ペルソナの認知を高める3つのステップ――ペルソナに関する読者の意見や経験を募集します
[コラム]カスタマーエクスペリエンスで
道は開ける
~フォレスター・リサーチのWebサイト方法論
by ジョナサン・ブラウン
フォレスター・リサーチのシニア・アナリストであるジョナサン・ブラウン氏によるウェブコラム。
主にカスタマーエクスペリエンスとマーケティングの側面から企業のビジネスをサポートしているジョナサン氏が、企業サイトにおけるユーザー志向の考え方や方法論をさまざまな切り口で解説します。
私は今年も引き続きいろいろなイベントで話をしていますが、このコラムを読んでイベントに参加してくださった方もいらっしゃって、実際にその方々とお会いしてお話できたことをとてもうれしく思っています。
今度は、3月21日に、IDGのイベントで講演します。
- CMO Summit Tokyo 2008
~収益を生み出す新企業戦略リーダーCMO(マーケティング最高責任者)の役割
基調講演2
「マーケティング戦略・組織のグローバルにおける新たな潮流」
(11:00~11:45)
CMOや将来のマーケティングリーダーのために、カスタマーエクスペリエンスでどのように差別化を図るべきかについてお話します。ご関心のある方は、ぜひご参加いただければと思います。
日本でも拡がり感じるペルソナへの興味
さて、過去のスピーチの話に戻りますが、今年の1月~2月に東京、大阪、名古屋で行われたペルソナデザインコンソーシアム主催のセミナーで、ペルソナの作り方や使い方についてプレゼンテーションをしました。
東京、大阪は定員以上のお申し込みを受け、お断りをしないといけなくらいの盛況でした。ペルソナに対する興味が間違いなくあるとあらためて気づきました。参加者のなかには、みなさんがご存知のような日用品を作っている会社の方や、デザイン会社の方もいらっしゃいました。製品開発やウェブデザインの担当者のペルソナの認知度は高くなっているようです。
また、プレゼンの後には、みなさんからたくさんの鋭い質問を受けてとてもうれしく思いました。お話した何人かの方は、「うちの会社でも初めてのプロジェクトが始まります」とおっしゃっていました。
また、講演者の1人のCSK西日本さんは、彼らの会社で行ったペルソナのパイロット(試験的)プロジェクトをプレゼンしてくれました。CSK西日本は社内ポータルのリデザインのために社員にインタビューを行い、ターゲットユーザーのペルソナを作られました。非常にうまくいって、デザイナーの方は「本当にペルソナが社員にいそうだな」と言い、そのペルソナのためにデザインができるようになったようです。
ただ、今行われているペルソナプロジェクトの多くはアーリーステージ、つまり初期段階のものであり、会社のコアビジネスのツールとしてペルソナを使っている企業はまだまだ少ないようです。
セミナーでは、三菱総合研究所さんが、ペルソナの成熟モデルを紹介してくれました。予算の少ない小さなパイロットプロジェクトから、どうやって企業がより戦略的にペルソナを使うようになるかを、ロードマップを描いてくれました。
最上段階まで到達するにはロードブロック(障害)もありますので、それを越える方法を今から考えなければいけないと感じました。
もっとペルソナを知ってもらおう
まずは、ペルソナの認知度を高めることが大事ですね。今回の東京セミナーには、100人を越えるペルソナのアーリーアダプターが参加してくださいましたが、まだ会社のなかにはペルソナのメリットが見えず、「なぜペルソナを使わないといけないのか?」と質問する人がいます。また、そのためにペルソナプロジェクトへの予算が取れないのが現状です。そのため、まずペルソナというものの認知度を高めることが必要だと感じました。
幸いに、去年、初めて日本市場にペルソナを紹介する『ペルソナ戦略』という書籍が出版されています。これは“Persona Lifecycle”という英書の翻訳で、マイクロソフトなどの米国企業がペルソナをどのように活用しているかが紹介されています。
また、昔から私にいろいろとアドバイスや情報交換をしていただいている佐藤伸哉さんが最近『Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書』という書籍を出版されました。
“ペルソナ活用によるユーザ中心ウェブサイト実践構築ガイド”
- Ziv Yaar、Steve Mulder 著
- 佐藤 伸哉 監修
- 奥泉 直子 訳
- 毎日コミュニケーションズ
- ISBN978-4839922344
- 279ページ
- 2,940円
日経情報ストラテジーでは昨年末より「『ペルソナ』マーケティング入門」が連載されていて、私も第2回で執筆しました。
また、メディアがペルソナを取り上げているだけではなく、いくつかの大学、専門学校では学生にペルソナの作り方、使い方を教えていることを知りました。
