HTMLの編集・修正をFTPで! 書き換え更新時に先祖返りを防ぐ方法

FTP(File Transfer Protocol)でHTMLソースコードを編集し、WEBサイトのテキストを書き換えてみましょう。WEBサイトで更新頻度の高い、お知らせやニュース欄の更新が誰でも簡単に行えるようになります! ファイルを更新する際に「先祖返り」が起こらない予防策も解説します。
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ウェブサイトは「HTML」という言語で記述します。言語と言うと難しく思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。難しそうだからと、制作会社任せにしてしまうと、公開済みのページを1文字直すだけでも打ち合わせやコストがかかってしまいます。

また、ウェブサイトの管理を制作会社任せにしていると、コストがかかるだけでなく、企業にとってリスクになります。大災害や炎上騒ぎが起きたとき、緊急でメッセージを出せなくなってしまうからです。

ウェブは何があっても迅速に会社の姿勢を示す、基本的なリスク管理媒体です。すぐに発信できる仕組みを持っていなければなりません。だからといって、制作補助システムである「CMS」を導入する必要はありません。HTMLを書き直せるようになれば、1文字直すのにCMSなど不要です。

今回は、何かあったときにすぐウェブサイトの情報を更新できるように、HTMLという言語がどんなもので、どうすれば書き換えることができるのか、そのルールを紹介します。これを覚えれば、御社のサイトはもっとウェブらしく、日々変えていくことができるものになるでしょう。

HTMLはほぼテキストファイル

HTMLの本質とは「誰でも書き直すことができるテキストファイル」だということです。HTMLは「ウェブを記述する言語」ですが、プログラムのように人間には読めないような特殊なファイルではありません。その中身は「ほとんどただのテキストファイル」で、手持ちのテキストエディタで開くことができるファイルです。まずは、ウェブサイトのHTMLの見方を説明します。

HTMLを見てみたいウェブサイトのページを右クリックし、「名前をつけて保存」をしてみましょう。すると、拡張子が「.html」のファイルを保存できます。

次に、保存したファイルを右クリックし、「プログラムから開く」→「テキストエディタ」を選んで開くことで、文字列が適宜改行されたテキストファイルとして扱うことができます。ここではテキストエディタの「秀丸」を使って開きます。

HTMLファイルを右クリックすればテキストエディタが選べる

ただ、HTMLを読むのは一般にブラウザや各種プログラムなので、文字コードと改行コードが一般にパソコンで扱うのとは違う場合があるので注意が必要です。下手にエディタで開いて保存してしまうと、HTMLで設定されている文字コードと改行コードが、パソコンの文字コードと改行コードに変わってしまうことがあります。たとえば、次の図を見てみてください。

HTMLファイルは最初の方で、文字コードが指定されている

図には、以下のように文字コードが「utf-8」と指定されています。

<meta charset="utf-8">

ウェブ担当者になったら、自分のサイトがどの文字コード、改行コードで記述されているか、知っておく必要があります。最初に制作会社に確認しておきましょう。

次の図は、HTMLを「秀丸」という人気のテキストエディタで「名前をつけて保存」した場合の画面です。一般にはただ名前をつけて、保存先を決めて保存するだけですが、画面下部に「エンコード」(文字コードのこと)と、「改行コード」が選べるようになっています。

保存時に文字コード、改行コードが選べるエディターを使おう

ここまで説明したことのポイントを覚えておきましょう。

  • HTMLの本質はテキストファイルで、テキストエディタから開ける
  • 文字コードと改行コードは複数あり、自社のサイトがどれで記述されているかを知っておく必要がある

HTMLを見ることに慣れよう

まず、ウェブ担当者になったら「HTMLを見る」ということに慣れましょう。簡単にサイトのHTMLを見るには、サイトをブラウザで表示して、ページの上で右クリックし、「ページのソースを表示」を選ぶだけです。以下の図を見てください。

ブラウザの表示と、「ソースを表示」

これがHTMLです。ソースの前半部分はアルファベットだらけで難しく感じますが、これはブラウザに対する指示が大半です。慣れれば意味はわからなくても「どこのサイトも同じようなことが書いてあるんだな」と思えるようになります。

HTMLの前半部分はとてもややこしいが、気にしない!
 

HTMLの書き換え時にタグを消さないようにする

HTMLに見慣れたら、次はHTMLファイルを書き換えていきます。そのとき、タグを消さないように注意しましょう。たとえば、次のような文章があるとします。

ウェブページを自分で更新できるようになりたい!

この文章のうち、「自分で更新」というところを強調したい、と考えたとしましょう。強調したい部分を、以下のように「太字にする」という指示のタグ「<b>」と「</b>」で挟みます。

HTML上の指示: ウェブページを<b>自分で更新</b>できるようになりたい!

