探索を使いこなす!おすすめのディメンション・指標、セグメントをウェブ解析士協会のデータで実際にご紹介!
【この連載について】
この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているウェブ解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。
今回は、株式会社Task it代表取締役である佐々木秀憲さんによる解説です。
【今回のポイント】
- 「探索レポート」はアドホックな分析ができるレポート。
- 定点観測/モニタリングとアドホックという2つの視点がある。
- 探索レポートの「自由形式」を使い、原因を探ってみる。
- 「Direct」に絞って原因を探索。
- 流入から分類。
GA4がリリースされて、はや2年以上が経過しました。導入済みという企業も増えてきたと思います。そこで今回は、実際にGA4を使った分析の手順やイメージを、実際のサイト(ウェブ解析士協会サイト)を使ってお伝えします。
改めて「探索レポート」とは?
前回の河村さんの記事「GA4の『探索』で分析するときのポイントはこれ! 3つの代表的手法を徹底解説」とも一部重なりますが、改めてお伝えすると、「探索レポート」はアドホックな分析ができるレポートといえます。
一般にウェブサイトの解析・改善活動をしていく際、主に2つの視点があります。
(1)定点観測/モニタリング
こちらは、伊村さんの記事で紹介されていたLooker StudioなどのBIツールが得意な領域ですが、毎日・毎週・毎月など定期的に同じ数値(セッション数、エンゲージメント率、コンバージョン率など)を確認し、増加・減少を確認していくものです。
しっかりとKPIを設定しそれを定点観測していくことで、計画の進捗具合や、改善が必要なポイントを素早く見つけられます。
(2)アドホック
もう1つの観点が、今回の探索を使うときに意識してほしい「アドホック」な分析という観点です。こちらは、「その都度、目的に合わせて行う分析」というように理解をしてほしいのですが、定点観測とは違い、毎回決まったデータを見る訳ではありません。
たとえば定点観測をした結果「今月は、先月よりもセッション数が激減している」ということが分かったとします。仮に何か心当たりがあれば、特に追加の分析はせずとも対策を実行できるかもしれませんが、
通常は、「どうして減ってしまったのだろう?またセッション数を増やすためには何をすればよいのだろう?」ということを考えると思います。そのときに、「では、具体的にセッション数が減ったのは何が悪いのか?(どこに改善の余地があるのか?)」をデータから探りたいと思うはずです。
このように、明確な目的があり(今回で言うと、「セッション激減の原因を知りたい!」)、そのためにわざわざレポートを作って分析をしていくのが、「アドホック」な分析となります。
ウェブ解析士協会のデータをざっくり見てみよう
では具体的なデータでこれらを検証します。まずはモニタリングするイメージで、「ウェブ解析士協会」サイトの主要な数値を、先月・先々月で比較してみましょう。
非常にシンプルな数値比較ですが、先月(2023/1/1~2023/1/31、図でいうと「カスタム」)と先々月(2022/12/1~2022/12/31、図では「前の期間」)を比較すると、「ユーザー数、新規ユーザー数、PV数(表示回数)、イベント数など、軒並み4%~8%程度下がっていること」が見てとれます。
今回は、この原因をさまざまな角度から探っていってみたいと思います。
なおモニタリングでは、パッと出てくる値ということでユーザー数やイベント数などを使っていますが、主にアクセス数の増減について語っていきますので、以下「セッション数」を中心とした話になります。これはユーザー数やアクティブユーザー数でやると、流入の数値と整合性が取れないことがあり、レポートすることが難しくなるためです。
探索レポート-自由形式で見てみる
まずは、探索レポートの「自由形式」を使い、原因を探ってみましょう。はじめに、こんなレポートを作ってみました。
ユーザー数やPV数が減ったということが分かりますが、具体的な意図としては「どの集客方法が大きく減っているのか?(もしくは全体的に減っているのであれば、時期やマーケット要因などなのか?)を確認したい」ということです。
なお探索ではなく通常のレポートの「ライフサイクル>集客>トラフィック獲得」レポートを見るのと大きく変わりませんが、後々の詳細分析に繋げやすいため、今回は探索で作成していきます。
