もしも、三菱東京UFJ銀行サイトを解析するなら(前半:検索からランディングページまで) [第3回]

有名サイトを例に、アクセス解析でチェックすべきポイントにあたりをつけるコツを解説
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誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。

木曜9時は「かってに解析!」ということで、この「有名サイト、かってに解析!」では、毎回1つの有名サイトを取り上げ、アクセス解析で実際に解析データを見る前に、あらかじめサイトの問題点やチェックポイントに“あたりをつける”方法を解説していく。

「三菱東京UFJ銀行」の閲覧シチュエーションを想定

今回は、「三菱東京UFJ銀行」を取り上げる(以下、カギかっこ付きで「三菱東京UFJ銀行」と書くときは、企業名ではなく、サイト名を指す。他の銀行、企業も同様)。

前回も申し上げたが、このコーナーではさまざまな業種業態のサイトを取り上げ、課題の抽出や考察を行うのだが、筆者はあらゆる業種の各企業やサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでも、記事の要点は「どのような点に着目したらよいのか」を知っていただくことなので、その視点を重視して読んでいってほしい。

まず、「三菱東京UFJ銀行」トップページ(図1)のグローバルナビゲーションを見ると、「個人客」と「法人客」といった具合に、誰を相手にしたコンテンツの領域なのかが明確にわかるようにカテゴリを分けている。これは、「三井住友銀行」「りそな銀行」「みずほ銀行」など、他の大手都市銀行系のサイトを見ても同じである。

図1:「三菱東京UFJ銀行」のトップページのファーストビュー

また、これらのサイトすべてで、トップページは「個人客」向けのトップページを兼ねているのが見てとれる。つまり、銀行サイトのユーザーセグメントは複数あり訪問理由は多岐にわたっていると思われるが、ボリュームとして多いのは、口座を持っている既存ユーザーだということなのだろう。

地方銀行のサイトもいくつか見てみたが、おおむね構造は同じようだ。これが業界の横並び体質のせいなのかわからないが、ユーザー側の視点で考えると、どのサイトの作りもだいたい同じということは、新しいユーザーインターフェイスを学ぶ必要がなく、利用する上でのメリットであるとも言える。

今回想定したサイト閲覧シチュエーション

そんな事を想像しながらも、今回は次のようなシチュエーションを想定してサイトを見ていくことにしよう。

誰が該当の銀行で口座を持っている個人ユーザー
何の目的でサービス内容の確認
何をしにATMの休日の稼働状態と振り込み手数料含めた合計手数料を調べに
どこへ銀行名を指定してサイトトップ、あるいは「便利につかう」トップページへ

アクセス解析視点の仮想目標

上記の想定シチュエーションを、アクセス解析的に言い換えると以下のようになる。

それでは、このシナリオでサイトに訪問した人が遭遇するサイトの問題点を考えていこう。

・「三菱東京UFJ銀行」をエキスパートレビュー!
・検索結果ページでの表示はどうか?
・「ATM・店舗検索」をクリックすると……

「三菱東京UFJ銀行」をエキスパートレビュー!

はじめは検索エンジンで「三菱東京」「東京三菱」あるいは「UFJ」などを検索することになるだろう。さすがに「三菱東京UFJ銀行」とフルに入力するのは面倒だが、「三菱」あるいは「東京」では絞り切れずにダメそうだという想像ができる。

検索結果ページでの表示はどうか?

2010年12月下旬現在で、「Yahoo! JAPAN」でも「Google」でも、これらのキーワードで検索すると、当然ながら、自然検索の1位に「三菱東京UFJ銀行」が表示されている。

「Yahoo! JAPAN」では、上部と右側の広告エリア(スポンサードサーチ)にも三菱東京UFJの広告があるのだが(図2の赤枠で囲った部分)、広告のほうはどちらもタイトルに「ローン」という言葉があるので、今回想定したサイト閲覧シチュエーションの人がこの広告をクリックしまうことは少ないだろう。

図2:「Yahoo! JAPAN」での検索結果ページ

一方、「Google」では図3のように検索連動型広告が一番上に表示されていた。リンク先のサイト名と表示は自然検索と同じで、広告のタイトルも「三菱東京UFJ銀行」とあるので、間違えてこちらをクリックする人も多そうだ。この検索連動型広告の説明文(小さいほうの文字)には冒頭に「カードローン」とは書いてあるが、果たしてそこまで見てもらえるかはわからない。広告の飛び先は同社のカードローン「バンクイック」というカードローンのページ(図4)である。もし間違って広告をクリックしたとしても、このページから「三菱東京UFJ銀行」トップページへ行くことはたやすいので、こちらに寄り道しても大きな問題ではないとは思うが、少々気になった点だ。

図3:「Google」での検索結果ページ

「ATM」「手数料」はどこにあるか?

