クチコミ国内事例&クチコミマーケのサービスプラットフォーム

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国内事例&サービスプラットフォーム

ネットのクチコミを増幅させるSNSは
新しい企業マーケティングの場として注目

今、「クチコミ」が注目を集めているのは、SNSのようにユーザーが数多く集まるコミュニティサイトや、ブログのようにユーザー自身が自由に書けるメディアの数が増え、企業によるマーケティングのプラットフォームとして確立されつつあるからだ。
ここではクチコミのプラットフォームとしてSNSやクチコミサイトを捉え、企業がマーケティングや販促活動に使えるサービスを事例とともに紹介する。

編集部

クチコミを増幅させるネットのコミュニティサービス

ブログやSNSのユーザー数増加にともない、ユーザーによって作られる情報/コンテンツも急増している。これらのほとんどは、日記的なものや日常の身近なレビュー(購入したものや経験したものの感想)などである。しかし、たとえつたない内容でもユーザーの実感が反映された、従来のマスメディアにはない新しい価値を持った情報として注目されている。

特に商品に関して書かれた記事=クチコミ情報は、購入を検討しているほかのユーザーにとっては、実際の利用者による感想や意見であるという点で、非常に参考になるとともに、実際の購入を決定付ける重要なものである。企業側にとっても、ユーザーの生の声は、マーケティングや販促に活用できる貴重な情報として活用できる。

このような状況で、SNSやブログのサービスを運営する側も、企業のマーケティングや商品プロモーションに利用できる「クチコミの企画」として打ち出しているところがある。

表1に「クチコミ」を使ったマーケティングやプロモーションメニューを用意している主なサービスを掲載した。クチコミが蓄積される場に対して、そのテーマに沿った“ネタ”として(モニター調査などで)商品を提供することでクチコミを誘発させるものや、テクノロジーを使ってクチコミの広がりを促進するようなものまでさまざまだ(図1)。ただし、いずれもユーザーによって形成されたコミュニティの雰囲気が第一であり、それを乱さないようなやり方でビジネスに発展させている。

図1 はてなダイアリーブログBuzzプロモーション。「Askビデオさん、動画デジカメ欲しい!」とブログに書いておくと、キーワードが機械的に処理されて応募となる。「はてなキーワード」の機能を応用した仕組みだ。

あくまでもユーザーを第一に考えるmixiの運営ポリシー

国内最大のSNSであるmixiは、2006年7月に会員数が500万人を突破して、現在も急成長中である。これだけの規模になれば、1つの市場として捉えられる。そのmixiでは、企業は「公認コミュニティ」という形でコミュニティを作り、自社の商品やビジネスにからめた活動を行うことができる。実際に、映画「オーシャンズ12」、スカパー!「集え!12番目の選手たち」、バンダイ「ねこにゃんぼぅ」など、これまでに約30の企業による公認コミュニティが運営されてきた。

ただしmixiの場合は、サイト全体のポリシーとして商用利用は認めておらず、そのため公認コミュニティはひと目でそれとわかるようになっている。これは、一種の広告商品であり、ユーザーから出てきた本来のコミュニティではないということをユーザーに示すためだ。また、企画の内容によっては、公認コミュニティの依頼を断るケースもあるという。ユーザーを第一に考えているmixiのポリシーが理解できるだろう。

コミュニティというものはコントロールが自由にきかないため、企業が利用するには非常に難しい面もある。mixiにおいても、あらゆる公認コミュニティが成功したというわけではなく、大手通信事業者のコミュニティが炎上してしまい、短期間のうちに閉鎖せざるを得なくなったという事例もある。

mixiでは、そのあたりの課題も認識しており、公認コミュニティを利用する企業に対しては、運営ノウハウを含めてサポートするようになっている。

企業の商用利用に対応しているクチコミサービス一覧。

mixi ● http://mixi.jp/
ミクシィ株式会社 ● http://mixi.co.jp/

国内最大のSNSサービス。8月に会員数が500万人を突破し、今もなお急増中。1人当たりの月間平均利用時間では、Yahoo! JAPANよりも長い結果となっている(2006年6月時点。ネットレイティングス調べ)。また、運営元であるミクシィも株式上場を果たすなど、さらに注目を集めている。そのmixiでは、公認コミュニティという形で企業の利用に対応しているが、あくまでもコミュニティの運営を第一に力を注いでいる。公認コミュニティや公認アカウントは、企業からの相談や企画内容に応じて開設する形をとっており、定型化されたサービスメニューや価格体系は用意されていない。

