【レポート】Web担当者Forumミーティング 2023 秋

話題の「ChatGPT」こんなに使えたら本当にすごい! 目からウロコの使い方を解説|GPTs活用事例も

昨今話題のChatGPTを使いこなせているだろうか? デジタルハリウッド大学 教授の橋本大也氏が新機能GPTsも併せて、ChatGPTの使い道を5つ紹介。

今、生成AIが日本を席巻している。なかでもChatGPTは、機能はもちろん知名度も高く、さまざまなビジネスシーンでの導入が始まっている。しかし実際にどう使えば仕事に役立つのか、現場レベルではイメージしきれない方も多いだろう。

Web担当者Forum ミーティング 2023 秋」2日目のオープニング基調講演は、そうした悩みにズバリ答える内容となった。登壇したのは、デジタルハリウッド大学 教授の橋本大也氏。ChatGPT初心者を脱するための具体的用例について、徹底解説した。

デジタルハリウッド大学 教授 橋本大也氏

ChatGPT 5つの使い道

橋本氏は、多くのChatGPT利用事例を紹介するというかたちで進行した。本記事では、ChatGPTの基礎知識は解説しない。別記事などである程度理解してから、本稿をお読みになることをオススメする。

1.「GPTs」機能で自分専用のAIを作る

数千~数万字程度のデータ登録でカスタムAIができる

「GPTs」は11月10日に公開された新機能。カスタム版のChatGPTが簡単に作れるというもので、たとえば橋本氏が過去にメディアで執筆した「邦訳が待ちきれない本10冊」の原稿3年分、つまり30冊分の書評をWord形式ファイルに変換した上で、読み込ませる(アップロードする)。字数にして約2万4000字という。

橋本が執筆した2万4000字分の書評をGPTsに登録

生成AIといえば、プロンプトの指定が“鍵”となる。今回のGPTsの例では「Instruction」の欄に、以下のように入力した。

  • 書評家の橋本大也氏が書いた書評のWordファイルを熟読して、ユーザーに最適な本を紹介してください。
  • 本はこれでもかと言わんばかりに情熱的に、読みたくなるように工夫して紹介してください。
  • 必ず橋本大也氏の書評記事から引用して紹介をしてください。
  • 本のデータをインターネットで検索して最新の情報を追加してください。
  • 本のリンクを必ず表示してください。

これだけでAIができあがる。後はこのAIに対して質問文を入力すると、プロンプトの指定どおり、元となった原稿から文書を上手く合成して返答してくれる。

GPTsの作成画面
書評原稿を元にしたカスタムAIがあっという間に完成

人格コピーAI

橋本氏が教授として名を連ねるデジタルハリウッド大学では、杉山知之氏が学長を務める。杉山氏はWebサイトなどを通じて、学生の創造心を鼓舞するようなメッセージを数多く掲載している。橋本氏は検索を通じてそれらを約3000字分ほど収集。「下記の文章の特徴を分析してください。キーワード、頻出する表現、口癖を抽出してください」というプロンプトと共にGPTsへ読み込ませる。

杉山氏のメッセージ文書を3000字分ほど登録

こうすると指示通り、頻出する表現として「あるべき世界を自ら構築できるチャンス」、口癖は「今や」「デジタルコミュニケーション」などだと説明してくれる。プロンプトを変えれば、文章ベースの性格分析も可能だ。

「杉山氏に長い称号を与えるとしたらどんなものになるでしょうか。10パターン考えてください」というプロンプトへの対応もお手のもの。「もっとキャッチーで創造的で先鋭的な表現で」と付け加えれば、これにも応えてくれる。

頻出表現や口癖を簡単に抽出
称号を10パターン作るといったことも

話はこれで終わりではない。プラグインの追加によって、さらに応用が可能だ。たとえば「Whimsical AI Diagrams」を使えば、3000字の元データからマインドマップを作成できる。

また「この学長が大学設立20周年の記念パーティで挨拶するスピーチ原稿を書いてください」でChatGPTにスピーチ文を作らせたら、これを映像化プラグイン「HeyGen」に入れ込む。すると、人間がスピーチを読み上げている映像を短時間で生成できる。

なお橋本氏によると、「写真の中の人物に好きな文章を音読させる」という点では、ChatGPTとは別のサービスとはなるが「Creative Reality Studio」が簡単で利用しやすいという。

