モバイルならではの機能で効率的に情報収集する、ネット型モバイルユーザー攻略マニュアル

PCとモバイルを使い、常にオンライン接続状態のネット型ユーザー像を探ります
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前回はマルチメディア型ユーザーを紹介しました。今回はメディア接触タイプのうち、PCとモバイルの接触率が高い、ネット型ユーザーの特徴と攻略法を紹介していきます。タイプ分類の詳細については、モバイルユーザー攻略マニュアル#0をご覧ください。

記事で分析している
「モバイルユーザー動向定点観測2009」調査概要
  • 調査対象:15~49歳の携帯電話保有者※調査会社が保有する調査パネル
  • 調査地域:全国
  • 調査方法:モバイルインターネットリサーチ
  • 有効回答数:500サンプル
  • 調査期間:2009年2月9日~2月11日

ネット型ユーザーの姿とは

ネット型に属する人は、1日のプライベートでのメディア接触時間がマスメディア210分未満、PCサイト20分以上、モバイルサイト10分以上と、マスメディアとの接触が比較的少なく、PC、モバイルとの接触が高い層です。属性で見ると、他のタイプに比べると女性よりも男性の比率が高く、特に男性20代、30代が多い傾向があります(図1)。

図1 タイプ別およびネット型のユーザープロフィール

このタイプは他のタイプと比較して、企業・市場・ビジネスや投資や貯蓄、新製品や新商品に関する情報への感度が高めの傾向があります。マスメディアで流行に関する情報を手に入れるというよりも、インターネットで自分に有益な情報を効率的に収集するような人物像がイメージできます(図2)。

またそれとは別の層として、10代男女ではマスメディア接触があまり高くなく、SNSやゲーム、情報収集などをPCとモバイルで日常的に行う学生像も見えてきます。

図2 普段、関心を持っている情報。

消費に関しても慎重で、流行やブランドに流されるというよりも、こだわりをもって比較検討後に購入する傾向があります。他タイプより、「色々な商品の情報に詳しい方だ」「ものを定価で買うのはばかげていると思う」と答えているユーザーが多いことからも、商品や価格に関しての情報収集力の高さがうかがえます(図3)。ただし、「ブランド品にはそれなりの良さがあると思う」「ひとつのブランドを使い続ける方だ」と回答したユーザーの割合も他タイプより高い結果になっているため、比較検討にあたりデザインや価格、機能とともに、“ブランド”も1つのこだわりの要因ではあることがわかります。「いつも予定より多く買い物をしてしまう方だ」とするユーザーが少なくいことからも、慎重に検討するタイプであることがうかがえます。

図3 自身の暮らしぶりに当てはまるもの。

ネット型ユーザーのモバイル利用傾向

それではこのタイプのユーザーはどんなモバイルの利用の仕方をしているのでしょう。攻略法を検討するために傾向をみてみましょう。

利用タイミング:PCの使えない移動中や休憩時間の利用率が高い

他のタイプに比べてモバイル利用が高いタイミングは、移動中や休憩時間や外出中といった場面で、見方を変えればPCでインターネットを利用できない場面でのモバイル利用が高くなるともいえます(図4)。一方で、自宅や通学出勤前、就寝前、休日、仕事の合間などでもPCのインターネットを利用しており、朝から晩までPCとモバイルでオンラインにつながっている状態という印象です。どうしてもPCの利用ができない状況では、モバイルを利用してオンライン状態を保つというような傾向が推測できます。

図4 プライベートの時間のうち、モバイルサイトを閲覧するシーン。

モバイルサイトへの流入経路:お気に入りのサービスはブックマークから

ニュースや、ネットトレーディング、求人情報やお店の情報といったリピートアクセスするような便利なサイトについてはブックマークからアクセスしている傾向があります。移動中やふとしたときにチェックをしたいサイトについて、あらかじめ登録しておき、すぐにチェックできるようにしているようです。

