NPSは、専用の計算式ではなく平均値でも、実は問題ない(回帰分析してみた)

回帰分析で求めてみたところ、平均値とNPS値にはr=0.959という強い相関関係があった
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NPSの「推奨者の割合 - 批判者の割合」という計算式と、単純に平均値を求めた場合との関係を解説したこの記事の筆者でありUXリサーチの専門家であるジェフ・サウロ氏が来日し、UXの定量化・指標化に関して講演を行います(詳しくは記事の末尾)。

あなたの顧客に訊いてみてください。「この製品を他の人に薦めるかどうか、0から10までの数字(10が最も薦める可能性が高い)で評価してください」と。

そしてその回答の平均値を計算しました。平均値が7.212ポイントだったとすると、それは良い点数ですか?

良いとも悪いとも簡単には言えません。

評価尺度の平均値の解釈は、何か比較するものがない場合、誰にとっても難しいものです。

NPSが人気である理由の1つは、比較的、値を解釈しやすいことです。

NPSは回答を3つのカテゴリに分類します。

  • 推奨者: 9~10ポイント
  • 中立者: 7~8ポイント
  • 批判者: 0~6ポイント

そして、推奨者の回答の割合から批判者の回答の割合を差し引いたものがNPSとなります。

批判者よりも推奨者が20%多いことが分かれば、ある程度手応えを感じるでしょう。しかし、ここでも「じゃあ、20%は良い数字なの?」という疑問は残ります。

ですので、やはりNPS結果を解明する産業別ベンチマークが必要です。たとえば、コンシューマーソフトウェア産業ではNPSの平均が21%です。これはつまり、Quicken、QuickBooks、Excel、Photoshop、iTunesといった製品の平均値が20%あたりであることを意味しています。しかしこの20%という値は、民間の航空産業ならばおそらく平均値ではなく最高値でしょう。

評価尺度のスコアのまとめ方にはさまざまな方法があり、NPSのようなトップ・ボックス・スコアリングはその1つです。直観的なものは得られますが、その過程でどの程度、情報を失うのでしょう? また、平均値でも十分な効果があるのでしょうか?

平均値とNPSの回帰分析

私は87のソフトウェア製品とアクセス数の多い大規模ウェブサイトのNPSを見てみました。サンプルサイズは30から300まで、過去12か月にわたって集められたもので、低いスコアと高いスコアがまんべんなくありました。私はこのデータで「推奨する可能性」の回答平均値と、NPSの相関関係を調べました。

結果、両者には非常に強い相関関係があることがわかりました(r=0.959)。散布図にすると平均値とNPSの関係はゆるやかな曲線を描きます。一次方程式よりも三次方程式の方がより適合するということもわかりました。

図1:87製品/ウェブサイトの平均値とNPSの関係性
回帰方程式は:NPS =  - 1.55 + 0.39*Mean - .07*Mean2 + .006 Mean3 [Adj-R2=96%]

今回わかったのは、「推奨する可能性」の回答平均値はNPSの変動率のおよそ96%を予測できるということでした。これはつまり、平均値とNPS間で換算を行うと、情報の約4%が失われることを意味しています。

11ポイントの尺度を3ポイント(推奨者、中立者、批判者)に換算すると、情報が失われます。ですからたとえば、製品間でスコアを0から5に変えてもNPSには何の変化もありません。

この分析は、平均値の代わりにNPSを使うと、情報の約4%が失われることを示唆しているのです。上記のグラフと回帰方程式もまた、平均値が7.28ならばNPSは0%になる(推奨者と批判者が同率)ということを示しています。

以下にNPSを平均値に、また平均値をNPSに簡単に換算できる、2つの計算機能を用意しました。

平均値・NPSコンバーター

NPSの予測値を計算するには平均値を、平均の予測値を計算するにはNPSをそれぞれ入力してください。

まとめると、NPSは多くの情報を失うことなく、解釈しやすい基準を与えてくれると言えるでしょう。平均値はNPSに近い代替値であり、回答で得られた情報を落とさないことから、統計比較においてはNPSより良く機能することがあります。注意事項としては、NPSは競合製品や先行製品、あるいは産業別ベンチマークなどの意味のある数値と必ず比較すべきだということです。

UXを指標(メトリクス)の観点で考えるセミナーイベント

本記事の筆者でありUXリサーチの専門家であるジェフ・サウロ氏も来日して講演するセミナーイベント「ソシオメディア UX戦略フォーラム 2015 Fall」が、2015年10月7日~8日に、東京都千代田区のステーションコンファレンス万世橋で開催されます。

本記事を翻訳したソシオメディア株式会社が開催している「UX戦略フォーラム」シリーズの2015年第3弾で、今回のテーマは「メトリクスの探求」。

ジェフ・サウロ氏は、1日目のキーノートと2日目のセッションに加え、パネルディスカッションでも登壇します。

サウロ氏をはじめとする、「UX」「顧客ロイヤルティ」「NPS」とその指標化に関する国内外の専門家が集い、UXデザインの計測や分析、そしてそれらの数値をどうマネジメントに活用するかといったことを探るイベントです。

  • イベント名称: ソシオメディア UX戦略フォーラム 2015 Fall
  • 開催日時: 2015年10月7日(水)~8日(木)
  • 開催場所: ステーションコンファレンス万世橋(東京都千代田区)
  • 主催: ソシオメディア株式会社
  • 詳細情報と参加申し込み:
    https://www.sociomedia.co.jp/6073
この記事の筆者

ジェフ・サウロ(MeasuringU)

ジェフ・サウロ(Jeff Sauro)

ジェフ・サウロはシックス・シグマに精通した統計アナリストであり、ユーザー・エクスペリエンスの定量化における第一人者である。彼は統計的なデータを理解させ、そしてアクション実行へと導く専門家。そしてアメリカコロラド州デンバーにある、UXリサーチ会社 MeasuringU(MeasuringU.com)の設立者である。 MeasuringU の設立以前は、Oracle、PeopleSoft、Intuit、そして General Electric で働いてきた。

ジェフはこれまで20以上の専門家のレビューを受けたリサーチ記事、そして5冊の統計とユーザー・エクスペリエンスに関わる書籍を発表している。スタンフォード大学にてラーニングとデザイン・テクノロジーの修士を取得。またデンバー大学にてリサーチメソッドと統計学の博士を取得している。

この記事は、Measuring Usability に掲載された以下の記事を日本語訳したものです。

原文:「Should The Net Promoter Score Go? 5 Common Criticisms Examined」 by Jeff Sauro(2014/07/22)

翻訳:ソシオメディア株式会社

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