単独の項目はほとんどない。
下に一例を示した。頻度は月1回で十分で、四半期に一度くらいで十分なサイトもあるだろう。できれば、目標と実績対比、前月対比や前年同月対比、今月あった出来事などのコメントを付ければ申し分ない。目標未達であれば、改善策を盛り込んで報告すべきだ。複数の商品・サービスを提供しているのであれば、少なくとも大カテゴリ別くらいにまとめた数字が必要だろう。
- 顧客のサポートに対する満足度(Webサイトと実際のコールセンター、全体)
- 顧客の問題解決率(Webサイトと実際のコールセンター、全体)
- (Webサイトからの)問い合わせに対する応答時間
- サポート全体(Webサイトと実際のコールセンターなど全体)のコスト
- ユーザー1人あたりのサポートコスト(全体)
- 新規訪問者数とリピート訪問者数の割合
現場向けのレポート項目
現場向けは、短期あるいは中期で具体的に改善施策を迅速にとれるように、よりセグメントを切った指標を見ておく必要がある。それがマネジメント層向けとは異なる部分だ。もちろん全体動向も必要になるので、マネジメント層向けのレポートとあわせて数字を見ておく必要がある。こちらもサイトの事情によって違う視点で見る必要な場合もあろう。
下に一例を示した。頻度は多くのサイトでは月次レポートだけで十分だろう。目標と実績対比、前月対比や前年同月対比、今月の出来事などのコメントを付ければ申し分ない。複数の商品・サービスを提供しているのであれば、担当者が行動を起こせるように担当別にさらに分解必要がある。
- 情報発見率(詳細説明ページ訪問回数/総訪問回数)
- サイト内検索機能利用割合
- 1訪問あたりのページビュー数の多い割合(問題解決がスムーズでない割合)
- サイト内検索結果無表示あるいは結果表示からのクリックなしの割合
- サイト内検索結果で直帰した割合
- 問い合わせフォーム完了率
- 掲載電話番号利用率(サイトにしか掲載していない番号の利用度合い)
これまでのECサイト、メディアサイト、B2Bリード獲得サイトと同じく、これらはあくまで一般論であり、そのサイトの特性や規模、成長のステージによって変化する。ここでは基本的な考え方を学び、これらの例を発展させて自社サイトに応用してほしい。
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