ビルコレ ● http://bilcolle.com/
ビルコム株式会社 ● http://www.bil.jp/

商品に関するクチコミ情報の吸い上げと、それを販売につなげることを目的とした「お買い物を楽しむためのSNS」。ECサイトで商品を販売している企業は、ビルコレに参加することで、ユーザーによる商品の評価や話題、直販サイトへの誘導を促すことができる。参加企業は、無印良品、アマゾン、ソニープラザ、アップル、サントリー、ツタヤ、ユニクロなど70社以上(2006年7月時点)。

ビルコレへの参加は無料で、初期費用や固定費用はかからない。ビルコレを通して商品の売り上げが発生した場合、その売り上げに対して一定割合(数値は非公開)の成約時手数料がとられる。

はてなダイアリー ● http://d.hatena.ne.jp/
株式会社はてな ● http://www.hatena.ne.jp/

ブログサービス「はてなダイアリー」では、「はてなダイアリーブログBuzzプロモーション」というクチコミ広告を提供している。これはプレゼント企画で、記事の中にあらかじめ設定されたキーワード(「○○社の□□が欲しい」など)を記入すると、自動的に応募となるというもの。おのずと会社名や商品名の記事を書くことに加え、ほかの応募者がわかるなどクチコミを誘発する仕掛けがある。

価格は210万円で、期間は応募開始からプレゼント送付まで1か月間。企画内容によって変動あり。

アットコスメ ● http://www.cosme.net/
株式会社アイスタイル ● http://www.istyle.co.jp/

化粧品/美容をテーマにしたクチコミサイト。SNSではなく、各アイテム(商品やテーマ)について、掲示板のようにコメントを付けるというもの。2006年8月には、サイト内のクチコミ数が400万件を突破している。

化粧品や関連商品を扱うところに限られものの、企業としてはアットコスメ会員に対するモニター調査の実施ができる。また、コラボレーション企画として自社とアットコスメとのオリジナル商品をユーザーが参加しながら開発するといった企画もある。

フォートラベル ● http://4travel.jp/
フォートラベル株式会社 ● http://4travel.co.jp/

旅行に関するクチコミサイト。旅行した地域でのエピソードや利用した旅行会社、ホテル、レンタカーについてのユーザーからの投稿記事のほか、旅行に関するデータベースや予約サービスなどを提供している。2006年6月にはSNSサービスも開始した。旅行会社向けのクチコミサービスとして、情報発信スペース「カタログスタンド」を用意している。これは、自社の紹介ができるページで、旅行好きなユーザーに対してツアー商品などをアピールできる。無料版の「エコノミー」とより露出機会が多くなる「ビジネス」があり、枠(旅行先の国ごと)とページビュー数によって、最低月額1000円から利用できる。

pochitto ● http://www.pochitto.jp/
ウィーブ株式会社 ● http://www.weave.co.jp/

招待制のSNSで登録は無料。ユーザーに対しては、SNS、ゲーム、ポストカード、壁紙といったコンテンツが用意されている。

企業向けの機能としてはコミュニティを設けることができ、そこで商品についてユーザーから意見を募ったりモニター調査を行うことができる。また、ユーザーがお気に入りの企業を登録できる「ごひいきさん」という機能があり、これによって自社に興味のあるユーザーをターゲッティングしやすくなっている。

クチコミ国内事例(1):大手企業の直販サイトに連動する買い物のプラットフォーム:ビルコレ

クチコミ国内事例(1):
大手企業の直販サイトに連動買い物のプラットフォーム
SNS名:ビルコレ
運営者:ビルコム株式会社

図2 ビルコムが運営するSNS「ビルコレ」のログインページ。キャッチフレーズは「買い物は友達のオススメを聞いてから」。
http://bilcolle.com/

統合型マーケティング業務を展開するビルコム株式会社の立ち上げた「ビルコレ」は、さまざまな業種にわたる企業の直販サイトと連動し、クチコミによる誘導を行うのが特徴だ。たとえば、レンタルビデオ・DVDの「TUTAYA Online」、コンピュータの「Apple Store」や「Sony Style」のほか、食品系、ファッション系、美容健康に関連する企業の直販サイトやホテルの予約サイトなど、2006年7月末現在で75社が名を連ねる。