こういうふうに、メディア、本、アカデミックの授業でペルソナが普及されているということは、1つの進歩だと思います。ただ、まだ多少、鶏と卵の現象が見られます。ユーザー企業の多くがペルソナを作るために大きな予算をもっていないために、ホームメイドのペルソナが多く、ペルソナの必要な企業に応えられるデザイン会社もまだあまり出ていないという印象があります。
そのバリアを超えるために、ペルソナのケーススタディやペルソナを作った企業の経験などについて報告したり、伝道し続けたりする必要があると思います。そこで、次回以降のこのコラムでは、次の3つのテーマを取り上げたいと思います。
- セグメンテーションやプロフィール、お客様についての統計(定量データ)とペルソナの違い――このテーマは、日本の企業だけでなく、米国の企業でも悩んでいる企業は少なくありません。
- どのようにして組織のなかでペルソナをうまく導入するか――先ほどご紹介した三菱総合研究所のアイデアをフォローします。
- ペルソナプロジェクトを導入して結果を図った企業へのインタビュー
特に、私が今からやりたいこと、教えてもらいたいことは、みなさんの経験です。
そこでみなさんにお願いがあります。この記事のコメント欄で、みなさんのご意見や経験談などを投稿してください。次のコラムで私が答えさせていただきたいと思います。
コメント
ペルソナの作り方
初めてコメントします。疑問なのですがよいでしょうか?
以前に、部署内でブレストをして、関係者の意見を総合して、ペルソナを作ってみたことがあります。
結局そのペルソナは何となく違和感があってその後ちゃんとは使ってないのですが、やはり、ちゃんと調査をして作らないとペルソナはだめなのでしょうか?調査して作ったペルソナだと、違和感なく受け入れられるものなのでしょうか?
ちゃんと作るとお金がかかるので、なかなか踏み切れません。
Re: ペルソナの作り方
編集部の安田です。コメントありがとうございます!
せっかくジョナサンさんが「みなさんの意見を募集」としてくださったのに、コメントが付かずにドキドキしていました。
ほかの方も、思うところなどコメントでお教えいただけるとありがたいです。
ちょっとしたことでもかまいませんので、ぜひぜひ。
フォレスター・リサ
フォレスター・リサーチのブラウンです。
コメントありがとうございます。 初めてペルソナを作ろうとすると、予算がないというバリアを超えるのは大変ですね。そして、何人かの担当者が皆そのペルソナの価値を理解してちゃんと使用するように促すのも大変ですね。
担当者がペルソナを利用しない場合、なぜ使ってないか考えてみたいと思います。
> 担当者はペルソナがユーザを表してることを信じてないのでしょうか?
> それともペルソナが近くにいる、本当の人であると想像できないのでしょうか?
> それとも別の理由があるのでしょうか?
こういうストーリ、そしてこのバリアを超えた人のストーリに興味あります。
尚、ブレストという手法はグループから新しいアイディアを得るために適切な手法だと思います。ペルソナを作るために最適な手法ではないかもしれません。なぜなら、ユーザの個人的な意見、属性、好みなどを知りたいからです。その為には個人インタービュー、又は観察の方が良いかもしれません。
JB
ペルソナの有効期限
メールマガジンを読んでご質問させていただきます。
固定電話が携帯電話になったように、技術やライフスタイルは変わり続けています。ペルソナにも同様の変化が求められると考えるのですが、ペルソナの「有効期限」は、大体どのくらいでしょうか?また、ペルソナを「更新」する際に、どのような注意点があるでしょうか?最後にもう1点、小規模サイトと大規模サイトではペルソナ戦略はどちらが有効だとお考えでしょうか?質問ばかりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
ペルソナ活用の疑問
ペルソナについての概要は知っていましたが実践的に活用したことがありません。それは少し疑問があるからです。ターゲットを具体化してリアルな人物像を想定できたとしても、まったく同じ人が複数存在するわけではないので、必ず想定したタイプと違う、マッチしない場合もあるのではないだろうか・・・。その辺はどう考えておくべきなのか。そのような疑問点があるのですが、何かアドバイス等ございましたらお願いします。
みなさんコメントありがとうございます
編集部の安田です。
みなさんコメントありがとうございます。編集部が雑誌の校了などでバタバタしていて返信が遅れました。
いただいたコメントはジョナサンさんから次回の記事の形で回答を差し上げるということで、すでに編集部に原稿が届いています。
4月早々には公開しますので、楽しみにお待ちくださいませ。
コメントでのご意見ありがとうございます!