日本のデジタル広告は、ビューアビリティの平均が世界ワースト1位! ビューアビリティを上げるには?
デジタル広告にまつわる、さまざまな疑問や現場で直面する悩みを抱えるマーケターの末広告美さんが、アドベリフィケーションの専門家・山口さんに解説してもらう連載。
第3回は「日本のビューアビリティの平均はどうしてこんなに低いの? 低い原因と改善するポイント」です。
突然ですが、日本のビューアビリティの平均って何位か知ってます?
えっーと……ビューアビリティってなんでしたっけ?
後で詳しく説明しますが、ビューアビリティとは、広告が「見られる状態にあったか」を知る指標のことです。
日本は実は、こんなに悪いんです!
えっ! 世界ワースト1位!?
だから、最近上司にビューアビリティを上げろと言われているのか……。
どうすればビューアビリティを上げられますか?
まずはビューアビリティについての理解を深めて、その後に低い原因と改善策についても見ていきましょう!
ビューアビリティは広告が「見られる状態にあるか」の指標
デジタル広告の品質計測に使用されるアドベリ3大指標のうち、広告がウェブサイト上で「ユーザーにきちんと見られる状態にあったか」を測る指標がビューアビリティです。
広告が配信されたからといって、残念ながらそのすべてに見られる機会があったとは限りません。ビューアビリティは、配信された広告の全インプレッションのうち「ビューアブル(視認性がある)」と見なされたインプレッションの割合を指し、以下の計算式で算出できます。
広告のインプレッションが「ビューアブル」とカウントされるためには、インタラクティブ広告協会(Interactive Advertising Bureau:IAB)やメディア評価評議会(Media Ratings Council:MRC)で定義されている、以下の基準を満たす必要があります。
- 広告枠の50%以上が【1秒以上】ユーザーに見える状態になっていること
- 広告枠の50%以上が画面上に表示されている状態で【2秒以上】広告が再生されていること
なぜ広告のビューアビリティが大事なのか?
ビューアビリティって、
どうして気にする必要があるんでしょうか?
もちろん、見られていない広告にお金は払いたくないですけど……
それはズバリ!
広告キャンペーンのROIに影響するからです!
ビューアビリティの高さは、広告キャンペーンのパフォーマンスとROI(投資収益率)に直結します。広告が何らかの成果を生み出すには、人間に見られていることが大前提です。前述の基準を満たしたビューアブルな広告は、ビューアブルでない広告に比べて、より良いコンバージョンをもたらします。一方で、見られていない広告は何もしていないのと同じことになるため、ビューアブルでない広告には、効果はありません。
日本のビューアビリティの平均は、世界ワースト1位
ここ数年、広告主の間で「広告のアテンション(消費者の注意を引く)を高める前に、まずは広告のビューアビリティに対処すべき」という認識が広がり、ビューアブルでない広告が世界中で排除され続けた結果、ビューアビリティの世界平均値は上昇し続けています。
IASが発表した最新のメディアクオリティレポート *では、ディスプレイ広告(アドネットワーク&DSP)のビューアビリティ世界平均は前年同期比でそれぞれ2〜2.6ポイント上昇し、デスクトップで71.5%、モバイルは66.9%に達しています。
日本は長らく、広告のCPC(Cost Per Click:広告1回のクリックにかかるコスト)やCPM(Cost Per Mille:広告表示1,000回あたりにかかるコスト)といった数値を追いかけるあまり、ビューアビリティに対する関心が低い傾向があり、ビューアビリティは世界ワースト1位の記録を更新し続けて来ました。
そして同調査では、ついに日本がビューアビリティが50%を切る、世界で唯一の市場になったことが明らかになりました。デスクトップでは48.4%、モバイルでも47.1%と、実に半数以上の広告が「見られる状態」にないまま配信されている結果は、日本の広告業界における低ビューアビリティの深刻さを浮き彫りにしています。
ビューアビリティ48%……
52%の広告は配信されても見られてなかったって、
一体何が原因なんでしょうか??
原因を正しく理解することが、
改善に向けた第一歩です!
低ビューアビリティの裏側、見られない広告が発生する原因は?
