Webビジネスにおいてアクセス解析はなくてはならない存在だ。というのも、現実の商売とは違い、ウェブサイトをただ眺めていても、どれだけの人がどんな興味をもってウェブサイトに来てくれたのかはわからないからだ。
ところが、まったくアクセス解析をしていないという企業は決して珍しくない。アクセス解析ではいったい何ができて、どれだけ大切なのかを、まず基礎から理解していこう。
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予算獲得、人手獲得の第一歩――それがアクセス解析
アクセス解析と聞くと難しそうと思うかもしれないが、まずこの「解析」という漢字がいけない。これが難しそうな雰囲気をかもし出しているのだ。サーバーのことなどの技術的なことがわからないとできないように感じてしまうし、統計のことがわからないと手を付けられないようなイメージがあるかもしれない。だが心配はいらない。アクセス解析にはまったく技術的な知識はいらない。「自分のサイトを良くしたい」という気持ちだけがあればいいのだ。
図1は、「ウェブサイト活用の障害」=「Web担当者の悩み」なのだが、アクセス解析はこの悩みを解決する第一歩となる。1位と2位、4位はいずれも人手不足に関する問題だ。3位の「予算が増えない、あるいはコスト削減が厳しい状況である」はズバリ予算不足である。現場の悩みは人手不足と予算不足に集約している。
このWeb担当者の悩みを解決するには上司、ひいては経営層に自分(たち)の仕事の重要性を理解してもらうしかない。消費者に直接商品を買ってもらう業種の経営層なら、売上という具体的な数字があるので、なんとなくウェブサイトがビジネスに役立っているようなイメージを持っているかもしれない。しかし、BtoBビジネスの経営層は「商売は足で稼ぐもの。営業が一番」と、ウェブサイトを過小評価しているケースが多いようだ。
アクセス解析は、Web担当者の仕事を正当に評価してもらい、人材や予算を十分に投入してもらうことでWeb担当者が仕事をしやすくするために役立つものなのである。
アクセス解析はサイトの健康診断
アクセス解析とは、ウェブサイトの健康診断のことだ。健康診断の結果票にはあなたの身長や体重、視力などが掲載されているし、血圧の数値も載っている。肉眼ではわからない内臓の数値も掲載されていて、正常か異常かわかるようになっている。健康診断は病院に行かないとできないけれど、自分のカラダに何か心配なことがある人は毎日血圧を測ったりして健康管理をしているはず。この診断を自分のサイトに関して行うのがアクセス解析だ。
自分の体調や体力なら自覚症状を感じて病院に行くこともできるが、ウェブサイトは常時アクセス解析を行っていないと自覚症状すら表れないのだ。
ではアクセス解析をしないどうなるのか。Web担当者はウェブサイトを「勘」で運営していくことになる。身長や体重に相当するページビュー数や訪問者数も知らないし、血のめぐりに相当するサイト内の動線設計が良いのか悪いのかもわからない。内臓に相当する1つひとつのサイト内のパーツの状況も全然わからないからだ。
カイゼンする気がないならアクセス解析はやるだけムダ
あなたが実店舗を運営していれば、来客数の変化を感じて天気のせいにしてみたり、他店の大安売りのせいにしてみたり、何か理由を探すだろう。来客の男女比を感じて男性にもっと来客してほしければ何か手を打とうと思うだろう。多くの人が手には取るけれど売れない商品もあれば、いつもあっという間に売れていく商品もあるだろう。こういうことをまったく感じないで店舗の運営はできないはずだ。こんなことが気になり、何かを実行するのはなんとか自分のお店を良くしようと思うからのはず。
アクセス解析も「サイトなんかありさえすればいいのであって特に手を入れてまでも良くする必要なんかない」と思っている人には不要なことだ。いくらアクセス解析をしても「カイゼンする気がない」「カイゼンのための予算をとっていない」のなら、アクセス解析はまったくムダになってしまう。アクセス解析をしてしまうと、もれなく必ず改善点が見つかってしまう。これはまず確実な事実だ。
まず現状把握から始めよう
「PDCAサイクル」という言葉を知っているだろうか。仕事は企画を立てて(PLAN)実行し(DO)、効果を検証して(CHECK)、さらにカイゼンしていく(ACTION)ということだ(図2)。
これをウェブサイトに当てはめると、次のようになる。
- ユーザー・ターゲットを考えてユーザーに好まれるウェブサイトを考える
- ウェブサイトを制作する
- アクセス解析を行って効果を検証する
- ウェブサイトの構成やクリエイティブ、訪問者の集客法などを修正する
しかし、ありがちなのは、次のような……
- 企業の都合で内容や構成が「送り手本意」のウェブサイトを企画する
- 制作は、外部のスタッフにまかせきり
- 効果測定をしないので効果がは不明
- いっぺん作ったら作りっぱなし
という「DO」しっぱなしの状態である。この事態はなんとか避けよう。
まず現状を把握してみて、訪問者数が足りないならキーワード広告やSEOなどで集客対策を頑張ったり、商品販売サイトならアフィリエイトを考えてみたりするのもいいかもしれない。
すでに実施しているSEMの効果に問題があるのなら広告出稿の方法を考え直してみる。せっかく集客しても1ページだけちらっと見ただけで帰ってしまう人が多いページがあれば、LPOをする。離脱率(そのページを最後にサイトから出て行ってしまう人の多いページ)が高いページを発見したらそのページを修正するなど、問題点さえ見つかれば改善策は山ほどあるのだ。これを繰り返していくと本当に良いサイトになっていく。
