ペルソナQ&Aその1 ペルソナにマッチしないユーザー/ペルソナの有効期限
[コラム]カスタマーエクスペリエンスで
道は開ける
~フォレスター・リサーチのWebサイト方法論
by ジョナサン・ブラウン
フォレスター・リサーチのシニア・アナリストであるジョナサン・ブラウン氏によるウェブコラム。
主にカスタマーエクスペリエンスとマーケティングの側面から企業のビジネスをサポートしているジョナサン氏が、企業サイトにおけるユーザー志向の考え方や方法論をさまざまな切り口で解説します。
前回のコラムで、ペルソナに関するご意見や経験談などを募集したところ、3名の方にご質問いただきました。ありがとうございます。
どの質問も、おそらく私のコラムを読んでくださっている多くの方が同じように疑問に思ってらっしゃることだと思いますし、米国のフォレスター・リサーチのお客様からこれまで尋ねられた質問と結構似ていました。
それでは、早速回答したいと思います。
どれだけリアルに作っても、
ペルソナにマッチしないタイプのユーザーがいるのでは?
ペルソナについての概要は知っていましたが実践的に活用したことがありません。それは少し疑問があるからです。
ターゲットを具体化してリアルな人物像を想定できたとしても、まったく同じ人が複数存在するわけではないので、必ず想定したタイプと違う、マッチしない場合もあるのではないだろうか……。その辺はどう考えておくべきなのか。
そのような疑問点があるのですが、何かアドバイスなどございましたらお願いします。
通常サイトを作るとき、企業は一対一、つまり、一人ひとりのユーザーのためにデザインすることはできません。昔の小売店の人は一人ひとりのお客様とパーソナル・リレーションシップを築いて、その人の好みを把握して対応していたかもしれませんが、何万人、何百万人が見るサイトでそこまでの関係を築くことはできません。おっしゃるとおり、十人十色といわれるように、ランダムに10人を選んだとしたらまったく同じ人はいないですよね。
しかしながら、御社とビジネスをしているお客様には、共通の属性、モチベーション、好み、行動をもっているカスタマーセグメントが存在していることもまた間違いありません。
たとえば6人にインタビューして、
「このウェブサイトをどんなときに、どうのように、なぜ使っていますか?」
「使うとき何が便利で何が不便ですか?」
と聞くと、さまざまな共通点が出てきます。ペルソナを作るときは、その共通の属性をピックアップして、なるべくそのセグメント(カスタマーグループ)を全体的に表すために、対応者全員から得た情報を本質的な部分にブレークダウンしたものを、最終的なペルソナにインプットします。
そうすると、できあがったペルソナはたった1人のインタビュー対象者に似ているというわけではなく、多少みんなに似ているようになります。そして、できあがったペルソナのためにウェブサイトを作れば、その6人の対象者、そして、そのさらに背後の何千人のお客様を満足できるサイトになるはずなのです。
このように定量的なリサーチを1つのモデル(ペルソナ)に結合した企業の人と話をすると、「お客様を満足させるサイトを作りやすくなった」という声をよく聞きます。もちろん、一対一のレベルまでにはいかないかもしれませんが、せめて、かつてのお客様のニーズが反映されていないような複雑なサイトよりは良くなったといえるでしょう。
ペルソナの有効期限はどれぐらい?
どのタイミングで更新するべき?
固定電話が携帯電話になったように、技術やライフスタイルは変わり続けています。ペルソナにも同様の変化が求められると考えるのですが、ペルソナの「有効期限」は、大体どのくらいでしょうか?
また、ペルソナを「更新」する際に、どのような注意点があるのでしょうか?