少し見づらいかと思いますので、以下数値部分を拡大してみましょう。
セッション数を見てみて気になるのは、変化率の大きい「Direct(-29.7%)」と「Email(-66.7%)」でしょうか。しかし、あくまで変化“率”なので、もともとの数値が大きくなければ全体にはあまり影響がない可能性があります。
そこで数値を見ると、全体の数値「先々月80,228セッションvs先月74,103セッション(-6,125セッション)」に対し、それぞれDirectで「-6,740セッション」、Emailで「-984セッション」と、セッション数全体の減少数よりも多く減少しており、これが減少要因の大半を占めていそうだと理解できます。Organic Searchなど、増加しているものもあるため、全体の減少よりもDirect単体の減少の方が多くなっています。
ちなみに、ユニバーサルアナリティクスでは、「変化量並べ替え」という機能があり、率では分からない“量”で減少の大きいものを簡単に抽出できました。いずれ、GA4にも同様の機能がついてくれることを期待します。
レポートを少しカスタマイズ
本題に戻りますが、集客方法の問題としては「Direct」に大きく問題がありそうです。ここからは「Direct」に絞って原因を探ってみましょう。
まず、「Direct」に減少の理由のあたりをつけられましたので、レポート自体「Direct」のみ表示をするようにします。具体的には「右クリック」でフィルタをかけます。「Direct」のディメンションの部分にカーソルを載せた状態で、右クリックをすると、以下のような選択肢が出ますので、「選択項目のみを含める」を選びます。
これで、レポートに表示されているのは「Direct」のみになりました。
この「フィルタを簡単にかける」という機能はドリルダウンをしていく際に便利なので、ぜひ使ってください。という機能になります。
次に、左側の「タブの設定」欄の最下部を見てみると、フィルタが自動で作成されています。
さらに問題を分解
ではここから、「Direct」チャンネルに問題がありそう!という気付きから、さらに問題を分解していきましょう。
「Direct」になる流入方法を場合分け
通常「Direct」以外のチャンネルであれば、該当チャンネルのなかの詳細な流入元を確認するために、「セッションの参照元/メディア」などをセカンダリディメンション(「タブの設定」「行」の2つめのディメンション)として入れて詳細を確認しますが、「Direct」の場合、これ以上の詳細が分かりませんので((direct)/(none)が出るだけ)、別の切り口で考えてみましょう。
通常「Direct」になる流入方法は、以下が考えられます。
- ブックマークからの流入
- URL直接入力(ユーザーがブラウザURL欄に直接貼り付けなど)
また、「計測用のパラメータをつけていない」ことが前提ですが、以下のような流入も考えられます。
- アプリからの流入
- Emailに貼られたリンクからの流入
- QRコードからの流入
一般的にDirectチャンネルについては、「一定量発生することは致し方ない(ブックマーク・直接入力)」「パラメータをきちんと付与することで、ある程度解析が可能となる(アプリ、Email、QRコード)」といったことが言えます。
しかしながら、Directで入ってきてしまっている以上、過去データについてはどうしようもありません。「それでも何とか減少の理由を知りたい!」となると、手法は制限されます。
流入の意図を推測
まずDirect流入の場合にも「どのページにDirectで来たのか?(ランディングページ)」から、流入の意図(どういった理由でのDirect流入なのか)を推測できることがありますので、「ランディングページ」をセカンダリディメンションに入れてみます。
シンプルに操作をすると、セカンダリディメンション(「タブの設定」「行」の2つめのディメンション)に「ランディングページ」を入れることになります。結果は、上記の画像のようになると思います。「Directの理由をランディングページで分解して見てみる」という趣旨なので、もちろん上記画像の状態でも構いませんが、先ほどすでに「セッションのデフォルトチャンネルグループがDirectのみ」というフィルタをかけているため、実は1つ目のディメンション「セッションのデフォルトチャンネルグループ」は外してしまっても問題ありません(ただし、「今何のフィルタかけてたっけ?」と分からなくなるようなら、表示したままでも良いと思います)。これを外すと、以下のように少しスッキリ見やすくなります。
