前に見た商品がバーンって出てきてピッと飛んでパァっとなったんや!【オカンでもわかるリターゲティング広告の基礎】

買い忘れた商品を教えてくれる?「Cookie」が支える便利なネット世界(連載第3回)
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この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。

ネットショップを始めたオカンにいろいろ教えることになった僕。オカンは集客やサイト改善をみるみるとマスターし、ECサイト運営の楽しさにハマっている様子。そんなオカンに運命の再会が……!? イラスト◎浮蓮 要

登場人物

 大学院を卒業後、地元大阪の大手メーカーに就職したが、なぜか配属された広告宣伝部でアドテクに興味を持ってしまい、あっさり東京のインターネット広告会社に転職してしまった。現在入社3年目の27歳。オカンには「虎の子は虎やな」とわけのわからないコメントをもらったが、たぶん応援してくれていると信じて毎日楽しく忙しく働いている。

オカン 純然たる大阪のオカン。自慢(?)のファッションセンスをビジネスにいかそうとネットショップを始めた。

姉ちゃん 僕が知らないところで、オカンのネットショップを手伝っているらしい。

ある日、オカンに事件が起こったらしい

さ~て、日課のエゴサーチとネットサーフィンでもして寝よか~って、こっ、これは……!!!!!

※オカンです。

……てな、買おうかどうか迷っとった商品が、ぜんぜん違うサイトでこう、バーンと出てきてな、クリックしたらビッとその服のページに飛んでな、アタシもうパーッとなってしまったわ。まるで買い忘れていた物を教えてくれたみたいやった。物忘れの激しいお父ちゃんとは大違いや。ケータイの中にあたしだけの妖精でもおるんかいな。どうしてこんなことできるんや?

それはね、「Cookie」(クッキー)っていう仕組みが利用されていて、オカンのスマホでどの商品を見たか情報が記録されているからなんだ。

あんたなぁ、いくらなんでもアタシかて食べ物がケータイの中に入るとは思わへんで。

お菓子のクッキーじゃないよ

なんやて! じゃああれか、あのお笑い芸人・野生爆弾のくっきーのことやったんやな!

違うよ

そしたら、なにか!? モデルさんの!?

くみっきーじゃないよ。Cookieっていうのは、サイトに訪れた人が誰なのかを識別するための仕組みのことだよ。オカンって馴染みの八百屋さんへ行くと、すぐに大根を出されない?

いつも買うからなぁ! あのおっちゃんよく覚えててくれるんやで!

八百屋さんの場合はオカンの顔が特徴的だから覚えているんだろうけど、インターネット上でも一度来たお客さんを覚えることは可能なんだよ。

Cookieによって「オカン」っていう人がいつ来たのか、何度目の訪問なのか……みたいな情報を記録した名札のようなものを、Webサイトの運営者がオカンに渡している感じなんだ。次に同じサイトにオカンが行ったら、もらった名札をWebサイトの運営者に見せるんだけど、その名札を見て「オカンが来ている」って判別できるってわけ。

誰が特徴的な顔面や!!

Cookieってつまり何?

Cookie(クッキー)はサイト運営者のサーバーが、サイトに訪れたユーザーのブラウザに対して、データを一時的に書きこんで保存する仕組みを指します。

Webサイト側は、ユーザーが初めてそのサイトに訪問した際に、サーバーでCookie情報を作成し、ユーザーのブラウザに保存させます。ユーザーが次にそのサイトに訪れる時には、その情報をサイトのサーバーに送るので、サイト側は誰が来たかを認識することができます

ただし、「誰が来たか分かる」というのは、IDやページの閲覧履歴などで判別するため、ユーザーの名前や年齢といった個人を特定できる情報は含まれません

またブラウザごとに記録されるので、同じユーザーでもスマートフォンとPCで見た時では「異なるユーザーである」と認識されます

Cookieを活用した「リターゲティング広告」

例えばECサイトでログインする時、メールアドレスとかパスワードとか毎回いちいち入力するの面倒じゃない?

全然面倒やないで! ログインページに行ったらもう入力されてるから、ボタンを1回押すだけや!

……それがCookie。あれはサイト側で、「オカン」と「オカンが入力したメールアドレスとかパスワード」を一緒に記録して名札を渡しているから、オカンが来たらサイト側で判断して自動的に表示させているんだよ。

なんやよう分からんけど、便利なんやなぁ。

他にもさっきの八百屋さんじゃないけど、オカンが買ったものも名札に記録していくことで、サイト運営者側でオカンにオススメの商品を表示したりもできるんだ。

名札がどんどんアタシ色に更新されてるっちゅーわけやな。

……(するどい! 厳密に言うと情報が更新されるのはCookieに紐付いたサーバー側の情報なんだけど、まあいいか……)。

で、それ使うと、迷ってた商品の広告がバーンと出てくるんか?