広告主が選んでいる媒体や広告メニュー、クリエイティブ、フォーマットなどは、広告主ごとに異なるため、ビューアビリティの改善に「これさえやればOK!」という正解はありません。しかし、低ビューアビリティを引き起こす原因には代表的なものがあり、今日は特にアドネットワーク&DSPにおけるディスプレイ広告(ソーシャルメディアを除く)に絞って、その原因と解決策を紹介します。
ディスプレイ広告(アドネットワーク&DSP)でビューアビリティが下がる、代表的な原因には以下のようなものがあります。
❶ 低ビューアビリティの広告枠への広告配信
ビューアビリティ低下の最もよくある要因は、ビューアビリティの低い広告枠への広告配信です。優良サイトであっても、ビューアビリティの低い広告枠は存在します。たとえば、ウェブページの下部に配置された広告枠がそれに該当します。この広告枠はブラウザでスクロールしなければ見られない位置にあります。
ウェブページの下半分の位置にある広告枠は、ユーザーがそこに到達する前に離脱してしまうケースがあり、スクロールせずに見られるウェブページの上半分(ファーストビュー)に配置された広告枠と比較すると、平均してビューアビリティが低下します。
❷ 優良サイトに偽装したサイトへの広告配信
前回の記事でもご紹介しましたが、世の中には、優良サイトを装って、質の低い広告在庫を取引する悪質な偽装サイトが存在します。それらのサイトを排除したつもりでも、ドメインを偽るドメイン・スプーフィングによって、知らぬ間に勝手に悪質サイトへ広告が流れているケースもあります。見られる可能性の低い粗悪な広告枠を提供するサイトや、ボットによるインプレッション稼ぎを目的としたサイトに広告が配信された結果、ビューアビリティが低下するのです。
ボットは人間を装ってインプレッションやクリックを発生させますが、実際は人間が見ていない「ノンビューアブル」なインプレションなので、ビューアビリティは0%となります。
❸ 広告の読み込み速度が遅いサイトへの広告配信
ページの読み込みに時間がかかってユーザーがページから離脱したり、広告が読み込まれる前にスクロールして通り過ぎたりてしまうことは、ビューアビリティの低下に直結します。
広告枠が多く読込に時間がかかるサイトや、コンテンツ内にリンクや埋め込み動画が多く読込に時間がかかるサイトなどはその一例です。
❹ コンテンツに魅力がないサイトへの広告配信
サイトのコンテンツに魅力がない、質の低いウェブサイトの場合、ユーザーのページ滞在時間が短く早期の離脱が多いため、ビューアビリティ低下の要因になります。
❺ 広告クリエイティブに課題がある
DSP&アドネットワークのディスプレイ広告においては、たとえばクリエイティブ内にメッセージが多すぎたり、1つのクリエイティブを長期間利用し掲載したりすることによってユーザーに飽きられてしまうことが要因として考えられます。
いざ、低ビューアビリティを改善!
うーん、こんなことが起こってるんですね……
これらがすべてではありませんが、
主要な原因についてはイメージできたかと思います。
でも、広告枠の位置など、
自分では対処できない原因も多い気がするんですが?
まずはそういったサイトを
特定することが第一歩になりますよ!
改善をするには、何よりもビューアビリティを測定することが第一歩です。
まずは、一定期間に配信したインプレッションのビューアビリティを算出し、展開しているメディアをはじめ使っている広告メニュー、掲載位置、広告クリエイティブを比較し、照らし合わせて、それぞれの数値と傾向を把握します。
広告のビューアビリティの計測を提供するベンダーはいくつもあります。IASの場合は、このように広告キャンペーンに対するビューアビリティが管理画面に自動で更新されます。
次に、ビューアビリティを向上させるためにできる対策を洗い出し、実行に移しましょう。
たとえば原因1と原因2は、広告枠の位置やサイト偽装など、広告を配信するメディア側に起因する理由ため、広告主が改善を加えられるものではないように見えます。しかし、このようなサイトやビューアビリティの低い広告枠への広告配信を、広告主側の働きによって、ある程度防ぐことが可能です。
❶ 低ビューアビリティの広告枠への広告配信
❷ 優良サイトに偽装したサイトへの広告配信
◉ 対策 ◉
CPC、CPMの運用単価を見直す。無理のある設定にしない
広告キャンペーンの運用単価を安く設定しすぎると、質の低い面や掲載位置の低い広告枠しか購入できなくなり、結果ビューアビリティの低下に繋がります。安いCPC、CPMだけを追い求めた結果、せっかく優良なサイトに出ているのに、安い、低い枠に配信されていることがあります。