実際の表示: ウェブページを自分で更新できるようになりたい!

このように指示することを「タグ付けする」と言います。タグというのは洋服などの商品につける値札や荷札のことで、タグをつければ好きな場所に情報を追加できる便利なものです。

タグ付けすることを英語では「マークアップ」と言います。印を付けるような感覚です。HTMLは「HyperText Markup Language」の略ですが、このマークアップがタグ付けのことです。

先ほど見た図ではアルファベットだらけでしたが、最初の方はブラウザへの指令です。今回書き変えたいのはブラウザへの指令ではなく、日本語のテキスト部分なので飛ばして読んで大丈夫です。以下の図のように、まずは日本語の文章を探しましょう。

同じページとソースの日本語部分
 

この日本語の部分を見ると、ソースもとてもシンプルです。

<p>ウェブサイトは企業にとって大切なものと言われてきました。<br /> 本当でしょうか? ウェブサイトと企業業績には相関があるでしょうか。</p>

以上のように、簡単なタグが使われているだけで、ほとんど単純な日本語文です。タグは段落を指定する「<p>」と「</p>」、改行を指定する「<br />」だけです。このタグを消してしまわないように注意しながら、日本語を書き直してみましょう。

<p>ウェブサイトは企業にとって大切なものと言われてきました。<br /> 本当でしょうか? ウェブサイトと企業業績には相関があるでしょうか。</p>

「の」ひと文字だけ書き加えて、htmlファイルを保存してみましょう。書き換えるときに注意するのはタグを消さない、変えないということだけです。「>」を1つ消して、「<p>」を「<p」にしてしまったら表示されなくなってしまいます。

また、太文字タグ「<b>」は、必ず終了タグ「</b>」とセットで使って「ここからここまで太文字にする」とブラウザに教えますが、もし終了タグ「</b>」を消してしまったら、「<b>」からあとの文章が全部太文字になってしまうので、注意しましょう。

HTML更新してみよう

HTMLに見慣れてきたら、いよいよHTML更新をしてみましょう。先ほど保存したhtmlファイルを以下の手順にそって更新してみましょう。

ウェブの更新作業は、次の通りです。

  1. FTPでウェブサーバーに接続
  2. ページのデータを取ってくる
  3. 書き直す
  4. ウェブサーバーにデータをアップする

順番に説明します。

1. FTPでウェブサーバーに接続

HTMLを更新するためには、ウェブサーバーにHTMLファイルを転送しなければいけません。ウェブサーバーに転送するときは、HTTPではなく「FTP(エフティーピー)」という方法でアクセスします。FTP(ファイル・トランスファー・プロトコル)と呼ばれるもので、ファイルを送受信するときの約束事です。FTPを行うためのアプリは無料で手に入れられますから、パソコンにダウンロードしてください。

ウェブサーバーとは、閲覧者から「このページを見たい」というリクエストがあれば、「はい、そのページはこれですよ」とデータを送り出してくれるものです。サーブしてくれるのでサーバーだと思っておくと良いでしょう。リクエストは多くの場合、閲覧者がブラウザ上で何かのリンクをクリックすることで発生します。

ウェブサーバーにリクエストを出す図
 
FTPアプリ「FFFTP」の設定画面

上の図のように、FTPで接続しようとすると、ホストの設定名、ホスト名、ユーザー名、パスワードなどを設定してくださいと、設定画面が出てきます。この情報は、レンタルサーバー会社から最初に提供されているはずです。

この情報をなくしてしまって、サーバーに接続できなくなってしまう会社は結構多いです。このパスワードはウェブ運営で大切な情報の1つですから、制作会社任せにせずに自社内で大切に保管してください。もしあなたが異動でウェブ担当でなくなることがあれば、後任の担当者に必ずこうした情報をしっかり引き継いでください。

FTPアプリを設定して「接続」ボタンを押せば、アプリの窓の中に、自社ウェブサイトのデータが置かれたサーバーの中が見えるはずです。

2.  ページのデータを取ってくる

FTPでウェブサーバーに接続できたら、下図のように、FTPアプリの窓の中に、いくつかのフォルダが表示されます。サーバーも、パソコンと変わらず、フォルダの中にフォルダをつくってその中にファイルを入れて分類整理するという仕組みです。どのフォルダの中に自分が更新したいファイルがあるかを見つけましょう。

ウェブサーバーからデータをとってくる(再掲)
 

