もしも、「札幌ドーム」を解析するなら(前半)[第58回]

札幌ドームを利用してみたい草サッカーチームの視点でサイトをチェック。
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誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。

毎週・木曜9時は「かってに解析!」。誰もが知っている有名サイトをかってに取り上げ、「もしもアクセス解析をするならば、どこに目をつけるか?」という視点で、サイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。

今回は「札幌ドーム」のWebサイトを取り上げる。

札幌ドームは、札幌市が所有する多目的ドームのイベント施設である。運営は第三セクターである株式会社札幌ドームがおこなっている(以下、「札幌ドーム」とカギ括弧で囲んで表記した場合は、札幌ドームのWebサイトを指す。他の企業、施設も同様)。

人工芝グラウンドと天然芝グラウンドを併用できるのが特徴。野球用には人工芝グラウンドを使用するが、サッカー用には天然芝グラウンドを用いる。日本でただ1つの完全屋内天然芝サッカースタジアムである。

パ・リーグの北海道日本ハムファイターズ、Jリーグのコンサドーレ札幌がホームスタジアムとして使用しているほか、コンサート会場やスポーツの国際大会などにも使用されている。

今回と次回、2回にわたり、イベント施設のWebサイトを取り上げ、課題の抽出や考察を行うのだが、筆者はイベント施設にかかわる各企業やサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。

「札幌ドーム」の閲覧シチュエーションを想定

今回のサイト利用シナリオは、「アマチュアサッカーチームのマネージャーが、サッカー練習場、あるいは試合場として札幌ドームを使えないか調べたい」という目的で訪問した、というものだ。

誰が草サッカーチームのマネージャー
何の目的で札幌ドームのサッカー施設を利用してみようと調査しにサイトを訪問
具体的には施設の詳細、利用できる日、利用料金を調べたい

「札幌ドーム」をエキスパートレビュー!

検索サイトで「札幌ドーム」と検索してみると、自然検索で1位

まず「札幌ドーム」というキーワードで検索すると、「Yahoo! JAPAN」では図1のような結果、「Google」では図2のような結果で、当然どちらも札幌ドームが自然検索の1位に表示されている(図1図2の赤枠で囲んだ部分)。

図1:「Yahoo! JAPAN」で「札幌ドーム」と検索した検索結果ページ
図2:「Google」で「札幌ドーム」と検索した検索結果ページ

メインのリンク(図1図2の青枠で囲んだ部分)からの飛び先は、「札幌ドーム」のトップページだ(次ページの図3)。

  • まずは、トップページを見てみよう
  • 英語版、韓国語版、中国語版も用意されている
  • グローバルナビゲーションを見れば、コンテンツの想像がつく作り

「札幌ドーム」をエキスパートレビュー!(続き)

トップページはコンパクトな印象

検索結果のリンクをクリックして表示されたのが、「札幌ドーム」のトップページだ(図3)。

図3:「札幌ドーム」のトップページ

トップページはコンパクトな作りになっている。ページ右上を見ると、英語、韓国語、中国語のページの存在がうかがえる。例えば「English」のリンク(図3の青枠で囲んだ部分)をクリックしてみよう。

英語版を表示してみた

すぐに英語版のページが表示されるかと思ったら、外部の翻訳システムを使っているためか、注意書きのあるページがワンクッション挟まれている。これが図4だ。

図4:「札幌ドーム」の英語版サイトの入口ページ

この中の[Start Translation]ボタン(図4の青枠で囲んだ部分)をクリックすると、transer.comという別ドメインのページが新しく開くようになっている。

グローバルナビゲーションを見れば、だいたいコンテンツの想像がつく

トップページに戻ろう。上部に文字の大きさを調整するインターフェイスもあるが(図3の赤枠で囲んだ部分)、文字の大きさは標準で「小」になっているようで、50代の筆者には少し小さく見える

その下のグローバルナビゲーション(図3の黄枠で囲んだ部分)の各ラベル(書いてある文字)は、

  • ドームスケジュール
  • イベントカレンダー
  • 座席ガイド
  • グルメ&ショッピング
  • 施設利用・見学
  • アクセス・駐車場
  • 札幌ドームについて

となっていて、用意されているコンテンツがだいたい想像つく感じにはなっている。ラベルについて言えば、「ドームスケジュール」と「イベントカレンダー」はどう違うのか、想像がつきにくかった

このグローバルナビゲーションのラベルにマウスオーバーしても第2階層が展開されるわけではないので、配下にどのような詳細なコンテンツが存在するかは見えない作りだ。また、それほどコンテンツが多くないということからか、検索窓もない。

  • 「イベントカレンダー」を見てみよう
  • イベントを見に来る人だけでなく、イベントを行いたい人の視点も重要

「札幌ドーム」をエキスパートレビュー!(続き)

