マーケターの能力を高めるChatGPTのプロンプトとは? SEO業界がAIを受け入れるべき理由(後編)
「SEO業界がAIを受け入れるべき理由」を解説するこの記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。
SEO業界がAIを受け入れるべき理由の1つとして、前編では「SEOの効率化」を取り上げた。後編となる今回は、さらに次の2つの理由を見ていこう:
- ナレッジベースの強化
- プログラミングできない人の技術的可能性拡大
SEO業界がAIを受け入れるべき理由②
ナレッジベースを強化できる
SEOの実装(しかも厳密に戦術的な実装)にしか目を向けなければ、AIでできることのごく一部しか使わないことになると思う。SEOコミュニティ向けには、もっと多くのすばらしい用途がある。
多くの業界がChatGPTを利用している最も優れたユースケースの1つは、ナレッジベースを強化することだ。なぜなら、AIは、適切に使えば有能な教師にもなるからだ。情報を瞬時に要約し、僕たちの学習スタイルに合わせて完全にカスタマイズしたアウトプットを提示してくれる。
ナレッジベースの強化例: 既存コンテンツから学びやすく
たとえば、検索特許の著名な専門家だった故ビル・スロウスキー氏はかつて、グーグルが出願した特許を分析していた。これらの特許はより専門的で、同氏は長文のスタイルを用いていた。
僕たちはGoogleの特許を解説する同氏の記事をChatGPTにかけるテストを始め、要点を要約するよう指示するプロンプトを入力した。うまくいったプロンプトは、次のようなものだった:
記事全体を5つの箇条書きに要約して。高校生にわかるように説明して
僕の学習スタイルでは、これでスロウスキー氏の見解を単純化しすぎることなく、特許とその影響を理解するのに十分な詳細が得られた。特定のアイデアに興味を持ったら、ChatGPTに詳しい説明を求めるだけで、さらに理解を深められる。
ナレッジベースの強化例: グーグルの公式ドキュメントを把握しやすく
グーグルのドキュメントから要約を得ることもできる。ここでは、正規化に関するグーグルのページにある文章を読み込ませて、ベストプラクティスに要約してもらった。
AIを教師として使う、ただし弱点も
どれほどの人がテクニカルSEOやウェブ技術、検索エンジンの仕組みを理解することに苦労しているだろうか?
ChatGPTを使えば、スロウスキー氏のような偉大な専門家の研究やグーグルのドキュメントを、いわば民主化できる。理解できないSEOのトピックに遭遇したら、AIを教師として利用できる。
教師が人間の場合は、何度も同じことを聞くのがはばかられる場合もある。しかしAIが相手ならば、同じ質問を何度でも質問し、自分が好む表現で説明してもらえる。
もちろん、こうした学び方には欠点もある。生成AIが作るこの種の要約はコンテンツを省略しており、文章のトーンなどの要素も考慮しない。そのため、執筆者の仕事を十分に表現していない可能性がある。
しかし、全体として非常に強力なツールだ。コミュニティ全体が、SEOに関するナレッジベースにアクセスしやすくなった。
SEO業界がAIを受け入れるべき理由③
プログラミングできない人に力を与えられる
個人的には、AIがもたらす影響のなかでSEOコミュニティにとって最もエキサイティングな側面は、技術的な可能性が広がることだと思う。僕たちの多くは技術に詳しいが、SEOの仕事をしている人すべてが開発の経験をもつわけではない。
ChatGPTは、SEOコミュニティがクリエイターになることを可能にするものだ。適切なプロンプトを入力すれば、これまで作成できなかったプログラミングコードを作れるようになる。それは、検索マーケターとしての君の能力に大きな影響を与えるだろう。
既存コンテンツの自動処理
たとえば、Screaming FrogはSEO担当者向けにさらに多くのサービスを公開した。僕は最近、アウトドア用品を扱うREIのサイトで、パンくずリストの構造化データ(BreadcrumbList)をスクレイピングする必要があった。以前同じような作業をしたときは、デバッグやクロールの再実行、さらにはチームの他のメンバーとのミーティングに何時間もかかっていた。
ChatGPTにScreaming Frogによるデータ抽出を指示し、サンプルのHTMLを添えた。5分もしないうちに対応するXPathが返され、まさに必要としていたデータを抽出できた。
Chrome用のカスタム拡張機能
このプロセスは他の多くのツールにも適用できる。ChatGPTは、次のものを作る際にも役立つかもしれない:
- APIコール
- SQLクエリ
- Pythonスクリプト
- など
これにより、コミュニティは多くの人にとって不可能だったかもしれない新しいものを生み出す力が得られることになる。使い切りのコードだけでなく、個々の具体的なニーズに合わせて完全にカスタマイズしたツールを作ることも可能になった。
僕はこれまで、Chromeブラウザの拡張機能を作ったことはなかった。しかしChatGPTなら、ユーザーからのプロンプトを受けて、それを完全に機能する拡張機能に変換する力を持っている。30分ほどプロンプト入力とデバッグをしたところ、次のSEOデータを取得する自分用のChrome拡張機能を自作できた:
- title要素
- meta description
- h1要素
- URL
- など
このようなすばらしいツールは他にもあるが、この拡張機能は、自分が必要な仕様に合わせて細部までカスタマイズできた。
カスタム拡張機能をChatGPTと連携して最適化
SEOの効率向上に役立つツールを、ChatGPTと連携させて作ることもできる。同僚のダン・ヒンクリーは、この拡張機能をさらにバージョンアップしてくれた。
ダンはチームのために、拡張機能をChatGPT APIと連携させ、「title要素」「h1要素」「新しいコンテンツセクション」などの重要な要素を自動的に生成するSEOの拡張機能を作成できた。
これにより、Go Fish Digitalのチーム全体がプロセスの一環として利用できる新しいツールを得た。僕たちは、ページレベルでSEOの機会をすばやく見出し、特定の推奨事項に対して実行に移す価値のある機会を判断できる。
ChatGPTが今後、このコミュニティで他にこれと同じようなソリューションを生み出すかは疑問だ。AIの力を取り入れることで、SEOチームは自らのニーズを明らかにし、社内のプロセスに完全に合致するソリューションを生み出せるようになる。
まとめ
僕たちにとって、AIがSEOコミュニティに大きな影響を与えることになるのは明らかだ。すでにデータで示されているが、SEO担当者はこれらのテクノロジーに業界を大きな破壊的イノベーションをもたらす力があると考えており、すでにChatGPTなどのツールを日々のプロセスに組み込んでいる。こうした変化に適応するSEO担当者が最も成功を収めることになると僕は思う。
AIを活用して効率を高め、ナレッジベースを強化し、カスタマイズしたソリューションを構築してプロセスを改善できるマーケターは、検索の未来がどのようなものになろうとも、有利な位置につけるだろう。
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