データを探すには、更新したいページをブラウザで開けばわかります。ニュースの1つのページだとすれば、ブラウザのアドレス欄に以下のように表示されます。

http://www.yourdomain.co.jp/news/20201208.html

これがフォルダやファイル名を表しています。

「www.yourdomain.co.jp」というフォルダの中に、「news」というフォルダがあって、その中に「20201208.html」という名前のファイルを今表示しているよ、という意味です。そこで、今見ているFTPアプリの窓で「news」というフォルダを探し、それを開いてその中に「20201208.html」があるかを探すのです。

階層構造については、「階層構造を考えたホームページ構成とは サイト構造やツリーの作り方のヒント【第9回】」を参照してください。

URLがサーバーの階層構造を表している
 

3. 書き直す

更新したい情報が入っているファイルを選んでダウンロードボタンを押せば、手元のパソコンに更新すべきデータが飛んできます。これをテキストエディタで開いて日本語テキストを書き直し、保存します。

 

4. ウェブサーバーにデータをアップロードする

最後にFTPアプリのアップロードボタンを押せば、ファイルがサーバーに飛んでいって更新完了です。

アップロードする場合は、元通りのフォルダに返さなければいけません。別の場所にアップして「あれ、リロードしても表示が変わらない!」と困っている人がいますが、気をつけましょう。

HTML更新に本当に必要な5ヶ条

このように、更新というのは骨組みだけ覚えるのは何も難しいことはありません。ダウンロードして、日本語を書いて保存し、アップロードするだけです。しかし、本当に大切なのはここからです。

ウェブのファイルはウェブサーバー上にある、と言いましたが、実は他の場所にもあるので、これが注意すべき点です。厳密にはウェブのデータは以下の4か所にあります。

  • ウェブ担当者のパソコンの上
  • 制作会社のパソコンの上
  • テストサーバーの上
  • 本番サーバーの上
ウェブのデータはあちこちにあるので、食い違いにならないように!

ここまで説明してきたのは、「本番サーバー」上のファイルを想定していました。自分のパソコンで書き直してアップしましたから、ウェブ担当者のパソコンと本番サーバーのファイルは同じものになっているでしょう。しかし、このままだと制作会社の持っているデータと食い違ってしまいます。制作会社が本番サーバーのファイルが更新されたことに気づかずに、別の部分を直してアップしたら、ウェブ担当者が直した部分は古い状態に戻ってしまうかもしれません。これを「先祖返り」と言います。

先祖返りを避けよう!

ウェブはさまざまな人が関わり、チームで進める仕事です。複数の人がデータを持っていてそれぞれに更新していると、こうした先祖返りは良く起こることです。 ウェブ担当者が自分で更新できることはとても良いことですが、このコミュニケーションができていないと大事故が起こります。「データを消してしまった!」「ファイルをアップしたら表示がおかしくなってしまった!」という問題を避けるためには簡単なルールがありますので、次の5ヶ条を守ってください。

ファイル更新の5ヶ条
  1. ウェブ担当者と制作会社で更新の分担を決める
  2. 必ずバックアップをとってから変更する
  3. テストサーバーで確認してから本番サーバーにアップする
  4. 更新日時、ファイルを記録する
  5. チームに情報共有する

それぞれについて説明します。

1条目 ウェブ担当者と制作会社で更新の分担を決める

まず、分担をおおむね決めましょう。社内では「ニュース」だけ更新するので、他の部分は制作会社が行う、といった分担です。制作会社がもしニュースを更新することになったら、必ずサーバーから最新ファイルをダウンロードして更新することにします。

2条目 必ずバックアップをとってから変更する

次に、サーバーからファイルをダウンロードしたら、必ずいったんコピーをとってから変更しましょう。サーバーにアップして万が一表示がおかしくなったり、サーバー上のファイルを誤って削除してしまったりしても大丈夫。慌てずにコピーしたバックアップファイルをアップすれば、元に戻すことができます。

3条目 テストサーバーで確認してから本番サーバーにアップする

多くのサイトが「テストサーバー」という非公開の領域を持っています。更新するときは、テストサーバーにアップして、問題がないことを確認してから本番サーバーで公開するようにしましょう。自社内で更新する場合にも同じようにします。テストサーバーは本番サーバーと基本的には同じ状態になっているようにしましょう。

4条目 更新日時、ファイルを記録する

記録を取ることも重要です。面倒だと思うかもしれませんが、これは絶対に習慣づけましょう。たとえば「気がついたらページの表示が崩れていた」といったことがよく起こりますが、記録があれば、「何月何日にアップしたときに問題が起こったのかもしれない」と追いかけることができるでしょう。