「イベントカレンダー」をクリックしてみた

札幌ドームは、J1サッカーのコンサドーレ札幌と、プロ野球の北海道日本ハムファイターズの本拠地なのだが、それ以外に音楽イベントなどは結構やっているのかと思い、まずグローバルナビゲーションの「イベントカレンダー」をクリックしてみた。それが図5だ。

これは他のページにも共通することだが、HTML上のタイトルタグが全ページで「札幌ドーム」のままのようだ。これは各ページで独自の内容に変えるほうがいい。たとえば、このページならば「イベントカレンダー | 札幌ドーム」などにがいいだろう。

図5:「札幌ドーム」のイベントカレンダー

「イベントカレンダー」のページは当月含めた3カ月間のイベントのスケジュールが一望できる。右側には3カ月分のカレンダーがあり、野球/サッカーの開催と、その他イベント、作業日、休館日の6つの色分けで分かりやすく表示されている図5の青枠で囲んだ部分)。

メインエリアに表示しているイベント一覧(図5の赤枠で囲んだ部分)からは、直接該当のイベント内容のページに飛ぶリンクがある。

例えば、3月31日の「北海道日本ハムファイターズvs埼玉西武ライオンズ」のリンク(図5の緑枠で囲んだ部分)をクリックすると、公式戦の案内ページ(図6)に移動する。

じつは、この日の試合は次の日と連戦のため、このページは4月1日のリンク(図5の紫枠で囲んだ部分)からのリンク先ページと共通だ。

一方、カレンダーからのリンクは、その日に開催されるイベントへのリンクと、当日の施設営業時間の案内が表示されている。

例えば3月31日のリンク(図5の黄枠で囲んだ部分)をクリックすると、3月31日のイベント案内のページになる(図7)。

図7:選択した日のイベントページ

右には、先ほどと同じカレンダー表示が維持され(図7の青枠で囲んだ部分)、ここから直接別の日のスケジュールページに移動することも可能だ。当日開催されるイベントへのリンク(図7の赤枠で囲んだ部分)は、最終的には上で紹介したページ(図6)に行きつくという構造になっている。

イベントを行いたい人の視点も重要

サッカーと野球以外でのイベントはこの3カ月を見る限りでは、意外と利用されていないようだ。こういう施設というのは、やはり稼働率を上げることが重要だと思うので、様々なイベントの誘致などがドーム全体としての課題になるだろう。Webサイトはイベントを見に来る人だけでなく、イベントを行いたいと思う組織にしっかりアピールできるように作っておく必要がある。ビジネス上Webサイトの1つの重要な役割であるはずだ。

そこで会社案内から「会社概要」のページを見てみた(図8)。

図8:「札幌ドーム」の「会社概要」のページ

想像通り、札幌市などが株主の中心ではあるが、地場のメディアや銀行、大企業の北海道支社、さらには電通などの広告代理店も名を連ねている。Webサイトとは別に、リアルではこういった株主などにもっと働きかけるようなこともできそうだ。

  • 「ドームスケジュール」と「イベントカレンダー」はどう違うのか?

「札幌ドーム」をエキスパートレビュー!(続き)

「ドームスケジュール」は「イベントカレンダー」とどう違うのか?

さて、少々脱線したが、トップページのグローバルナビゲーションで「イベントカレンダー」の左横にある「ドームスケジュール」とは何なのか、見てみよう。どういう区別があるのかが分からなかったと冒頭指摘したポイントである。図9が「ドームスケジュール」だ。グローバルナビゲーションに、「イベントカレンダー」と「ドームスケジュール」が並んで表示されている(図9の青枠で囲んだ部分)。

図9:「ドームスケジュール」は「本日の札幌ドーム」だった

なるほど、これは当日の営業時間と開催イベント案内で、見出しは「本日の札幌ドーム」だ。となれば、グローバルナビゲーションのラベル(文字)は、「本日のドームの予定」か「本日の営業」のようにするほうがストレートでいいのではないだろうか。グローバルナビゲーションの配置(図9の青枠で囲んだ部分)とメインビジュアル直下のリンクの並び(図9の赤枠で囲んだ部分)にダブリ感がある。

また、「本日の札幌ドーム」のコンテンツの位置付けとしては、グローバルナビゲーションへの配置ではなく、トップページのメインコンテンツとして、新着情報のあたりの一番目につくところに、1つのブロックとして配置するくらいの位置づけでよいのではないだろうか

まだ、トップページとサイト概要しか見ていないが、今回はここまでとしたい。次回は、閲覧シナリオに沿って、施設の情報や、利用料金などを見ていこう。

この記事の筆者

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社へ。調査部、インターネット視聴率センター長などを経て、2000年ネットレイティングスへ。視聴率サービスやアクセス解析サービスの立ち上げに尽力。2006年株式会社クロス・フュージョンを設立し代表取締役に。2023年活動停止。

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