外部プラグインでマインドマップを作成
スピーチ原稿を生成
スピーチを読み上げる動画も、プラグイン連携で作れてしまう

2.動くグラフを作る

公開CSVデータを活用して簡単にグラフ作成、アニメーションも簡単

ChatGPTでは、質問に対して文字で返答してくれるだけでなく、グラフも作成してくれる。たとえば、みずほ銀行Webサイト内の「外国為替公示相場ヒストリカルデータ」というページでは、ドル円相場の長期変遷状況がCSV形式のファイルとして公開されている。まず、これを単純にChatGPTへアップロードする。

この操作だけでもグラフが作れるが、さらに「時系列のアニメーションにして」と指定すれば、折れ線の様子がアニメーションになる。なお、ChatGPTは日本語のグラフを作ろうとすると失敗しやすいため、日本語フォントのファイルを同時にアップロードするのがテクニックだと橋本氏はアドバイスした。

簡単に手に入る公開データを登録
アニメーションする折れ線グラフも簡単に作れる

複数のデータを組み合わせて

次に紹介されたのが、JR山手線の駅別乗降客数をグラフ化する方法だ。まずは、駅の緯度経度情報がCSV形式でまとめられたデータをネット上から入手し、ChatGPTに読み込ませる。この状態だと表示が複雑なので、「(緯度経度を消して)『品川駅』のように駅名のみの表示にして」「駅順で線で繋いで」とすれば、修正され、路線図風の見た目のグラフができあがる。

駅の緯度経度をCSVファイルで指定
最初に出力されたグラフ

この状態で、JRのWebサイトから入手した駅別乗降客数(1日あたり)のCSVファイルを追加アップロードする。今回のケースではこれだけで、特にプロンプトを指定することもなく、乗降客数の多さに連動する形で駅名マーカーのサイズ分けをしてくれた。「1駅ずつ順に表示されるアニメーションにしてMP4動画形式で保存してください」のプロンプトにも難なく対応する。

この乗降客数グラフ作成にかかった時間は15分程度とのこと。Excel単体でもアニメーショングラフは作成できるが、そのハードルの低さという意味ではChatGPTには大きな価値があるのではないか、と橋本氏は評する。

プロンプトを追加したり、データを追加することで、ここまで見た目が変わった

3.シミュレーションの作成

実は複雑な計算を、手軽に実施

参照すべきデータがなくても、ChatGPTはさまざまなシミュレーションを行うことができる。「棒人間1000体が画面を動き回り、濃厚接触した人間にウィルス感染を広げていくシミュレーション動画」という程度のプロンプトでも、感染を示す赤の傍点が画面内へ段々広がっていくという、かなりキャッチーな動画を作成できる。

このプロンプトを入力
もう少し細かい指定を加えるだけで、これくらいのアニメーション図が作れる

「地図上の30か所の巡回セールスマン問題を解くシミュレーションを映像化してください」というプロンプトへの応答も興味深い。この問題は、数学的な意味ではかなり難しい。それでもChatGPTは使うべきアルゴリズムを提案し、問題を解いたうえで、その結果をアニメーションにしてくれる。

複雑な計算もなんのその

高校生レベルの物理問題を解いて、さらに解説させる

「モンキーハンティング」という物理の問題がある。木から自由落下していく猿(目標物)を撃つとしたら、果たしてどこを狙えばいいのかという計算問題だ。

まず、ネット上にあるモンキーハンティングの問題をChatGPTにコピー&ペーストすれば、答えは簡単に求められる。加えて「可視化して」「アニメーションにして」とプロンプトを入力すれば、実際にそのアニメーション図表まで作成されてしまう。落下物のアイコンを猿にしたり(イラスト生成AIなどで作成したものを別途アップロードする必要あり)、衝突点に視覚効果を残すことも可能だ。

モンキーハンティングを解くのもChatGPTなら簡単
グラフでの説明もできる

さらに「この実験を高校生向けに解説して」と依頼すると解説文を表示する。「この解説と先ほどの動画を統合して教材にして」という、かなり無茶な注文にも応えてくれるのがChatGPTの凄さだ。PDF形式の教材では動画を含められないとChatGPTが返答しても、ユーザーが「HTMLで作成して」といえば、それをこなしてしまう。

橋本氏はこの用例として、たとえば学校の現場を挙げる。教科書に載っている問題とChatGPTで組み合わせることで、見栄えよい解説動画へと短時間で仕上げられる。教材作成に苦労している教員にとって、メリットは大きい。