これは問題を防ぐというだけでなく、攻めの運営を行うためにも重要です。多くのサイトである時点から急にアクセスが増えた、ということが起こります。しかし、いつ何を更新したのか記録がなければ、理由がわかりません。アクセスが増えた理由がわかれば、また同様の作業をすればもっとアクセスを増やすことができるでしょう。しっかり記録をとって、ノウハウを蓄積し、運営を加速していけるようにしてください。

5条目 チームに情報共有する

最後に、チーム全体に情報共有することです。「このページを更新したので、更新記録ファイルを見てください」と、更新メーリングリストに一報するだけ、といった手軽な方法でOKです。これがあれば、更新連絡のメールを一覧するだけで、先祖返りを防ぐことができるようになります。

先祖返りを防ぐ、更新記録ファイルのつくり方

次に、先祖返りを防ぐための更新記録ファイルの作り方を説明します。更新記録ファイルは次のような構成です。

  • 日付
  • ページ
  • 更新内容
  • 評価
  • 備考/詳細

最初にエクセルの1Aのセルに「日付」と書き、その下の2Aに今日の日付を書き入れます。

2021年1月15日

と書いたとします。セルの上で右クリックし、「セルの書式設定」を選びます。「表示形式」タブから、「ユーザー定義」を選びましょう。

「セルの書式設定」を選択

種類の欄が「yyyy"年"m"月"d"日"」になっていたとしたら、後ろに「(AAA)」を追加して「yyyy"年"m"月"d"日"(AAA)」に書き変え、「OK」をクリックします。すると「2021年1月15日(金)」と曜日付きの表示になります。

ユーザー定義の画像

日付の書式が設定できたら、1Aのセルをこのセルの右下の点をマウスでつかんでそのまま下にドラッグし、オートフィル機能で日付を自動入力します。最初にたくさんの日付を入れておいた方が更新記録をとるのに楽なので、ぜひこの形式で作成してください。

更新記録ファイルで日付をコピー

あとは、1Bに「ページ」、1Cに「作業内容」、1Dに「評価」、1Eに「備考/詳細」と書き入れます。それぞれの欄に書き込む内容は以下です。

  • ページ
    ページを更新したら、ブラウザで確認した際にアドレス欄からコピーして貼り付けておく。
  • 作業内容
    「ニュース更新」「ニュース追加」「商品情報変更」「企業情報変更」など、多く行う作業をリストとして登録し、プルダウンリストから選んで記入できるようにする。どれにも該当しない場合は「作業内容」欄を空欄のまま飛ばして、備考の欄に記入すれ良い。
  • 評価
    「◎」「〇」「△」「×」とリスト登録しておいて選択できるようにする。全部の更新に評価を書く必要はなく、「この施策は良かった」「ぜんぜんダメだった」といったものだけ評価が残れば問題ない。
  • 備考/詳細
    リストの登録の仕方は、作成した記録表の外側に項目リストを記載してから「データ」の「データツール」セクションから「データの入力規則」を選び、「設定」から「リスト」を選ぶだけで登録ができる。
リストとして登録した作業内容や評価

このように、更新ファイルの記入を続けていけば、同じ失敗を繰り返さなくなり、良かった施策を繰り返せるようになります。たとえ担当者が変わったとしても、これがあれば、後任者は同じ失敗を繰り返すという無駄ステップを防ぐことができます。

さて、ファイルのありかがわかり、チームで情報共有して更新運営ができるようになりました。ここから先は、もっとHTMLについて学んでいきましょう。

更新しやすいようにつくるのがHTMLの本筋

いかに更新を繰り返すか。これは今でも成果の出るサイトの「必要条件」の1つです。更新したから必ず成功するわけではありませんが、更新できていないサイトが成功することはほとんどありません。まずは、「どんな準備をするか」の問題です。以下3つの準備をしましょう。

  1. 社内の情報流通を良くする
  2. ウェブを更新しやすく作る
  3. ウェブ担当者が更新を覚える

この3つが現実的な準備です。「社内の情報流通を良くする」というのはとても難しいことのように思うかもしれません。実際には、ウェブ担当者が毎週各部門を回る、担当者にメールを送るといった地味な作業です。でも、これが仕事の流れとして定着すれば、徐々に各部門から自然に情報が届くようになっていきます。

次の「ウェブを更新しやすく作る」というのが最も重要な部分です。リニューアルなどのタイミングで、制作会社と相談し、どこを自社更新にするのかを決め、簡単に情報が発信できるようにします。情報発信しやすいサイトのポイントは、次の5点に集約できます。

  1. 緊急メッセージの表示箇所
  2. ニュースのページ追加
  3. ページのテキスト更新
  4. 情報の非表示、削除
  5. 全ページに見せたいページへの誘導変更

