ディスプレイ広告はROIが低いから予算のムダだ!? | 第三者配信その1

第三者配信アドサーバーを使えば、管理が楽になるだけでなく、間接効果まで計測できる
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ディスプレイ広告は検索よりもROIが低いよね。
上司から
「うちはなぜディスプレイ広告を出してるの? 効果ないよね」
と言われて反論できなかった。

広告主や代理店の方は、こんなことを思ったり困ったりしていないだろうか。

おそらくあなたは、いろいろな施策をすでに試しているのだろう。SEOに投資して検索エンジンの1ページ目に表示されるようになり、検索連動広告も効率の良いキーワードや広告文に最適化しており、アフィリエイト広告はもちろんやっているのだろう。しかし、新規ユーザーの母数がこれ以上増えない、頭打ちになっているのではないだろうか。とは言うものの、バナーなどのディスプレイ広告は、費用の割にはクリック数が少なく獲得効率が悪い。以前に少しディスプレイ広告は試してみたが、コンバージョン数が少なかったため、また利用するには二の足を踏んでしまう……そんな状態ではないだろうか。

私が広告主の方と話をすると、ほぼこういった話を聞く。悩みはみな同じなのだ。

しかし、ちょっと待ってほしい。あなたは本当にディスプレイ広告や他の広告がユーザーにどんな効果を与えているか、正しく把握できているのだろうか? 広告をクリックしてそのままコンバージョンしたデータだけを計測して、それを広告効果だと思い込んでいないだろうか。

この記事では、そのような悩みに効く処方箋をお届けしよう。それが「第三者配信エンジン(第三者アドサーバー)」というものだ。前述のような悩みを抱えている広告主、ディスプレイ広告の価値を正しく理解してほしい媒体社、そしてその間に入る広告代理店の方に響く、「日本で一番詳しくてわかりやすい第三者アドサーバーの解説」を目指して、全3回でお届けする。

第三者配信アドサーバーとは何か

第三者配信アドサーバー(広告配信サーバー)とは、簡単に説明すると、「ディスプレイ広告配信の集中管理システム」だと言える。各媒体でバラバラに配信管理している広告を一箇所のシステムでとりまとめて、配信から効果測定まで行うというものだ。

既存のディスプレイ広告の配信方法と、第三者配信の違いについては、図を見ながら説明していこう。

図1 媒体社アドサーバーによる配信方式
図2 第三者配信アドサーバーによる広告配信

まず、わかりやすいところで、現在の日本で一般的な媒体社アドサーバーを通じた配信方式から見ていこう(図1)。この方式では、広告主(広告代理店)は媒体社が運営する媒体に広告配信するため、通常5営業日くらい前に広告の画像(広告原稿)をメールに添付する形態で各媒体社のアドサーバーに入稿する。そして、ユーザーが媒体にアクセスした際に、各媒体社のアドサーバーから広告画像が配信される(大規模媒体では画像のみはCDNから配信される場合もある)。

それに対して、「第三者配信」と呼ばれる広告配信がある。これまでの広告配信方式と第三者配信アドサーバーによる広告配信方式で一番大きく異なるのは、ディスプレイ広告の配信元だ(図2)。広告主(広告代理店)は、別々の媒体社へ広告原稿を入稿するのではなく、第三者配信アドサーバー事業者に対し、一括で広告原稿を入稿する。バナー画像の格納先は第三者配信アドサーバー事業者のみにあり、第三者配信アドサーバー事業者は、媒体社に対して配信タグを発行し、設定したタグに応じて最適な広告が配信される。

第三者配信の場合、媒体者はユーザーに対して第三者配信アドサーバー事業者から発行された配信タグを配信し、ユーザーがアクセスしてきた際にはブラウザに対して画像を第三者配信アドサーバー事業者から取得するように通信する。ここで初めて、第三者配信アドサーバーは、ユーザーに対してバナー画像を送信する。

配信タグの仕組みは、既存のアドネットワークとまったく同じである。通常媒体社は、媒体社アドサーバーのなかにアドネットワーク事業者のタグを入れて配信している。第三者配信アドサーバーと異なるところは、アドネットワークには販売機能がついているということのみで、配信の方法に大きく異なるところはない。なお、第三者配信アドサーバーは、配信と効果測定に特化しているため、媒体社にとって「販売」を保証してくれるものではない。

