UXスコアとは何か?スコアの定義からGoogleアナリティクスでの計測方法まで(前編)

UX(ユーザー体験)の良し悪しを定量的に測るための考え方やGAでの計測方法について解説します。
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UXスコア

はじめまして。ネットイヤーグループの山田と申します。
弊社は1999年の創業以来、ユーザーエクスペリエンスデザイン(UXD)という考え方をもとに、クライアント企業のプロジェクト支援に取り組んできました。

「UX(=ユーザー体験)」を良くする、というテーマで私自身もコンサルティングを行いますが、その中でお客様から「UXを定量的に評価できないか?」という質問を多く頂きます。今回はそのようなご質問にお応えすべく、「UXスコア」というものを、ご紹介したいと思います。

UXスコアとは?

はじめに、そもそも「UXスコア」とは何か?ですが、これについては実は明確な定義はありません。
そもそも「UX」という言葉自体、やや曖昧な定義をされることが多く、「UI」や「CX」などと混同して使われるケースも見かけます。そのUXを測るための指標を総称してUXスコアとして呼ばれるケースが多く、ユーザーテストなどによって独自に算出されたものや、昨年Googleが検索ランキングの要素として組み込まれると発表した「Core Web Vitals」も、UXスコアの1つと言えるでしょう。

本記事では、特にWebサービスやアプリ内における一連のユーザー行動から得られる体験そのものを「UX」と定義し、そこでの体験価値を表す定量的な指標を「UXスコア」と呼ぶことにいたします。つまり、このスコアが高ければ高いほど、Webサイトを通じて素晴らしい体験を得たことになり、逆にこのスコアが低いほど、不快な体験をした、ということを意味します。

なぜ、UXスコアが必要なのか?

ネットイヤーグル―プにおいては、私は「アナリスト」という立場でこれまで多くの業務を行ってきました。
アナリストはGoogleアナリティクスなどの解析ツールを使い、ユーザー行動を可視化し、サイトにおける課題を定量的観点から導き出します。
例えば、ある保険会社のWebサイトでは資料請求の獲得を目指しており、それをコンバージョンとして定義しているとします。
この場合、ターゲットとなるユーザー(保険検討顧客)をその流入行動や閲覧行動などからセグメント化し、そのユーザーの行動パターンを細かく分析することで、サイト上のボトルネックや課題を導き出したりします。

定量データから導き出された課題は揺るぎない事実をベースとしているため説得力があり、非常に有効な課題抽出方法である一方、定量分析には重大な欠陥があります。それは、その事象が「なぜ?」起きているのかを明確に説明できないという事です。
つまり、その課題を導き出すための使った指標(例えば「離脱率」)の高さや低さは評価できたとしても、それをもたらすユーザーの背景や心理状態などは、あくまでも仮説にすぎないからです。

ブランドサイトやメディア、サポートサイトなど、明確にコンバージョンが無いWebサイトにおいては、ユーザーがそのサイトの滞在を経て、良い体験をしたのか、悪い体験だったのかを、判断できないのです。例えば、離脱率が高いページは、そのコンテンツが理解できずに不満を抱えて去っていったのか、もしくは内容を理解し目的を果たせたが故に離脱したのかは、ログデータだけでは判断できません。
もちろん、ページの滞在時間についても然りで、長ければ良いというものではありません。

その仮説の精度を上げるための手法としてUXアプローチがあり、私自身様々なWeb改善プロジェクトにおいて「UXデザイナー」と協働して、課題にアプローチをしてきました。しかし、このようなUXアプローチもあくまでもUXデザイナーの経験則から得た「仮説」にすぎません。
もちろん、経験豊富なUXデザイナーによる仮説は精度が高く、非常に説得力のあるものですが、やはり直接データとして立証したいというお客様の声をよく耳にします。