これについて、順番にその方法を見ていきましょう。

1. 緊急メッセージの表示/非表示

まず、「緊急メッセージ」です。重要なのは、商品に問題が見つかった、社員が問題を起こした、SNSで炎上が確認されたなどのトラブル時です。いち早く会社としての声明を出すことが必要です。また、大災害時に被災者へのお見舞いメッセージを発信することができれば良いでしょう。これらはほとんど、トップページの上部にメッセージエリアをつくって、予定しておくことでクリアできます。トップページの上部に以下のようなエリアを作っておきます。

<!--
<p id="special_message">ここにメッセージを書きます</p>
-->

HTMLタグの記述については制作会社と打ち合わせをして、挿入しておきましょう。いざというときには「ここにメッセージを書きます」という部分にメッセージを記入すれば、「id="special_message"」という指定に基づいて、スペシャルメッセージのレイアウトが実現されます。「<!--」「-->」にはさまれた部分はコメントアウトと言って、非表示の状態になっています。メッセージを書いたあとはいったん「<!--」「-->」を削除しましょう。

HTMLタグの半角英数文字を触るのは勇気がいることですが、「<!-- -->は削除しても大丈夫」と理解し、慣れておきましょう。たったこれだけのことで、他企業に先駆けてメッセージを発信できるのですから、いざというときに安心です。

お知らせとは別に「緊急メッセージ」を出せるようにしておく

平時にこうしたエリアを準備しておくことは会社としてのリスク管理であり、迅速な対処、早期の火消しにつながります。

2. ニュースのページ追加

残念なことに、多くのサイトでニュース欄が十分に更新されていません。更新日が3年前のまま、といったサイトは少なくありません。ニュースを更新するには、次の3つの作業が必要です。

  • トップページのニュース一覧にニュースを追加する
  • ニュースコーナーのトップのニュース一覧にニュースを追加する
  • そこからのリンク先として、ニュースのページを追加する

ニュースの一覧にニュースを追加するのは簡単です。ニュースは箇条書きで追加する仕組みになっているので、箇条書きの1セットのHTMLをコピーして、一覧の一番上にペーストし、テキストを書き直すだけです。次の例はネットで検索してたまたま見つけたサイトのトップページのニュース部分ですが、ソースを表示すると、次のようになっています。

  <div id="topInfo">

  <h2>お知らせ</h2>

  <ul>

  <li><span class="date">2015年4月1日</span><a href="osirase.htm#03"><span class="list">本社移転のお知らせ</span></a></li>

  <li><span class="date">2014年10月1日</span><a href="aisatu.htm"><span class="list">社長就任のごあいさつ</span></a></li>

  <li><span class="date">2014年10月1日</span><span class="list"><a href="osirase.htm#02">社長退任のごあいさつ</a></span></li>

  </ul>

  </div>

最新のニュースが5年以上前のままです。検索すると、このような止まったサイトが多く出てきます。ウェブ担当者に聞いてみると「うちは新製品もめったに出ないし、ニュースなんてありませんよ」と言うのですが、冒頭に書いたように、カラーバリエーションなど製品の一部が変わっていて、サイトが最新の情報を反映していないということがあちらこちらで起こっています。

実際に書き変えする手順を説明します。<li>~</li>にはさまれた部分が、ニュースの一項目です。その先頭にある「2015年4月1日」といった部分がニュースの発信日付、次がニュース内容とリンクの記述です。この<li>~</li>をコピーして、一覧の一番上にペーストし、一部を書き直すだけです。

  <div id="topInfo">
  <h2>お知らせ</h2>
  <ul>
  <li><span class="date">2021年1月1日</span><a href="product1.html"><span class="list">製品1の機能が向上しました</span></a></li>
  <li><span class="date">2015年4月1日</span><a href="osirase.htm#03"><span class="list">本社移転のお知らせ</span></a></li>
  <li><span class="date">2014年10月1日</span><a href="aisatu.htm"><span class="list">社長就任のごあいさつ</span></a></li>
  <li><span class="date">2014年10月1日</span><span class="list"><a href="osirase.htm#02">社長退任のごあいさつ</a></span></li>
  </ul>
  </div>

既存のページを更新したお知らせを出すのであれば、新規のページは必要ありませんから、このようにするだけで作業は完結です。たったこれだけの作業で最新情報に訪問者の注目が集まるのですから、ぜひ実践しましょう。これをやらないで、サイトを「リニューアルしたまま早3年」といった状態にしておいて、「お問い合わせが来ないなあ」じゃない!と考えてください。