第三者配信がもたらすメリット

第三者配信の優れた点は、広告配信から広告効果測定につながる「すべての通信を同じサーバーで一括管理」していることだ。さらに、広告主サイトのコンバージョンポイントに、第三者配信が提供するコンバージョン計測用のタグを埋め込んでおけば、広告を見たところから効果測定まで、およそディスプレイ広告に関わるものすべてを可視化できる。広告掲載期間中の直接コンバージョン数だけではなく、掲載期間が終了した後の間接コンバージョン数まで計ってくれる。第三者配信という名称から、配信部分に注目しがちだが、ポイントはこの効果測定部分にある。

通常の配信方法では、配信は媒体社アドサーバーから、効果測定は効果測定ツールで、といったように「配信」と「効果測定」が別々になっているため、このような可視化はできない。また、可視化の他に広告配信の最適化もできるので、次回広告配信する際には何回目に広告を見たユーザーにはこのバナーを配信するのが最適、などという配信コントロールができるのも新しい。

広告が見られた瞬間からの効果を逃さず測定

アクセス解析ツールや広告効果測定ツールでも、ディスプレイ広告の効果測定は可能だ。通常こういったツールは、「広告計測用URL」というものを発行して測定する。ユーザーが広告をクリックした際に、「こういう媒体からユーザーが1回来た」とカウントするもので、クリック時にクッキーを発行すれば、クリック直後でなく、再訪してコンバージョンした場合にも効果測定できる。

第三者配信アドサーバーとこうした解析ツールとの違いは、実際にディスプレイ広告を配信している点だ。アクセス解析ツールや広告効果測定ツールは、広告の「クリック後」から測定開始となるが、第三者配信アドサーバーは、「インプレッション後」から、つまりユーザーが広告を見た瞬間からの効果測定が可能になる。

アクセス解析ツールや広告効果測定ツールでは、クリックしてくれたユーザーのみしか追えないため、広告を見てくれたユーザー(興味喚起された可能性が高いユーザー)が、その後どのような行動を取ったのか、といったデータは取得できない。だが、間接効果を正しく評価するには、広告を見てクリックした人の行動と、広告を見たけれどもクリックしなかった人の行動を分けて解析することが重要だ。広告の間接効果まですべて計測し、潜在顧客数を正確に把握するには、第三者配信アドサーバーが必要となる。

ディスプレイ広告は、ニーズが顕在化した状態で検索してくる検索連動広告とは位置づけが明確に異なる。ディスプレイ広告は潜在的なニーズを掘り起こし、出会いを促進するための手段であるため、最初の出会いが非常に大事なのだ。だからこそ、ディスプレイ広告の効果測定には、誰にどう見せたか、広告を見てクリックしなかった人がその後どのような行動をしたのか、というところまで計測できる第三者配信アドサーバーが非常に重要なのだ。

一方、アクセス解析ツールの場合は、第三者配信アドサーバーとは違い、ユーザーがサイト内でどういった行動を行ったのか、ショッピングカートの離脱率を改善するためのA/Bテストなど、クリック後のサイト内の行動改善のツールとして非常に優れた機能を持っている。だから、第三者配信アドサーバーがあればアクセス解析ツールが不要というわけではない。

コラム:「第三者」配信の定義

第三者配信アドサーバーは、「クライアントサイドアドサーバー」「サードパーティアドサーバー」「3PAS(Third Party Ad Serving、つまり第三者が開発したアドサーバー)」「第三者配信エンジン」と、様々な呼び方がある。日本では「第三者配信」という呼称がほぼ一般的となっている。

「第三者配信」は、クライアント、つまり広告主がメインで使うアドサーバー、という認識が「日本では」一般的だが、実は実際のところとは異なる。米国では、媒体社も媒体社アドサーバーだけでなく、第三者配信アドサーバーをうまく活用している。広告主の広告パフォーマンスを上げながら、さらにこれらの情報を媒体社の枠管理や単価へフィードバックして相互共栄している。

日本では一般的なアドネットワークも、第三者配信なのである。媒体社アドサーバー(第一者)から配信するか、アドネットワーク(第三者)から配信するかという違いの日本語の定義からすると、これも広義の第三者配信なのだ。配信の仕方もまったく変わらない。

  • 各種のアドサーバーと何が違うのか
  • 10年以上前から続く第三者配信アドサーバーの歴史
  • 新興勢力、クリエイティブオプティマイズの登場
  • 第三者配信アドサーバーが媒体社を救う