「UXスコア」はそのようなニーズに応えるための手段として、「UXを定量化する」という考え方自体はこれまで多く提唱されていたものの、冒頭でもお伝えした通り、UXスコアとしての明確な定義は現在も存在していないのが実情です。

UXスコアへの取組み例

前段が非常に長くなってしまいましたが、UXスコアへのアプローチとしては、これまで先人が様々な手法で取り組んできました。
それぞれ一長一短あるのですが、まずは主な手法をいくつか紹介させて頂きます。

C-SAT(顧客満足度)

C-SATは、主にコールセンターなどでサービスや商品に対しての顧客満足度を測る指標です。一般的には5段階でユーザーに直接回答してもらうアンケート形式で用いられ、Webサービス上では、例えばECサイトの商品レビューやサイト利用者アンケートなどで採用されるケースが多く、サービスそのものの品質やユーザーの満足度を調査するために昔から広く用いられるスコア形式です。

簡単なアンケートなので回答が集まりやすいことや、シンプルで分かりやすく導入しやすいというメリットがある一方、単に「満足したか?」という設問だけではユーザーの満足/不満足の違いが出にくく、さらには5段階のため、その変化を捉えづらいというデメリットがあります。

SUS(System Usability Scale)

SUSとは、英国のデジタル・イクイップメント社(DEC)のジョン・ブルックによって1986年に開発され、元々はパソコンシステムのユーザビリティを測定するための手法で、現在ではWebサイトのユーザビリティも含め、広く利用されている評価手法になります。

サイトの使用感を問う10問×5段階のシンプルな質問で、ユーザービリティのスコア(100点満点)を算出することが出来、変化が捉えやすいというメリットがある一方、各スコアの良し悪しから具体的な課題に落とし込むためのドリルダウンできないことや、調査自体の負荷が大きいため、サイト利用者に対するリアルタイムでの調査が難しいというデメリットもあります。

構造化ヒューリスティック評価(sHEM:structured Heuristic Evaluation Method)

ユーザビリティ研究の第一人者といわれるヤコブ・ニールセンの「ユーザビリティ10原則」は非常に有名で、こちらを元にした評価手法はこれまでにいくつも開発されていています。
中でも放送大学の元教授である黒須正明氏が中心となり、1997年に提唱したこの「構造化ヒューリスティック評価」はニールセンの評価手法の課題を克服し、多面的かつユーザー視点に立った評価をするための手法として定評があります。

この手法は数名のUX専門家が、予め定められたユーザビリティ評価項目(「操作性」や「認知性」などの複数のカテゴリに分けられた100程度の項目)を採点し、評価する手法で、現状のサイトに合った評価項目を設計できるため、低評価の要因分析がしやすい点や、被験者からの回答を収集する必要がなく、競合との比較もしやすいことなどが
メリットとして挙げられます。

ただし、設問設計が難しく、専門的な知識が要する事や、そのための時間と工数がかかるという点や、調査項目が多いため、リアルタイムや月次での調査も難しいことなどがデメリットとして挙げられます。

NPS(R)(Net Promoter Score)

NPS(ネット・プロモーター・スコア)(R)」は2003年にベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルドを中心とするチームによって開発された顧客ロイヤルティを測るための指標です。

ユーザーに対しては「このサービスを友人や同僚に薦める可能性はどれくらいありますか?」という質問をし、それに0~10点までの11段階で答えてもらうという、非常にシンプルな調査手法です。
顧客ロイヤリティを測るための指標として、2015年頃から日本でも浸透してきており、財務結果との連動性の高さや事業の成長性との相関の高さなどから、現在では多くの国内企業のKPIとして採用されています。

NPSはシンプルなアンケートなので、回答が集まりやすくリアルタイムでの調査もしやすいことに加え、ドリルダウン分析も可能なことか、11段階評価のため、変化が捉えやすいといったメリットがある一方、運用がやや難しい、というデメリットもあります。