同社がターゲットとして考えているSNSの参加者像は、ある程度の可処分所得を持つ層。自由にお金を使え、たとえば「mixi」の参加者より年齢的に一段高い層を狙う。「ビルコレ」参加者数は2006年7月25日現在で約1万5000人、1年間で参加者数30万人を目指す。

社交の品質を維持する

図3 SNSの機能で友達(ビルトモ)の一覧が表示されるのはmixiと同様だが、中心となるのは友達や自分の買ったもの新着情報と欲しいものの一覧だ。

SNSは趣味の合う仲間からの信頼できるクチコミのネットワークに立脚する。このクチコミを購買行動に結びつけるために活用されるのが、ソーシャルブックマークの仕組みだ。参加者のマイページにはプロフィールや友人たちのリストのほか、これから買いたい商品(ウィッシュリスト)や、すでに購入した商品(コレクションリスト)が並ぶ(図3)。

また、クチコミを有効に働かせるためには、SNS内の雰囲気や社交が高い品質のまま維持される必要がある。これが壊れると、ブランドの失墜などのリスクも考えられるからだ。まして「ビルコレ」の場合は、多数の企業が参加するSNSだから、運営が非常に重要になってくる。

このための「ビルコレ」の工夫の1つが、友達申請の仕組みにある。「ビルコレ」は無料登録制。しかし、共通の友人がいるか、お互いが足あと(訪問履歴)にコメントを付け合うなど何らかの社交がないと、友達として登録できない。

このように、運営者が条件を定め、参加者がその条件をクリアして初めて友達申請をさせるというのは、おもしろい発想だ。SNSには、入り口の狭い招待制を採用してクローズドなコミュニティにしておきながら、内部が無法地帯になってしまう例もあるが、「ビルコレ」は信頼性という面での差別化を図っていることになる。

ごひいき企業のファンコミュニティ

「ビルコレ」では参加者は好きな企業・ブランドを「ごひいき」として登録し、ファンコミュニティを立ち上げることができる。たとえばAmazon.co.jpのコミュニティでは、コミュニティに登録したメンバーがAmazon.co.jpで買った物の一覧がコメント付きで並ぶ。対象となる企業がこのコミュニティを公認すれば、ごひいき企業の公認コミュニティとなり、企業からイベントなどの先行情報が提供される。

参加者にとっては、より充実したコミュニティとすることができ、Eコマースサイト企業にとっては、SNS内の顧客クラブとして運営することができる。一方、ビルコムにとっては、個々としてはニーズの少ない商品を集合させるロングテール型マーケティングの応用として、大手企業のニッチ商品に狙いを定めていると考えられる。

図4 参加企業が取り扱う商品は、その価格や概要などの情報が表示される。ブログに貼り付けてSNSの外部に公開することもできる。

すごいのは、「ビルコレ」出店企業に対して完全な売り上げベースでの手数料を提示している点。通常、楽天などインターネット上のショッピングモールでEコマース事業を始める企業は、出店時の一時金や月額の固定費を支払わなければならないが、「ビルコレ」の場合には、売り上げが発生したときに応じて売り上げ金額の一定割合を支払うという完全成果主義が取り入れられている。

また、参加者が商品を購入したときや参加者のお気に入りリストなどを経由して商品が買われた場合、その商品に応じた「ビルコレ」内のポイントが、購入者と紹介者双方に発行される。このポイントは1ポイント1円換算で換金でき、購入者と紹介者それぞれの側面からショッピングをうながす動機付けとして働く。

SNSに本格的なソーシャルブックマークの概念を持ち込んだ「ビルコレ」。はたして質のよい参加者を数多く集められるかが、これからの勝負だ。


※この事例記事は 『SNSマーケティング入門』 に収録された原稿を要約/再構成したものです。

クチコミ国内事例(2):ピンキーモンキーと友達になりたいユーザーが大集合。4日で友達登録が1000人に

クチコミ国内事例(2):
ピンキーモンキーと友達になりたいユーザーが大集合
4日で友達登録が1000人に
SNS(ページ)名:mixiの公認アカウント「ピンキーモンキー」
運営者:株式会社フレンテ・インターナショナル

