2018年Googleアナリティクスはどうなる? クロスデバイス分析とAI活用の新時代がいよいよやってくる!

2018年にGoogleアナリティクスに起きる3つの出来事に加えて、これからデータとどう向き合えばいいかをアユダンテの山浦氏が解説したセミナーをレポートする。
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アユダンテ 山浦直宏氏

続々と新しい機能やレポートが追加され、進化を続けるGoogleアナリティクス。2018年はデータ分析が大きく変わろうとしている節目の年だ。一体何がどのように変わり、どんな準備をしておけばいいのだろうか?

2017年12月14日、アユダンテの山浦直宏氏がGoogleアナリティクスで2017年に行われたアップデートを振り返り、2018年以降の展望を語るセミナーを開催した。

今回はそのセミナーの内容から、「Googleアナリティクスで2018年に起きること」や「データを扱う際の心構え」などの情報をお伝えする。

山浦氏によるGoogleアナリティクス 2018年予想
  • 待望のGoogleアトリビューションが登場
  • 本格的なクロスデバイス&AI活用の実現
  • アクションへの自動連携(自動入札)機能の追加

2017年のアップデートは「これから起きる大きな変化」の前準備

2017年のGoogleアナリティクスの主なアップデートとして紹介されたのは次のとおりだ。

  • 「gtag.js」の追加
  • 「ライフタイムバリュー」レポートの追加
  • 「セッションの品質」の追加
  • クロスデバイスリマーケティングがGAのユーザーリストでも利用可能に
  • ユーザーリストが30日ルックバック可能に
  • 有料版Googleアナリティクス360の集計処理速度が向上
  • など
Googleアナリティクスの2017年アップデートを一覧にした図。黄色文字は有料版のGoogleアナリティクス360のアップデート

ここで1つひとつ詳しくは触れないが、大きな流れをまとめると次のようになる。

  • 「セッション軸」から「ユーザー軸」の分析への移行
  • データを「取る」「見る」から「使う」への拡張
  • Googleアナリティクス360製品の連携・性能強化

「ライフタイムバリュー」レポートはGoogleアナリティクスでLTVを確認できるレポートだ。Googleアナリティクスがユーザー軸に移行していることの現れといえる。「セッションの品質」は、AIを利用して「セッションがコンバージョンにどれくらい近づいているか」を示してくれる指標だ。山浦氏は次ように予測する。

今はセッション軸ですが、今後はユーザー軸のLTVをAIがスコアリングするようになるでしょう。「コンバージョンに近いユーザー」をAIが選別して、それをもとにして作ったユーザーリストに対して施策を行えるようになっていくわけです。(山浦氏)

クロスデバイスリマーケティングやルックバックウィンドウの機能強化は、データを「取る」「見る」に加えて「使う」ための機能が強化されていることを現している。Googleアナリティクスで作成したユーザーリストを活用する幅はより広がっていくだろう。

また有料版の話だが、Googleアナリティクス360において大幅にスペック向上が図られた。具体的には、訪問から10分でレポートを表示できるよう集計時間が短縮されたり、100万行まで(other)表示で省略せず表示できるようになったりと基本性能がパワーアップしている。

Googleアナリティクスは2017年もさまざまなアップデートがあったが、俯瞰して見ると「これから起きる大きな変化の前準備」のように見えてくる。では2018年とその先には、どんな変化が起きるのだろうか?

2018年はいよいよクロスデバイス分析とAI活用が実現する!

山浦氏は、2018年に起こる大きな出来事として次の3つを挙げた。

  • 待望のGoogleアトリビューションが登場
  • 本格的なクロスデバイス&AI活用の実現
  • アクションへの自動連携(自動入札)機能の追加

順に紹介していこう。

待望のGoogleアトリビューションが登場

以前から発表されていた「Googleアトリビューション」がいよいよ登場する。アトリビューション分析とは、検索や広告などの各チャネルを「貢献度」という視点で複合的に分析する手法だ。

Googleアナリティクスには似た機能として「マルチチャネル」レポートが用意されているが、現状は基本的に同一ブラウザの行動しか追うことができない。クロスデバイス集計(詳しくは後述)が実現することで、本当の意味でのアトリビューション分析が行えるようになる。

「どこにどう予算をかけるのか」は、これまでのアクセス解析や広告効果測定では結局人が判断するしかなく、アトリビューション分析を行う強い動機にはなりづらかった。しかし、オートビッディング(自動入札、詳しくは後述)と連携するようになれば、分析からのアクションという実際の運用に落ちていく。いよいよ「成果を伸ばすためのアトリビューション分析」が実現するわけだ。

有料版のGoogleアトリビューション360は、テレビのGRPデータとも連携するといわれています。「テレビCMによってWebのセッションがどれくらい増えたか」を計測できるようになるのです。(山浦氏)

Googleアトリビューションは360のベータ版がすでに米国で公開されている。無料版の公開も「Early 2018(2018年初頭)」と表記されているので、早いタイミングで登場することが予想される。

本格的なクロスデバイス&AI活用の実現

Google AdWordsではすでにGoogle IDでユーザーを判別するクロスデバイス集計が実現しています。これはGoogleアナリティクスにも当然来るでしょう。(山浦氏)

従来も、そのWebサイトのログインIDをもとにして同一ユーザーを集計する機能はあった。しかし、そのためにはユーザーがWebサイトにログインしているセッションしか集計対象とならず、使い勝手は悪かった。Google IDでの判別が可能になれば、カバー率が格段に上がることになる。

「スマートフォンで調べてPCで申し込む」といったデバイスをまたいだ行動を追えるようになれば、グーグルが進めようとしている「ユーザー軸での分析」の基盤がより強固になるだろう。

