もしも、「家庭用太陽電池」を比較検討するなら(後半:京セラを調べる)[第21回]

「太陽光発電システム」サイト比較の後半。前回のシャープに引き続き、今回は京セラをかってに解析!
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誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。

木曜9時は「かってに解析!」ということで、毎週連載「有名サイト、かってに解析!」では、有名サイトを取り上げ、アクセス解析で実際に解析データを見る前に、あらかじめサイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。

今回は家庭用の太陽電池パネルのメーカーを選定するという目的の2回目。前回はシャープの太陽光発電システム「サンビスタ」を取り上げた。今回は比較検討のもう一製品である京セラの「住宅用太陽光発電システム」のサイトを取り上げる。

このコーナーではさまざまな業種業態のサイトを取り上げ、課題の抽出や考察を行うのだが、筆者はあらゆる業種の各企業やサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。

京セラ「住宅用太陽光発電システム」のファーストインプレッション

図1が京セラの「住宅用太陽光発電システム」のトップページだ。メインビジュアルでは「価格帯はどのくらい?」「サポート比較」「実物を見たい」という3つのボタンが並んでいる(赤枠で囲んだ部分)。

一方、前回取り上げたシャープの「サンビスタ」では、「対面ご相談窓口」「発電量を試算する」「早わかりガイド」の3つを表示している。それぞれで訴求したいポイントに差があるので違いはあるが、最終的には展示場へ行ってもらうこと、相談に来てもらうということが、両サイトに共通の狙いのようだ

さて、京セラの「住宅用太陽光発電システム」のトップページは非常に縦に長い作りになっている。ページが長くなっている要因は、ニュース・お知らせ、店舗情報のリンクがそれぞれ10個以上並んでいるのと、一番下にサイトマップ的なリンクが多く並んでいるためだ。以前にも触れたことがあるが、個人的にはトップページはなるべくシンプルにして、ユーザーの興味に応じて動きやすくしてあげるユーザーインターフェイスの方がよいと思っている。このトップページはもう少しシンプルにした方がよいと感じた

今回のシナリオでは家庭用の太陽光発電パネルについて見ていくわけだが、京セラのトップページでは、「公共・産業用太陽光発電システム」のリンクボタンが右上にある(図1の緑枠で囲んだ部分)。太陽光発電と言えば家庭用というイメージがあるが、公共施設向けの太陽光発電という需要もあるわけで、そのケースに対応したボタンがわかりやすい場所に置いてあるのは好感が持てる

太陽電池パネル選定の閲覧シチュエーションを想定

さて前回からの続編である今回のテーマは、家庭用の太陽電池パネルのメーカーを選定するという目的であることは冒頭に紹介したが、具体的には次の通りだ。前回と同じだが、おさらいしておこう。

今回の想定閲覧シチュエーション

利用者家庭用太陽光発電の仕組みなどの基礎は知っている人
目的自宅に太陽光パネルを導入した場合の費用と、費用の回収期間を知りたい
サイト訪問時の
具体的なアクション
  • 導入した場合の費用を大雑把に把握すること
  • 何年で元が取れるのかを把握すること
  • 相談に行く申し込みをすること
  • 京セラの「住宅用太陽光発電システム」をエキスパートチェック
  • まずは導入費用をおおざっぱに把握したいが…
  • 100万円、200万円、300万円のケースがあるらしい

京セラのサイトをエキスパートチェック

前回と重複するが、「Yahoo! JAPAN」でも「Google」でも「太陽光発電」と検索すると、京セラの「住宅用太陽光発電システム」のサイトは検索結果ページ(図2)の1ページ目の下の方に表示されている。メーカー系ではシャープ、三菱電機に次いで3番目に表示されている。これをクリックして京セラの「住宅用太陽光発電システム」のサイト(前ページの図1)へ移動することになる。

図2:Google検索で「太陽光発電」と検索した画面

まずは費用をおおざっぱに把握したいが…

それでは京セラの「住宅用太陽光発電システム」のサイトを歩いてみよう。今回のシナリオの最初の目的「導入した場合の費用を大雑把に把握する」に対応するコンテンツとしては、トップページのメインビジュアルの「価格帯はどのくらい?」がピッタリなように見えるので、さっそくそのボタンをクリックすると、図3へ飛ぶことになる。