UXスコアの調査方法リスト

このように、一口にUXスコアといっても様々な評価手法や考え方があります。
WebサービスやアプリのUXを測る上では、これらの中から自社サービスのビジネスゴールやKGIに合ったKPIとして、UXスコアの定義を設定しなければなりません。
「UXスコア」という明確な定義が世の中で定まっていない反面、自社にとっての「UXスコア」が何なのかをまず明確にすることが大切になってくるのです。

UXスコアの運用方法について(NPSの場合)

UXスコアをKPIとして捉える際、その運用方法についても事前に明確にしておく必要があります。(KPI運用の重要性については弊社ブログ記事「設計して終わりにしない「KPIマネジメント」とは?」をご参照ください)
本記事ででは、NPSをUXスコアとした具体的な運用方法について、ご紹介します。

前述の通り、NPSは非常にシンプルなため導入しやすく、また設計次第では様々なデータと連携が可能なため、ドリルダウン分析やリアルタイムでの調査も可能です。
また、SUSなどのユーザービリティ評価やビジネス指標との相関も高く、総合的なUX指標として非常に便利な評価指標になります。

まず、その調査方法について、NPSはWebサービスやアプリの利用者に対して直接アンケートを実施してデータを取得し調査しますが、「リレーション調査」「トランザクション調査」という2つの手法があり、それぞれ運用方法が異なります。

リレーション調査

リレーション調査とは、企業やブランド全体を評価するために、半年~年に1回のペースで実施する調査です。一般的には調査会社のパネルや顧客リストを使って広くサービス利用者に向けて実施されるアンケートで、設問数は20~30問ほどになります。

Webサービスやアプリ利用者に向けての調査では、各機能やコンテンツの使いやすさや見やすさ、全体的な印象など顧客体験に特化した調査設計を行うことで、スコアに影響する因子分析を行うことができます。 
またNPSは絶対評価ではなく相対評価になるため、調査会社などのパネルを使った調査を行う場合は、競合他社との比較調査を行なうことが重要です。
自社の顧客リストに対して独自のアンケートする場合は、前回調査に対する比較調査を行い、その変化と要因分析を行うことが求められます。

トランザクション調査

トランザクション調査は、ユーザーが自社サービスの利用体験をした直後に実施する調査方法です。例えば、店舗での購入やサービスを利用体験、Webサービスやアプリの場合であれば、そこでの情報取得やコンテンツ利用などの直後に、そこでの体験を11段階のアンケートで評価してもらいます。
オンラインでの回答の場合、通常はアンケートシステムと連動し、回答結果がリアルタイムで管理画面などで確認できるため、現在のスコア状況などをリアルタイムで確認することができます。

トランザクション調査は、どのタイミングでアンケート画面を表示させるかが非常に重要です。その瞬間の感情に左右されるため、どこで(対象ページ)、どうやって(ポッポアップ表示/モーダル表示等)、表示させるか、また誰に(特定セグメント)に対して表示させるかを初期段階できちんと設計しておかないと、アンケートの回収率の低下だけでなく、バイアスのかかったアンケート結果になるリスクがあります。なので基本的には、トップページなどに表示するのではなく、何かWebサイト内での目的が達成(商品の購入や会員サービスの利用)した直後に表示するのがベストです。
利用者のそれまでの一連の経験に関し、その感情が冷めないタイミングで良かったのか、悪かったのかを評価してもらう事でバイアスの掛かりにくい調査を行うことが可能です。

NPSの2つの調査

まとめ

今回はUXスコアというものが何かという話と、それを実際に導入する上での考え方やポイント等について書かせて頂きました。また、様々な指標の捉え方や取組み方法がある中で自社にとって最も最適な「UXスコア」とは何かを設計することと、それをKPIとしてどう捉えていくかが非常に重要である事をお伝えしました。
次回はUXスコアの運用方法について、具体的な事例を交えながらご紹介したいと思います。(UXスコアとは何か?スコアの定義からGoogleアナリティクスでの計測方法まで(後編)

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