世代ごとに、その世代のライフスタイルが異なっているのは間違いありません。たとえば、30歳代後半の私は、携帯電話を95%は通話のために使っていて、5%は妻に「帰りますよ」というショートメッセージを送るために使っています。これは30後半の男性に珍しくないパターンだと思います。しかし、今の10代の子供たちは、携帯使用の半分以上がメールあるいはモバゲータウンやmixiモバイルでの友達との情報交換に使っていると言っていいでしょう。もしかしたら将来、携帯電話を話すためのものだとわかる人がいなくなるかもしれませんね(笑)。
そして、各世代が進化しているのと同じように、同じ世代でもライフステージによってニーズや行動が変化していくものです。大学生時代に最も関心を抱くトピックは、恋人を作ること、就職活動をすること、早く親元から独立することなどでしょうが、もう少し年を取っていけば、子供の教育、家を買うこと、退職後のライフプランが気になるようになるなど、関心事は変化していきます。
そうすると、たとえば、ワープロ世代の私に基づいてキャンペーンをデザインしても、それをモバゲー世代の人たちに見せても成功しないのと同じように、同じモバゲー世代のモデルを10年後も使えるかというと、それは無理です。
また、ペルソナは、チャンネルや目的が変わればそのまま使えない場合が多くあります。たとえば、自動車会社が新しいウェブサイトを構築するために作ったペルソナをそのまま新しい次世代の車に使おうとしても使えないでしょう。なぜなら、ウェブサイトのために作ったペルソナには、車に関する好みなどの情報が入っていないかもしれないからです。
ペルソナの有効期限はどれくらいなのかについては、はっきりした答えはなくケースバイケースなのですが、新しいペルソナを作ったり、ペルソナの内容を更新したりするタイミングにはいくつかのポイントがあります。
まず、新しいチャンネルのために製品やサービスを作るとき。つまり、ウェブサイトをデザインするために作ったペルソナを携帯用に使おうとするときなどです。そのまま使えるかもしれませんが、必ずペルソナをレビューする必要があります。
次に、新しい製品やサービスを作ったり、リニューアルしたりするとき。今までと同じペルソナでいいのか、ターゲットのカスタマーは変わっていないかなどをレビューする必要があります。
ターゲットカスタマーが変わったのかどうかを見るには、定期的なリサーチでモニタリングするしかありません。たとえば、定量的なリサーチを定期的に行っている企業があれば、いくつか態度や考え方に関する質問を入れて確認しておくことにより、今度も同じペルソナが使えるかどうか判断できるかもしれません。
定量的なリサーチを行っていない場合は、ユーザーインタビューもしくはユーザーの観察によって、定期的にペルソナのレビューを行う必要があります。現場にいってユーザーの観察ができるのが一番ですが、難しい場合は、アクセス解析を使って、検索キーワードの変化やかつてよくクリックされていたリンクがあまりクリックされなくなったなどの属性の変化を見ることができます。
以上を踏まえると、ペルソナの有効期限は、数字で1年や2年などとははっきり言えません。今年の私は来年の私とあまり変わらないと思いますが、モバゲー世代の人たちは変化がもっと激しいでしょう。
ほかにも質問をいただいていましたが、そちらについては次回のコラムで回答します。
もっとペルソナのメリット、事例、リサーチ方法、使い方などペルソナについての情報を知りたい人のために、Personadesign.net内に4月8日に立ち上がったコラム集「ペルソナスクエア」をお勧めします。これは、ペルソナデザインコンソーシアムに所属する会員企業が、さまざまな切り口でわかりやすくペルソナをご紹介しています。
- ペルソナを使うメリット
- 「ペルソナのパワー」フォレスター・リサーチ・ジャパン株式会社
- 「ペルソナ/シナリオ法とWebデザイン」株式会社ミツエーリンクス
- 「ペルソナの製品開発とマーケティング」同志社大学
- ペルソナを作り上げるまでのステップ
- 「富士通キッズサイトペルソナ」富士通デザイン株式会社
- 「ペルソナをつくる」大伸社
- 社内コミュニケーション向上のためのペルソナ活用(事例)
- 「ペルソナ活用事例 ゼロからの実践 ~社内コミュニケーションの活性化~」株式会社CSKシステムズ
- 「ペルソナによる社内コミュニケーションの革新」株式会社三菱総合研究所
- ペルソナができた後の活用法
- 「ペルソナで知る海外マーケット ~中国人のペルソナ~」有限会社ワイツープロジェクト
- 「ペルソナ作ってそれからどうするの? ~ユーザー中心のデザイン・アプローチを実践するために~」株式会社イード
私も記事を執筆していますので、ペルソナに興味をもった人はペルソナスクエアのほうもご覧ください。
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