例の中の下の部分が、ページへのリンクです。

<a href="osirase.htm#03">~</a>

この「osirase.html#03」を、「products/product1.html」と書き直せば、製品情報の中の製品1のページへ飛ぶようになります。ブラウザで飛ばしたいページを表示し、アドレス欄からコピーすれば、スペルミスも起こりません。リンクを記述したらテストのタイミングで必ずリンクをクリックして、ちゃんと飛ぶかどうかを確認します。

一番大きな変更が必要になるのは、新規ニュースのページを追加する場合です。ただ、ほぼテキストだけで構成されたニュースページなら、誰でも追加できるようになるので、制作会社と相談して、準備しましょう。大切なことは、ニュースページのひな形を制作会社につくってもらって、手元に持っておくことです。

ひな形には以下のような部分があるはずです。

 <h1>大見出し</h1>

 <h2>小見出し</h2>

 <p>本文はここに書きます。</p>

ここを書き直してアップするだけなので、どこを書き直せば良いか、ひな形をつくった制作会社さんにマニュアルをもらって練習しましょう。テストサーバーーで確認するので、恐れる必要はまったくありません。

3. ページのテキスト更新

すでに掲載済みのページでテキストを書き直すなら、以下の作業をするだけです。

  • 本番サーバーから対象ファイルをダウンロードしてバックアップする
  • 対象ファイルをテキストエディタで開く
  • 英数半角のHTMLタグ部分を触らないようにして、日本語の文章部分を書き直す
  • テストサーバーにアップして確認
  • 問題なければ本番サーバーにアップして完了

更新の際に、ミスが起こるのは以下のような理由が主です。

  • タグのない、変な場所にテキストを書いてしまうと、変な場所に表示されてしまう
  • タグの一部または全部を消してしまうため、表示がおかしくなったり、表示されなくなったりする

バックアップと更新ファイルを比較して、どこかおかしなところがないか探しましょう。15分くらい探しても見つからなかったら、諦めてバックアップファイルに戻って、もう一度ファイルをコピーしてやり直してください。多くの制作会社が、クライアント企業が更新するのを嫌がるのは、こうしたミスを起こすのがほぼ確実だからです。突然電話がかかってきて、「表示がおかしくなっちゃったから何とかして」と言われると制作会社はとても困ります。

担当者が練習する、テストサーバーを使う、という2つのことだけでこんな不毛なことは起こらなくなります。ぜひ今から、自力更新に向けて練習を始めてください。ここまで書いたような作業であれば、CMSは不要です。

HTMLの本質は、文責者自ら情報を書き直して発信できること、瞬時に更新できるにあります。サイトがどんどん最新の情報を発信して、ウェブらしい役割を果たすようになって初めて訪問者はサイトを見る価値を感じ、その結果、訪問も増え、お問い合わせや商品購入も発生しやすくなります。

このように成果が出て初めて、企業がウェブの価値を評価するようになります。また、企業のウェブ担当者が簡単な更新作業をできるようになれば、制作会社は更新作業に手をとられなくなり、より攻めのウェブ運営を提案しやすくなります。

4. 情報の非表示、削除

新情報の発信だけでなく、情報の削除も重要です。もう売っていない商品がサイトに載っている、というのはダメです。廃番商品についてお問い合わせが来て、営業を困らせるという問題も発生します。不要になった情報は削除、もしくは「非表示」にしましょう。

削除すると、「やっぱりあの情報を載せておきたい」と言われたら困ります。そのため、企業サイトには大昔に要らなくなった情報やページがたくさん残されています。担当者が異動で変わってしまうと、その当時の事情がわからないので、「このファイル、要らないと思うんだけど、削除するとどういう影響があるかわからないので残してある」と、誰も削除できなくなっています。

こうした無駄ファイルがサーバーを埋めていくと、担当者が管理しにくくなったり、要らなくなったページが検索エンジンで紹介されたり、外部からリンクがはられていて集客したりしている可能性があります。

不要と思われるページが見つかったら、まずは本体と同じGoogleアナリティクスのタグを入れて、どれくらい見られているか、集客しているかを確認してください。タグを入れて2週間くらい見て、「アクセスもほとんどないな」と確認できたら削除しましょう。意外に集客が多いということがわかったら、ページ内容を刷新して、同じURLで再デビューさせましょう。

特定の記述やページを削除するには、2つの方法があります。

  • バックアップをとってから物理的に削除する
  • リンクを見えなくすることでサイト内から参照できないようにする

物理的に削除する簡単な方法を紹介します。不要と思われるページをダウンロードして、バックアップを取ります。そして、ダウンロードしたファイルは「削除済みページ」というフォルダに入れましょう。また、あとで再現する可能性に備えて、フォルダ構成を再現して置いておきましょう。

