モバイル=若者向けメディアはもう古い - モバイルユーザー像を究明/モバイルユーザー攻略マニュアル#0

調査をもとにモバイルユーザーを5つのタイプに分類し、ユーザー像を明らかにしていきます
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さらに進む企業のモバイル活用

2004年に3キャリアでパケット定額制サービスがスタートして以来、モバイルのインターネットユーザーは増加を続け、それとともに大手企業・メーカーのモバイルサイト活用が進みました。現在にいたってはPCのWebサイトとあわせてモバイルサイトを開設する企業は珍しくなく、コンシューマ向けビジネスを行う企業にとっては、モバイルサイトは必須ともいわれています。

2008年のモバイルコンテンツ市場は4,835億円、モバイルコマース市場は8,689億円に達し、合計で前年比17%増の1兆3,524億円と成長しています(平成21年、総務省「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査結果」より)。このような市場成長の流れを受け、各企業はモバイル活用を本格的に実施・検討を始めている状況だといえるでしょう。近年では、日本コカ・コーラ社や日本マクドナルド社といった企業が、積極的にモバイルを販促に活用し、効果を得ているといった事例が注目を集めています。

その他、楽天市場では、2008年のPCサイトの売り上げが前年比20%増にとどまったのに対して、モバイルの売り上げが前年比50%増を記録し、今後のモバイルの売上拡大へ期待をよせていますし、mixiでは、2008年にモバイルのページビュー(PV)がPCサイトのPVを超え、広告売上全体のうちモバイルが占める割合が4割に達したと発表されています。また、資料請求をする人のうち、3人に1人がモバイルからという業界もあります。

IMJモバイルが2009年12月に企業へ行ったモバイルサイト制作の予算調査でも、現状最も予算配分の多いメディアは「テレビ」との回答が最多でしたが、今後予算比率を増やしていくメディアとしてPCに次いでモバイルが2位にあげられており、今後ますます企業のモバイルサイト活用が進むでしょう。

図1 2009 IMJモバイル「企業のモバイルサイトへの取組み実態調査」

モバイルユーザーの姿をイメージできない

いざモバイルを活用しようと考えたときに企業の担当者が必ず抱える悩みがあります。

どんな人たちがどのようにモバイルの利用をしているのかよくわからない
ターゲットとしている世代にモバイルはどう活用すべきなのか知りたい

といったものです。

これは、ユーザーのライフスタイルによってモバイルの利用方法がさまざまである現状のなか、企業の担当者が、自身とライフスタイルの異なる多様なモバイルユーザーの利用シーンを想像することが難しいという背景があります。実際、10代向けの商品のプロモーションサイトを構築したものの、集まった会員属性は30代がほとんどという事態が起こることもあります。

5年ほど前までは、“モバイルは10代向き”“モバイルは主婦と相性よし”という定説のようなものがありましたが、もはやモバイルは30代、40代まで含めたオールターゲットのメディアになってきました。よって、世代やライフスタイルによってモバイルの価値や使い方に差がでてきており、ターゲットごとに利用動向を把握し、施策を行っていくことがモバイル活用成功へのカギになるのです。

では、どのようにターゲットユーザーを分析し、モバイルを効果的に活用していけばいいのでしょうか。

モバイルは、テレビ、雑誌といったマスメディアや、Webサイト、その他の紙媒体などのコンタクトポイントのハブとしての役割を持っています。ユーザーはモバイル単独で情報に接しているというよりは、他メディアを通してたどりついたり、または同時に接触したりするシーンのほうが一般的です。

図2 モバイルコンテンツへの接触経路
n=1102、携帯電話を利用している15歳~59歳の男女。※ビデオリサーチインタラクティブ『ケータイ2009edition』をもとに作図

そこで、この連載ではモバイルユーザーの動向を理解するために、従来の世代・性別という軸に、新たにメディアとの接触タイプという切り口を加え、攻略方法を捉えてみることします。第1回では、まず分類した5タイプのユーザーの全体像を紹介します。

メディア接触の違いから5つのユーザーに分類
タイプ分類の仕方、各タイプの属性別構成比とは

メディア接触の違いから5つのユーザーに分類

タイプ分類の仕方

各メディア(マスメディア、PCサイト、モバイルサイト)に対して、平日にプライベートで接している時間をもとに、以下の5タイプに分類しました。

5つのモバイルユーザータイプ
図3 モバイルユーザーのタイプ一覧
モバイル利用時間については、モバイルでの1訪問での平均滞在時間は5分程度であることから、2倍の10分を指標としました。※引用元:携帯端末インターネット利用実態データ、「myRTモバイル

各タイプの属性別構成比

5つのタイプに分類したモバイルユーザーが、どのような性別や年代の人で構成されているか、属性ごとに比率と傾向を見てみましょう。

図4 5タイプの属性別構成比
※「平成21年10月総務省全国男女別推計人口」にてウェイトバック集計により推計

まず、モバイルを長時間利用しないモバイルライト型(グレー色)が世代を追うにつれて多くなっていることがわかります。とくに40代男性になると顕著です。これは、もともとPCからインターネットを始めた世代であり、ケータイよりもPCのネット利用率が高いことが理由に考えられます。また、モバイルも暇つぶしのツールとしてではなく、乗り換え検索など、目的を持ってピンポイントで短時間の利用にとどまっていることも考えられます。

世代ごとに見ていくと、10代では各タイプがバランスよく出現しています。他の世代に比べるとPCサイトを利用しないモバイル&マス型(黄色)とモバイルオンリー型(緑色)が他の世代に比べて多いのが特徴です。

20代では10代に比べマルチメディア型が多くなり、モバイル&マス型は少なくなる傾向があります。これは、20代前半のモバイルでインターネットを始めた、いわゆるモバイル世代と、20代後半のPCとモバイルでのインターネットをほぼ同時に始めた世代が混在してくることと、モバイル世代が社会人になり、職場でPCを使いはじめたことが要因としてあげられます。

30代、40代を見てみると、まず、性別によって傾向に差が出ていることに注目できます。これは、結婚・出産といったライフスタイルの変化が影響を与えていると考えられます。

30代を見ると、女性ではマルチメディア型が増えていくのに対して、男性では20代に比べ、ネット型が多くなります。女性の30代と40代に注目すると、30代でモバイルオンリー型が、40代でモバイル&マス型が多くなっているのも特徴です。“子育て中の主婦”と“子育てが落ちついた主婦”といったライフスタイルの違いも想像できるでしょう。

次回から攻略編に突入

今回は連載の第1回ということで、調査から見えてきたモバイルユーザーの全体像を紹介しました。次回以降、分類したそれぞれのタイプがどんな人物なのかをひもとき、どういった施策がユーザーに刺さるのか、企業のモバイル活用事例なども交えながら、モバイルでの攻略法を明らかにしていきます。次回はマルチメディア型を攻略予定です。

  1. マルチメディア型
  2. ネット型
  3. モバイル&マス型
  4. モバイルオンリー型
  5. モバイルライト型
この記事の筆者

株式会社IMJモバイル モバイルナレッジラボ

モバイルナレッジラボでは、日々進化を続けるモバイルを取り巻くさまざまなテーマについて、多様な視点から調査・分析を行い、世の中に発信していくことを目的として活動を行っています。


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