株式会社フレンテ・インターナショナルのタブレット菓子、「ピンキー」のイメージキャラクターとして長年親しまれているのが、お猿の「ピンキーモンキー」だ。その愛らしい意匠から20代女性層を中心に人気のキャラクターを、mixi内に仮想的な1ユーザーとして出現させるという斬新な試みが2006年4月から7月にかけて行われた。

mixiには企業の商業利用を前提とした「公認コミュニティ」がある。しかし同社では、「商品の全面刷新に合わせ、広告的に押しつけがましくならないよう、楽しみながらPRしたい」(同社広報部)という考えから、コミュニティを組織してプロモーションを図るのではなく、お猿のピンキーモンキーが1ユーザーとしてアカウントを取得、マイページに日記をつづるという手法を選択した(図5)。

図5 コミュニティではなく、ピンキーモンキーという1人(1匹?)のユーザーとしてmixiに参加した点がこの企画のポイント。日記の写真も凝っていて、読むのが楽しくなる内容だ。

応募率が70%を記録

mixi上にピンキーモンキーのアカウントが登場したのは、2006年4月7日。友達として登録した参加者をmixiでは「マイミク」と呼ぶが、mixiのオンラインマガジン『mikly』を中心にアカウント開設の告知を行ったところ、たちまちマイミク申請が相次ぎ、4日後には早くもmixiが定める登録上限の1000人に達した。

当初はプレミア感を煽る意味合いから、マイミク限定で公開していた日記も、1000人到達をもって全公開に変更。その後は日々、写真を交えてコミカルかつキュートにつづられたピンキーモンキーの日常を、多くのユーザーが閲覧、コメントを書き込んだ。

2006年7月31日のプロモーション終了までの期間中、同社は幾度かプレゼント企画を用意している。最初のプレゼントはマイミク1000人の達成時点で行われた、発売前の『ピンキー』新商品をマイミク全員にプレゼントするというもの。マイミクとして登録したユーザーは、専用ページから発送先住所などを送信しなければならないが、1000人のうち、実に約700人もの応募を得た。コンバージョン率にして70%という驚異的な数字を実現したことになる。また、やはり『ピンキー』新商品を、mixiにちなんで3941名にプレゼントする企画の際も、約1万6500人もの応募があった。

また、キャンペーン終了時にポストカードのプレゼントを行った際には、カードの図案選定に閲覧者の声を吸い上げるなど、フレキシブルな対応が参加者(=顧客)との間に理想的な距離間を構築したと言える。ときにはコメント常連ユーザーのページに、ピンキーモンキーのアカウントで足あとを残す“サービス”も実施。それがまた、ファンにとって得がたい特典となるわけだ。

結果、このプロモーション期間中にピンキーモンキーのマイページを訪れたユーザーは、平均して毎日1000人前後。プロモーション期間全体では、のべ約12万の足あとが残された。

また、今回の試みにおいて、「効果のバロメーターの1つは、日記へのコメント」(同社広報部)との声もあるように、コメントの数ものべ4000以上に上ったという。ピンキーモンキーの存在を知ったユーザーが自身の日記にそのことを記述するケースも多く、さらにそれを閲覧するユーザー数となると、もはや追いきれないほど膨大な数に上るはずだ。SNSを舞台とした「ユーザー同士」という顧客へのアプローチは、工夫次第でさまざまな効果を生み出せるのではないだろうか。

※この事例記事は 『SNSマーケティング入門』 に収録された原稿を要約/再構成したものです。

『SNSマーケティング入門 上客を育てる23の方法』
仲間内のクチコミだから強力に働く
SNSがビジネスに効く仕組み

コアな優良顧客を軸にクチコミを展開していくのがSNSマーケティング。基本は商品やブランドを介して顧客に楽しんでもらうこと。顧客目線に立って、よりよい経験を提供し共有するからこそ、企業と顧客の間に信頼関係が築ける。信頼してくれた顧客はその商品やブランドのファンとなり、リピーターとなり、友人たちに推薦してくれる。この信頼とクチコミの連鎖をSNSマーケティングは可能にする。

2006年9月26日発売
山崎秀夫(野村総合研究所)、村井亮(Beat Communication) 著
ISBN4-8443-2300-8
四六判/192ページ
定価1,554円(税込)
発行:株式会社インプレスR&D

SNSマーケティングに取り組む23の企業事例を5タイプに分類して紹介。ブログを超えたクチコミ進化形、SNSのビジネス利用がわかりやすく身に付く一冊。


※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.2』 掲載の記事です。

この記事の筆者

Web担編集部

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