そしてAIの活用も進みます。過去の集計データを分析するだけではなく、施策の予測値をAIが出してくれる指標やメニューが出てくるでしょう。施策を行った先の「未来の結果」をGoogleアナリティクスで見られるようになります。(山浦氏)

追記: 2018年1月10日にアナリティクス 日本版 公式ブログにて、新しく「コンバージョンの可能性」レポートのローンチが発表されました。

アクションへの自動連携(オートビッディング)機能の追加

最後はGoogleアナリティクスのデータをもとに、リスティング広告の入札を自動的に調整する「オートビッディング(自動入札)」機能だ。山浦氏は「Googleアトリビューションとの連携によって、分析結果から自動的に広告の入札を行うことが可能になるだろう」と説明する。

これは分析の本質的な価値に関係します。長年続いていた「で、そのデータ何の意味があるの?」という状態から脱却して、ビジネスにとっての価値を基準にした分析と、施策へのアクションが始まるのです。(山浦氏)

グーグルがデータを「取る」「見る」から「使う」へ拡張しようとしていることは、2016年の記事でもお伝えした。Googleアトリビューションとクロスデバイス分析、そしてオートビッディングが実現することでそれがいよいよ形になろうとしている。

ではどうすればいいのか? これからのデータ分析に臨む心構え

これからのデータ分析に臨む際に必要な心構えとは?

ではどのような準備をして、どのような視点でGoogleアナリティクスを使っていけばいいのだろうか? 山浦氏が2018年以降のデータとの向き合い方について解説した。

まず、取る。「Measurement First」

何よりも計測対象のデータをきっちり取ることです。これまでのようにタグを貼るだけでは取れないデータが増えてきます。新しい分析に取り組むためには、データを「使える」環境を作ることが何よりも大事です。(山浦氏)

データを活用しようにも、データ自体を正しく取れていなければ何も始まらない。山浦氏は「Measurement First」という言葉を掲げた。

「Measurement Frst」は2016年の資料の再掲。その重要性は今年も変わらない

これは2016年のセミナーでも掲げられた言葉だ。どんなに腕のいい料理人がいても、食材がなければ料理は作れない。データを正しく取る環境を整えるだけで半年から1年かかる企業もあるという。

必要なデータは「顧客の購買行動」と「顧客の生涯価値(LTV)」の2つだ。顧客の購買行動はカスタマージャーニーを利用する。顧客の生涯価値は、長期的な視点で購買行動を追う必要がある。

ユニークな顧客が短期と長期でどう行動するか。もともとマーケティングはそういう観点をもって行うものなんですが、その本質に技術とプラットフォームがやっと追いついたということです。(山浦氏)

「顧客の購買行動」と「顧客の生涯価値(LTV)」の2つのデータが必要

データを統合・加工して価値を高める

「データの価値を高める」という視点も大切です。取ったデータをそのままにしていてはダメ。つないで、加工して、整えることでデータの利用価値を高めていくことができます。(山浦氏)

同じユーザーデータでも、広告の人はターゲティングの視点で見て、制作の人はパーソナライズの観点で見る。CRMの人はワントゥーワンの視点で見る。山浦氏は「別々に分析していても、本来は1人の人。グーグルはこれを統合しようとしている」と説明する。バラバラになっているデータを使えるように統合・整理することで、データそのものの価値を高められるわけだ。

ユーザーデータは「集める」だけでなく「価値を高める」こともできる

3つのデバイスと、3か所に分断したデータを統合する

ユーザー行動は、スマートフォン、タブレット、PCのデバイスごとに分かれます。そしてデータも広告のデータ、Webサイトのデータ、CRMのデータに分かれています。これらをかけ合わせると非常に複雑で、現状どれだけデータの分断が起きているのかということです。(山浦氏)

広告、Webサイト、CRMは、データだけでなく組織も分けられているケースが多い。組織が異なれば、KPIや目標も異なる。「大変だが、これを統合していく必要がある」と山浦氏は語る。

3つの「Data Silos(データ分断)」。別々に溜められたデータの統合が必要

データの統合を実現する方法の1つとして挙げられたのが、Googleアナリティクス360の「データインポート」機能だ。たとえばCRMデータをGoogleアナリティクスにインポートし、ユーザーリストを作成してAdWordsで広告を配信するといった連携ができる。

広告の人が最近やっと重い腰を上げて、「WebやCRMのデータを使いたい」と声を上げてきました。実際にそういうオファーも増えてきています。「分断されていたデータを統合しよう」という機運が高まっているのを感じます。(山浦氏)

◇◇◇

とはいえ、これだけ多彩なデータが複雑に絡み合ってくると、完ぺきなシステムを設計してデータを取得するのは簡単なことではない。その影響はマーケティング部門だけではなく情報システム部門にもおよび、根本からデータ設計を見直さなければならないケースもあるだろう。

しかし、グーグルをはじめとするデジタルマーケティングのプラットフォームは、ユーザーデータを統合的に扱う方向に着実に進みつつあり、そのスピードは速い。そのときになって「使えるデータを持っていない」という事態に陥らないよう、自社データの扱いを見直すタイミングに来ているといえる。

この記事の筆者

株式会社Sprocket Managing Editor

2004年インプレス入社。デジマ、スマートフォン、Webデザインなどをテーマにした書籍やWebメディアの編集を約15年間担当。2021年からはCROプラットフォームのSprocketでコンテンツマーケティングに携わっています。

モバイルデバイスとインターネットが大好き。最近の興味はVR、人工知能、キノコ。

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