各種のアドサーバーと何が違うのか

一口に「アドサーバー」といってもいろいろなものがある。媒体社の持つアドサーバー、アドネットワークの持つアドサーバー、そして第三者配信アドサーバー。それぞれどう違うのか、持つ強みは何かを整理していこう。

まず、アドサーバーが持つ主な機能は次の通りだ。

  1. 入稿:広告主から送付されたバナー画像または配信タグを入稿する
  2. 枠管理:受発注管理、進行管理、売上管理を行う
  3. 配信:バナークリエイティブをローテーション配信したり、フリークエンシー数(1ユーザーあたりの広告表示回数)をコントロールしたり、効果の出るページにバナーの配信量を高めたりするなどの配信調整を行う。動画広告やエクスパンド広告(マウスをバナー上に移動させると通常よりも大きなバナーが飛び出して見える効果を持つバナー)など、リッチメディア広告の配信もここに入る。
  4. 効果測定:インプレッション数やクリック数はもちろんのこと、広告主サイトでの直接コンバージョン数や、間接コンバージョン数を管理する。ここで得られたデータは、次回の配信にフィードバックされる。
  5. 販売:アドネットワーク事業者のアドサーバーの場合、広告の販売代理機能もある。
  6. データマネジメント:広告主サイトでのデータ、媒体データおよびオーディエンスデータの管理を行う。

次に、それぞれのアドサーバーの強みを説明していこう。

  • 媒体社アドサーバー
    媒体社アドサーバーは、枠管理に最も強みを持つ。枠管理とは、受発注管理、進行管理と売上管理である。どこの広告主または代理店の案件か、どの広告枠なのか、開始日、終了日はいつか、売上はいくらなのかなどだ。ソフトウェアの種類としては、SAPなどの大規模業務管理システムに近い。媒体社独自で開発したアドサーバーは、請求業務システムと連結している場合も多い。

  • アドネットワークアドサーバー
    アドネットワークアドサーバーは、配信と販売に強みを持つ。アドネットワークの場合は多数の媒体の売上拡大を最大化することを主なミッションとしている。したがって、eCPM(1インプレッションあたりの収益性)を勘案しながら、バナークリエイティブもしくは広告主のキャンペーンを入れ替えたり、配信を特定の案件や媒体に集中したりできる。媒体個別に最適化するよりも、どちらかといえば全体最適に強みを持ったソフトウェアだ。販売に強みを持つと書いているのは、これはシステムの強みというよりも、アドネットワーク自体が持つ営業力に依存する。

  • 第三者配信アドサーバー
    第三者配信アドサーバーは、配信と効果測定、およびデータマネジメントに強い。配信コントロール設定や、間接コンバージョンまで含めた効果測定、見込み顧客データを活用した広告配信などのデータマネジメントを行うことに特化している。逆に媒体社の業務である枠管理や、放っておいてもある程度売上を得られるようなアドネットワークの販売能力のような機能はついていない。

このように、アドサーバーといってもかなり役割と強みが異なる。それぞれの特徴を整理すると次の図のようになる。

アドサーバーの強み
 入稿枠管理配信効果測定販売データ
媒体社アドサーバー×××
アドネットワークアドサーバー××
第三者配信アドサーバー××

10年以上前から続く第三者配信アドサーバーの歴史

日本ではまだ一般的ではないが、第三者配信アドサーバーはインターネット広告産業の黎明期から存在している。広告業界の重鎮によるブログ「業界人間ベム」によると、アドナレッジ社が最初に第三者配信アドサーバーを開発したと言われている。米国で最もシェアを持っているDoubleClickが登場したのは今から15年前の1996年のことだ(当時はアドネットワークの配信ソフトウェアを作っていた会社だったと記憶している)。だから新興ベンチャーがおいそれと簡単に開発できるものではない。特に1995年~2000年まで生まれた第三者配信アドサーバー事業者は、ネットバブル期に資金調達しているので、配信や効果測定以外の媒体購買ツールやリッチメディア対応など、かなりリッチな機能がてんこ盛りである。

第三者配信の延長としてアドネットワークが生まれた、という説もあるし、アドネットワーク(1995年ころは新聞社サイトをまとめたメディアネットワークと言われたものもあった)は結構前からあって、第三者配信エンジンはそこから生まれた、という説もある。