図3:「価格帯はどのくらい?」のページ

価格例としては100万円、200万円、300万円という3つのパターンを提示して自分の予算感に合わせて選択できるのでわかりやすい(赤枠で囲んだ部分)。それに加えてそれぞれ太陽光パネルの設置面積の目安なども対応して表示されていると、それだけで全体像をもっとよくイメージしやすくなるのではないかと感じた。

このページの左上には、「展示場で実物を見る」「お問合せ・販売窓口」「簡単お見積り」という3つのボタンが配置され(緑枠で囲んだ部分)、ユーザーが行動を起こしやすいような作りになっている。またその下にあるローカルナビゲーションがあることで、現在見ているページの位置がわかりやすくなっている。

200万円のケースをよりくわしく見てみよう

ここでは約200万円のケースの「費用詳細」のリンクをクリックして進んでみよう。「費用詳細」をクリックすると、図4の画面が新しいウィンドウで表示される。

図4:「費用詳細」のページ

ここで表示される費用は、工事費を除いた太陽電池モジュールと付随する機器の希望小売価格である。そのため全体の費用感まではわからない。そして太陽電池モジュールの使用枚数は16枚であることが書いているのだが、結局それがそのくらいの設置面積になるのかというのは、依然としてわからないので、自宅の屋根の広さのどのくらいの割合になるのかといったイメージも湧かない。

  • 補助金の額を知りたい
  • 費用の見積もりをしてみよう
  • 見積もりを申し込む

京セラのサイトをエキスパートチェック(続き)

補助金の額を知りたい

続いて費用に関係するものとして補助金がどのくらいの額になるのかを調べてみることにしよう。トップページでも「価格帯はどのくらい?」のページなどでも「補助金がもらえるの?」のリンクボタンがあるので、そこから移動してみよう。

図5が「補助金がもらえるの?」のページで、国からの補助金や自治体からの補助金があること、金額の例も表示されているので、理解しやすいページになっている。

図5:「補助金がもらえるの?」のページ

費用の見積もりをしてみよう

補助金が大雑把に理解できたので、続いて「簡単お見積り」でいよいよ費用の見積もりをしてみよう。まず大雑把に100万円から300万円の例示をした上で、「簡単お見積り」に誘導することができるので、この流れはスムーズにできる。「価格帯はどのくらい?」のページにある「簡単お見積り」ボタンを押すと、図6が表示される。

図6:「簡単お見積り」のページ

「屋根の形などで大きく金額は変わる」など、ポイントが4つ書いてある(赤枠で囲んだ部分)。4つ目のポイントとして、「見積もりに1週間程度の時間がかかる」ということが記載されている。オンラインで見積もりを完結することができないらしいので、下の説明を読み進めていく。家の外観写真と図面を送らなくてはならないらしい。4つのポイントの下にある[簡単お見積り+設置イメージサービスを申し込む」ボタン(緑枠で囲んだ部分)をクリックしたのが図7だ。

図7の赤枠で囲んだ部分に記述がある通り、この申し込みをすることで、見積もりは販売店が持ってくるということになるので、当初のシナリオの「相談に行く申し込み」というのをこれで達成することができる。入力項目は住所、氏名、電話番号、メールアドレスに加えて、任意で下にアンケート項目がいくつか続いている作りになっているので、それほど負担はないだろう。最低限の情報を入力して[確認画面へ]ボタンを押した後の画面が図8だ。

ここまでそれほど敷居は高くなく簡単だった。この後くる返信メールに記載されているアドレスへ「写真・図面」を送ると受付が終了ということになるが、筆者は図8の段階で終わりにした。

想定閲覧目的の達成度合いは?