アクセス解析はどうやって実施するのか
では実際にはどうやってアクセス解析を実施していけばいいのだろうか。最近ではさまざまなツールやサービスがあるので、これを利用するのだ。ツールやサービスは後ほど紹介するのでこの中から選ぶ。
多くのツールはいにしえの「アクセスカウンタ」をもとに発展している。「あなたは××××人目のお客様です」などと表示されていた、あれ、である。最近ではすっかり見なくなったけれど、アクセスカウンタは個別のページの表示回数を数えて表示させるものだ。アクセス解析では、これ以外のさまざまな数字を取得できる。
ビジネスのスピードで変わるアクセス解析ツールの使い方
アクセス解析ツールやサービス選びの決め手になるのは自社のビジネスの「速さ」だ。ビジネスのためのウェブサイトには2種類ある。「お店型」と「キャンペーン型」だ。
「お店型」は一般的なビジネスウェブサイトで、特に期間を決めずに継続的に公開しているサイトのことである。商品を売っていなくてもビジネスのためにウェブサイトを運営しているなら、ショールーム機能があったり資料請求フォームがあったり、来社(来店)してもらうための地図があったりするはずだ。このようなサイトは「お店型」という。このようなサイトはウェブサイトにおけるビジネスの速度はそれほど速くないので、アクセスログを貯めてじっくり解析する方法で十分だろう。
「キャンペーン型」は、広告をドカンと実施して、一定の期間に集中的に来訪者を集めようとするウェブサイトである。「キャンペーン」などというと、テレビコマーシャルや雑誌広告をイメージするかもしれないが、そればかりではなく、インターネット上で懸賞を実施したりブログを効果的に使ったりするなどして、短期間に大量の来訪者を集めようとする場合も立派な「キャンペーン型」だ。この場合は、短期が勝負だから「じっくり」というわけにはいかない。ほぼリアルタイムで解析結果を得られるように、ページにタグを埋め込む方法やパケットキャプチャ型を選ぼう。
「キャンペーン型」のなかでも、マス広告との連動を行う場合は、暴力的ともいえるアクセスが得られることもある。魚獲りにたとえるとこれは大規模な漁業だ。大きな船を用意し、魚群探知機なども搭載して獲物の「群れ」の所在を確かめ、撒き餌をガンガン投入して獲物をねらう。こんなときにのんびりなどはしていられない。それに比べ、「お店型」は釣りのようなものだ。じっくり構えて対策をしよう。
アクセス解析で見るべき情報とは?
では、アクセス解析では具体的にどんな情報が得られるのか。主に図3の表にあるようなデータを得ることができる。
サイト全体の姿の数値 | ページビュー数 | 総ページビュー数 |
---|---|---|
どのページが何回表示されたか | ||
訪問者数 | 総訪問者数 | |
ある訪問者が何月何日何曜日の何時何分にどのページを見たのか | ||
その訪問者は初めての訪問なのかリピーターなのか | ||
訪問者はどこから来たのか | 検索エンジン経由 | どの検索エンジンでどんなキーワードで検索したのか |
どの検索エンジンでどのキーワード広告をクリックしたのか | ||
他サイトに掲載されたリンク経由 | どの広告(バナーやテキスト)をクリックしてきたのか | |
どのサイトに張られたリンクが多くの訪問者を誘導したのか | ||
直接入力やブックマーク | ||
サイト内の動線の数値 | サイト内の閲覧経路 | 最初に見たページはどれか(入り口ページ) |
最後に見たページはどれか(離脱ページ) | ||
直帰率(1ページだけ見てサイトから去った人の率) | ||
クリックマップ(サイト内のどのリンクがよくクリックされたのか) | ||
滞在時間 | その訪問者は各ページで何分ぐらい滞在していたのか | |
訪問者の環境 | OS | |
ブラウザの種類やバージョン | ||
FlashやJavaのプラグインの状況 | ||
デスクトップのサイズ、ブラウザのサイズ | ||
所属ネットワーク(会社・団体名) | ||
おおよその地理的な場所 | ||
高機能なツールでは…… | 別システムと連携したり、特別なデータを蓄積したりして、たとえばECでは「訪問者ごとの具体的な売上額」を見られたり、「だれが作ったコンテンツが人気なのか」を確認できるようなシステムもある。 |
総ページビュー数と訪問者数は、「サイト全体の姿の数値」である。できれば毎日把握しておきたい情報だ。アクセスログ型のツールを選んだ場合、使用しているサーバーのログの取得方法により、週に一度しかデータを取ることができない場合もある。この場合は週に一度でもしかたがないが、毎日データを見られる環境なら数だけでも毎日把握しておこう。
週間、月間のスパンでは、これ以外にも、入り口ページ(ユーザーが最初に訪れたページ)の数値やサイト内導線の数値を見るようにする。
訪問者の環境に関する数字は、年に一度ぐらい確認すればいい。ユーザーの環境を知り、どのブラウザのどのバージョンまで対応すればいいか、Flashコンテンツなどのプラグインを要するコンテンツを作成する場合の基準を知るために必要な数字だからだ。
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