教材作りもChatGPTの出番だ

4.地図情報の活用

GeoShapeからレポート文書を作成する

政府サイト「e-Stat 政府統計の総合窓口」では、GeoShapeと呼ばれる地理情報データが公開されている。これは市区町村などの単位で公開されており、たとえば千代田区のGeoShapeデータをChatGPTに読み込ませて「(前略)人口を階級化して濃淡で地図上可視化して」とすると、ほぼそれだけで同区の町名・番地別の人口分布を、地図上で、かつ色の濃淡で示してくれる。

GeoShapeデータを登録
データ登録だけで、ここまでの地図が生成できた

「人口の多いトップ10の地区について理由を考察して解説レポートを作成して」と付け加えれば、トップ10を抜き出して解説文を生成。さらに「上記の人口分布の地図と分析に、まえがきと結論パートを追加して、Wordの立派なレポートを作成して」のプロンプトを入れれば、体裁が十分に整った1本のWord形式レポートにまで仕上がってしまう。橋本氏も「これだけのレポートを大学で出されたら困ってしまう」と、思わず漏らすほどのできだ。

教材どころか、Word形式レポートもChatGPTで作れる

観光用フライヤーをほぼChatGPTだけで作る

e-Statで公開されているGeoShapeは、他にもさまざまな応用が可能だ。神奈川県藤沢市のGeoShapeをChatGPTに読み込ませたとする。その地図に江の島灯台や片瀬江ノ島駅の位置を図示したかったら、Googleで緯度経度を調べて(主要な施設の緯度経度は簡単に調べることができる)、プロンプトから指定するだけで該当位置に×印をつけられる。

最初の地図はこの程度

施設名のラベルを目立つように色合いを調整したり、施設間の距離を図上に示したりもできる。お気付きの方も多いだろうが、これを突き詰めていくと、観光用のフライヤーすらChatGPTで作れてしまう。施設名のガイド文を別途出力したり、ウィキペディアから施設画像をダウンロードしておくなどの準備も必要だが、最終的には以下のようなプロンプトにもChatGPTは対応してくれる。

この観光ガイドの文章と最後に作った地図を使って、観光案内書で配布するフライヤーを作成してください。A4の1ページに文章と地図をきれいにレイアウトしてください。地図の緯度経度のラベルは消してください。スポット名のラベルが重ならないように位置を微調整してください。Word形式で出力してダウンロードできるようにしてください。プロフェッショナルなデザインでお願いします

こんな複雑なプロンプトでも処理
施設の緯度経度などを加えていけば、ここまでのレベルに仕上げられる。
ChatGPT以外に特別なツールも必要なし

5.データからWebページを作る

独立行政法人 統計センターのWebサイトでは、SSDSE(教育用標準データセット)という統計データ集を公開している。この項目の1つの「家計消費(SSDSE-C)」では、家計消費品目別の金額データが、47都道府県の県庁所在地(市)単位で収録されている。

統計センターの「SSDSE」のデータ例

このデータはExcelないしCSV形式だがかなり巨大。そこでChatGPTへ読み込ませる前に不要な項目(地域コード)を消し、文字コード形式をUTF-8で保存し直しておくと、作業がスムーズになるという。

あとは、ここまで紹介した例のようにさまざまな操作・加工をしていけばいい。「消費項目別にトップの自治体名を表にする」としたら、その結果が反映されたCSVファイルが出力されるので、続いて「HTMLの美しい表にして」というプロンプトを入力すれば、HTMLページが出力される。

「全項目の消費においてトップの自治体を表にする」の
プロンプトで、最初に出力された表

表を見やすくするための、さらなる命令も出せる。橋本氏が示した例では「(前略)ユーザーがクリックしたらそのカテゴリの情報を表示するようにして」と入力すると、ChatGPTは“折りたたみ可能なHTMLのセクションを作成する”と提案してきた。

ただ、これではクリックした場合、本来なら10項目表示されるところが1項目だけしか表示されないというバグが出てしまった。こうした部分の修正も、やはりプロンプトだけで済ませられる。

極めつけは「Netflix風の洗練されたデザインにして」のプロンプト。だいぶ曖昧な指定なように思えるが、これだけで黒基調、赤がアクセントカラーのページへと変更できてしまった。ちなみに「横幅が広すぎる」「インタラクティブな機能を加えて」といったプロンプトにもChatGPTは対応してくれる。

プロンプトを付け加えていって、「Netflix風の洗練されたデザインにして」と
​​​​​​すれば、ここまで見た目が変えられる

ここまで、数多くの事例を紹介した橋本氏は「ChatGPT中級者向けの活用法はまだまだある。(業務省力化の)可能性に満ちたツールである事が実感できたのではないか」と、聴講客に積極的な活用を呼び掛け、講演を締めくくった。

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