さて、検索結果のページから「三菱東京UFJ銀行」のトップページに入ってきたとしよう。今回想定している訪問者のシチュエーションでは、ATMの休日の稼働状態と振り込み手数料も含めた合計手数料を調べにサイトに訪問したわけなので、ここで「ATM」あるいは「手数料」といったキーワードを探すことになる。

冒頭にも書いた通り、サイトのトップページは、「個人のお客さまへ」のカテゴリトップに来ていることにもなるが、「ログイン」や「ATM・店舗検索」「資料請求」など、個人客がよく見そうなコンテンツ群が、左上の目に付きやすい場所にある(図5の青枠で囲った部分)。ここにまさに「ATM」や「手数料」といったキーワードが見てとれる。

図5:左上の目に付きやすい場所に、「ATM」や「手数料」が見つかる

「ATM・店舗検索」をクリックすると……

さっそく「ATM・店舗検索」のリンクをクリックしてみる。そうすると新しいウィンドウでページが開かれる。ログインを含めて、このエリア(図5の青枠で囲った部分)のリンクは、だいたい新しいウィンドウでページを開くように作られている。ログインユーザーが元のトップページに戻ってくるとは考えにくいので、手数料一覧などちょっとわき道に逸れて戻ってくるような動きが分かっているのなら別だが、新しいウィンドウを開かなくてもいいリンク先もあるのではないかと思った。このあたりはユーザーの実際の挙動を確かめるユーザビリティテストなどをしてみるのがよいだろう

今回のまとめ

さてここまでで、アクセス解析的にはどういうところに着目して数字を見たらよいだろうか。

  1. 検索連動型広告でローン目的でなかった人の割合の把握

    「Yahoo! JAPAN」より「Google」での検索で、間違えて検索連動型広告をクリックしてカードローンのページに辿りつくユーザーが多いかもしれないという指摘をした。「Google」と「Yahoo! JAPAN」の広告流入別に、ランディングページからその次のページへの移動に関して、カードローン以外のコンテンツページに進む割合が多くないかどうかを調べてみたい

    「Google」の検索連動型広告からの流入者の方が、カードローン以外のページへ進む割合が高いようであれば、やはり検索連動型広告の表示を自然検索と別にして、「Yahoo! JAPAN」と同様に広告タイトル文に「ローン」を入れる変更が考えられそうだ。

  2. キャンペーン別のコンバージョン率の把握

    検索連動型広告を行っている、つまり広告で集客しているコンテンツに関しては、申込などのゴールを設定しているはずなので、集客別のコンバージョンなどを見て、効果の高いキャンペーンを行うような視点で数字を見ていくことが重要になる。サイトのトップページのメインビジュアルにもサイト内のキャンペーン告知へのリンクがあるので、ここのクリック率などもきちんと評価してみたい点だ

  3. 左上のエリアのリンク箇所

    「ATM・店舗検索」とその下の左上のエリアだが、利用率が高い項目はなるべく左上に持っていきたい。現在の項目の並び順は以下のようになっている。

    ATM・店舗検索
    外国為替相場資料請求
    金利一覧Q&A・お問い合わせ先
    手数料一覧苦情・ご意見など

    もし「外国為替相場」よりも「手数料一覧」の方がクリック率が高いのであれば、「手数料一覧」を上に持っていくのも良いだろう。そうした判断のために解析データを見てみるといい。FXなどが流行っているので、「外国為替相場」が人気コンテンツなのかもしれないが、既存顧客を大事にするなら、左の列は上から「手数料一覧」「金利一覧」「外国為替相場」の順にするのが自然に思えるのだが、素人考えなのかもしれないので、実際の数字で把握したいところだ。このあたりは画面上のどこをクリックしたかというのをビジュアルに表示してくれるアクセス解析ツール(クリックマップと呼ばれる機能)などを利用すると非常にわかりやすいだろう。

◇◇◇

次回は引き続き、「三菱東京UFJ銀行」の後半を取り上げる予定だ。時間があるときにでも、今回想定した閲覧シチュエーションに沿って、あらかじめサイトを見ておいていただけると、来週記事を読むときに、ご自分の予想と比べながら読めるので、アクセス解析力のさらなるアップが期待できるだろう。さてこの連載では、

  • Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
  • 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論

などを随時募集していきたいと考えている。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。

この記事の筆者

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社へ。調査部、インターネット視聴率センター長などを経て、2000年ネットレイティングスへ。視聴率サービスやアクセス解析サービスの立ち上げに尽力。2006年株式会社クロス・フュージョンを設立し代表取締役に。2023年活動停止。

著書など:
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