世界中に数多あるマーケティング関連本。どれを読めばマーケティングが分かるようになるのか。何から読めばマーケティングを理解しやすいのかを見極めるのは大変困難です。
「いっそ、あのマーケターの本棚を覗き見できたら良いのに……」
そんな願いを実現したのが、連載「マーケターの本棚」です。今回は三菱電機でマーケターになって2年目の泊智子さんが、「赤本」と称して常に手元に置いている1冊を紹介してくれました。
今の自分たちに合った動き方を指南してくれる頼れる存在
著者:谷風 公一著
昨年当社(三菱電機)は「2022 Adobe Marketo Engage Champion(※)」でMarketing Team of the Yearを受賞しました。その授賞式でアドビの松井さんからプレゼントしてもらい、それから1年近く教科書のように参考にしています。
この本は、部門間連携など大きい組織が直面する課題に悩むマーケターへの指南書です。さまざまな施策の打ち方や、他部門との連携の進め方など情報が体系的にまとめられていて、「困ったら開く」という使い方をしています。薄い本なので持ち歩きも苦にならず、情報をすぐに探せるのが利点です。
現在参考にしているのが、第1章で解説している「マーケティングの『あるべき姿』を描く」です。当社は全社横断のデジタルマーケティングの部署が立ち上がってまだ3年目で、今後どのように三菱電機としてデジタルマーケティングを活用していくかという「あるべき姿」は模索中。
本書では構想を描く際にどのように設定していけば良いのかを順序立てて説明されているので、こちらを参考にしながら自分たちが今いるステップを確認し、少しずつ活動を前に進めています。
もう一つ気に入っているのが、コンテンツの準備について解説した第7章の「コンテンツをあの手この手で顧客に届ける」です。「コンテンツの中身とアウトプット方法を分けて検討することで、それぞれを深く考えることができる」という言葉が、確かに! と納得感がありました。
一つのコンテンツでもたくさんのアウトプット方法を網目のように準備することで、顧客がその中を回遊してくれる。回遊した顧客を追っていると、期待していなかったコンテンツの効果が高かったり、思わぬ網目ができていることに気付いたりするそうです。本書ではこれを「回遊の網目」と記載しています。
著者の谷風さんから実際にお話を聞く機会があった時、この章は、マーケティングを「魚の生け簀(いけす)」に例え「お客様ごとに生け簀を用意して、そこにどんどんコンテンツを投入し、その生け簀ごと育てていくイメージ」と解説していました。
この「生け簀ごと育てる」という捉え方が非常に分かりやすかったので、社内でもこのイメージを共有しています。その上で、一つのコンテンツからメルマガやウェビナー、ホワイトペーパーなどの各種アウトプット方法で展開し、一人のお客様にいろんな方法で接触できるように施策を打っています。
駆け出しマーケターはぜひ読んでほしい
私がマーケティングに興味を持ったのは、新卒入社で配属された製作所で、エレベーターやエスカレーター・ビルマネジメントシステムの製品企画に携わっていた時でした。当時、せっかく新規に開発した製品がなかなか思うように売れず、なぜだろうと考えたときにマーケティングの重要性に気付いたのです。その後営業も経験し、2021年に新設されたばかりの現在の部署で人員を公募していることを知り、自ら希望して異動しました。
マーケターとしては2年目で、まだ大きな課題を乗り越えたとは言えません。まさに今、この本と共に壁を登っている最中です。そんな私のように、デジタルマーケターを始めたばかりの方には、手元に置いておく教科書としてこの1冊をおすすめします。
本書は、実際に著者の谷風さんが実施した施策例なども豊富に紹介していて、とても濃い内容が詰まっています。デジタルツールの選定方法についても解説しているので、これからデジタルマーケティングを始める人には本当におすすめです。ブックデザインが赤く、常に持ち歩いて勉強しているという意味ではまさに受験生の「赤本」のようなもの。私はこの本を、敬意を込めて「赤本」と呼んでいます。
皆さん、一緒に頑張りましょう!
泊智子(とまり・さとこ):2014年、三菱電機入社。工場での製品企画、前線営業を経験後、2022年に営業本部デジタルマーケティング推進プロジェクトグループに自ら志願して異動し、マーケターに転身。
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