「リターゲティング広告」って言うんだけど、これもCookieを使った技術の1つなんだ。リターゲティング広告は、オカンがECサイトに来た時に、リターゲティング配信会社が名札(Cookie)にオカンを識別するIDを記録し、オカンが別のサイトに行った時に、オカンが見ていた商品に合った広告を配信しているんだ。

……。

……うん。これは難しいからオカンの1日を追って説明していくね。

  1. ECサイトで商品を見ている……この時、ECサイト内に「タグ」(後述)が入っていることで、広告配信の会社もオカンを識別するIDを名札に書き込める。それによってオカンがこのECサイトに来ていたと認識する。
  2. 別の用事があって、その時は購入をやめる
  3. 夜、別のWebサイトを見ている……オカンの見ているWebサイトが広告配信の会社と提携していたら、オカンが来たことを名札から読み取って、その広告配信会社に知らせる。
  4. 広告が出てきて商品を訴求!……広告配信の会社はオカンが以前にどのECサイトを見ていたか分かるから、広告を配信できる。

なんや裏側でいろいろ動いてるんやなぁ。

そうだね。

Cookieにはタグが不可欠

一般的には自社サイトのサーバーからしか訪問ユーザーのブラウザにCookieを書き込むことはできません。ですがこの「タグ」と呼ばれるテキストをサイトのHTMLソース内に書き込んでおく(=タグを設置する)ことで、広告配信サービス会社からも識別IDをCookieの中に書き込めるようになります。

ECサイトでリターゲティングを実施する際は、基本的にこのタグの設置は必須になります。

オカンが驚いた「ダイナミックリターゲティング」

特に今回オカンが見てびっくりした広告は「ダイナミックリターゲティング」っていう、ユーザーごとに見ていた商品や関連のオススメ商品を配信できるタイプのリターゲティングサービスだね。

その人が興味のありそうなものをカスタマイズして見せることで、ネット上で店員に接客されているような経験をしてもらえる……とも言われているよ。

ダイナミックリターゲティングとは?

ダイナミックリターゲティングは、ユーザーが見た商品と、それに関連する商品の広告をリアルタイムで自動生成してバナーを配信します。こちらもリターゲティングと同様にタグを設置しますが、「どのユーザーがどの商品を見ていたか」までを識別するため、通常よりも少し構成が複雑になっています。

またバナーに表示させる情報をまとめた「データフィード」と呼ばれる商品リストも必要になります。

そや!こないだ「ヒョウ柄は実は青森県民とか埼玉県民がめっちゃ買ってる」って、楽天ZOZOTOWNの記事で見たで。そこら辺をねらってリターゲティング配信したらボンボン売れるんちゃうか!? 知らんけど。

(そんなリサーチもしてるのか……) 最初から配信対象を絞り込み過ぎると配信ボリュームが出なくて効果検証もできなくなるから、まずは来た人全体に配信するのが一般的だよ。どこから来たかよりサイトのどこを見ていたかで配信し分けるのが効果的なんだけど、それはまた今度説明……

早速実践やー!!

◇◇◇

アンタ、クッキーって知ってる? なんで飴ちゃんやのうてクッキーにしたんか知らんけど、インターネットの利便性を支えてるんやって。今日もいろんなこと聞いたで。

へー。アイツも東京でがんばってるんやねえ。

今回覚えたいアドテク用語

Cookie(クッキー)

サイトに訪れたユーザーのブラウザに対して、データを一時的に書きこんで保存する仕組み、または閲覧時間や訪問回数といったデータの内容のこと。

リターゲティング広告

Cookieを活用したアドテクの一種。リターゲティング配信会社がCookieにユーザーを識別するIDを記録し、別のサイトに行った時に、広告主の広告を表示させる。

ダイナミックリターゲティング

リターゲティング広告の一種。ユーザーが見た商品と、その関連商品の広告をリアルタイムで自動生成し、広告を配信する。

オリジナル記事はこちら:前に見た商品がバーンって出てきてピッと飛んでパァっとなったんや!【オカンでもわかるリターゲティング広告の基礎】(2017/05/11)

ネットショップ担当者フォーラムについて

ネットショップ担当者フォーラムでは、ECサイトを運営する企業の経営者や運営担当者、制作者が語り合う場所や、“ここに行けば情報がある”、“ここに行けば問題が解決できる”を目指したメディア運営をしています。

この記事の筆者

砂森 翔太(すなもり しょうた)

大学卒業後、Web制作会社を経てファンコミュニケーションズに入社。リターゲティング広告「nex8(ネックスエイト)」の広告主営業を約1年担当した後、マーケティングに異動。

サービスリニューアルに伴うWebサイトのテコ入れに始まり、各種解析ツールを用いてのUI検証・改善、リスティング広告やSNS広告の運用などに従事している。

2016年6月、コンテンツマーケティングの一環として、“EC担当者にためになる情報をわかりやすく”をテーマに発信する「nex8ブログ」を立ち上げ。

他のマーケティング業務のかたわら、メインライティングと編集を担当する忙しい日々から、営業メンバーがリレー形式でライティングする体制に落ち着いてきたのを機に、“さらにやさしくわかりやすくアドテクを伝える力”を磨くべく、ネットショップ担当者フォーラム連載にチャレンジ中。

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