たとえば製品情報の中の詳細なページで、以下のようなURLがあったとします。

https://www.somedomain.co.jp/products/product1/iranakunatta.html

「削除済みページ」フォルダに「products」フォルダを作り、さらにその中に「product1」フォルダを作って、その中にページデータを入れます。これでサイト構成が手元で再現されました。

このようにフォルダ構成でURLを再現しておけば、名前がぶつかることもありません。もう一度掲載しなければいけない、という際にも、サーバーのどこにアップすれば良いかがわかるでしょう。

2つ目のリンクを見えなくする方法は、先に書いた「無駄ページ」を生み出す方法なので、あまり推奨しませんが、担当者に気軽な方法だと言えます。先に書いた「コメントアウト」を利用します。

たとえば、以下のような要らなくなったページのリンクがあったとします。

<a href="iranakunatta.html">このページをご覧ください</a>

<a></a>がリンクを示すHTMLタグで、href=""で書かれているのがリンク先の(不要になった)ページを指し示しています。これをコメントアウトすれば、リンクが表示されず、クリックできなくなります。

 <!--

 <a href="iranakunatta.html">このページをご覧ください</>

 -->

もしくは、タグにビックリマークを入れれば、リンクが働かなくなります。この場合はテキストが消えずに残るので、文章の途中にリンクがある際にはお勧めです。

<!a href="iranakunatta.html">このページをご覧ください</a>

まずこのような方法でリンクを見えなくしてから、ページファイル自体を物理的に削除するようにしましょう。

5. 全ページに見せたいページへの誘導変更

最後に、今のウェブサイトでほとんどできていないリンク作業について、お伝えしておきます。ちょっとしたオプションテクニックなのですが、とても効果が高いので、ぜひ覚えてください。

サイトの中に、会社からの重要なメッセージや見せたいページへのリンクがどこにあるか、と言えば、多くがトップページです。ところが、検索や広告の発展にともなって、トップページの閲覧率はどんどん下がっています。Googleアナリティクスでデータを見ている会社なら、次の項目を見てください。

  • 行動 > サイトコンテンツ > すべてのページ で、トップページの「ページ別訪問数」を見る
  • 行動 > サイトコンテンツ > すべてのページ で、「閲覧開始数」の総数を見る

どの訪問者もどれかのページで閲覧開始をするので、閲覧開始数の総数が、その期間の訪問数とほぼイコールになります(数人の誤差が出ることはあります)。すると、以下のような計算ができます。

トップページのページ別訪問数 2,000人 ÷ 閲覧開始数の総数 5,000人 ×100 = トップページ訪問率 40%

昔はほとんどの人がトップから閲覧を開始したので、トップ訪問率は70~80%でしたが、今は別のページから閲覧開始してトップを見ずに帰る人が増えているので、トップ訪問率は20~25%程度に下がっています。これは活発なサイトほど率が下がります。私が見たことのある一番低いトップ訪問率は0.1%でした。訪問者1,000人に1人しかトップを見ていないのです。

トップ訪問率が非常に小さい場合、「トップにだけ記載した情報やリンクは誰も見ていない」ということが発生します。トップページは重要なページですが、その役割は変わってきています。

以前、トップ訪問率が高かった時代には、トップは多くの新規訪問者の玄関として、歓迎し、良いイメージを与え、次のページに誘導するのが役割でした。しかし、トップ入口率が下がると、トップから来るのは新規訪問者ではなく、既存顧客など会社名や商品をもともと知っている人が多いことになります。

そうすると、新規訪問者を歓迎する役割はほとんどなくなり、既存顧客に最新製品や会社の新しい取り組みを伝える役割に変わってきます。既存顧客も、自分が持っている製品のページから閲覧開始することも多く、トップを見る人は減っていきます。

70~80%の人がトップページ以外のページからサイトに訪れ、トップを見ないで帰るという状態になってくると、トップだけに掲載したニュースやバナーは誰も見ないことになります。その状態で「訪問者の80%にあるリンクを見せたい」「特定の商品ページを見るようにしたい」と考えるなら、多くの訪問者が見るように、多くのページにリンクやバナーを掲載する必要があります。

しかし、「ある商品を見せたい」という状態は、会社の営業タイミングによってどんどん変わります。多くのページに掲載したリンクをさっと消せしたり、書き変えたりできるようにしておきましょう。

これは、どこにリンクを掲載するかを決めて制作会社に依頼するだけで解決できます。たとえば、図左のように、各ページの下部やナビゲーションの下はスペース的に余裕があります。スマホサイトでは図右のように、1タップで新製品情報がいつでも見られるようにしておいて、そこをいつでも書き換えられるようにしておくと便利です。

リンクやバナーを掲載する場所はどこ?
 