しかし、1995年~2000年に登場した第三者配信アドサーバーの役割は広告主利用にかたよったものだった。どのような広告主で使われていたかというと、複数の媒体社、および全世界に同時に広告出稿するような大手ブランド広告主やIBMのようなテクノロジー企業だ。そこでは、各媒体社バラバラのアドサーバーに入稿して配信するのではなく、一括管理、つまり広告主が管理するアドサーバーから配信コントロール/効果測定したいというニーズが発生した。これは考えてみれば当然のニーズで、かつてはYahoo! JAPANでも、IBMのような広告主の場合には、米国製の第三者配信アドサーバーの利用が認められていた。

Mediamind社のリッチアドのギャラリー
http://creativezone.mediamind.com/

第一世代の第三者配信アドサーバーが登場してから3年後、1999年になって新たに登場してきたタイプがある。ブロードバンドの普及によって可能となった、いわゆる「リッチメディア」に特化したアドサーバーだ。代表格はMediamind(旧アイブラスター)で、媒体社アドサーバーではまだ実現できなかった動画広告やマウスオーバーすると大きく飛び出すような広告表現を、第三者配信アドサーバーが担うということが出てきた。「広告主側に立ちながら、媒体社アドサーバーではできないことができる」というアドサーバーだ。どういった広告が掲載されていたのか、詳細はMediamind社のリッチアドのギャラリー「Creative Zone」があるのでそちらでご覧いただきたい。

過去無数の第三者配信アドサーバー事業者が立ち上がったが、それから10数年経過した後、大きなシェアを獲得した事業者は以下の6社である。

  • DoubleClick(1996年創業、Googleが2007年に買収合意)
  • Atlas(Microsoftが2007年に買収)
  • Mediaplex(1996年創業。Value Clickが2001年に買収)
  • ADTECH(1998年創業。AOLが2007年に買収、元々ドイツの企業)
  • MediaMind(1999年創業。旧アイブラスター、元々はリッチメディア配信が強い)
  • Eyewonder(1999年創業。こちらもリッチメディア配信が強い)

米国の老舗かつ大手の第三者配信アドサーバーはすべて「媒体社」が買収している。DoubleClickはGoogleに、Atlasはマイクロソフトに、Mediaplexはバリュークリック(アドネットワークという媒体社)に、ADTECHはAOLに買収された。冷静に考えるとこれはかなり不思議なことだ。広告主向けのサービスであるのに、なぜ広告代理店が買収せず、媒体社が買収したのだろうか。別に広告代理店に資金がないわけではなかろう。株式交換の場合には確かにネットメディアの方が有利には働いただろうが。媒体社にはどのようなメリットがあったのだろうか。

「第三者配信アドサーバーは広告主のみが利用するものである」という認識は異なるのではないかと先ほど書いたが、そのように考えるに至った理由の1つは、こうした媒体社の動きからである。

新興勢力、クリエイティブオプティマイズの登場

2007年前後から、新たな第三者配信アドサーバーが誕生してきた。これらが出てきた背景にはいろいろある。まず、オーディエンスデータの活用による新たなターゲティング機会が登場したこと。アドエクスチェンジ(広告取引市場)の普及によって、1つのアドネットワークよりもはるかにボリュームの大きい配信ができるようになってきたこと。シェア上位の第三者アドサーバーが媒体社に買収されたので、進化が若干止まったこと。そして、ベンチャーキャピタルがアドテクノロジー分野に大規模投資を行ったことによって、特定分野に特化したニッチプレイヤーが生まれやすい土壌となったことが考えられる。

もちろん、ハードウェアやネットワークコスト自体の価格低下、web 2.0時代に先人が創り上げた負荷分散技術の進化などによって、大規模アドサーバーの開発コスト自体が激減した、ということもあげられるだろう。市場環境がここで大きく変わったのだ。新興第三者配信アドサーバーのなかでの新しい試みは、クリエイティブオプティマイズ事業者だ。

クリエイティブオプティマイズとは、広告クリエイティブの最適化によって広告効果を最大化しようという試みだ。何百種類ものバナーを自動生成し、多変量解析などのアルゴリズムを駆使しながらバナーを最適化する。事業者としては、Dapper、Teracent、Tumriなどが有力だ。私が所属するFringe81の「iogous」もこの分野にあたり、バナー自体の色やサイズ、形などの新たなデータを広告主側に提供することが可能となった。今までの第三者配信アドサーバーでは、クリエイティブに手がつけられていなかったし、かつてリッチメディアが強いアドサーバーが立ち上がったのと同様、媒体社アドサーバーではできないことができる、ということを目指して創業された。