セッション数上位5位を確認してみると、「(not set)」「/」「/2022-1q.html」「/2022-2q.html」「/2022-3q.html」と続いています。
「(not set)」ですが、今回は特に不要なので、先ほどと同じく「(not set)」で右クリックをして、「選択項目を除外」してもいいでしょう。なぜ「(not set)」が発生しているか?というと、「page_view」イベント以外のイベントで、チャンネル(正確には、チャンネル判別をするための「source」や「medium」)が記録されてしまっているためです。あらかじめフィルタで「イベント名、次と完全一致、"page_view"」としておくと、混乱を避けられるでしょう。「page_view」イベント以外でチャンネル「Direct」が記録されており、ランディングページが(not set)になってしまっていることが分かります。
上記を踏まえて、改めて「page_view」イベントのみに絞り込んだレポートが下記となります。
「/jp/」と「/」は、ともに「TOPページ」を意味しています(/に飛ぶと、/jp/にリダイレクトされる)。つまり「TOPページにDirectで来た」ユーザーが、トータルで「-567セッション(Direct減少6740セッション全体の8.4%)」となっていることが分かります。
※実際には、Facebookからのリンクが押された際の「/?fbclid=」など、パラメータがついたURLがランディングページになってしまっているため、「DirectでTOPページに来た」というセッションが「-5,246セッション(Direct減少全体の74%)」と最大の減少要因となっています。
ただ、「TOPページにDirectで来た人」が減った理由というのは、「とりあえずTOPページをブックマークして流入してくる」などの行動があるため、なかなか推測しがたいでしょう。そのため、TOPページ以外の内容から推測をしていきます。
減少ボリュームを検証
減少ボリュームとして多いのは、「/user-login/(-276セッション、Direct減少全体の4%)」「/jp/association/system/(-356セッション、Direct減少全体の5.3%)」などが続きます(レポート3項目めの「/jp/course/wac/」は197セッション増)。
ちなみに、「/user-login/」と「/jp/association/system/」がそれぞれどのようなページかと言うと、「/user-login/」は、URLからも分かる通りウェブ解析士会員マイページへのログインページ、「/jp/association/system/」はウェブ解析士の会員制度の説明ページになります。
ここからは、ウェブ解析士協会について知っていないと原因を推測することが難しいのですが、ウェブ解析士会員は、毎年年末に「年会費更新」と「フォローアップ試験合格(最新知識アップデート用の試験)」という、「会員更新作業」が必要となります。そのため、ふだんはあまりアクセスをしてこなかったような方が、会員更新作業のためにTOPページや「/user-login/」ページにアクセスして、自分の会員ステータスを確認したり、「/jp/association/system/」ページで、会員制度や会員更新について確認をしたりということを行った…ということが推測できます。
まとめ
本来は、分析を始める前にクライアントヒアリングなどしていれば、もっと早くあたりも付けられた内容かと思います。
実際のコンサルティングなどをする際には、直近で行った施策や時期ごとの行事予定・繁閑なども確認して、「仮説」を立ててから分析するものですが、今回は「探索を使ってみる」がテーマでしたので、「データから何が起きたのかを探し出す」アプローチを取ってみました。
かなり長くかつ割と難しい内容になってしまったな…というのが感想ですが、少しでも参考になれば幸いです。今回の記事を通して、改めて感じたのは以下の3点です。
- 設定はちゃんとする必要がある(パラメータ排除など)。
- GA4のデータ(イベントとパラメータ)について、理解しておく必要がある。
- 探索の画面上の使い勝手は直感的で使いやすい。
ウェブ解析士協会では、GA4の導入・設定・レポートまですべてを学べる「Googleアナリティクス4講座」を開催しておりますので、ぜひ、上記3点をしっかりと理解して使っていきたい方は、ご受講をご検討ください!
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