この部分に必要な情報を表示して、いつでもウェブ担当者側で書き換えられるようにする方法はいくつか考えられます。たとえばJavaScriptを埋め込んでおいて、このスクリプトが1つのテキストファイルを読み込んで表示するようにします。そうすれば、ウェブ担当者がそのテキストファイルを書き換えれば、スクリプトが埋め込まれたすべてのページに自動的にその内容が表示されるようになります。このテキストファイルを何も書いていない状態にすれば、表示されるものもなくなって、誘導リンクが消えてくれます。

スクリプトのような仕組みを使って、主力製品を見に来た人が新規製品にも気づくようにしておけば有効です。こうして、見せたいページにどんどん人を移動させる仕組みを導入することが重要なのです。

このスクリプトを自分で記述するのはやや難しいでしょうから、制作会社に相談して導入を行いましょう。ウェブ担当者はタイミング良くテキストファイルを書き換える方法さえ知っておけば、楽にウェブを戦力化できるのです。

簡単なところは社内で手早く更新し、制作会社には本当に重要なページ作成を依頼するようにしていってください。

また長くなってしまいました。次回は皆さんの関心の高いところだと思いますが、SEOやコンテンツ作成の前にぜったい知っておくべき検索エンジンの仕組みを考えていきましょう。

HTMLの本当に大切なこと

企業のウェブ担当者がHTMLを触ると言うと、必死になって止めようとする制作会社があります。なぜなら、せっかくきれいにHTMLを書いて合理的な運営ができるようにしているのに、クライアントが下手に触ることでデータが汚くなってしまったり、最悪の場合はデータを壊してしまって、夜中にたたき起こされて朝までかかって復旧させられたり……ということを、どの制作会社も経験しているからです。

止めようとする制作会社の気持ちはわかりますが、ウェブというのは作ったらそのまま形を維持するものではありません。本当に大切なことは、ウェブは「情報発信者」のものだということです。

情報発信者が思うように、思ったときに変えられるのがウェブです。今日本の大半の中小企業サイトが「成果がない」と嘆いているのは、作りっぱなしだからです。

しかし、ウェブサイトは触っていれば絶対に壊れていきます。長らくリニューアルしていないサイトは、どこに何があるかわからないようになります。それでも、10年前に作ったきりで美しいサイトより、情報を追加した結果、どこに情報があるかわかりにくくなったサイトの方が生きています。アクセスやお問い合わせの数は後者の方が多いはずです。ですので、どんどん情報を出しましょう。

今は、なぜかSEOの法則としてしか知られていませんが、どうして検索エンジンは「更新の多いサイトは良いサイトである」「時間の試練に耐えた情報は良い情報である」と考えているのでしょう? それは情報発信者自身が情報をメンテナンスしてどんどん書き換えていて、その中で生き残っている情報は信頼できる情報だと言えるからです。

ウェブは、昔はたくさんのページを持つものではなく、少ないページ数で、それぞれのページが更新を繰り返すものでした。社長のメッセージが毎月変わる、といったものだったのです。リンク集があって、新しいリンク先が追加されたり、削除されたり、どんどん変わっていました。製品情報もちょっとずつ詳しくなっていきました。開発者が利用者の質問に答えることで、FAQは育っていきました。だからこそ「Frequently Asked Question」、これはユーザーとの対話なのです。

ウェブとは、同じページをどんどん更新するもの

まとめ

HTMLの本質
  • HTMLはテキストファイル
  • 文責者自ら情報を書き直して発信できる
  • 瞬時に更新できる
  • 難しそうに見えて、実は書き換えやすいもの
  • 準備さえしておけば、楽に書き換え、戦力化できるもの

第13回に続く

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この記事の筆者

石井 研二(MILS)

株式会社ミルズ 主任研究員

雑誌編集、通販カタログ企画を経て、95年からウェブプロデューサ。Web黎明期からアクセス解析を使い、多くの企業サイトを成功に導く。「直帰率」という言葉の生みの親として知られる。

Webそのもののコンサルティングから、Webを絡めた売上向上やコスト削減など経営全般に関わるコンサルティングが増えてきたため、企業分析と企業Web分析を組み合わせて「すべてを見る」ことをコンセプトとした分析会社「ミルズ」を設立。株式会社ミルズ主任研究員。

著書に『ウェブ立地論 ~“来てほしい人にアプローチする"集客につながる顧客目線のウェブの作り方』『ガッチリ成果を出すWeb担当者の教科書 ~便利テンプレートデータで実務を効率化!』(技術評論社)、『改訂新版アクセス解析の教科書』(翔泳社)等がある。

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