今回想定した閲覧目的は、以下の3つだった。

  • 導入した場合の費用を大雑把に把握すること
  • 何年で元が取れるのかを把握すること
  • 相談に行く申し込みをすること

京セラの「住宅用太陽光発電システム」サイトを見てきて、結果的に今回想定したサイト訪問時の具体的なアクションの達成度合いは下記の通りだった。

目的達成度合い
導入した場合の費用を大雑把に把握すること未達成
何年で元が取れるのかを把握すること未達成
相談に行く申し込みをすること達成
  • 前回+今回のまとめ
  • アクセス解析の視点からはどこに着目するか?

前回+今回のまとめ&アクセス解析の視点からどこに着目するか?

それでは最後に、データ解析的にはどういうところに着目して数字を見たらよいかについて述べる。前回のシャープの住宅用太陽光発電システムのサイトと共に考えていきたい。

  1. トップページの見られ方

    特に京セラのサイトは縦長だったわけだが、どのくらい下までスクロールされているのかというユーザー行動を見ておきたい。そして配置関係が適切かどうかを見るためには、どの場所のリンクがどれだけクリックされているのかというデータを見ておきたい

  2. 人気ページ

    人によって見る順番はさまざまだと思うので、全体でどのページが閲覧されているのかをやはり見ておきたい。おそらくそのデータから、トップページに表示するコンテンツのリンク配置などの参考にしたい。

  3. 見積もり、相談申し込み

    サイト運営側の一番の目的は、関心のある方に行動を起こしてもらうことだ。シャープのサイトであれば、フリーダイヤルによる電話予約や「対面ご相談窓口」の予約申込み完了などが一番顧客になりそうな層である。カタログダウンロードや資料請求をしたユーザーも関心の高い層であると想像できる。また具体的な行動を起こさなくても販売窓口のページを見る人も潜在顧客と考えてよいだろう。

    京セラのサイトであれば、「お問合せ」「簡単お見積り」「展示場で実物を見る」という3つのボタンからの行動が該当するだろう。京セラのサイトでは、まずは「実物を見てもらう」→「資料請求・お問合わせ」→「簡単お見積り」という誘導を意識的にしているように感じる。トップページではメインビジュアルにある唯一の行動を促すボタンが「実物を見たい」であるし、さらに「全国の販売窓口」のページの一番下を見ても、まずは実物を見てもらい、資料請求してもらい、最終的には見積もりしてもらうという流れを提示しているからだ(図9)。そこで、本当にその通りの流れになっているのかといったところも注目してみたい。おそらくここは、展示場に来てくれた人の購入率が高いというデータが出ているため、意識的に誘導しているのではないかと推察している。

    図9:「全国の販売窓口」のページの下方にあるボタン群

    これらの行動を起こしたりページを閲覧したりした人の絶対数と、全体訪問回数に対する割合(いわゆるコンバージョン率)を把握しておきたい。さらにコンバージョンした人が見たコンテンツを把握しておきたい。

  4. 集客別の分析

    検索連動型広告を行っているのか、キャンペーンを行っているのかはわからないが、積極的な集客施策をやっているのであれば、当然ながら集客別のコンバージョン率などの分析をして、集客効率のよいキーワードやキャンペーンの掲載媒体や内容を明らかにするといったことも大事な分析軸となる。

◇◇◇

今回の家庭用太陽光発電サイトの比較はいかがだっただろうか? 競合する商品を扱うサイト同士というのは、お互い相手のサイトはこまめにチェックしているためか、サイトの構成や訴求ポイントも自然と似てくることが多い。その結果、実際のユーザーの視点がすっぽり抜け落ちている場合も少なくない。競合サイトを漫然と比較するだけでは、そうした箇所に気づけないこともある。そうした事態を避けるためには、単一のサイトを見る場合でも、競合サイトを比較する場合でも、まずはあらかじめ、想定ユーザーの閲覧目的を考えておく、というのが、かってに解析で成果を得るためには重要ではないかと思っている。

さてこの連載では、

  • Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
  • 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論

などを随時募集している。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。

この記事の筆者

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社へ。調査部、インターネット視聴率センター長などを経て、2000年ネットレイティングスへ。視聴率サービスやアクセス解析サービスの立ち上げに尽力。2006年株式会社クロス・フュージョンを設立し代表取締役に。2023年活動停止。

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