DSP(デマンドサイドプラットホーム)もまた、新手の第三者配信事業者といってもいい。DSPは、オーディエンスデータをもとに、媒体の枠ではなくデータに基づいて入札を行う、リアルタイムビッティングに特化した購買ツールだ。もちろん、配信も可能ではある。ただし既存の第三者配信アドサーバーとは共存している場合も多い。リアルタイムビッティングはDSPにまかせ、配信は第三者配信アドサーバー、といった具合だ。他にはリターゲティングに特化したアドサーバーも出現している。

時代は繰り返し、クライアント向けのサービスであったクリエイティブオプティマイズに振り切った新興第三者配信アドサーバーも、媒体社が買収している。Dapperは2010年にYahoo!に、Teracentは2009年にGoogleに買収されている。また、DSPも最大手のInviteMediaはGoogleに買収されている。どうもシリコンバレーのアドテクノロジー企業の買収は広告代理店よりも媒体社が先行しているようだ。媒体社にとってみれば、広告主側のデータや、単価を上げるためのソリューションは自社にどんどん取り入れていきたい、という現れなのであろう。これも私が主張する、第三者配信アドサーバーは媒体社も利用すべき、日本ではうまく活用されていない、という理由の1つだ。

第三者配信アドサーバーが媒体社を救う

日本で第三者配信アドサーバーは現状ほとんど普及していない。そんななか、弊社はこの事業分野にチャレンジしている。どうしてかというと、第三者配信アドサーバーは、媒体社の広告パフォーマンスの向上や、単価アップに必ず結びつくと信じているからだ。

日本で初めて第三者配信エンジンを普及させようとした試みが行われたのは2000年、つまり今から11年前のできごとだ。第三者配信が普及しなかった要因はいろいろと言われているが、当時はやっとウィンドウズメディアサーバーの英語版が出たという時代で、今のようにFlash環境もないし、ブロードバンド環境もない。私はそのころ、ヤフーで動画インフラ開発をしており、車の動画広告なども作ったが、「こんな重いものだれが見るんだろう」と言われたものだ。

そんな11年前、その時のアドサーバーは、はっきり言うと高いし、高度なリッチメディア機能もなかった。そして媒体社利用というより、広告主利用メインの段階だった。GoogleやMicrosoft、AOLが第三者配信アドサーバーを買収するのは、2000年から7年も経った2007年のことである。日本でも第三者配信を普及させるため、2000年にアドソリューションエックス社(現ビデオリサーチインタラクティブ)が設立されているが、残念ながら普及にはいたっていない。

2000年当時、第三者配信が普及しなかった理由としては、次のようなことが言われている。

  • 米国で開発されたものだったので日本の商習慣にあわなかった。
  • 媒体費ではなく、配信料というモデルがそぐわなかった。
  • 配信料が高かった。
  • 日本ではインプレッション課金モデルではなく、クリック課金やCPA課金での課金形態が早々に中心となった。
  • クリエイティブの差し替えを広告主が行うことを媒体社が嫌がった(これが一番の理由と言われているが、これは事前確認する、という取り決めをするなどでカバーできるように思う。
  • 媒体社がデータを活用して改善するような仕組みではあまりなかった(市場がどんどん拡大していく途上であったので、そのような取り組みをしなくても売れた)。

今回は、第三者配信アドサーバーがどういったものかについて説明した。次回は、より具体的なメリットについて紹介する。

この記事の筆者

田中 弦
Fringe81株式会社 代表取締役社長

インターネット業界13年にわたり一貫して新しいインターネットビジネスの創造を経験。ブロードキャスト・コムジャパン(現Yahoo!動画)、ネットイヤーグループ、モバイル広告代理店のngimobile(現フラクタリスト)など、これまでに4社の創業に携わっている。Fringe81株式会社(前RSS広告社)では、日本初のRSS広告事業や、ツイッター連動バナー、バナー最適化技術の「iogous」、第三者配信アドサーバー「iogous*mark」など、インターネット広告の最新技術を全て自主企画・自主開発で提供している。

http://www.fringe81.com/

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