利用サイトジャンルと利用機能:情報サイトや機能性を重視

他のタイプと比較すると、乗換案内・交通情報、モバイルバンキング、ネットトレーディングといった情報提供サイトや便利なサービスを利用している傾向があります(図5)。時間を有効活用し、空き時間や移動時間にインターネットで情報収集しているようなユーザー像も想像できます。また、SNSの利用が高く、外出先からも積極的にSNSに投稿している可能性が高いと考えられます。それに対して、待ち受け画面や着うた、きせかえ、デコメといったモバイルならではのデジタルコンテンツの利用は高くなく、これらの提供に価値を感じてもらえない可能性が高いです。また、グラフには示していませんが、機能面ではおサイフケータイの利用が最も高いタイプで、便利さ重視なユーザー像と結び付きます。

図5 普段よく閲覧するモバイルサイトのジャンル。
モバイルでのキャンペーンへの参加
モバイルサイトのユーザーへの効果
ネット型ユーザーの攻略法
ネット型ユーザーの攻略まとめ

モバイルでのキャンペーンへの参加

前回紹介したマルチメディア型と同様、ネット型ユーザーも、モバイル上のキャンペーンへの参加率が高いといえます(図6)。特に、ポイントを貯めて応募するタイプ、アンケートに答えて応募するタイプとの相性が良いですが、一方で友人紹介が必要なキャンペーンはこのタイプにはかなりハードルが高いため参加が見込みにくいでしょう。オンラインでのコミュニケーションはそれほど苦ではないネット型ユーザーですが、あくまで目的ありきの利便性のためのコミュニケーションであり、一緒に応募するといったコミュニケーションは煩わしいのかもしれません。

図6 最近1年以内に参加したモバイルキャンペーンのタイプ

なお、弊社で行った「Twitterに関する企業とユーザーの意識調査」をメディア接触タイプ別に分析したところ、ネット型ユーザーがTwitter利用ユーザーの中心になっていることもわかっていますので、拡散的なクチコミ源になる可能性があります。

モバイルサイトのユーザーへの効果

ネット型のユーザーは、他のタイプに比べ、モバイルサイトを通じた購買経験や来店行動への効果が低い傾向もありますが、商品やブランド・企業の知識が深くなったり、興味や親近感を持ったりするなど、商品やブランド・企業への興味は喚起がされやすいといえるでしょう(図7)。ブログやSNSへの書き込みが最も高いタイプであり、ネット上でのクチコミの効果が見込みやすいことも考えられます。

図7 モバイルサイトを見ることで感じたことや行動した経験

ネット型ユーザーの攻略法

それではこれまでの特徴を踏まえると、ネット型ユーザーはどのようなモバイル施策でアプローチすれば反応するのでしょうか。

1. 「いつでも」「どこでも」の便利サービスをモバイルで提供

ネット型ユーザーはPCの接触が高い層になりますので、PCサイトで提供するサービスとの差別化や役割の明確化をきちんと考慮する必要があります。モバイルをうまく活用するには、提供するサイトやサービスのなかで、外出中やすきま時間で利用できると便利な機能を優先してモバイルで提供するといいでしょう。PCとモバイルの共通ログインや連携なども考慮すると効果的です。

2. 商品やサービスサイトで提供する情報は多く、詳細にする

ネット型ユーザーは、ネット上の情報で比較検討することが特徴です。商品やサービスの内容、価格、デザインなど多くの面から検討したいというユーザーのため、なるべく多くの検討材料を提供するのがいいでしょう。商品やサービスへの知識が高まるという効果もでやすいので、知識となる情報をきちんと与えてあげることも非常に重要です。ただし、モバイル画面の特性上、情報が多すぎてユーザービリティが下がらないように画面設計面での考慮が必要です。

3. プロモーションキーワードは「SNS」「ポイント」

ネット型ユーザーへプロモーションを行う際は、相性の良いSNSとの連動やタイアップでの集客をうまく活用するといいでしょう。ネット上でのクチコミ行動も期待できます。また、このタイプにはデコメや待受といった、モバイル特有のデジタルコンテンツはフックしにくいため、お得な「ポイント」やお得な情報そのものをフックにしてキャンペーンを展開していくことが重要です。