無理のある運用単価は、巡り巡ってビューアビリティに影響を及ぼしますので確認が必要です。また、追いかける指標として、CPMから、vCPM(Viewable CPM:ビューアブルな広告表示1,000回あたりにかかるコスト)を重視するようなシフトも必要かもしれません。
◉対策 ◉
セーフリストを廃止する、スリム化する
また、リストでの対策が「ビューアビリティの悪化」を招いていることが考えられます。
セーフリストとは前回の「セーフリスト、ブロックリストを作れば安心! は間違い?」でもご説明した通り、リストを作成して配信先を絞り込むことによって、設定されたCPMを維持するために、逆にビューアビリティの低い広告枠に広告配信が寄せられるケースがあります。
運用単価を見直したり、リストでガチガチに絞り込む代わりに、代理店やアドベリフィケーションベンダーと連携して、リスクのあるページでの広告配信を停止する「ブロッキング」や、そもそも事前に入札から除外する「入札前ターゲティング」、ページの文章・文脈からターゲティングができる「コンテクスト・ターゲティング」の技術などの利用を検討してみてください。
原因3と原因4は、ドメイン単位でブロックすることで低ビューアビリティを防げます。
❸ 広告の読み込み速度が遅いサイトへの広告配信
❹ コンテンツに魅力がないサイトへの広告配信
◉対策◉
ドメイン単位で、ブロックする
ドメイン単位でビューアビリティが取得でき、低ビューアビリティが確認できた場合にのみ、ブロックリストに登録します。しかしドメイン偽装の可能性もあるため、万能ではありません。低ビューアビリティにつながる、リストの肥大化にも注意が必要です。
最後の主要原因は、クリエイティブを変更したり、A/Bテストを実施したりすることで最適化が行えます。
❺ 広告クリエイティブに課題がある
◉対策◉
クリエイティブの改善、A/Bテスト
1つのクリエイティブに入れるメッセージは1つに絞るよう注意し、ユーザーの目を引くアイキャッチがあるかどうか、また、長期間同じクリエイティブを利用することによる飽きを防止すべく、定期的に新しいクリエイティブに更新しましょう。複数のクリエイティブをA/Bテストすれば、どのメッセージが最も効果的で目を引くことができるのか、データに基づいて判断することができます。
DSPを利用している方ができる対策
最後に、DSPを利用している方ができる、一歩進んだ対策があります。
◉対策 ◉
購入する広告を「ビューアビリティ」値でターゲティングする
DSPを利用している場合は入札前ターゲティングを活用して、ビューアビリティ値で広告をターゲティングできます。最初からたとえば「ビューアビリティ 60%以上」という具合に高ビューアビリティの広告在庫を指定しておけば、その広告枠に対してのみ配信されるのでビューアビリティが下がることがありません。
低ビューアビリティに正しく対処するためには、データの測定が大事
ビューアビリティ、
上げられる気がしました!
その調子です!
データに基づいた改善が成功の鍵ですよ
低ビューアビリティに正しく対処するためには、データの測定が大事です。なぜならば、自分の直感と結果が合致するとは限らないからです。
たとえば、低ビューアビリティの原因の1つとして、ブラウザでスクロールしなければ見られないページ領域にある広告枠について説明しました。一般的に、スクロールせずに見られるファーストビューに配置された広告枠と比較して、ビューアビリティが低くなります。
こういった説明を聞くと、それなら最もビューアビリティが高い広告枠は「最上部にある広告だろう」という印象を持ちますが、必ずしもそうではありません。上部に配置された広告の場合、ページが読み進められることによって広告も通り越してしまっていることもあるからです。自分が高いビューアビリティを持つと考える配置は、実際の環境では低いスコアかもしれませんし、その逆もあります。このため、思い込みではなく実際のパフォーマンスデータに基づいて広告サイズや配置の最適化を決定することが重要です。
結局のところ、見られていない広告にお金を払いたいと考える広告主はいないものの、低ビューアビリティを野放しにしていては、いつまでも広告費の無駄は減らず、広告キャンペーンの費用対効果は上がらないままです。
まずは、計測、そして状況を確認したら、展開するデジタル広告があらゆるフォーマット、デバイスにおいて、実在する人間に見られる機会を可能な限り確保していきましょう。
一つひとつ進めていきましょう。
次回はソーシャルにおけるビューアビリティの改善についてお話しします。
それでは、また次回!
ソーシャルもやってます!