参考事例1 ビックカメラ「モバイルサイト ビックカメラ.com

PC モバイル

概要

PCのオンラインショップと同様に、ビックポイントを使ったり、貯めたりできるケータイショッピングサイトとして運営。モバイルの特性を活かし、モバイル限定のセールや日替わり商品をメルマガで知らせしている。2010年にリニューアルを実施し、Flashを採用することで商品情報を充実させている。また、FeliCa対応携帯機種では登録するとポイント機能が付けられるというサービスも別途行うなど、モバイルの役割を明確化させている。

ポイント

家電量販店の商材の特性から、男性20代~30代を中心とした、電化製品への興味が高い層がメインのターゲットであると推測できます。よって、メインターゲットの1人の像はPCやモバイルでネットを使いこなすネット型ユーザーのイメージに近いでしょう。Flashを利用した画面設計は、小さい画面上でも商品に関する情報を多く見せることができ、価格、デザイン、機能など情報を比較検討したいネット型ユーザーにとって魅力的だといえます。また、モバイルの特性を活かしたサービス展開で、ネット型ユーザーにPCとモバイルを併用してもらえるような位置づけになっています。

参考事例2 ホンダ技研工業、ミクシィアプリ「Ole!Ole!CR-Z」

PC モバイル

概要

mixiアプリを使ったハイブリッドカー「CR-Z」のプロモーション。参加登録し、自分のmixiのアカウント名にCR-Zを挿入することで車が当選するというキャンペーンを行った。マイミクと協力することで当選確率があがるという仕組み上、参加者が広まった事例。

ポイント

20代30代の若い層へのアピールを目的として行われたキャンペーンであり、SNS上でゲーム性のある展開だったため、ネット型ユーザーの反応の寄与も大きかったのではないかと推測できます。PCとモバイルを問わず、SNS上をうまく活用し、それによりネット上でのクチコミを生む際には、ネット型ユーザーへの訴求が効果的だといえます。その際は、今回のように友達紹介ではなく、あくまでゲームやコンテンツの一部としてのユーザー間コミュニケーションにしておくことが必要です。

※本キャンペーン後にmixiアプリガイドラインが変更になっておりますので、企画などを参考にする際はご注意ください。
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上記のような20代~30代の特に男性をターゲットにしたプロモーションでは、ネット型ユーザーを想定しておくといいでしょう。また、10代男女向けのアプローチに関しても、ネット中心に実施する場合は、20代~30代男性に次いで10代の属性比率が高いこのタイプを意識して施策を考えるべきです。常にオンラインで効率的に動くネット型ユーザーに関しては、企業が配信・提供できる情報や機能のなかで、「いますぐ」知ることができるといいもの、常に持ち歩けるといいものは何なのか見極め、彼らの「いつでも知りたい情報や便利な機能をオンラインで手に入れられるようにしたい」という欲求を満たす活用方法を検討しましょう。

ただし、TwitterやSNSをモバイルやPCで利用してメディアを行き来するネット型ユーザーには、プローモショナルな認知やバイラルを考える上では、PCとモバイルを区別しない展開が必要になるでしょう。

ネット型ユーザーの攻略まとめ

PC、モバイルを使いこなすネット型ユーザーには次のような特徴があります。

  • モバイルではいつでもどこでもの便利機能!
  • モバイルでも情報は多く、詳しく
  • プロモーションキーワードは「SNS」「ポイント」。ネット上での口コミにも期待

ネット型ユーザーのような人物像がターゲットの場合、上記のような点を意識してWeb戦略プランを検討するといいでしょう。また、逆にこのようなプランの実施が決定している場合は、ネット型ユーザーが反応しやすい有効なターゲットであることを意識してみるといいのではないでしょうか。

モバイルとPCをうまく使いわけてオンライン状態を保つネット型ユーザーには、PCサイトでのサービスやコンテンツ展開をメインにしながらも、モバイルならではの便利な機能や情報の提供をしていくことがキーになってくるでしょう。

次回はマスメディアとモバイルと相性の良いモバイル&マス型について紹介します。

※本記事にて紹介する事例は、IMJモバイルの実績紹介としての掲載ではありません。

この記事の筆者

株式会社IMJモバイル モバイルナレッジラボ

モバイルナレッジラボでは、日々進化を続けるモバイルを取り巻くさまざまなテーマについて、多様な視点から調査・分析を行い、世の中に発信していくことを目的として活動を行っています。


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